
07/04 (金)更新
【見落とし注意】外国人雇用状況の届出、出し忘れると罰則あり!今すぐ確認を
外国人を雇用する企業が年々増える中で、忘れてはならない義務のひとつが「外国人雇用状況の届出」です。
これは厚生労働省が企業に義務付けている法定手続きであり、届出を怠ると罰則や行政指導の対象になる可能性もあるため、軽視できません。
特に初めて外国人を採用する企業では、「誰が対象になるの?」「いつまでに出すの?」「オンライン提出ってどうやるの?」といった疑問が多く、提出ミスや書類の不備が現場で頻発しているのが実情です。
また、在留資格の見落としや本人確認書類の取り扱いなど、実務上のトラブルも起こりやすいポイントとなっています。
この記事では、届出の基本ルールから提出方法・注意点までをわかりやすく整理し、さらに現場の人事担当者から聞いたリアルな実務の工夫やよくあるトラブル事例も交えてご紹介します。
初めての方でも正しく届出ができるよう、チェックリストや記入例も交えながら解説しますので、ぜひ参考にしてください。
外国人雇用状況の届出とは
外国人材の雇用が広がる中で、事業主に求められる法的手続きも重要性を増しています。
そのひとつが「外国人雇用状況の届出」です。
この届出を怠ると、罰則が科されるだけでなく、不法就労助長と見なされるリスクもあるため、軽視できない手続きです。
「そもそも何のために提出するのか」「どの外国人が対象になるのか」「どんな企業が届出義務を負うのか」など、意外と知られていないポイントも多く、初めて外国人を雇用する企業では戸惑うことも少なくありません。
本記事では、外国人雇用状況の届出の基本とその背景にある法律の目的をわかりやすく解説し、人事・労務担当者が知っておくべきポイントをまとめてご紹介します。
これから外国人を雇用する予定のある企業や、すでに受け入れている企業は、ぜひ参考にしてください。
なぜ届出が必要なのか?法律上の位置づけ
外国人労働者を雇用する企業には、「外国人雇用状況の届出」が法律で義務付けられています。
これは「雇用対策法第28条」に基づく制度で、外国人の雇用実態を正確に把握し、不法就労の防止や雇用支援の実現を目的としています。
雇用主がハローワークまたはオンラインシステムを通じて提出するこの届出は、日本国内で働く外国人が適正な在留資格で活動しているかをチェックする大きな役割を担っています。
提出を怠った場合、30万円以下の罰金が科されることもあり、行政からの指導や調査の対象になるケースもあります。
つまり、この届出は単なる「報告」ではなく、企業としての法令遵守と社会的責任を果たすための重要なステップなのです。
外国人雇用における届出の目的とは
この制度の背景には、外国人労働者の増加にともなう雇用環境の整備があります。
厚生労働省は、外国人労働者の適正な就労を促すために、次のような目的で届出を求めています。
- 不法就労の防止 – 在留資格と実際の業務内容が合っているかをチェック
- 再就職支援のためのデータ整備 – 離職者に対して必要な支援を行うため
- 外国人労働者の受入れ状況の把握 – 労働市場全体の分析や政策立案に活用
特に「技能実習」や「特定技能」など、在留資格に応じた就労範囲が決められているケースでは、企業側が正確に状況を申告することが、本人の法的保護にもつながります。
また、日本語能力や業務理解などのギャップを埋めるサポートにもつながり、企業と外国人双方にとってのトラブル防止策とも言えます。
どんな事業主が届出義務を負うのか
届出の義務を負うのは、すべての事業主です。
雇用形態にかかわらず、以下の条件に該当すれば対象となります。
- 正社員、契約社員、アルバイト、パートなど雇用形態は不問
- 外国人を新たに雇用したときまたは離職したとき
- 在留資格「外交」「公用」以外の外国人
つまり、外国人であっても労働者として雇い入れる場合は、必ず届出が必要ということです。
なお、派遣社員として迎える場合には、「派遣元企業」が届出を行う点に注意が必要です。
また、届出を怠ったり、虚偽の報告を行った場合には、企業としての信頼性に関わるだけでなく、将来的な監査や行政手続きで不利に働く可能性もあります。
▷届出は「外国人雇用の出発点」
外国人雇用状況の届出は、法的義務であると同時に、適正な雇用を実現する第一歩です。
ただの書類作業と考えず、在留資格の確認・就労範囲の理解・トラブルの未然防止という観点から、企業全体で正しく対応することが求められます。
「知らなかった」「後でいい」は通用しない手続きです。外国人を受け入れる側の責任として、今一度、社内の体制や理解度をチェックしておきましょう。
届出の対象となる外国人とは
外国人雇用状況の届出は、すべての外国人労働者が対象になるわけではありません。
在留資格の種類や雇用の形態によって、届出の要否が変わる点に注意が必要です。
とくに「例外となる在留資格」や「短時間労働者への対応」などは見落としがちです。
本セクションでは、どのような外国人が届出対象になるのか、またどんなケースで届出が求められるのかを具体的に解説します。
「外交」や「公用」など例外となる在留資格とは
原則として、外国人を新たに雇用した場合や離職した場合には、外国人雇用状況の届出が必要ですが、いくつかの在留資格には例外があります。
具体的には以下のような資格保有者は届出の対象外です。
- 外交
- 公用
- 短期滞在
- 特定活動(日本の公的機関等が受け入れるもの)
- 技能実習・特定技能のうち、監理団体等が一括管理する場合
これらは、法務省の管理下で厳格な運用がされていたり、実質的に就労を目的としない在留資格であるため、ハローワークへの届出義務は免除されています。
しかしながら、「特定活動」は一部例外で届出が必要な場合もあるため、在留資格ごとに個別に確認することが大切です。
雇用形態や労働時間に関係なく必要なケース
届出が必要かどうかは、雇用形態や勤務時間の長さには関係ありません。
以下のようなケースでも届出義務が発生します。
- 正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、雇用形態を問わない
- 1日1時間のみの勤務でも、雇用契約を締結していれば対象
- 短期間の雇用(1週間のみなど)でも該当する可能性あり
重要なのは「雇用契約の有無」であり、委託契約や業務委託などの雇用関係に該当しない契約形態は対象外です。
とくに注意すべきは、学生の資格外活動許可によるアルバイトなどです。この場合も労働契約がある以上、届出の対象となる外国人に該当します。
雇用開始時・終了時の両方で届出が必要な理由
届出は、雇い入れ時だけでなく、離職時にも必要です。これは、厚生労働省が「外国人の雇用実態の把握」と「不法就労の防止」を目的としているためです。
離職後の情報を確実に把握することで、以下のような社会的課題への対応が可能になります。
- 再就職支援のための職業紹介制度の整備
- 不法残留者の早期発見
- 在留資格の更新時の審査精度向上
このため、外国人が会社を退職した際も、14日以内に雇用終了の届出をハローワーク等へ提出する義務があります。
「開始時だけでよい」と思い込んで届出を怠ると、罰則の対象にもなり得るため、継続的なチェック体制が求められます。
▷在留資格と雇用契約の有無をしっかり確認しよう
外国人雇用状況の届出においては、「誰が対象なのか」を正確に把握することが最初のステップです。
在留資格の違いや雇用形態によって、届出の要否が変わるため、形式的な判断ではなく個別に確認する姿勢が不可欠です。
とくに、短時間労働やアルバイト契約であっても届出が必要な場合が多く、軽視するとリスクを伴います。
また、退職時の届出も忘れずに行い、法令遵守と信頼ある外国人雇用体制の構築を目指しましょう。
外国人雇用状況届出書の様式と提出方法
外国人を採用した際には、法令に基づき「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。
しかし、雇用保険の加入有無によって届出の様式が異なる点や、オンライン提出とハローワーク提出の違いなど、現場では混乱が起きやすい項目も少なくありません。
ここでは、提出様式の違いから具体的な提出方法、そして期限までを明確に整理して解説します。
はじめて届出を行う企業担当者や、人事・労務の実務者にとって、ミスなく対応できるための基礎知識をお届けします。
雇用保険加入者と非加入者で異なる届出様式
外国人雇用状況届出書には、雇用保険の加入状況に応じて2つの様式が存在します。
- 雇用保険に加入している外国人労働者の場合
→ 通常の「雇用保険被保険者資格取得届」または「喪失届」に、外国人雇用状況に関する情報を記載する欄があります。別途届出書を用意する必要はありません。 - 雇用保険に未加入の外国人労働者の場合
→ 専用の「外国人雇用状況届出書(様式第1号・第2号)」を使用します。- 第1号様式 – 雇い入れ時
- 第2号様式 – 離職時
- 第1号様式 – 雇い入れ時
パート・アルバイトや短期契約で雇用保険に加入しない外国人が対象となるケースでは、この専用様式での届出を怠らないよう注意が必要です。
提出方法は「ハローワーク」「オンライン」どちらでも可
届出の提出は、従来のハローワーク窓口での紙提出に加えて、近年ではオンライン提出も選べるようになっています。
- 窓口提出
- 最寄りのハローワークに必要書類を提出。
- 雇用保険手続きとあわせて行うことが多く、書類一式を揃える必要があります。
- 最寄りのハローワークに必要書類を提出。
- オンライン提出
- 「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を通じて届け出が可能。
- 事業者情報の登録と電子証明書(電子署名)が必要になるケースがあるため、事前準備が必須です。
- メリットとしては、24時間提出可能・来所不要・履歴管理が容易などがあります。
- 「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を通じて届け出が可能。
特に、頻繁に外国人を採用する企業では、e-Govの活用によって事務負担の大幅削減が見込めるため、積極的に導入を検討するとよいでしょう。
提出期限は「雇用開始・終了後14日以内」
外国人雇用状況届出書は、雇い入れ・離職のいずれの場合も、それぞれ14日以内に提出しなければなりません。
- 雇用開始日または離職日の翌日から14日以内
- 土日祝日を含めた暦日計算で、遅延した場合は行政指導や改善命令の対象になる可能性あり
特に多いミスが、「雇い入れは届出したが、離職の届出を忘れてしまった」というケースです。
離職届出も義務であることを忘れず、システム管理や社内フローで自動通知を組み込む工夫が求められます。
▷様式・方法・期限の基本をおさえてミスなく提出を
外国人雇用状況届出書は、雇用保険の加入有無によって使う様式が異なり、提出方法も紙・オンラインの両方が選べます。
また、14日以内という厳格な期限があるため、採用フローや退職処理の中にしっかり組み込んでおくことが不可欠です。
とくに、非加入の外国人を雇用する中小企業では提出漏れが起きやすいため、ひな形の整備やチェックリストの活用など、実務の中に自然に組み込む仕組み化が有効です。
正確な届出を通じて、安心・信頼ある外国人雇用の第一歩を踏み出しましょう。
外国人雇用状況届出書の書き方と記入例
外国人雇用状況届出書を提出する際、多くの人事担当者が直面するのが「正確な記入方法がわからない」「どこをどう書けばよいか不安」といった悩みです。
特に、雇用保険の加入・未加入によって記入内容が異なるため、思わぬミスで提出し直しになることも。
このセクションでは、具体的な記入例をもとに、雇用保険の有無ごとの書き方やよくある記入ミスのチェックポイントを解説します。
はじめて届出を行う企業はもちろん、実務に慣れた担当者にも役立つ内容です。
雇用保険に加入している外国人の場合の記入ポイント
雇用保険に加入している外国人を雇用する場合、「雇用保険被保険者資格取得届」または「喪失届」に必要事項を追記するだけでOKです。
この様式には、外国人の基礎情報を記載する項目が含まれており、別紙での届出は不要です。
【主な記入項目】
- 在留資格(例:技術・人文知識・国際業務、特定技能など)
- 在留カード番号
- 国籍・地域
- 在留期間(満了日)
- 氏名・生年月日・性別
【ポイント】
- 氏名のローマ字表記はパスポート記載どおりに記入
- 在留カードの有効期限と整合性をとる
- 雇用開始・終了日を正確に記載
こうした基本を抑えたうえで、雇用契約書と内容が一致しているかを事前に照合することが重要です。
雇用保険に未加入の外国人を雇用する場合の注意点
パートタイマーや短期労働者など、雇用保険に加入しない外国人については、専用の「外国人雇用状況届出書」様式第1号(雇入時)・第2号(離職時)を使用します。
【主な記入項目】
- 事業所情報(法人番号、所在地、代表者名など)
- 外国人労働者の氏名、国籍、在留資格、在留期間
- 雇入日または離職日
- 雇用形態(正社員・契約社員・アルバイトなど)
【注意点】
- 「在留資格」と「就労可否」の整合性をチェック
- 在留資格が「留学」や「家族滞在」などの場合は、資格外活動許可の有無も記載
- 住所の表記ミスや在留カード番号の誤記が多いため、必ず現物を確認しながら記入
未加入者に対しては、とくに本人確認を怠らないことが法令遵守の基本です。
在留カードのコピーや本人からの聞き取りだけでなく、必要に応じて入管情報との照合も行いましょう。
届出書のサンプルでチェックすべき記入ミスとは
実際の記入サンプルを確認すると、よくある記入ミスは以下のようなパターンに集中しています。
【ありがちなミス】
- 在留カード番号の桁数不足・数字誤り
- 漢字氏名とローマ字表記の混在
- 雇用形態の記載漏れ(「アルバイト」など)
- 在留資格が旧制度名のまま記入(例:「技能実習」を「研修」と誤記)
- 離職理由が曖昧な表現になっている(「自己都合」「期間満了」などは具体的に)
これらのミスは、行政からの問い合わせや再提出の原因になるだけでなく、悪質な場合は虚偽記載と見なされる恐れもあります。
提出前には、社内でダブルチェックを行うか、サンプル書類と照合して書式の整合性を確認するチェックリストを活用すると安心です。
▷届出書は「本人確認」と「正確な転記」がカギ
外国人雇用状況届出書の記入で重要なのは、書類の正確性と、記入内容の整合性です。
とくに、在留カードや雇用契約書との情報不一致は、行政指導の対象となるケースもあるため注意が必要です。
記入ミスを防ぐには、以下のような対策が有効です。
- 本人確認書類をコピーして事前に用意
- 定型チェックリストでの項目確認
- 部署間での情報共有(例:採用と労務でのWチェック)
届出は単なる事務作業ではなく、外国人雇用の信頼性を高める企業姿勢の証明でもあります。
正確な記入と丁寧な対応を心がけることで、行政との信頼関係を構築し、安心できる雇用環境を整えましょう。
提出時の注意点と違反リスク
外国人雇用状況の届出は、ただ提出すればいいというものではありません。
提出のタイミングや内容の正確性が求められるだけでなく、違反があった場合には罰則や行政指導の対象になることもあります。
特に、雇用終了時の届け出忘れや、記載ミス・虚偽記載は、企業側にとって大きなリスクになり得ます。
ここでは、実際の違反リスクや注意すべきポイントを、現場でよくあるトラブル事例も交えて解説します。
届出を怠るとどうなる?罰則と指導の実態
外国人を雇用した際に届け出を怠った場合、職業安定法第28条に基づき「報告義務違反」として行政指導の対象になります。
悪質と判断された場合は企業名が公表されたり、最悪の場合は刑事告発もあり得ます。
【行政上の対応例】
- ハローワークからの文書指導・是正勧告
- 是正報告書の提出指示
- 継続的な違反があれば企業名の公表や許認可事業への影響
また、「雇用開始や終了から14日以内に届出」という期限を超えて提出した場合も、軽微な違反として指導の対象になります。
特に建設業や製造業などでは、複数の外国人を雇用しており、うっかり漏れるケースが後を絶ちません。
虚偽記載や誤記によるトラブル事例
届出書への記載内容に誤りがある場合、「記載ミス」で済まないケースもあります。
意図的でない場合でも、行政は虚偽報告と受け取る可能性があるからです。
【よくあるトラブル】
- 在留資格の誤記(例:「留学」とすべきところを「特定活動」と記載)
- 在留カード番号の1桁ミスにより他人の情報と混在
- 氏名の表記ゆれ(パスポート・在留カードと表記が異なる)
一例として挙げると、飲食業を営むA社では、外国人スタッフの在留資格を誤って「技能実習」と記載し、その後の更新手続きで不一致が発覚。
結果として雇用主・本人ともに再申請を余儀なくされ、業務に支障が出ました。
「うちは大丈夫」と思っていても、複数名を管理している企業ではヒューマンエラーのリスクが常につきまといます。
雇用終了時の届け出忘れが多発している理由
実務上、特に多いのが雇用終了時の届け出忘れです。
これは「雇入れ時」にはしっかり対応していても、離職時には退職の連絡が急で、事務処理が後回しになりがちなことが原因です。
【よくある状況】
- 本人が突然退職・帰国し、書類処理ができないまま14日を超過
- 現場管理者と人事担当者との情報共有がうまくいっていない
- 離職時の手続きマニュアルが整備されていない
このような状況を防ぐには、退職連絡を受けた時点ですぐに届出対応に着手できる体制が不可欠です。
あわせて、社内で「届出忘れ防止チェックリスト」やスケジュール管理ツールを活用することも効果的です。
▷提出ミスが企業の信頼を左右する
外国人雇用状況の届出に関する違反や記載ミスは、単なる事務的なミスでは済まされないケースもあることを理解しておく必要があります。
企業の信頼性を損なわないためには、正確・迅速・確実な届出対応が求められます。
以下のような対策が推奨されます。
- 提出期限(14日以内)を徹底管理
- 在留カードや雇用契約書との整合性チェック
- 社内での情報共有ルールの明確化
届出を「作業」ではなく、外国人雇用を適切に行うための大切なプロセスとして捉えることが、長期的に見て企業リスクを抑える最善の道となります。
外国人雇用における本人確認と管理体制
外国人を雇用する際、在留資格や労働条件の確認だけでなく、本人確認と管理体制の構築も非常に重要です。
とくに近年では、法令遵守の強化や個人情報保護の観点から、企業に求められる対応レベルも高くなっています。
在留カードの確認だけで済ませていませんか?実はそれだけでは不十分なケースもあります。
ここでは、外国人雇用時に必要な本人確認書類の種類、個人情報の扱いに関する注意点、そして管理体制の効率化に役立つツールについて詳しく解説します。
在留カード・パスポートなど本人確認に必要な書類
外国人を雇用する際は、在留カードの提示・コピー保管が法的に必須です。
加えて、本人確認をより確実に行うためにはパスポートの確認も重要です。これにより、氏名や在留期間、国籍の一致を確認でき、偽造リスクを最小限に抑えることができます。
本人確認に用いられる主な書類は以下の通りです。
- 在留カード(在留資格、在留期限、就労可否などを確認)
- パスポート(氏名・国籍・発給日・有効期限を確認)
- 資格外活動許可証(資格外活動が必要な業種・在留資格の場合)
とくに注意したいのは、在留カードの「就労制限の有無」の欄です。
ここに「就労不可」と書かれている場合、労働契約を締結すること自体が違法となるため、採用前に必ず確認しましょう。
個人情報保護の観点から注意すべき点
在留カードやパスポートのコピーを保管する際には、個人情報保護法の対象となる「特定個人情報」として適切な管理が求められます。
管理が不十分な場合、情報漏洩などで企業が損害賠償責任を問われるケースもあります。
【注意すべきポイント】
- 保管場所の制限 – 鍵付きキャビネットやアクセス権限を設けたフォルダで保管
- 閲覧権限の制御 – 人事・労務関係者以外がアクセスできないようにする
- 廃棄時のルール – 離職後の保管期間が経過したら、裁断・データ完全削除を実施
また、在留資格や在留期限に関する情報は「定期的に更新確認」が必要です。更新忘れは、不法就労を見過ごす原因になりかねません。
デジタルツールによる労務・在留資格の一元管理方法
外国人社員が増えると、紙ベースや手作業での管理では追いつかなくなります。
近年は、在留カード情報や雇用契約書をデジタルで一元管理できるクラウド型労務管理ツールの導入が広がっています。
【主な導入メリット】
- 在留期限の自動アラート通知
- クラウド上での文書管理とアクセス制御
- 多言語対応で外国人本人とのやり取りもスムーズ
一例として、外国人雇用に特化した労務管理システムでは、入社から退職、在留資格更新までを一貫して管理できる機能が搭載されており、人事業務の負担軽減とコンプライアンス強化を同時に実現できます。
このようなツールは、中小企業でも導入可能なプランがあり、コスト以上の効果が得られるケースが多いです。
▷本人確認と情報管理の徹底が信頼の鍵に
外国人雇用の適正な運用には、正確な本人確認と個人情報の適切な管理体制の構築が不可欠です。在留カードやパスポートの確認をはじめ、就労制限の有無や在留期間の把握まで、しっかりとチェックすることが企業の信頼にも直結します。
さらに、個人情報保護法への対応や在留期限の管理には、デジタルツールの活用が今後ますます重要になります。属人化を避け、組織的に対応する仕組みづくりが、外国人雇用を安全・安定的に続ける第一歩と言えるでしょう。
よくある質問と企業の不安解消
外国人雇用状況の届出は、罰則を避けるためにも確実に行うべき義務ですが、実務に携わる担当者からは「どこまで対象?」「誰がやるべき?」「方法は?」といった疑問の声が多く寄せられます。
とくに、アルバイトへの対応や、オンライン提出の実用性、さらには届出業務を外注できるかどうかは、多くの企業が直面するリアルな悩みです。
ここでは、実務上よくある質問を3つに厳選して、分かりやすくお答えします。
外国人雇用状況届出書はアルバイトにも必要?
結論として、アルバイトであっても届出は必要です。
「雇用保険の対象ではない短時間勤務だから関係ない」と思われがちですが、在留資格が「留学」や「家族滞在」などで資格外活動許可を取得している外国人であっても、雇用時には届出義務が発生します。
届出が必要となるのは以下のようなケースです。
- 在留資格を持つ外国人を新たに採用した場合(正社員・契約社員・パート・アルバイトすべて対象)
- 雇用契約を終了する場合(退職・契約満了・辞職など)
届出が不要な在留資格は「外交」「公用」「永住者」「特別永住者」のみで、これに該当しない限りは雇用形態を問わず届出が必須となります。
オンラインでの提出はどのくらい簡単?
現在、外国人雇用状況届出書はハローワークへの紙提出に加え、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」を使ったオンライン提出にも対応しています。
オンライン提出のメリット
- 時間や場所にとらわれずに提出できる
- 過去の提出履歴をデータで管理できる
- 書類不備による差し戻しが減る
とはいえ、e-Govの操作に慣れていない企業では、最初の登録や提出画面でつまずくケースもあります。
そのため、初回のみ社労士や行政書士に操作をサポートしてもらうのも有効です。
また、最近では雇用保険手続きなどと一括管理できるクラウド型の労務管理ツールも増えており、そうしたツール経由でのオンライン届出がさらに簡便になっています。
届出義務を外部に委託することはできる?
はい、社労士や行政書士など、専門家への委託は可能です。
とくに中小企業では、労務担当者が1人で複数業務を兼任しているケースも多いため、外国人雇用のたびに届出内容を調べ直す手間を省くためにも、外部委託は非常に現実的な選択肢です。
委託する際の注意点
- 契約書や委任状を交わすことが前提
- 提出のタイミングや責任分担を明確にしておく
- 社内の基本情報(在留資格・勤務内容など)を共有する体制が必要
さらに、届出内容に誤りがあった場合、最終的な責任は「雇用主側」にあります。
外部委託であっても内容確認のプロセスは省かず、最終チェックは必ず行うようにしましょう。
▷不安は確認と体制整備で解消できる
外国人雇用状況届出は、「正社員だけ」「外国人は少数だから」と油断すると、思わぬ罰則や行政指導の対象になりかねません。
アルバイトも対象であることや、オンライン提出の活用、外部委託の実務までを理解し、企業の規模やリソースに合わせた運用方法を整えることが重要です。
実務担当者が「何が必要で、どう対応するか」を把握しておくことで、企業としてのリスク管理と、外国人労働者への安心感の提供を両立できるはずです。
現場の人事担当に聞いた「外国人雇用状況届出」の実務と現場トラブル回避術
外国人雇用状況の届出は、法律で定められた義務であると同時に、人事・労務の実務に深く関わる繊細な業務でもあります。
手続き自体はシンプルに見えても、現場では在留資格の確認ミス、書類の見落とし、提出忘れなど、さまざまなトラブルが起きがちです。
今回は、実際に外国人採用や管理に携わる人事担当者の声をもとに、よくある失敗例とその対策、そして現場で使われている便利なチェック方法をご紹介します。
届出時に困った実際のケースとその対応方法
一例として挙げられるのが、「在留カードの有効期限が切れていた」「資格外活動の許可がないままアルバイト採用してしまった」「退職時の届出を失念していた」といったケースです。
ある企業では、外国人アルバイトが週28時間を超えて就労していたことが、後になって判明。結果的に不法就労助長罪に問われかねない状況になり、社内で大きな問題となりました。
このようなケースを防ぐには、在留カードやパスポートのコピーを採用時に必ず取得し、在留資格や就労制限を確認することが基本です。
また、退職時には即座に情報を更新し、14日以内の届出を忘れずに行うようチェックリストの活用やアラート設定を徹底している企業もあります。
書類確認でのすれ違いを防ぐ社内ルールづくり
現場でよくあるのが、「人事は届出が必要だと思っていたが、現場担当が在留資格の内容を知らなかった」という部門間の情報ギャップです。
こうしたすれ違いを防ぐために、ある企業では以下のような社内ルールの標準化を実施しています。
- 外国人雇用時の採用フローに「在留資格の確認と記録」のチェック項目を追加
- 雇用契約書に在留カード番号や有効期限欄を設ける
- 入社・退職時に自動的に人事と労務部門に通知されるフォームを活用
「誰が、いつ、どの情報を、どの手順で確認・記録するのか」というルールを明確にすることで、人的ミスや認識のズレを大幅に減らすことができます。
「これがあると便利!」人事担当が使っているチェックツール事例
外国人雇用において正確な書類確認と届出を実現するために、多くの人事担当者が導入しているのがチェックシートやデジタルツールの活用です。
現場で使われている主な例
- GoogleスプレッドシートやExcelで作った在留資格管理表
→ 社員ごとの在留資格、有効期限、届出状況などを一括で管理 - クラウド労務管理ソフト(SmartHR、freee人事労務など)
→ 入退社時の書類提出・届出タスクを自動で通知し、未処理を可視化 - アラート付きカレンダー
→ 有効期限の数か月前に自動通知される設定をすることで、更新忘れを防止
特に人事労務が一人部署となっている中小企業では、手作業に頼らず仕組みで抜け漏れを防ぐ体制整備が鍵になります。
現場の知恵と工夫がトラブルを未然に防ぐ
外国人雇用状況届出の実務では、形式的な書類提出だけではなく、現場の理解と仕組みの整備が不可欠です。
届出漏れや書類不備によるリスクは、企業の信頼を損なうだけでなく、法的な責任にも直結します。
人事担当者が現場で起きやすいトラブルを理解し、それに対応するためのチェック体制と共有ルールを持つことが、健全な外国人雇用と企業のリスクマネジメントの要となります。
日常の工夫と仕組みづくりが、未来の安心へとつながっていくのです。
まとめ|外国人雇用は正しい届出から始まる
外国人労働者を受け入れる際には、「外国人雇用状況の届出」こそが第一歩です。
これは単なる手続きではなく、適切な労務管理と法令遵守を企業として示す重要な行動でもあります。
届出義務は、正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく全ての事業主に課されており、提出を怠ると行政指導や罰則の対象になる可能性もあります。
また、届出の内容や提出様式は雇用保険の加入有無によって異なるため、実務では細かな確認と対応が求められます。
在留カードや本人確認書類の管理、社内でのルール整備、デジタルツールの導入など、日常的な運用体制の見直しが、届出ミスやトラブルを未然に防ぐカギとなります。
正しい届出を行うことは、外国人労働者と企業の双方にとっての信頼の基盤です。
法令を守りながら、安心して外国人を雇用できる環境を整えましょう。
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