
05/16 (金)更新
「入管法改正って何が変わるの?」をわかりやすく解説!失敗しない外国人採用の第一歩
外国人労働者の受け入れを検討している企業や人事担当者にとって、「入管法改正」という言葉は避けて通れないものです。
近年は2019年の特定技能創設、2023年・2024年の制度改正など、制度が大きく動いており、
「何がどう変わったのか?」
「自社の採用にどう影響するのか?」
と悩む担当者も少なくありません。
この記事では、最新の入管法改正の概要や過去の改正の流れ、新制度「育成就労」や「特定技能」のポイントまで、企業が押さえるべき実務的な視点からわかりやすく解説します。
制度の仕組みを正しく理解し、採用トラブルや不法就労リスクを未然に防ぐための第一歩として、ぜひ参考にしてください。
入管法とは?
日本で外国人を採用・雇用する際に避けて通れないのが「入管法(出入国管理及び難民認定法)」の理解です。
この法律は、外国人の入国から滞在、そして就労に至るまでを包括的に規定しており、企業や教育機関など、外国人と関わるすべての立場にとって重要な指針となります。
しかし、その仕組みは複雑で、度重なる改正によって内容も変化しています。
ここではまず、入管法の基本的な概要と在留資格との関係、そしてなぜ頻繁に法改正が行われているのかをわかりやすく解説します。
出入国管理及び難民認定法の概要
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、日本に入国・滞在する外国人に関するルールを定めた法律です。
具体的には、外国人がどのような理由で日本に入国できるのか、滞在期間はどれくらいか、どんな活動が許可されるのかなどを規定しています。
また、難民の認定制度や、不法滞在者への対応もこの法律の管轄です。
日本で暮らす外国人にとって、この法律は在留資格の基盤となる非常に重要なものであり、企業が外国人を雇用する際にも必ず遵守すべきルールが含まれています。
在留資格制度との関係
入管法の大きな柱の一つが「在留資格制度」です。
外国人は「留学」「技能実習」「特定技能」など、目的に応じた在留資格を取得しなければ日本に滞在することはできません。
それぞれの在留資格には活動内容や滞在可能期間が定められており、これに違反すると法的な罰則の対象になります。
企業側も、採用する外国人の在留資格が「就労可能なもの」かを正しく確認しなければ、不法就労助長罪に問われるリスクがあります。
つまり、在留資格の管理=入管法の理解が欠かせないのです。
なぜ改正が繰り返されているのか?
入管法は近年、たびたび改正されています。
その理由の一つが、日本の労働力不足と外国人雇用の現実とのギャップです。
少子高齢化によって人手不足が深刻化する中で、外国人労働者の受け入れを拡大しなければならない現実と、制度の整備が追いつかない状況が続いています。
また、技能実習制度の不透明さや人権問題、難民認定の厳しさなど、国内外から制度の見直しを求める声が高まっており、それに対応する形で法改正が進められています。
改正は、より実態に即した外国人受け入れ制度の構築を目指した動きなのです。
管法は外国人雇用の土台となる法律
入管法は、外国人の出入国・滞在・就労に関わるすべての基本を定めた重要な法律です。
企業が外国人を採用・受け入れる際には、この法律の構造と在留資格制度を正しく理解することが、リスク回避と円滑な雇用の第一歩になります。
また、時代の変化に応じて制度はアップデートされており、常に最新の改正内容を把握する意識も欠かせません。
入管法改正の歴史と主な改正内容
入管法(出入国管理及び難民認定法)は、外国人の受け入れと在留に関する基本的なルールを定める法律ですが、その内容は時代とともに大きく変化してきました。
特に2019年以降、急速に進む少子高齢化や人手不足を背景に、外国人労働者の受け入れ体制を強化するため、複数の大きな改正が行われています。
ここでは、直近の主な改正ポイントとその背景、さらに各改正がもたらした影響や課題を解説します。
2019年の改正と「特定技能」創設
2019年4月、入管法の大幅な改正により新たな在留資格「特定技能」が創設されました。
これは、従来の技能実習制度では受け入れが難しかった「人手不足の業種」に外国人が就労できるようにする制度です。
特定技能には「1号(単純労働・5年まで)」「2号(熟練業務・更新可)」の2種類があり、飲食料品製造業や介護、建設業など14分野が対象となりました。
この改正は、日本が本格的に外国人労働力を必要としていることを示す転換点でした。
特定技能についててはコチラ▶ 特定技能とは?制度の基本から申請条件・注意点までわかりやすく解説
2021年の改正案取り下げとその背景
2021年にはさらなる改正案が提出されましたが、多くの批判を受けて国会での審議が停止され、結果的に取り下げられました。
問題視されたのは、難民申請中でも3回目以降は強制送還を可能とするなど、人権保護の観点から懸念がある内容が多かったことです。
この件は国内外から注目を集め、入管行政の在り方そのものが問われるきっかけとなりました。
2023年の改正内容と懸念点
2023年6月には、送還忌避の問題や長期収容の是正を目的とした改正が成立しました。
主なポイントは以下の通りです。
- 難民申請が3回目以降の場合、送還を可能とする(例外あり)
- 収容に代わる監理措置(いわゆる仮放免中の外国人の生活管理)を導入
- 自発的帰国を促進する制度の創設
しかしこの改正にも、難民認定の透明性や手続きの適正性に対する批判が続出し、制度運用の実効性と人権保護のバランスが依然として課題です。
2024年の改正と「育成就労」制度の新設
2024年には、長年の課題であった技能実習制度に代わる新制度「育成就労」が創設されました。
この制度は、人材育成と労働力確保を両立することを目的としており、従来の「実習」から「就労」への転換を明確に打ち出しています。
育成就労では、転籍(職場変更)が原則可能とされ、労働者の権利保護が大きく強化されました。
また、制度終了後には「特定技能」への移行も想定されており、受け入れ企業にも中長期的な対応が求められます。
改正の流れから読み取れる国の方針とは?
ここ数年の入管法改正を振り返ると、日本が外国人労働者を本格的に受け入れる国へと舵を切りつつあることがわかります。
一方で、制度の適正な運用と人権保護、そして企業側の受け入れ体制の整備は依然として重要な課題です。
過去の改正の経緯を理解することで、今後の制度変更に柔軟に対応できる力を養いましょう。
改正によって変わった点とは?
近年の入管法改正では、「外国人の受け入れ」を拡大する一方で、「不法滞在や制度悪用」への対応も強化されています。
とくに2023年~2024年にかけての改正では、難民申請制度の運用や不法就労対策、永住許可の見直しといった重要な変更がありました。
本セクションでは、それらの制度改正の核心ポイントをわかりやすく解説します。
難民認定制度の見直しと送還忌避問題への対応
これまで日本では、難民認定を申請中であれば送還が猶予される制度がありましたが、一部で制度の悪用が指摘されていました。
2023年の改正では、3回目以降の申請者については、一定の条件下で送還が可能となりました。
ただしこれは、「真に保護が必要な人」を除外しないよう慎重な運用が前提とされています。
この見直しは、長期間の収容を回避しつつ、制度の適正化を図る狙いがあります。
不法就労助長罪の厳罰化
外国人の不法就労をあえて見逃したり、手助けする行為(例:不法滞在者に仕事を斡旋する)を行った事業者には、従来より厳しい罰則が科されるようになりました。
これは、「受け入れ側のモラルと法令遵守」も強く問われる時代になったことを示しています。
企業にとっては「知らなかった」では済まされないリスクとなり、在留資格の確認・管理体制の強化が必須です。
永住許可制度の適正化
これまで永住権の許可基準は比較的曖昧で、個別の裁量が大きいとされてきました。
近年の改正では、納税状況や犯罪歴、就労・生活の安定性といった客観的基準がより厳密に適用される方向に進んでいます。
とくに就労ビザから永住を目指す場合、安定した職歴や生活基盤の証明が必要になっており、企業としても外国人社員の支援体制を整える必要があります。
自発的帰国を促す制度の導入
退去命令を受けた外国人が自ら出国する場合に、一定の条件を満たせば再入国を妨げない仕組みが導入されました。
これは強制送還に伴うコストやトラブルを軽減し、外国人本人の意思を尊重する方向に政策がシフトしていることを意味します。
この制度により、帰国を円滑に進めやすくなった一方で、企業は従業員が在留資格を失った場合の対応フローを事前に決めておく必要があります。
改正の本質は「制度の適正化と責任の明確化」
これらの改正はすべて、「制度の信頼性と透明性を高める」ことを目的としています。
受け入れる側の企業や団体には、在留管理・雇用管理の責任がより明確に求められるようになりました。
外国人と長期的な信頼関係を築くためにも、これらの変更点をしっかり把握しておくことが、今後の採用活動の成否を分けるカギとなります。
新制度「育成就労」とは?
2024年の入管法改正で大きな注目を集めたのが、「技能実習制度」に代わる新たな在留資格「育成就労制度」の創設です。
従来の技能実習が抱えていた「労働搾取」や「人権侵害」といった問題点を是正し、より透明性の高い就労支援制度として設計されました。
この制度は、受け入れ企業にとっても外国人労働者にとっても大きな転換点となるものです。
本章では、「育成就労」の概要と従来制度との違い、そして実務上の影響や注意点を詳しく解説します。
現行の「技能実習制度」との違い
技能実習制度は「人材育成」を名目にしつつ、実態は単純労働力の確保という矛盾を抱えており、労働力としての搾取や長時間労働の問題がたびたび指摘されてきました。
対して育成就労制度では、「人材確保」を正面から掲げた上で、労働者としての権利保護を重視しています。
たとえば、技能実習制度では職場の変更が原則として認められていませんでしたが、育成就労では一定条件下での転職が可能となっており、労働者の自由と選択肢が広がっています。
移行可能な在留資格と実務上の影響
育成就労は、「特定技能1号」への移行を前提とした制度です。
つまり、3年間の育成就労期間を経た後に、特定技能へスムーズに移行できることを制度設計に組み込んでいます。
この移行プロセスにより、企業は長期的な人材確保の見通しを立てやすくなりますが、一方で、計画的なスキルアップ支援や職場環境の整備が求められます。
また、受け入れには「事業計画書の提出」や「転籍条件の管理」など新たな事務負担が加わる点も実務上の留意点です。
育成就労制度のメリットとデメリット
メリットとしては、
- 外国人労働者がより安心して働ける環境が整備される
- 企業が必要な人材を計画的・合法的に確保しやすくなる
- 特定技能制度との連携で中長期の雇用が見込める
といった点が挙げられます。
一方でデメリットとしては、
- 転職可能になったことで企業間の人材競争が激化する可能性
- 受け入れ体制や書類管理における企業負担の増加
- サポート体制が不十分だとすぐに離職されるリスク
など、企業側の責任が重くなるという実情もあります。
育成就労制度は“共に働く”未来への第一歩
育成就労制度は、「外国人が日本で育ち、企業と共に成長する」ことを目指す制度です。
従来の技能実習制度に比べて自由度と保護性が高く、外国人材と企業の信頼関係を深める制度設計となっています。
ただし、その実現には受け入れ側の体制強化や理解が不可欠です。制度の本質を正しく理解し、適切に運用することで、外国人雇用の質が問われる時代において成功する企業になれるかが決まると言えるでしょう。
特定技能制度の再整理
2019年の入管法改正によって創設された「特定技能制度」は、外国人材の受け入れを拡大する新たな枠組みとして注目されてきました。
そして2024年の法改正では、「育成就労制度」との連携や対象業種の見直しなどが進み、制度全体の運用が見直されています。
企業が外国人を安定的に雇用するためには、特定技能制度の仕組みと変化を正しく理解しておくことが不可欠です。
本章では、受け入れ対象業種の拡大、特定技能1号と2号の違い、そして育成就労との関係性について詳しく解説します。
受け入れ対象業種の拡大
特定技能制度は、開始当初は14分野に限定されていましたが、近年では介護や建設、農業、宿泊業など人手不足が深刻な分野を中心に、対象業種の拡大が進んでいます。
今後も対象分野の追加や条件緩和が議論されており、政府としては特定技能をより柔軟な制度として拡張していく方向性を打ち出しています。
企業にとっては、これまで受け入れが困難だった職種でも特定技能制度を活用できる可能性が広がっており、人材確保の選択肢が増えることが大きなメリットになります。
特定技能1号と2号の違い
特定技能制度には「1号」と「2号」の2つのステージが存在します。
- 特定技能1号は、一定の技能試験・日本語試験に合格すれば取得できる在留資格で、最大5年間の滞在が可能ですが、家族の帯同は原則として認められていません。
- 特定技能2号は、さらに高度な熟練技能を持つと判断された者に与えられる資格で、在留期限がなく、家族帯同も可能となります。
現時点では2号の取得者はごく少数ですが、今後の制度拡充によりキャリアパスとしての魅力が増す見込みです。
併せて読みたい▶ 特定技能1号から2号へ転換するには?試験・申請書類・期間のすべて
特定技能と育成就労の連携
2024年の法改正によって新設された「育成就労制度」は、特定技能1号への移行を前提とした仕組みとして位置づけられています。
育成就労期間中にスキルと日本語能力を高め、一定の要件を満たすことで、特定技能1号にスムーズに移行できるようになっています。
この連携により、企業側は「短期雇用」で終わらない人材確保の仕組みを活用することが可能となり、労働力の安定確保に大きな効果をもたらします。
一方で、移行後のフォロー体制や職場環境の整備も企業の責任として求められるため、受け入れ体制の強化が今まで以上に重要になります。
特定技能制度は外国人雇用の柱へ
特定技能制度は、今や外国人雇用政策の中心的な制度へと成長を遂げつつあります。
育成就労との連携により、長期的かつ計画的な人材活用が実現しやすくなりました。
ただし、制度は拡大と共に複雑化しており、最新の法改正内容と実務運用の理解が不可欠です。
企業は常に制度のアップデートにアンテナを張り、外国人材と「共に働き、共に成長する」関係を築いていく必要があります。
外国人雇用における企業の責任
入管法が改正され、外国人労働者の受け入れ体制が整備されつつある中、企業側にも新たな責任が求められています。
ただ採用するだけでなく、適切な管理と支援を行うことが法令順守と職場環境の安定につながるため、対応を誤ると重大なトラブルや罰則リスクを招く可能性があります。
ここでは、外国人雇用を行う企業が押さえておくべき3つの重要な責任について解説します。
適切な在留資格の確認と管理
外国人を雇用する際、まず確認すべきは「在留資格が業務内容に適合しているか」です。
在留カードの提示を受けて確認するだけでなく、「就労可」の範囲内か、資格外活動許可が必要かなど、詳細な確認が求められます。
更新漏れや業務内容との不一致は不法就労と見なされ、企業側が不法就労助長罪に問われる可能性もあるため、定期的なチェック体制が必須です。
労働条件と賃金の適正化
在留資格に適合した業務であっても、労働条件が日本人と著しく異なる場合には問題が生じます。
労働基準法の適用対象である以上、最低賃金・労働時間・残業代・休日手当などを適正に管理する必要があります。
また、「同一労働同一賃金」の考え方も浸透しつつあり、技能実習や特定技能などの制度利用時にも透明性ある給与体系と労働契約の明示が求められます。
支援体制(教育・生活)の整備
外国人社員が定着しやすい環境を作ることも企業の責任です。
具体的には、日本語教育の機会提供、生活サポート(住居・医療・金融など)、そして労務相談などに対応できる体制を整えておく必要があります。
特定技能などでは登録支援機関の活用も重要なポイントとなり、支援計画の策定や進捗管理が求められるケースも増えています。
外国人雇用は企業にとって大きな戦力強化となりますが、同時に法的・人道的な責任も伴います。
在留資格の確認、適正な労働条件の確保、生活支援体制の整備は、いずれも企業が果たすべき基本的な義務です。
単なる労働力確保にとどまらず、「共に働き、成長できる環境」を整備することが、企業の信頼と持続的な人材活用につながるといえるでしょう。
入管法改正のメリット・デメリット
入管法改正は、外国人の受け入れを制度的に整備する上で重要な一歩ですが、すべてが肯定的に受け止められているわけではありません。
雇用主や外国人労働者、そして社会全体にとって、どのようなメリットと課題があるのかを整理しておくことは、適切な対応を取るために不可欠です。
ここでは、改正によって得られる効果と、その一方で懸念される点について、具体的に見ていきましょう。
外国人労働力の安定確保
入管法の改正によって創設された「特定技能」や「育成就労」といった制度は、慢性的な人手不足に直面している産業にとって大きな追い風となっています。
これまで技能実習制度では限られていた就労範囲が広がり、実務に即した形で即戦力となる外国人材の確保が可能となりました。
また、制度に基づいた明確な在留資格の付与により、企業側も長期的な人材計画が立てやすくなり、労務管理がより安定するといったメリットも挙げられます。
難民認定制度の透明性向上
2023年改正では、難民申請が繰り返されることで送還が停止される“送還忌避”問題への対策も盛り込まれました。
これにより、真に保護すべき人とそうでない人を制度的に明確化し、難民認定の透明性と信頼性の向上が期待されています。
また、保護すべき対象に対する手厚い対応を整えることができるようになり、本来の意味での人道的支援に制度のリソースを集中させやすくなるという利点もあります。
人権上の懸念や制度運用上の課題
一方で、「難民申請中でも3回目以降は強制送還が可能」とするルールは、真に救済を必要とする人の保護を損なう可能性があるとして、国内外から批判も寄せられています。
国際人権基準に沿った運用が求められる中、実務における恣意的な判断が行われないかどうかが課題となります。
また、育成就労制度や特定技能制度の運用についても、現場での負担や支援体制の不備、地域間格差など実務上の問題が指摘されており、企業や自治体の対応力が試される場面も多くなっています。
制度の進化には「運用の質」も問われる
入管法改正は、外国人労働者の受け入れを制度的に整備し、社会全体に恩恵をもたらす可能性を秘めています。
しかしその一方で、人権や制度の公平性に対する課題も浮き彫りになっています。
法改正の本当の成果は、条文の変更だけでなく、現場でいかに適切に運用されるかにかかっていると言えるでしょう。
関係者すべてが制度の趣旨を理解し、改善を重ねながら活用していく姿勢が求められます。
よくある質問と誤解の解消
入管法改正が話題になる中で、制度の内容について誤解や混乱が生まれることも少なくありません。
特に企業が外国人を雇用する場合、「どの制度を選べばいいのか」「どのような対応が必要なのか」といった疑問が浮かびやすいものです。
ここでは、実際によく寄せられる質問に答えながら、誤解されやすいポイントをわかりやすく整理していきます。
入管法改正で企業は何をすべき?
企業がまず取り組むべきは、在留資格ごとに定められた活動内容と制限を正確に理解することです。
例えば「特定技能」であれば業種や職務内容が厳密に指定されており、それ以外の業務に従事させることはできません。
また、「育成就労」のように新たに創設された制度においては、移行期間や支援義務、実施計画の提出など細かな要件が追加されているため、人事部門や監理団体との連携を強化することが不可欠です。
さらに、改正後の制度では監督指導の厳格化が進んでいるため、社内の就業規則や契約書の見直しを早急に進めることも求められます。
特定技能と育成就労の違いは?
特定技能と育成就労は混同されやすい制度ですが、その目的と対象者のステージが異なります。
- 特定技能は、即戦力となる外国人を対象にした制度で、すでに一定の技術・日本語能力を持つ人材を受け入れるためのものです。試験合格や技能実習修了などが条件となります。
- 育成就労は、主に技能実習制度の後継として位置づけられており、「人材育成」を目的に、初期段階から実務を通じてスキルを身につけてもらう制度です。将来的に特定技能へ移行できる仕組みになっているのが特徴です。
したがって、企業が求める人材の即戦力レベルや育成体制の有無によって、どちらの制度が適しているかを慎重に判断する必要があります。
難民として認められる条件は?
「難民申請をすれば働ける」「難民は保護されて当然」といった誤解が一部にありますが、実際には難民として認定されるためには厳格な条件が設けられています。
入管法上、難民は「人種・宗教・国籍・社会的集団の構成員であることや政治的意見により、迫害の恐れがある人」とされています。
これに該当しない経済的理由や単なる不法滞在による申請は、原則として難民には認められません。
また、2023年の改正によって、3回目以降の難民申請中であっても送還が可能となる場合があるため、制度の悪用に対しては明確に対応が進められています。
企業側も、難民申請者の雇用には慎重な判断が必要です。
情報の正確な理解が、制度活用の第一歩
入管法改正により、新制度や変更点が次々と導入されています。
企業や雇用主がそれらの制度を正しく理解し、誤解を排除することは、外国人雇用を円滑に進める上で不可欠です。
分からない点は早めに専門家に確認しながら、自社の受け入れ体制や管理体制を整備していくことが、成功のカギとなるでしょう。
今後の見通しと対応の方向性
入管法の改正は一過性のものではなく、社会や経済の変化に合わせて継続的に見直されてきました。
特に外国人労働者の受け入れに関する政策は、労働市場や国際情勢の影響を大きく受けるため、企業もその動向を常に把握しておく必要があります。
ここでは、今後想定される法改正の動きや外国人労働政策のトレンド、そして企業が事前に取るべき対応について解説します。
さらなる法改正の可能性
近年の入管法改正は2019年、2023年、2024年と立て続けに行われており、今後も制度の柔軟な見直しが予想されます。
たとえば、「育成就労制度」が軌道に乗らなければ、制度内容の再検討や対象業種の拡大などの対応が取られる可能性があります。
さらに、特定技能2号の対象業種拡大や、在留資格ごとの待遇格差是正、地方での受け入れ促進施策なども議論されています。
企業は制度が今後もアップデートされる前提で、最新情報の把握と柔軟な対応力を備えておくべきです。
外国人労働政策のトレンド
現在の政策は、単なる労働力補填から「共生社会」への移行を目指す流れにあります。
これは単に労働者として受け入れるのではなく、生活支援や教育支援まで含めた包括的な施策が求められているということです。
また、外国人労働者の長期滞在や家族帯同を視野に入れた制度整備も進んでおり、企業側にはより深い理解と配慮が求められています。
今後は“雇うだけ”ではなく、“育て、支える”ことが受け入れの基本となる時代が来るでしょう。
企業が備えるべきリスクと対策
制度変更に対応できないまま外国人を雇用すると、労務トラブルや行政指導の対象になるリスクがあります。
特に在留資格の誤認や法令違反による罰則は、企業の信頼に大きく関わる問題です。
したがって企業は次のような準備を進めておく必要があります。
- 最新の法改正に関する情報収集と社内共有体制の構築
- 在留資格管理のデジタル化・可視化(管理台帳・通知機能など)
- 監理団体や行政書士との定期的な連携と相談体制の整備
- 多文化共生に向けた職場環境・教育制度の整備
「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない時代だからこそ、事前の備えが企業のリスクマネジメントに直結するのです。
未来を見据えた外国人雇用戦略を
入管法の改正は今後も続きますが、その背景には日本社会の構造的な課題と、それに応じた外国人労働力の必要性があります。
企業にとって重要なのは、制度の変更に一喜一憂するのではなく、中長期的な視点で「共に働く仕組み」を整えていくことです。
時代の流れを読み、制度に先回りして対応できる企業こそが、これからのグローバル社会で選ばれる存在となるでしょう。
受け入れ企業が失敗しないための3つのチェックポイント
外国人材の雇用は、人手不足の解消や企業の多様化に貢献する一方で、法令違反や支援体制の不備によるトラブルのリスクも孕んでいます。
特に入管法改正により制度が複雑化する中で、企業側の理解と備えがますます重要になっています。
本章では、外国人雇用で失敗しないために、受け入れ企業が事前に確認・整備すべき3つの重要なポイントについて解説します。
採用前に必ず確認すべき「在留資格の妥当性」
まず最も基本かつ重要なのが、外国人本人が持つ在留資格が実際の業務内容に合っているかの確認です。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の資格で単純労働をさせることは認められておらず、法令違反になります。
また、「特定技能」「育成就労」などの新制度では、職種や業種、技能試験の有無、支援義務の有無などが細かく決まっているため、採用前に必ず入管法の規定を確認し、法務省の資料や専門家の助言を活用することが推奨されます。
社内体制の整備と社員教育の重要性
適切な在留資格が確認できても、それだけでは万全ではありません。
外国人労働者を受け入れるにあたっては、社内の受け入れ体制を整備することが極めて重要です。
具体的には、
- 外国人労働者向けの就業規則やマニュアルの整備
- 多言語対応の相談窓口
- 生活面や文化面の不安に配慮したサポート体制
などが求められます。
また、既存社員への研修や意識づけも不可欠です。文化や言語の違いが現場のストレス要因にならないよう、多文化理解やハラスメント防止教育などの研修を定期的に実施することで、円滑な職場環境を構築できます。
外部機関や登録支援機関との連携を強化する方法
新制度である「育成就労」や「特定技能」では、登録支援機関との連携が法的にも義務づけられているケースが多くあります。
この支援機関は、外国人への生活支援・職業相談・各種届出を代行する役割を持っており、受け入れ企業にとっては専門的な支援を受けることができる重要なパートナーです。
登録支援機関を選ぶ際には、以下のようなポイントを確認しましょう。
- 外国人対応の実績と経験
- 対応言語のバリエーション
- 企業とのコミュニケーション体制
- 急なトラブル対応への柔軟さ
また、監理団体、行政書士、社会保険労務士など外部専門家との連携も、法令遵守と実務安定の大きな助けとなります。
採用前の3つの備えが「失敗しない外国人雇用」の鍵
外国人材の受け入れを成功させるには、採用時だけでなく、受け入れ後の運用まで見据えた備えが必要不可欠です。
- 在留資格の妥当性確認
- 社内体制と社員教育の整備
- 登録支援機関・外部専門家との連携
これら3つを徹底することで、トラブルや違反のリスクを最小限に抑え、外国人と企業双方にとって持続可能な雇用関係を築くことができます。
制度の変更が多い今だからこそ、企業には「知識」と「体制」の両輪が求められているのです。
入管法改正を正しく理解して、後悔しない外国人採用を
入管法の改正は単なる制度変更ではなく、企業の採用方針や労務体制に大きな影響を及ぼす重要な転換点です。
2019年の「特定技能」創設から始まり、2024年には「育成就労」制度が加わるなど、政府は外国人労働者の受け入れと定着を見据えた制度設計を進めています。
この記事でご紹介したように、改正の要点を押さえたうえで、
- 適切な在留資格の確認
- 労働条件や教育支援の整備
- 支援機関との連携強化
といった企業側の主体的な取り組みがますます求められます。
制度が変わる今こそ、「知らなかった」「うっかり」は通用しません。採用前の準備が、雇用の成功とトラブル回避の分かれ道です。
正確な情報と先を見据えた対策で、持続可能な外国人雇用を実現していきましょう。
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