12/24 (水)更新
EPA介護とは?制度の仕組み・受け入れ方法・特定技能との違いをわかりやすく解説
日本の介護業界では、外国人材の受け入れが急速に進む中で、「EPA介護福祉士候補者制度(EPA介護)」が大きな注目を集めています。
EPAとは経済連携協定(Economic Partnership Agreement)の略で、日本がインドネシア・フィリピン・ベトナムなどと締結した協定のもと、これらの国から介護人材を受け入れる制度です。
制度の目的は単なる労働力確保ではなく、人材育成と国際交流の促進にあります。
来日前の日本語研修を経て、介護施設で実務を学びながら国家資格である「介護福祉士」を目指すという点が特徴的です。
一方で、特定技能や在留資格「介護」など、他の外国人雇用制度も整備が進む中で、EPA介護の位置づけや活用方法に悩む事業者も増えています。
本記事では、EPA介護制度の仕組み・手続き・特定技能との違い・企業側の受け入れポイントを網羅的に解説。
制度を正しく理解し、外国人介護人材を「共に育てる存在」として迎えるための実践的な視点をお伝えします。
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EPA介護制度の概要と目的

EPA介護制度は、深刻化する日本の介護人材不足を背景に、外国人が介護分野で働きながら国家資格「介護福祉士」を取得できるよう設けられた仕組みです。
制度は日本と特定の国との経済連携協定(EPA)に基づいて運用されており、単なる労働力確保ではなく、相互の人材育成と国際協力を目的としています。
EPA介護制度では、来日前の日本語研修から資格取得後の就労まで一貫した支援体制が整えられており、一定の条件を満たすことで日本での長期就労も可能になります。
ここでは、制度の仕組みと流れ、そしてその背景を整理します。
EPA(経済連携協定)とは何か
EPA(Economic Partnership Agreement/経済連携協定)とは、日本と相手国の間で貿易・投資・人の往来などを包括的に促進する協定です。
EPA介護制度はその一環として締結され、外国人が日本で介護を学び、働く機会を得るための仕組みとして誕生しました。
この協定を通じ、単に労働者を受け入れるだけでなく、両国が人材育成や福祉分野での知見を共有することが目的とされています。
協定の対象国は段階的に拡大しており、今では東南アジアを中心に複数国との連携が進められています。
EPA介護福祉士候補者の制度概要と対象国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)
EPA介護福祉士候補者制度の対象国は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国です。
これらの国々から来日する候補者は、日本で介護業務に従事しながら介護福祉士国家試験の合格を目指すことになります。
候補者は原則として母国で看護・福祉に関連する教育を修了しており、来日前には日本語教育機関で6か月〜1年程度の語学研修を受けます。
来日後は介護施設などで実務経験を積み、3〜4年の実務期間内に国家試験に合格すれば、介護福祉士として引き続き就労が可能です。
来日前研修から国家資格取得までの流れ
EPA介護の受け入れから資格取得までの流れは以下の通りです。
- 政府間調整とマッチング(日本・相手国双方の政府機関が調整)
- 来日前の日本語研修(語学・介護基礎を学習)
- 来日・施設での就労開始(OJTを通じた実務経験)
- 国家試験受験・合格(3〜4年以内の合格を目指す)
- 介護福祉士として就労継続または帰国
このプロセスには、受け入れ施設・JICWELS(国際厚生事業団)・政府機関など複数の関係者が関わります。
候補者に対しては、日本語支援や学習環境の提供が義務付けられており、単なる労働ではなく学びながら働く制度である点が特徴です。
EPA介護制度が設立された背景と目的
EPA介護制度は、2000年代以降の日本の少子高齢化による介護人材不足を解消するために導入されました。
一方で、単なる労働力受け入れではなく、「人材育成」と「国際貢献」を両立することが基本理念とされています。
また、対象国にとっても、日本の高い介護技術や福祉制度を学び、自国の介護体制の発展に活かせるという利点があります。
EPA介護は、「雇用」だけでなく「教育」と「国際交流」を兼ね備えた仕組みとして、外国人介護人材の受け入れの中核を担っています。
EPA介護は「学びながら働く」国際人材育成制度
EPA介護制度は、外国人が日本で介護を学び、国家資格を取得し、専門職として成長できる制度です。
その根底には「相互成長」という理念があり、単なる労働受け入れではなく、国際的な人材育成プログラムとして位置づけられています。
EPAは、介護現場の人材確保と外国人のスキル向上を両立させる制度として、今後も日本の福祉分野において重要な役割を果たしていくでしょう。
EPA介護と他の在留資格(特定技能・介護ビザなど)との違い

EPA介護は、他の外国人介護人材制度(特定技能・在留資格「介護」など)とは目的や仕組みが大きく異なります。
最大の特徴は、「国家資格取得を前提とした教育型制度」である点にあります。
ここでは、それぞれの制度の違いを整理し、企業や施設がどの制度を活用すべきかを見極めるヒントを紹介します。
EPA介護と特定技能の比較(受け入れルート・要件・期間)
EPA介護と特定技能制度はいずれも外国人が介護分野で働くための制度ですが、目的や仕組み、受け入れまでの流れには明確な違いがあります。
EPAは国家資格の取得を前提とした「育成型」、特定技能は即戦力として働く「雇用型」といえます。
以下の表で、それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | EPA介護 | 特定技能(介護分野) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 国家資格取得を通じた人材育成 | 即戦力としての労働力確保 |
| 対象者 | EPA協定国の候補者(主に3カ国) | 国籍制限なし(技能試験合格者) |
| 在留期間 | 最大4年(合格後は介護資格で延長可) | 最長5年(特定技能1号の場合) |
| 日本語要件 | 来日前に研修(N3相当以上) | N4相当以上+技能試験合格 |
| 費用負担 | 政府間調整による支援あり | 企業負担中心 |
EPAは国家資格を取得して定着させる仕組みであるのに対し、特定技能は即戦力として短期間で雇用できる制度です。
介護現場の長期的人材育成を目指すならEPA、即戦力重視なら特定技能が向いています。
国家資格取得を前提とした制度の特徴
EPA介護の最大の特徴は、国家資格「介護福祉士」取得を前提としていることです。
この資格を得ることで、候補者は在留資格「介護」へ切り替え、日本で長期的に就労することが可能になります。
国家資格の取得を支援する過程で、施設は語学教育や試験対策のための体制を整える必要がありますが、これにより高い専門性と責任感を持つ人材を育成できます。
EPA介護と在留資格「介護」の違い
EPA介護と在留資格「介護」は、どちらも介護福祉士資格を有する外国人が働ける制度ですが、出発点が異なります。
- EPA介護:国家資格を取得する前提で来日し、資格取得後に「介護」へ移行
- 在留資格「介護」:すでに資格を持っている外国人が日本で働くための制度
つまりEPAは「育成型」、介護ビザは「資格保持者の就労型」と言えます。
両者は補完関係にあり、EPAで育った人材が将来的に介護ビザへ移行するケースも増えています。
各制度のメリット・デメリット比較
介護分野の人材受け入れを考える際には、「どの制度を使うか」ではなく「どの目的で使うか」が重要です。
EPA介護・特定技能・介護ビザにはそれぞれの長所と課題があり、企業の採用方針によって最適な選択は異なります。
下の表では、各制度のメリット・デメリットを整理しています。
| 制度 | 主なメリット | 主なデメリット |
|---|---|---|
| EPA介護 | 国家資格取得による長期定着・高いスキル | 教育コスト・時間がかかる |
| 特定技能 | 即戦力採用が可能・導入が容易 | 在留期間に制限・転職リスク |
| 介護ビザ | 有資格者の安定雇用が可能 | 対象者が限定的 |
EPA介護は教育型制度として長期的な投資価値が高く、特定技能は短期的な即戦力確保に適しています。
企業は、自社の人材戦略や現場のニーズに応じて、これらの制度を上手く組み合わせることが重要です。
EPA介護は「人材を育てる」制度、特定技能は「人材を活かす」制度
EPA介護制度は、外国人に学びと資格取得の機会を提供する育成型制度であり、特定技能や介護ビザは即戦力型の就労制度です。
両者の違いを理解し、目的に応じた制度選択を行うことで、持続可能な人材戦略を構築できます。
介護現場の多様化が進む中、EPAで育った有資格者が長期的なリーダー人材として現場を支える流れも今後さらに強まっていくでしょう。
EPA介護福祉士候補者を受け入れるための手続きと条件

EPA介護福祉士候補者を受け入れるには、一般的な外国人雇用とは異なり、政府間での調整・申請・研修・在留資格の認定といった複数のプロセスを踏む必要があります。
この制度は日本政府と相手国の間で正式に締結された協定に基づいて運用されており、民間企業が単独で受け入れを進めることはできません。
特に、JICWELS(国際厚生事業団)が政府公認の調整機関として重要な役割を果たしており、採用から来日後の管理まで一貫して関わります。
以下では、EPA介護福祉士候補者を受け入れる際の流れと、施設が満たすべき条件を詳しく解説します。
受け入れ申請からマッチングまでの流れ(JICWELSの役割)
EPA介護候補者の受け入れは、JICWELS(Japan International Corporation of Welfare Services)を通じて行われます。
主な流れは以下の通りです。
- 受け入れ希望申請:介護施設がJICWELSへ受け入れ希望を提出。
- 候補者とのマッチング:相手国政府機関が推薦する候補者と面接を実施。
- 採用決定・契約締結:採用が決まった候補者と正式な雇用契約を締結。
- 日本語・介護研修:来日前に6〜12か月の研修を受け、日本語能力を強化。
- 来日・配属:在留資格を取得し、日本の介護施設で就労開始。
このプロセス全体をJICWELSが管理しており、企業は個別交渉や直接採用を行わない点が特徴です。
また、候補者の生活・学習・就労を総合的にサポートする体制が求められます。
受け入れ施設に求められる要件(研修・日本語支援体制など)
EPA候補者を受け入れる施設には、一定の条件と体制整備が義務付けられています。
主な要件は以下の通りです。
- 常勤介護職員数や入所者数が基準を満たしていること
- 日本語教育の支援体制を設けていること(学習教材・講師など)
- 国家試験受験に向けた学習支援の仕組みを持つこと
- 候補者が安心して生活できる寮・住居・生活サポートを整えること
- 雇用契約内容を多言語で明確化していること
特に、日本語支援体制の有無が合格率や定着率に直結します。
単に労働力としてではなく、教育的な観点から支援する姿勢が求められます。
在留資格認定・契約締結・入国までの手続き
受け入れが決まると、在留資格「特定活動(EPA介護福祉士候補者)」の認定手続きが行われます。
手続きの流れは次の通りです。
- 雇用契約書・研修計画書の作成
- 在留資格認定証明書の交付申請(入管庁へ提出)
- 証明書の送付後、候補者が現地日本大使館でビザ申請
- ビザ取得後に来日・入国審査・就労開始
この一連の手続きは、JICWELSと施設、入管庁の三者が連携して進行します。
また、入国直後にはオリエンテーションや生活ガイダンスを実施し、候補者が職場や地域に早く馴染めるよう支援することが重要です。
国家試験合格までのサポートと就労期間の管理
EPA介護候補者は、原則3〜4年の間に介護福祉士国家試験に合格することが求められます。
この期間中、施設は以下のような支援を行うことが望まれます。
- 試験対策講座や模擬試験の提供
- 勤務シフトの柔軟化による学習時間の確保
- 合格者・先輩社員によるメンタリング制度
- 生活相談・メンタルサポート体制の構築
国家試験に合格すれば、候補者は在留資格「介護」へ変更し、無期限での就労が可能になります。
合格率を高めるためには、職場全体で候補者を育てる文化を醸成することが不可欠です。
EPA受け入れは「雇用」ではなく「共育(きょういく)」の仕組み
EPA介護の受け入れは、単なる採用活動ではなく、外国人と共に成長していく教育的な取り組みです。
施設側の支援体制次第で、候補者のモチベーションや国家試験合格率、ひいては定着率にも大きな差が生まれます。
つまり、EPA制度を成功させる鍵は「採用の手順」よりも受け入れ後の育成とサポート体制にあります。
この視点を持てる施設こそ、長期的に信頼される「選ばれる職場」として発展していくでしょう。
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EPA介護の受け入れによるメリットと課題

EPA制度は、介護現場における外国人受け入れの先駆けとしてスタートしました。
日本の介護業界にとっては、慢性的な人材不足を補いながら、専門性の高い介護人材を育てられる仕組みでもあります。
一方で、教育負担や文化的なギャップなど、企業・施設側に求められる対応も多いのが実情です。
ここでは、EPA介護を導入することによる主なメリットと課題を整理します。
介護人材不足の解消と長期雇用の安定化
EPA介護の最大のメリットは、慢性的な人手不足の解消と安定した長期雇用の実現です。
来日前から日本語研修を受けた人材が入職するため、即戦力としての活躍が期待できます。
さらに、国家資格を取得した後は在留資格「介護」で長期就労が可能となり、継続的な雇用がしやすい点も魅力です。
この制度は単なる短期労働ではなく、人材育成を通じた職場定着を目的として設計されています。
国家資格を取得した人材の定着効果
EPA候補者は、介護福祉士資格を取得することで、専門職としての自覚と責任感を持ちます。
これにより、離職率が下がり、現場の安定につながるケースが多く見られます。
また、有資格者としてチームリーダーや教育担当などへキャリアアップする道も開け、現場の中核を担う人材に成長する可能性があります。
この点は、特定技能などの短期制度にはない、EPAならではの強みです。
言語・文化面でのサポート不足による課題
一方で課題となるのが、言語・文化の壁です。
介護現場では利用者との会話や細やかな対応が求められるため、日本語能力が不十分なまま現場に出ると誤解やストレスを招く可能性があります。
そのため、受け入れ施設には以下のような支援が求められます。
- 継続的な日本語教育の実施
- 文化や宗教習慣を尊重する体制づくり
- コミュニケーションを円滑にする社内教育
単に働く機会を提供するだけでなく、理解と共感を育む職場づくりが定着成功の鍵となります。
受け入れ企業が直面する費用・管理負担
EPA制度は教育・支援型の仕組みであるため、初期コストや管理負担が発生します。
たとえば、日本語教育費・研修講師費・教材費・通訳サポートなどが必要です。
また、国家試験受験までのスケジュール管理や、生活サポートに関わる労務調整も負担となることがあります。
しかし、これらは一時的な投資であり、資格取得後の安定雇用と人材育成効果で十分に回収できるというのが現場の声です。
EPA受け入れは「育てる採用」が成功の鍵
EPA介護の受け入れは、即戦力の確保と同時に、長期的な人材育成と職場の多様化推進を実現する制度です。
費用やサポートの負担はあるものの、それ以上に定着率の高さや専門性の向上といった大きな成果が期待できます。
EPA制度を成功させるポイントは、「雇う」から「育てる」への意識転換です。
この姿勢を持つ企業・施設こそが、今後の介護人材競争で「選ばれる受け入れ先」になっていくでしょう。
「育成就労」や特定技能との関係性・今後の動向

EPA介護制度は、外国人介護人材の受け入れルートとして長く機能してきましたが、近年は「特定技能」や「育成就労制度」など、他の制度との連携が注目されています。
これらの制度は目的こそ異なりますが、共通して「外国人が日本で介護キャリアを形成できる仕組みづくり」を目指しています。
ここでは、EPA介護と特定技能の制度的なつながり、今後のキャリアルートのあり方、そして日本政府が進める制度統合の方向性について整理します。
特定技能との制度上の連携と移行のしやすさ
EPA介護制度と特定技能制度は、制度設計の出発点こそ異なるものの、人材のキャリア継続性を高めるために連携が進められています。
EPA介護で国家試験に不合格だった候補者が、一定の条件を満たせば「特定技能(介護分野)」として引き続き日本で働くことが可能です。
これは、せっかく育成した人材を帰国させず、実務経験を活かして日本の介護現場で活躍できるようにするための措置です。
また、EPA介護で培った日本語能力や介護スキルは、特定技能への移行時にも高く評価されるため、スムーズな在留資格切り替えができるのも特徴です。
「EPA→特定技能→在留資格介護」へのキャリアルート化
現在、政府が目指しているのは、EPAを出発点とした一貫した介護キャリアルートの整備です。
- EPA介護福祉士候補者として来日(学びながら実務経験を積む)
- 国家試験不合格の場合は特定技能で継続就労
- 国家資格を取得したら在留資格「介護」へ移行し、長期就労
このような段階的な仕組みによって、外国人が日本でキャリアを描ける制度構造が形成されつつあります。
一方で、受け入れ企業側も、長期的な視点で人材育成・キャリア支援を行う体制を整えることが求められます。
制度統合の方向性と今後の展望
2024年以降、政府は技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を導入する方向で調整を進めています。
この新制度は、技能実習と特定技能を一体化し、より公平で透明性のある外国人雇用制度を目指すものです。
EPA介護との直接的な統合は想定されていないものの、育成就労制度が運用されることで、外国人が日本で継続的にスキルを磨き、資格取得まで進める環境がさらに整備される見込みです。
将来的には、
- 育成就労で基礎スキルを学ぶ
- 特定技能で実務経験を積む
- EPA・介護ビザで資格を得て定着する
という多層的で柔軟な受け入れ構造が形成され、外国人介護人材が日本社会で長く活躍できる時代へと移行していくでしょう。
EPAは「介護人材キャリアの起点」として今後も重要
EPA介護は、外国人介護人材の育成・定着を支える出発点として、今後も重要な役割を果たしていきます。
「育成就労」や「特定技能」との連携によって、資格・経験・定着をつなぐキャリアの道筋が明確になりつつあります。
制度の枠を超えた視点で外国人人材を育成できる企業こそが、これからの介護人材確保の中心的存在になるでしょう。
EPA介護人材の受け入れを成功させるためのポイント

EPA制度を活用する上で最も大切なのは、候補者を「労働力」としてではなく「共に成長する人材」として迎え入れる姿勢です。
単に制度を理解するだけでなく、教育・生活・文化支援の三本柱を整備することが、受け入れ成功の鍵となります。
ここでは、EPA介護人材を受け入れる施設が押さえておくべきポイントを具体的に紹介します。
日本語教育・生活支援体制の構築
EPA候補者の多くは来日前に日本語研修を受けていますが、来日後も現場レベルの日本語力向上が不可欠です。
業務用語・介護記録・利用者との会話に対応するため、次のような支援が効果的です。
- 勤務時間内での日本語学習サポート
- 外部講師やオンライン教材の活用
- 現場で使える会話練習の導入
また、住居や生活支援の充実も大切です。
生活基盤が安定すれば、学習にも集中しやすく、国家試験へのモチベーション維持につながります。
国家試験合格率を高める教育プランづくり
EPA候補者は国家資格「介護福祉士」合格を目指しますが、試験内容は日本語が多く、言語障壁が合格の大きな壁となります。
そのため、施設側では以下のような教育計画を立てることが望まれます。
- 試験対策講座・模擬試験の定期実施
- 学習進捗を可視化するスケジュール管理
- 日本人職員による学習支援・メンタリング
このように個別に寄り添う教育体制を構築することで、合格率・定着率の双方を高めることができます。
現場とのコミュニケーション強化と多文化理解
外国人と日本人が共に働く職場では、文化や価値観の違いから誤解が生じやすい場面もあります。
そのため、多文化共生の視点を職場全体で共有することが欠かせません。
- 定期的な異文化理解研修の実施
- チーム内の情報共有・相談体制の整備
- 感謝・承認を伝えるコミュニケーションの習慣化
これにより、EPA候補者が「自分は職場の一員だ」と実感できる職場文化を形成できます。
定着・キャリア形成を支えるフォローアップ体制
EPA候補者が国家試験に合格し、介護福祉士として就労を続けるためには、入職後のフォローアップが欠かせません。
離職を防ぐためには、次のような取り組みが効果的です。
- キャリアパスの明示(昇進・正社員登用)
- 定期面談によるモチベーション確認
- メンター制度・日本語学習支援の継続
合格後も「成長し続けられる環境」を整えることで、EPA制度は単なる受け入れではなく企業の人材育成施策の一部として機能します。
EPA成功の鍵は「教育・生活・文化支援の三位一体」
EPA介護を成功させるためには、教育(学び)・生活(安心)・文化(理解)の三つをバランス良く整えることが欠かせません。
この3要素が揃うことで、候補者は国家資格に合格し、介護職として長く日本で活躍できるようになります。
制度を「使う」だけでなく、「育てる・支える」視点を持てる施設こそが、EPAの真の価値を引き出せると言えるでしょう。
EPA介護受け入れの今後 —「選ばれる施設」になるために

EPA介護制度は、日本の介護現場において外国人材の受け入れを本格化させた先駆的な仕組みです。
今後は、育成就労制度や特定技能制度との連携強化が進むなかで、EPAもまた進化の時を迎えています。
単なる「人手不足の補填」ではなく、外国人がキャリアを描き、成長できる職場づくりが求められる時代へと変化しているのです。
その中で、企業や介護施設が「選ばれる存在」となるためには、雇用の透明性や教育体制の整備に加え、国際的な視点での人材育成戦略が欠かせません。
この章では、EPA介護を活用する企業・施設が次の時代に向けて準備すべき方向性を解説します。
公平な雇用とキャリア支援が人材を惹きつける
外国人介護人材にとって、最も重要なのは「安心して働ける環境」と「成長できる仕組み」です。
EPA介護の本来の目的は、技能の移転だけでなく、人材の育成とキャリア形成の支援にあります。
そのため、施設側には以下のような取り組みが求められます。
- 給与・待遇・評価を日本人と同等に設定する
- 国家資格取得後の昇進や役職登用を明確に示す
- 能力に応じた研修・キャリア開発制度を整備する
これらを実現することで、EPA候補者は「ここで働きたい」「この職場で成長したい」と感じやすくなります。
公平で一貫性のあるキャリア支援が、優秀な外国人材を惹きつける最大の要素となるのです。
EPA制度を活かした国際的な人材育成の可能性
EPAは単なる労働者受け入れ制度ではなく、国際的な介護人材育成の枠組みでもあります。
フィリピン・インドネシア・ベトナムといった協定国との間では、教育・資格制度の共有や人材交流も進められています。
たとえば、以下のような取り組みが広がっています。
- 日本の介護教育カリキュラムを現地で導入
- 日本で資格を取得した人材が、母国で指導者として活躍
- 海外提携校とのインターンシップ制度の設立
こうした国際的な人材循環を推進することは、日本の介護業界にとっても「質の高いグローバル人材」を育てるチャンスとなります。
EPAを軸にした教育・育成ネットワークを拡大することで、海外と日本をつなぐ新しい介護人材モデルを確立できるでしょう。
特定技能・育成就労制度への対応を見据えた準備
今後、「育成就労制度」の導入により、外国人雇用の枠組みは大きく再編される見込みです。
EPA介護制度を活用している施設にとっても、制度変更に柔軟に対応できる準備が欠かせません。
具体的には、次のような視点が重要になります。
- 育成就労や特定技能との連携を前提にしたキャリアルート設計
- 在留資格変更に伴う法務・手続きの管理体制の整備
- 制度が変わっても継続して働ける職場環境と教育基盤の構築
つまり、EPA介護を「独立した制度」として扱うのではなく、外国人材育成の入り口として位置づけることが求められます。
これにより、今後制度が変化しても、施設として安定的に人材を確保・育成できる体制を維持できるでしょう。
EPA介護は「共に成長する未来」を築く礎
EPA介護制度は、日本が世界に先駆けて築いた外国人介護人材育成のモデルです。
制度の変化が続く中でも、EPAを通じて培われた「教育・支援・共生」の考え方は、今後の外国人雇用の基盤となっていきます。
これからの時代に「選ばれる施設」とは、制度を活用するだけでなく、共に働く人を育て、未来を描ける職場です。
EPAを軸に、育成就労や特定技能との連携を見据えながら、共生と成長を両立する経営を実現できるかどうか。
それが、これからの介護業界をリードする施設の条件となるでしょう。
まとめ|EPA介護は「共に育つ制度」として進化を続ける

EPA介護制度は、単なる外国人受け入れの枠組みではなく、国際的な人材育成と共生社会の実現を目指す仕組みです。
来日前の教育から国家資格取得、そしてキャリア形成に至るまでの一連の流れは、外国人にとっても日本にとっても「育て、共に成長する」モデルケースといえるでしょう。
また、特定技能や育成就労制度の登場により、EPAで培われた人材育成のノウハウは今後さらに重要性を増していきます。
EPA出身者が日本社会に長期的に定着し、介護業界を支える存在へと成長していくことは、多文化共生型の労働環境を築く第一歩でもあります。
これからの介護業界で求められるのは、「外国人を雇う」から「共に働き、共に育つ」への意識転換です。
EPA介護を起点に、教育・支援・共生を軸にした人材育成を進めることこそが、「選ばれる施設」への確実な道となるでしょう。
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