
07/16 (水)更新
経営管理ビザとは?要件・申請方法・不許可事例まで徹底解説
外国人が日本で会社を設立し、経営者や管理者として活動するには、「在留資格 経営・管理(経営管理ビザ)」の取得が必要です。
ただしこのビザは、ほかの就労ビザに比べて審査基準が厳格で、事業の信頼性や継続性、実績や計画性が細かくチェックされるため、「申請したけれど不許可になった」という声も少なくありません。
一方で、制度を正しく理解し、要件を満たしたうえで準備を進めれば、外国人が日本で合法的に起業・経営を行うための最適なルートでもあります。
本記事では、以下のような内容を網羅的に解説します。
- 経営管理ビザとはどんな在留資格か?
- 申請に必要な要件と書類、手続きの流れ
- よくある不許可事例とその対策
- 複数人での共同経営や業種ごとの注意点
- 4ヶ月ビザの活用方法と永住資格との関係
「ビザを取得して日本でビジネスを始めたい」「申請手続きを確実に進めたい」という方にとって、制度理解と実務の両面を押さえた実用的なガイドとなっています。
ぜひ申請前に確認しておきたい、経営管理ビザ取得のポイントをまとめた完全版としてご活用ください。
経営管理ビザとは
外国人が日本で会社を設立したり、経営に携わるためには、特別な在留資格が必要です。
その在留資格が「経営・管理ビザ(在留資格:経営管理)」です。
このビザは、単なる就労ビザとは異なり、自らが事業の経営者または管理者となる場合に必要とされる特別な在留資格であり、日本での起業や事業運営を目指す外国人にとって最も重要なビザのひとつです。
ここでは、経営管理ビザの制度の概要、対象となる人、実際にどんな活動ができるのか、そして他の在留資格との違いについてわかりやすく解説します。
在留資格「経営・管理」の制度概要
経営管理ビザとは、日本で事業を経営または管理する立場にある外国人に付与される在留資格です。
この制度は、日本に対する外国人の投資・起業・ビジネス活動を促進するために設けられており、「雇われて働く」のではなく「自分で会社を経営する」「他人の会社を管理する」という立場での在留を可能にします。
制度上の分類は「在留資格:経営・管理」であり、入管法で定められた「就労可能な在留資格」の一種です。
このビザで認められるのは、主に以下のような活動です。
- 自ら会社を設立して代表取締役として経営する
- 投資家として会社を買収し、その経営を担う
- 日本法人の支社長や部門責任者などとして経営管理に携わる
経営管理ビザの対象者と活動内容
このビザの対象になるのは、新規に日本で起業したい人、または既存の事業を買収・管理したい外国人です。
具体的な対象例は以下の通りです。
- 海外から来日して、日本で法人を設立しようとしている外国人
- すでに日本に滞在していて、留学生や技術者としての在留資格から変更し起業を目指す人
- 外資系企業の日本支社で、経営管理職として勤務する予定の人
活動内容としては、単なる事務や営業職とは異なり、経営上の意思決定、財務・人事・戦略の策定・執行など「経営に関わる全般的な業務」が想定されます。
また、経営に関する意思決定を行うためには、最低限の資本金(500万円以上)や事務所の設置といった実体的な基盤が求められます。
就労ビザや投資ビザとの違い
「就労ビザ」と「経営管理ビザ」は、活動の性質が根本的に異なります。
ビザの種類 | 活動内容 | 主な例 |
就労ビザ(技人国など) | 雇われて働く(労働者) | ITエンジニア、営業職、翻訳者など |
経営管理ビザ | 自ら経営・管理に携わる(経営者) | 起業家、代表取締役、支社長 |
さらに、かつて「投資・経営ビザ」と呼ばれていた在留資格は、2015年の法改正によって現在の「経営・管理ビザ」に移行しました。
つまり現在では、「投資ビザ」という独立した枠は存在せず、すべて「経営管理ビザ」に統合されているのが正確な理解です。
◆経営管理ビザは「起業・経営者向けの在留資格」
経営管理ビザは、日本で自分の会社を持ちたい、事業を運営したいという外国人のためのビザです。
就労ビザと違い、雇用されるのではなく、経営者としての主体的なポジションを担うために必要な在留資格であり、企業の実態や本人の実務能力が重要視されます。
- 対象者 – 起業家・投資家・経営者・管理職
- 活動範囲 – 会社経営・管理業務全般
- 他のビザとの違い – 雇用される労働ではなく、事業を自ら動かす立場
今後、日本でビジネスを始めたい外国人にとって、このビザの正しい理解と準備が、成功する第一歩となるでしょう。
経営管理ビザの取得要件
日本で会社を経営したい外国人が申請できる「在留資格 経営管理(通称:経営管理ビザ)」。
しかし、このビザは他の就労系ビザよりも取得条件が厳しく、明確な基準をクリアしなければ許可は下りません。
多くの申請者が見落としがちなのが、事業の実体や継続性を証明する必要がある点です。
単に法人を設立しただけでは不十分で、経営の実行性と信頼性が問われるため、申請前に正しい知識を得ておくことが不可欠です。
ここでは、経営管理ビザの主要な取得要件を4つの柱に分けて詳しく解説します。
独立した事業所を確保していること
経営管理ビザの申請において最も基本的な要件が、「独立した物理的な事業所の確保」です。
これは、バーチャルオフィスや自宅兼用の住所では原則不可とされており、賃貸契約書や内装写真などで“事業実態”を証明する必要があります。
要件に該当する事業所の条件
- 明確な住所が存在し、専用スペースとして使用されていること
- 事務机や設備があり、来客・会議などの事業活動ができる状態であること
- 賃貸契約期間が最低でも1年以上確保されていることが望ましい
「事業所=ビジネスの土台」という入管の視点から、事業の信頼性を左右する要素のひとつです。
資本金500万円以上または2人以上の常勤職員雇用
次に求められるのが、一定の事業規模です。
その目安として、次のいずれかを満たす必要があります。
- 500万円以上の出資(資本金)で事業を開始すること
- 2名以上の日本に居住する常勤従業員を雇用していること
いずれも、単なる書類上の数字ではなく、実態を伴う必要があります。
たとえば
- 資本金は実際に会社口座に入金されていることを通帳や残高証明で証明
- 従業員は雇用契約書・給与明細・住民票などで「常勤」であることを確認
この要件は、「事業として成立しているか」の基準を満たすためのものです。
事業が安定的・継続的に運営されること
経営管理ビザが求めるのは、単なる起業ではなく「継続できる経営」です。
そのため、以下のような資料や情報が重要な判断材料になります:
- 具体的かつ現実的な事業計画書(今後1~3年分)
- 収支見込み・販売計画・資金繰りのシミュレーション
- 契約書・取引先情報・見積書など、営業の実績や準備の証拠
特に事業開始初期では、まだ売上実績がない場合もあるため、「将来性がある」「準備が十分に整っている」ことを明確に伝えることが審査通過のカギです。
管理者として申請する場合の3年以上の実務経験
申請者が「経営者」ではなく、「経営に従事する管理者」としてビザを取得する場合、さらに追加の要件が課されます。
- 申請人が過去3年以上、経営や管理業務に従事した経験があること
- 経験は、勤務証明書・在職証明・役職記録・推薦状などで証明
- 場合によっては、経営管理に関する学歴や研修歴も考慮される
これは、「管理を任せるに足る実務経験がある人物かどうか」を判断するための基準です。
新卒や現場スタッフレベルではこの要件は満たせません。
◆経営管理ビザ取得には「形式」より「実態」が求められる
経営管理ビザは、在留資格の中でも特に厳格な審査基準を設けているビザです。
なぜなら、これは「働くためのビザ」ではなく、「日本で責任ある立場で経営を行うためのビザ」だからです。
以下の4点をすべて押さえておくことが最低条件です。
- 実体ある事業所があるか
- 一定規模(資本金または雇用)の事業であるか
- 継続性・安定性を示す根拠が揃っているか
- 管理者としての十分な経験があるか
これらを具体的に証明するためには、書類の形式だけでなく中身と裏付けが問われます。
入念な準備と制度理解が、許可への第一歩になるのです。
経営管理ビザ申請の流れ
「日本で会社を立ち上げてビザを取得したいけど、何から始めればいいかわからない」という声は非常に多く聞かれます。
経営管理ビザの取得には、会社の設立準備とビザ申請手続きを並行して進める必要があり、順序を間違えると不許可になることもあります。
特に海外からの申請者や初めての起業を目指す方にとって、申請フローの全体像を把握することは成功率を高めるための第一歩です。
ここでは、経営管理ビザを申請するために必要な具体的な流れを、4つのステップに分けてわかりやすく解説します。
会社設立と銀行口座開設
経営管理ビザの申請には、まず法人格のある会社を日本で設立することが前提となります。
そのため、最初に行うべきステップは「会社設立」です。
具体的な流れ
- 会社の基本事項(商号・所在地・資本金・役員など)を決定
- 定款を作成し、公証役場で認証を受ける(株式会社の場合)
- 設立登記を法務局で申請(通常は司法書士が代行)
- 会社名義の銀行口座を開設し、資本金を入金
ポイントは、資本金500万円以上を会社口座に入金した証拠がビザ申請で必要になるため、発起人の個人口座ではなく、法人の通帳や残高証明書が必要になることです。
事業所の賃貸契約と設備確保
会社を設立するだけでは不十分で、実際に業務を行うための「物理的な事業所」を確保することが必須条件です。
必要な準備
- 商用として利用可能なオフィスの賃貸契約を締結
- 使用目的は「事務所」「営業所」であること(住宅用不可)
- 机・椅子・インターネット・電話など、業務が可能な設備の設置
- 事業所内部の写真や賃貸契約書のコピーを申請時に提出
また、事務所がレンタルオフィスやシェアオフィスの場合、専有スペースが確保されているかが審査のポイントになります。
見学や写真撮影も事前に済ませておくことが望ましいです。
事業計画書・定款・登記の準備
経営管理ビザでは、単なる会社設立だけでなく、「本当にこの事業が継続的に運営されるか?」という視点で審査されます。
そのために必要なのが、事業計画書と会社設立書類一式です。
主に準備する書類
- 3年程度の事業計画書(売上・利益・人員計画を含む)
- 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 定款(目的や事業内容が記載されているもの)
- 会社印・代表者印・印鑑証明書
- 資本金の払込証明(通帳の写し、振込明細など)
「計画性」「実行可能性」「継続性」が伝わるように、実務ベースのリアリティある資料にすることが重要です。
入管はビジネスの成功を保証するわけではありませんが、信頼できる経営体制かどうかを厳しくチェックしています。
在留資格認定証明書(COE)の取得
最後に、入国管理局へ「在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility:COE)」を申請します。
これは、日本に入国する前にビザの適格性を確認する制度で、経営管理ビザ申請において必須です。
主な流れ:
- 書類一式を整え、入管に提出
- 通常1~2ヶ月の審査を経て、COEが交付
- 海外の日本大使館または領事館でビザの発給手続きを行う
- 日本に入国後、住民登録・税務署・年金・保険などの手続きへ
なお、日本国内に在留中で、他の在留資格から経営管理ビザに「変更」する場合は、COEではなく在留資格変更許可申請を行うことになります。
◆経営管理ビザ取得は「段取りと実務の正確さ」がカギ
経営管理ビザの申請は、単に会社を作るだけでは許可されません。
制度に沿った正しい流れで、実態のある事業運営が証明されて初めて、在留資格が付与されるのです。
申請までの基本ステップをおさらいすると
- 会社設立と法人銀行口座の開設
- 賃貸契約と設備を整えた事業所の確保
- 事業計画書や登記情報などの提出書類の作成
- 在留資格認定証明書(COE)の申請と取得
これらを一つひとつ丁寧に進めていくことで、経営管理ビザ取得の成功率は確実に高まります。
とくに初めての申請で不安がある場合は、行政書士や専門家との連携も検討すべきでしょう。
経営管理ビザにおける「4ヶ月ビザ」とは?
日本で起業を目指す外国人にとって、経営管理ビザは必要不可欠な在留資格ですが、「いきなり1年のビザを取るのはハードルが高い」と感じるケースも少なくありません。
そこで近年、起業準備を支援する仕組みとして注目されているのが「4ヶ月ビザ(在留期間4ヶ月の経営・管理ビザ)」です。
この短期ビザは、ビジネスの初期準備期間に特化した在留資格であり、海外在住の外国人でも比較的スムーズに日本で起業のスタートを切ることができる制度です。
ここでは、「4ヶ月ビザとは何か?」から、具体的な活用例、そして注意すべき落とし穴まで、実務ベースで詳しく解説します。
4ヶ月ビザの概要と新設の背景
「4ヶ月ビザ」は正式には在留資格「経営・管理」のうち、在留期間が“4ヶ月”で許可される特例的なビザです。
従来は経営管理ビザの在留期間は1年・3年・5年のいずれかでしたが、起業準備段階でこれらを満たすのが難しいケースも多く、ビザ取得のハードルが高いという声が多く寄せられていました。
そこで制度の柔軟化を目的として、2020年代に入ってから「4ヶ月」の短期ビザが選択肢として導入され、全国に適用が広がっています。
主な対象者
- 日本国内に拠点をまだ持っていない海外在住の外国人
- 起業準備を目的として一時的に日本に滞在したい人
- まず短期間で様子を見ながら本格的にビジネスを展開したい人
つまり、「まず日本に入って準備したい」という実務的なニーズに応える制度なのです。
4ヶ月ビザのメリットと活用シーン
4ヶ月ビザの最大のメリットは、起業前でも最低限の準備さえ整っていれば、比較的短期間でビザを取得できる点にあります。
主なメリット
- 事業所契約や登記が完了していなくても、入国後に対応できる柔軟性
- 申請に必要な書類がやや簡略化されている(例:売上実績の証明などが不要)
- 起業準備・市場調査・パートナー探しの期間として活用可能
具体的な活用シーン
- 海外で法人設立準備中だが、現地確認や契約手続きのために来日したい
- ビジネスパートナーや投資家との打ち合わせのため、一時的に日本で滞在・登記を完了させたい
- 日本の自治体が提供するスタートアップビザ制度(特区制度)との併用で段階的に在留期間を延長していきたい
このように、4ヶ月ビザは「すぐにビジネスを開始できないが、準備を進めたい」というケースに非常に有効です。
更新できないケースと注意点
便利な4ヶ月ビザですが、無条件での更新は認められていない点に注意が必要です。
更新できない主なケース
- 起業準備が思うように進まず、明確な実績や事業の実体を証明できない場合
- 日本での住居・事業所が未確保のまま
- 必要な資本金の払込みが未完了、または帳簿等で確認が取れない
つまり、4ヶ月間の滞在中に、以下を確実に整える必要があります:
- 法人登記の完了(登記事項証明書の取得)
- オフィス賃貸契約と設備の設置(事業所の写真提出など)
- 500万円以上の資本金払込または2人以上の雇用(どちらか)
- 事業計画書や契約書などの準備
4ヶ月という短期間ではあるものの、「次のステップ(1年ビザ)につなげるための準備期間」と考え、入念なスケジュール管理が求められます。
◆4ヶ月ビザは起業前の足がかりとして活用すべき制度
経営管理ビザの申請において、「まだ事務所も登記も準備できていない…」という方にとって、4ヶ月ビザは非常に現実的なスタート手段です。
制度の柔軟性を活かしつつ、ビザ更新や長期滞在へのステップアップに備えることが成功の鍵となります。
要点を整理すると
- 4ヶ月ビザは、起業前の準備期間を支援する制度
- 日本での事業所開設や登記が入国後でも可能
- 期間中に次の在留資格(1年など)へスムーズに移行する計画が必要
- 更新は保証されないため、準備不足は致命的リスクとなる
短期とはいえ、適切に使いこなせば、日本でのビジネス成功の第一歩を切り開くツールとなるはずです。
慎重かつ戦略的にこの制度を活用して、確実な在留資格取得につなげましょう。
経営管理ビザの審査ポイントと不許可事例
経営管理ビザの申請には、多くの時間と労力がかかります。
しかし、書類を提出しても「不許可」となるケースは少なくありません。
その理由の多くは、制度への理解不足や、入管の審査ポイントを押さえられていないことにあります。
入管は、単に書類が揃っているかだけでなく、「この外国人が本当に日本で事業を継続・運営できるか?」という視点から、実態の信頼性や継続性を厳しく見ています。
ここでは、過去によく見られた不許可事例を3つの観点から分析し、審査で見られるポイントと回避方法を具体的にご紹介します。
書類の不備・事業内容の不明確さ
不許可の最も多い原因の一つが、提出書類の不備や内容の曖昧さです。
たとえ会社を設立していても、事業内容がぼんやりしている・整合性がない・数字に説得力がないと判断されれば、審査ではマイナス評価となります。
具体的な不備例
- 事業計画書に「何を売るのか」「誰に売るのか」「収益の仕組み」が書かれていない
- 定款に記載された目的と事業計画書の内容が食い違っている
- 計画上の数値(売上・利益)が根拠なく、過大または非現実的
- 提出した登記簿、通帳、契約書の内容に矛盾がある
対策
事業計画書は「形式」ではなく「実行可能性」が伝わるように構成しましょう。
見積書・市場調査データ・契約書などの裏付け資料を添えることで信頼性が大きく向上します。
適正性・継続性が疑問視されるケース
経営管理ビザは、「起業できるかどうか」だけではなく、「事業が継続できるかどうか」も審査の重要なポイントです。
入管は、会社が設立されただけではなく、その会社が“実際に”活動し、継続して運営されると見込まれるかを判断材料とします。
不許可に繋がる具体例
- 事業所の実体がない(レンタルスペースや名義貸し)
- オフィスの写真が虚偽または簡素すぎて信ぴょう性がない
- 日本での取引先・契約先がまったく存在しない
- 開業資金が少額で、初期運転資金が不足していると判断される
- 法人口座に入金されていない、または払込証明の提出がない
対策
実際のオフィス写真、契約書、通帳のコピーなどを揃えて“実在性”を明確にしましょう。
「どのように売上を立てて、誰と取引を始めるのか」という現実的な事業計画の裏付けが不可欠です。
申請者の経歴・経験が不足している場合
会社がしっかりしていても、申請者本人が経営を担う適性に欠けていると判断されれば、ビザは許可されません。
これは特に、経営者ではなく「管理者」として申請する場合に重要視されます。
不許可事例の傾向
- 経営や管理に関する職務経験がほとんどない
- 管理職だったという証明ができない(肩書きだけで実態なし)
- 経歴書に記載した情報と在職証明などが一致していない
- ビジネスに関する知識・経験が浅く、日本での事業運営に不安があると見られる
対策
3年以上の経営・管理経験がある場合は、職務経歴書・在職証明・推薦状などで明確に立証することが重要です。
過去に経営した事業の実績(売上・規模・役割)などもアピール材料になります。
◆経営管理ビザの「不許可」を防ぐには、準備と整合性がカギ
経営管理ビザの審査は、単なる書類チェックではなく、「人」「事業」「環境」が本当に整っているかを入管が総合的に判断します。
許可されるためには、「この申請者は信頼できるか?」「この会社は続くか?」という視点で対策を講じる必要があります。
特に注意すべきポイント
- 書類の記載内容・証拠資料に不整合がないか
- 事業のリアリティと実行力を示す根拠があるか
- 自分自身の経歴や能力を客観的に証明できるか
「書類は出したけど、何が悪かったかわからない」という不許可を防ぐためにも、申請前の段階で制度と審査基準を正しく理解することが何よりも重要です。
迷った場合は、専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えることができます。
準備の質が、結果を決める、それが経営管理ビザの本質です。
複数名の外国人による共同経営の場合
「友人やパートナーと一緒に会社を立ち上げ、日本でビジネスを始めたい」
このように、複数の外国人で共同経営を行うケースは近年増加傾向にあります。
しかし経営管理ビザの申請においては、1人での起業よりも審査が複雑になりやすいという点に注意が必要です。
共同出資・共同代表といった形を取る場合、それぞれの役割や出資割合、責任の所在などが明確でなければ、ビザが不許可となるリスクも高まります。
ここでは、複数名の外国人が共同で経営管理ビザを取得する場合に求められる視点と、審査を通過するための具体的なポイントを整理して解説します。
共同出資の比率と責任の所在
経営管理ビザを申請する場合、「誰が実質的に経営を行っているのか」が入管にとって非常に重要です。
たとえ2人以上で出資していたとしても、出資比率が極端に偏っていたり、実際の経営に関わっていない場合は、ビザが下りない可能性が高くなります。
審査上の主なポイント
- 申請者本人が出資の50%以上を保有しているか(もしくは過半数に近い割合)
- 会社の代表取締役など、意思決定権を持つ立場にあるか
- 出資金が本当に払込まれているか(通帳・資金移動証明などで確認)
出資だけして役員にもならず、実務に関与しない場合は、「投資家」とみなされビザ要件を満たしません。
そのため、責任ある立場にあること、事業運営に深く関与していることを明確に示す必要があります。
各代表者の役割分担の明確化
複数人で会社を運営する場合、入管は「それぞれが経営者・管理者として何をしているか」を個別に審査します。
そのため、「全員が代表です」「全員が社長です」という曖昧な説明ではなく、業務分担を具体的に提示することが不可欠です。
記載・提示すべき内容
- 誰がどの部署や機能(営業、財務、マーケティング、法務など)を統括するのか
- 日本語対応、行政手続き、取引先対応など、実際の行動レベルの役割
- 社内における意思決定の流れ(共同での合議制か、分担制か)
- 経営会議や定例ミーティングなどの運営実態を示す資料(議事録・マニュアル)
さらに、就業規則や社内組織図、代表者間の職務分掌表などを添付できると信頼性が増します。
ビザ申請における個別審査のポイント
経営管理ビザは、会社単位で審査されるのではなく、申請者ごとに個別に審査される制度です。
たとえ同じ会社の共同代表者であっても、経歴や役割の違いによって片方だけ不許可となることもあります。
個別審査で見られる主な項目
- 過去の職務経歴・管理経験の有無(3年以上の実績が求められるケースあり)
- 日本語または英語での業務遂行能力(書類作成や交渉の実務能力)
- 会社設立後の実務実績やコミットメント(契約交渉・営業活動の記録など)
- 単なる名義貸し・形式的代表と見なされないかどうか
1人でもビザ要件を満たしていないと判断されれば、その人物の申請は不許可になる可能性が高くなります。
したがって、申請書や事業計画書の中で「この人物がなぜ必要か」を個別に論理的に記載することが求められます。
◆共同経営での申請には「分担の明確化」と「個別の説得力」が必要
外国人同士で共同経営を行うことは可能ですが、経営管理ビザの審査においては「誰が何を担うのか」「本当に経営に関わっているのか」が極めて重視されます。
押さえておきたい3つの重要ポイント
- 出資割合や役職によって責任の所在を明確にすること
- 共同経営者それぞれの役割分担と業務内容を文書で具体的に示すこと
- 個別審査に耐えられる職務経歴や活動証明を準備すること
共同経営は魅力的なビジネス形態ですが、ビザ取得の観点では「曖昧なまま複数人でやること」は最大のリスクになります。
信頼される経営体制を明確に構築し、各自が責任をもって申請に臨むことが、成功への近道です。
業種別|経営管理ビザ取得のポイント
経営管理ビザを取得するためには、会社の実態や事業の継続性を証明することが不可欠です。
しかしこの「継続性」や「信頼性」は、業種によって判断基準が微妙に異なります。
たとえば飲食店とITスタートアップでは、求められる資料や審査の焦点がまったく違います。
また、サービス業や小売業では事業の透明性が重視され、事業内容が曖昧な場合は“グレーゾーン”として不許可になるケースもあります。
ここでは、経営管理ビザを申請する際に業種別に押さえるべきポイントと、審査で重視される傾向を詳しく解説します。
飲食業での申請における注意点
飲食業で経営管理ビザを取得する場合、「営業許可」や「物理的な店舗の存在」が大きな審査ポイントになります。
入管が重視する点
- 飲食店営業許可証の取得(保健所)
- 店舗の実在証明(内外装写真、賃貸契約書、厨房設備など)
- メニューや価格表の提示
- 事業開始後のオペレーション体制(スタッフの雇用や役割)
飲食業は開業までの準備工程が多いため、「許可前に申請したい」という相談が多いですが、営業許可なしでの申請は不許可の可能性が高いです。
また、アルコール提供の有無や深夜営業の計画がある場合、風俗営業との関連もチェック対象となります。
IT・技術系スタートアップの場合
IT関連のスタートアップは、物理的な設備要件が緩やかでも申請が通る可能性があります。
ただしその分、事業の独自性や収益性の説明責任が重くなる傾向にあります。
審査で重視されるポイント
- 事業内容の明確化(システム開発、SaaS、Webサービス等)
- 顧客ターゲットや市場規模の論理的説明
- 将来の資金調達計画(エンジェル投資家、J-KISS型等)
- 技術力の裏付け(自社開発実績や技術者の経歴)
特に、資本金が少なく、少人数で立ち上げるケースが多いため、具体的な契約予定先や、テストローンチ済みの実績など、事業が動いていることを証明する資料が重要です。
サービス業・小売業の審査傾向
サービス業(美容・リラクゼーション・通訳など)や小売業(アパレル、雑貨など)の申請では、顧客との接点や売上見込みの信頼性が問われます。
主な審査ポイント
- 店舗・オフィスの立地と事業規模のバランス
- 商品またはサービスの価格設定と原価構造
- 初期在庫や仕入れ先の契約状況
- 顧客ターゲット層と集客戦略(SNS、広告など)
特にサービス業では、「労働ビザでできること」との線引きがあいまいなケースもあり、個人技術に依存する事業は「自営業」と見なされやすく審査が厳しくなる場合があります。
事業内容がグレーなケースでの対応
入管では、法律上は違法でなくても「実態がつかみにくい事業」は審査上グレーゾーンとされ、不許可になる可能性が高まります。
注意が必要な業種の例
- コンサルタント業(内容が不明確な場合)
- 海外送金・貿易代行業(マネロンリスク)
- 投資運用系ビジネス(収益構造が不透明)
- 高額な会員制サービス(信頼性を立証しづらい)
対策としては以下のような資料の準備が有効です。
- 契約書や業務内容が明記された資料
- ビジネスモデルの説明図や収益構造図
- 顧客事例や運用実績の一部提示
また、「目的が曖昧な法人」や「ペーパーカンパニー」に見られることがないよう、細かく文書で説明を加えることが重要です。
◆業種によって変わる“審査の視点”を見極める
経営管理ビザの取得では、単に「会社を作ったからOK」というものではなく、事業の業種ごとに、入管が注目するポイントやリスクの見方が異なります。
業種別の要点を整理すると
- 飲食業は「営業許可」「店舗の物理的存在」が審査の柱
- IT系は「技術力」「成長性」「資金計画」の明確さが重要
- サービス業・小売業は「顧客との接点」「収益モデル」のリアリティが鍵
- グレー業種は「実態証明」と「透明性ある事業説明」で信頼を得ることが必須
業種ごとの特性を踏まえて申請を行えば、入管の信頼を得やすくなり、経営管理ビザの許可率も大きく向上します。
不安な場合は、業種経験に強い行政書士や専門家の力を借りるのも有効です。
経営管理ビザの更新と在留期間
経営管理ビザを取得した後、多くの方が気になるのが「在留期間の長さ」と「更新のハードル」です。
特に初回は「1年」の在留期間が付与されるケースが多く、次回の更新に不安を感じる方も少なくありません。
実際、更新審査では事業の継続性・安定性・実績がしっかり確認されるため、「会社はあるけど動いていない」「売上がゼロ」という状態では許可されない可能性があります。
このセクションでは、経営管理ビザの在留期間の基本ルール、更新に必要な書類と条件、そして審査で見られる具体的なチェックポイントを解説します。
在留期間は原則1年からスタート
経営管理ビザの在留期間は、原則として初回は「1年」からのスタートです。
これは入管が、「本当にその事業が継続可能かどうか」を1年間様子を見て判断するための期間とされています。
在留期間の基本区分
- 初回取得 – 1年(短い場合は4ヶ月)
- 更新時 – 1年/3年/5年のいずれか(実績により判断)
一定の実績を積み、継続的に事業を営んでいると判断されれば、次回更新で「3年」や「5年」へ延長されることも可能です。
つまり、初回は試験期間、更新は実績評価というイメージで捉えるとよいでしょう。
継続更新に必要な書類と実績の提示
更新時には、単なる形式的な申請ではなく、「この1年間でどれだけ事業を運営してきたか」という内容が問われます。
そのため、事業実態を証明する資料を揃えることが重要です。
主な提出書類
- 損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)などの決算書類
- 納税証明書(法人税、消費税、住民税など)
- オフィスの継続使用を証明する賃貸契約書や更新契約
- 顧客との契約書、請求書、売上報告など営業実績がわかるもの
- 雇用がある場合は、従業員の給与台帳・社会保険加入証明など
さらに、事業計画書のアップデート版を添付することで、今後の成長性や雇用創出の見込みなども示せます。
特に、売上がゼロの場合は、収益化の道筋を具体的に示す必要があります。
更新審査におけるチェックポイント
入管の更新審査では、単に会社が存続しているかではなく、以下のような視点で“事業の健全性”が審査されます。
主なチェック項目
- 実際に事業活動をしているか(書類だけでなく、動きがあるか)
- オフィスや設備は継続的に稼働しているか
- 経営者が日本に滞在して、日々の業務に関わっているか
- 赤字が続いていないか、資金繰りに問題がないか
- 社会保険や税金を滞納していないか
特に注意が必要なのは、会社だけが存在し、実質的な稼働がないケースです。
「名義上は経営者だが、実際はほぼ海外にいる」「売上が全く立っていない」という場合、更新は難しくなります。
正確な会計処理・契約の整備・日々の営業活動の記録など、普段から準備しておくことが成功のカギです。
◆経営管理ビザの更新は「実績と信頼」の積み重ねがすべて
経営管理ビザは取得よりも更新のほうが難しいと言われることもあります。
なぜなら、更新審査では「書類の整合性」だけでなく、経営の実績と継続性が客観的に証明できるかどうかが問われるからです。
ポイントの整理
- 初回の在留期間は1年が基本。実績次第で長期更新も可能
- 決算書・契約書・納税証明などの「動いている証拠」が必要
- 収益・雇用・納税などをトータルに評価される
- 不安がある場合は、行政書士や専門家に更新準備を相談するのも有効
更新を見据えた経営と記録を、1年目から積み上げておくことが、次のステップへの道を開きます。
経営管理ビザと永住権・他の在留資格との関係
日本でビジネスを続けていくうえで、経営管理ビザをどう活用し、将来的にどの在留資格を目指すかは重要な検討ポイントです。
特に、「いずれは永住権を取得して、ビザ更新の手間をなくしたい」「別の在留資格に変更できるのか」といった疑問は、長期的に日本に滞在する外国人にとって非常に現実的な関心事です。
このセクションでは、経営管理ビザから永住権への道筋、他の就労系ビザとの違い、そして経営者としてのキャリア戦略をわかりやすく解説します。
経営管理ビザから永住申請は可能か?
結論から言えば、経営管理ビザからの永住申請は可能です。
ただし、一般の就労ビザと同様に、永住許可を得るためには一定の在留実績・納税実績・生活安定性が必要となります。
永住権申請に必要な主な条件(原則)
- 経営管理ビザなどの「就労系ビザ」で10年以上日本に滞在し、うち5年以上は継続して就労していること
- 安定した収入があり、納税・年金・保険料をきちんと支払っていること
- 素行が良好であること(犯罪歴・交通違反などに注意)
なお、高度専門職の制度を併用してポイントを満たせば、最短1~3年で永住申請が可能になるケースもあります。
経営管理ビザを基盤に、安定した法人経営を続けて信頼性を積み上げていくことが、永住申請への最短ルートとなります。
技能ビザ・技術・人文知識・国際業務ビザとの違い
経営管理ビザは、他の就労系ビザと似ているようで、根本的な位置づけが異なります。
ビザの種類 | 主な対象者 | 活動内容 | 経営可否 | 雇用の有無 |
技能ビザ | 調理師・職人系など | 特定技能を活かした労働 | ❌ | 雇用される側 |
技術・人文知識・国際業務ビザ | IT・通訳・営業など | 知識系業務 | ❌ | 雇用される側 |
経営管理ビザ | 経営者・管理者 | 会社設立・経営・管理 | ✅ | 雇用主になることが前提 |
最大の違いは「雇用されるか、雇用するか」という視点です。
経営管理ビザは自らが事業を創り、雇用を生む側に回る在留資格であり、他の就労ビザとは求められる責任や審査基準がまったく異なります。
そのため、単なる転職や業種変更ではなく、「ビザの根拠自体が変わる」という理解が必要です。
在留資格「経営」としてのキャリア戦略
経営管理ビザは、「とりあえず会社を作る」という短期的な発想ではなく、長期的に日本でのビジネス基盤を築くことを目的とした在留資格です。
このビザを活かして長期的に滞在を目指すには、次のようなキャリア設計が効果的です。
キャリア戦略の具体例
- 起業初期 – 4ヶ月~1年の短期ビザで事業を立ち上げ、収益と信用を積む
- 成長期 – ビザ更新で3年や5年の長期滞在を目指す/スタッフを雇用・納税実績を構築
- 定着期 – 安定経営+社会的信用を背景に永住権を申請/もしくは高度人材ポイント制に移行
また、ビザ更新や永住申請で安定性を示すには「法人税の納税状況」「雇用実績」「社会保険加入」などの実務的証拠が重要です。
「経営管理ビザは取れたが経営が止まっている」という状態は、更新・永住いずれにも不利になります。
◆経営管理ビザは長期戦略の要。永住やキャリア設計と一体で考える
経営管理ビザは、日本で起業するためのスタート地点であると同時に、長期滞在を目指すための足がかりでもあります。
本記事での要点
- 経営管理ビザから永住権の取得は可能(安定経営・納税・素行がカギ)
- 他の就労ビザとは立場が異なり、経営責任と自由度の高さが特徴
- 起業・成長・定着とステップを踏んでキャリア戦略を描くことが大切
単なる在留資格の取得で終わるのではなく、ビジネスの安定と個人の在留基盤を両輪で築くことが、今後の成功を左右します。
将来的に永住や日本での定着を視野に入れる方は、初期段階から計画的にステップを設計していくことが何より重要です。
経営管理ビザの必要書類一覧
経営管理ビザの申請において、書類の準備は最重要工程です。
どれだけ良い事業計画があっても、提出書類が不足していたり不備があると、審査はストップし、不許可や再提出のリスクが高まります。
また、経営管理ビザは「会社設立」「事業の実態」「申請者本人の信頼性」の3要素を評価されるため、必要書類は多岐にわたります。
加えて、申請人がどの「提出書類カテゴリー」に属するかによって、必要な資料にも差が出てきます。
このセクションでは、申請時に必要な書類を「基本書類」「補足資料」「カテゴリー別の違い」に分けてわかりやすく整理してご紹介します。
申請書・事業計画書・登記簿謄本など基本書類
まず、経営管理ビザ申請における基礎資料として必須の書類から確認しておきましょう。
これらはどの申請者でも共通して求められる書類です。
主な基本書類
- 在留資格認定証明書交付申請書(または在留資格変更許可申請書)
- 事業計画書(収支計画・運営体制・市場分析などを含む)
- 法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 定款の写し
- 会社印・印鑑証明書(法人)
- 会社代表者の履歴書(職務経歴・学歴)
事業計画書は、「今後のビジネスの信頼性」を示すための最重要資料です。
抽象的なアイデアではなく、契約予定先・販売戦略・数値シミュレーションを明記することが審査通過のカギとなります。
資本金証明・賃貸契約書・写真など補足書類
ビジネスの実体や信頼性を補強するため、「補足資料」も多数求められます。
これらは単体では評価されにくくとも、事業の実在性・継続性・経営の適格性を裏付ける重要な書類です。
主な補足資料
- 資本金の払込証明(通帳のコピー・送金記録など)
- 事務所・店舗の賃貸借契約書(契約期間・用途明記)
- 事業所内外の写真(机・設備・看板・受付など)
- 取引先との契約書や見積書
- 名刺・チラシ・Webサイトなど営業活動の実態を示す資料
- 代表者個人のパスポート・在留カード(変更申請時)
これらの書類は、事業所が単なる名義貸しではなく、現実に事業が稼働していることを証明するためのものです。
とくにオフィスの写真や賃貸契約の用途が「事務所」になっているかどうかは、審査の要点となります。
カテゴリー別(1〜4)の必要資料の違い
経営管理ビザの申請では、申請者の属性に応じて提出資料が4つの「申請者カテゴリー」に分類されます。
自分がどのカテゴリに該当するかによって、税証明や決算書など追加書類の内容が異なります。
カテゴリー | 該当者例 | 主な追加資料 |
カテゴリー1 | 上場企業など | 所得証明不要(会社の証明で可) |
カテゴリー2 | 日本国内の未上場企業(安定実績あり) | 決算書、納税証明など |
カテゴリー3 | 新設法人、赤字決算法人 | 直近の収支報告・資金計画の詳細・納税証明書(ゼロ可) |
カテゴリー4 | 申請人本人が会社設立者であり、代表を務める場合 | すべての証明資料に加え、本人の資力証明も必要 |
とくにカテゴリー3・4の申請は書類の質と整合性が問われるため、補足説明書の添付や行政書士のサポートが有効です。
◆書類の正確性と整合性が、審査の合否を分ける
経営管理ビザの申請では、単に必要書類を揃えるだけでなく、それぞれの資料が“相互に矛盾していないか”“実態を裏付けているか”が重要な評価ポイントになります。
おさえておくべき要点
- 基本書類(申請書・登記・定款)は制度的な土台を証明するための資料
- 補足資料(写真・契約書・資本金証明など)は事業の現実性を支える証拠
- カテゴリーごとの要件に応じた追加書類の理解と準備が必要
書類の「数」ではなく「中身」で評価されるビザ、それが経営管理ビザです。
制度への理解と実態に即した資料の組み立てが、申請成功の鍵となります。
経営管理ビザで成功するための事業計画書の書き方
経営管理ビザを申請する際、最も重要な提出書類の一つが「事業計画書」です。
この計画書は、単なるビジネスのアイデアではなく、「本当に日本で安定した経営ができるか」を審査官に伝えるための“審査用プレゼン資料”**です。
しかし、「テンプレートをそのまま使って落ちた」「数字の根拠が曖昧で信頼されなかった」というケースも多く、内容次第で審査結果が大きく分かれます。
このセクションでは、入管に伝わる事業計画書の構成方法と、数値的な裏付けの出し方、さらに外国人向けビジネスを展開する際の注意点について解説します。
入管に伝わる構成と論理展開
事業計画書は、審査官が読み慣れている形式に沿って論理的に構成されていることが大前提です。
曖昧な表現や順序がバラバラな書き方では、いくら内容がよくても伝わりません。
推奨される基本構成
- 事業の目的(なぜこの事業を行うのか)
- 商品・サービスの概要(どんな価値を誰に届けるのか)
- 市場分析・競合状況(需要はあるのか、差別化ポイントは何か)
- 営業・販売戦略(集客・販売方法、広告媒体など)
- 収支計画(売上・コスト・利益の見込み)
- 組織体制・人員計画(役割分担や人件費)
- 今後の展望(3年間の事業拡大計画)
審査官は経営の専門家ではないため、専門用語の多用は避け、わかりやすく、かつ論理の一貫性があることが評価につながります。
数値と実現性を両立させるポイント
入管が特に注目するのは、「この計画は実現可能か?継続できるか?」という点です。
その判断材料となるのが、売上・利益・支出などの数値部分です。
よくあるNG例
- 初年度から数千万円の売上を想定(根拠がない)
- 経費の内訳がなく、人件費・家賃などが抜けている
- 数字が大きくても、裏付け資料(見積・契約予定)がない
数値面での信頼性を高めるには
- 月別・年別の売上/費用/利益の推移を記載
- 商品単価・客単価・客数などの「掛け算」でロジックを示す
- 賃貸契約書や仕入れ先見積書など、数値の裏づけ資料を添付する
計画は夢ではなく、現実の証拠で構成することが審査突破のポイントです。
外国人向けのビジネスで注意すべき点
外国人起業者の多くが、自国の言語や文化を活かしたビジネスを計画します。
たとえば、母国料理レストランや海外向け物販などです。
このようなビジネスは確かにニーズがありますが、入管審査では以下の点に注意が必要です。
審査でリスクになりやすいポイント
- 顧客ターゲットが外国人限定で、市場規模が小さすぎる
- 法律上グレーな領域(海外送金、マッチング、通訳紹介など)に近い
- サービス内容が曖昧で、労働ビザや技能実習との線引きがあいまい
対策としては
- ターゲット層を外国人に絞る場合でも、日本人市場との接点や今後の展開を明示する
- 活動内容が合法かつ公共性があることを事業計画で明示する
- 業務内容を契約書・規約・役務説明などの書類で裏づける
外国人向けビジネスは個性として評価される反面、「実態が見えにくい事業」にならないよう、より丁寧な説明が求められます。
◆経営管理ビザの事業計画書は“構成・数値・証拠”がすべて
経営管理ビザの審査において、事業計画書は単なるビジネスプランではなく、在留資格の可否を左右する根拠資料です。
審査官にとって、事業の魅力よりも「信頼できるか」「継続できるか」が最大の関心事です。
事業計画書の成功のコツまとめ
- 論理的な構成と見やすいレイアウトで「一目で伝わる」ことが大事
- 収支計画や市場分析は、数値と根拠をセットで提示
- 外国人向けビジネスの場合、曖昧さを排除し、透明性を意識する
しっかり作り込まれた事業計画書は、ビザ審査だけでなく、実際の経営においても事業の指針となる重要な資産です。
不安がある方は、行政書士や専門家にチェックを依頼し、万全の体制で審査に臨むことをおすすめします。
まとめ|経営管理ビザは「準備」と「実行力」がすべて
ここまで、経営管理ビザの取得に関わる要件、書類、審査の視点、そして注意点に至るまで、包括的に解説してきました。
そのなかで見えてきたのは、経営管理ビザが「会社を作ればもらえるビザ」ではなく、“実態と実行力”が問われる高度な在留資格であるという事実です。
このセクションでは、これまでの内容を踏まえて、経営管理ビザ取得の本質と、成功のために押さえておくべき3つの視点を再確認しましょう。
要件を満たすだけでなく、運用の継続が肝心
経営管理ビザの取得では、「会社を登記し、必要書類を揃えること」自体はあくまでスタートラインにすぎません。
審査では、さらに一歩進んで「本当に事業を運営していく力があるか」が評価されます。
押さえるべき運用面の視点
- 資本金の使途や事業費の実際の動き(運転資金や仕入れ等)
- 実際の営業・販売活動(Web、SNS、対面営業など)の記録
- 定期的な収益の発生や、税・社会保険などの納付状況
つまり、要件を“形式的に満たす”だけでは不十分で、継続的に「運用されている」という証拠を積み重ねることが、更新や永住申請に向けた布石になります。
4ヶ月ビザや永住申請など、次のステップも見据える
起業準備中や、まだ本格始動前の状態であっても、短期の「4ヶ月ビザ」からスタートする選択肢も存在します。
そして、事業の継続・拡大によっては、3年・5年ビザへの更新、さらには永住権の申請へとつながる道もあります。
長期ステップを見据えた視点
- 「4ヶ月ビザ」→「1年ビザ」→「3年ビザ」→「永住」への段階的ステップアップ
- 永住申請のためには、納税実績・素行良好・安定収入が必須
- 高度専門職ポイント制などの活用で、早期永住の可能性も
申請は単発で終わりではなく、「ビザ取得後の計画と行動」が次の在留資格へとつながることを意識することが大切です。
専門家との連携で申請成功率を高めることができる
経営管理ビザは、他の就労系ビザと比べて、審査の自由度が高く、その分主観的に判断されやすいビザです。
そのため、書類の整合性・説得力・構成力をいかに高められるかが成否を分けます。
専門家に相談するメリット
- 入管の審査傾向を把握したうえで、戦略的な事業計画書の作成が可能
- 記載ミスや提出漏れといった初歩的な不備を防止できる
- 特定業種(飲食、IT、貿易など)に詳しい行政書士による個別最適化も期待できる
特に初めて申請する方、過去に不許可経験がある方、4ヶ月ビザから本格移行したい方は、早い段階から専門家に相談することで成功率が大きく上がります。
◆経営管理ビザは“紙の審査”ではなく、“実務力の証明”
経営管理ビザは、「形だけ整えた会社」で簡単に通るほど甘くはありません。
しかし、逆に言えば、丁寧な準備と実行を積み重ねることで、長期滞在・永住申請への道が開ける在留資格でもあります。
ポイントの総復習
- 形式よりも実態が重視される(事業の動き・資金の流れ・営業活動)
- 事業計画・補足書類の完成度と整合性が審査突破の鍵
- 初回取得後の更新・永住も視野に入れて長期計画を立てる
経営管理ビザは「一発勝負の許可証」ではなく、日本でのキャリアや人生を築くためのスタート地点です。
このチャンスを活かすためにも、確実な準備と行動を今日から始めていきましょう。
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