
07/11 (金)更新
特定技能外国人はアルバイトOK?採用前に知るべき在留資格と注意点
少子高齢化による人手不足が深刻化するなか、即戦力となる外国人材の活用は、多くの企業にとって重要な選択肢となっています。
なかでも「特定技能」ビザを持つ外国人は、一定の専門性と日本語能力を備えた労働力として注目されていますが、「アルバイトとして雇用できるのか?」という点には誤解や曖昧な理解も多く見受けられます。
特定技能1号はフルタイム雇用が前提とされており、原則としてアルバイトやパートタイムでの雇用は認められていません。
しかし、制度の詳細を正しく理解すれば、例外的に可能なケースや、アルバイト雇用が可能な他の在留資格との違いも見えてきます。
この記事では、「特定技能外国人をアルバイトとして雇用できるのか?」という企業側の疑問に対し、制度の原則・例外・関連する在留資格の整理・企業が注意すべき法的リスクまで、網羅的に解説します。
違法雇用を防ぎながら、外国人材を適切に活用するためのヒントを掴んでください。
特定技能外国人をアルバイトで雇用できるのか?原則と例外
企業が外国人を採用する際、在留資格によって就労の可否や働き方の条件が大きく異なります。
とくに「特定技能」ビザを持つ外国人に対し、「アルバイトとして働いてもらえるのか?」と疑問を抱く企業も多いのではないでしょうか。
実は、特定技能1号には明確な就労条件が設定されており、原則としてアルバイトやパートタイムでの雇用はできません。
一方で、業種によっては例外的に派遣という形での就労が認められているケースも存在します。
この章では、制度の基本原則とその例外について整理しながら、企業が誤解しやすいポイントについても解説していきます。
特定技能1号はフルタイム前提の直接雇用が原則
「特定技能1号」は、一定の専門性を持つ外国人が人手不足分野で働くことを可能にする在留資格です。
しかし、その就労形態には明確な制約があります。
雇用は原則「フルタイム」で「直接雇用」であることが求められており、短時間労働や日雇い的な業務には適しません。
このような制度設計は、日本で長期的かつ安定的に人材を確保したいという政策目的に基づいています。
そのため、アルバイトやパートといった「一時的な労働力の補填」は、特定技能の枠組みとはそもそも適合しないのです。
また、雇用主である企業が「受入れ機関」として登録されている必要があり、登録支援機関と連携して外国人の生活支援を行う義務も課されています。
こうした背景からも、アルバイト雇用は想定されていません。
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派遣での就労が可能な分野(農業・漁業など)
ただし、すべての分野で直接雇用が義務づけられているわけではありません。
農業と漁業に関しては例外的に派遣での就労が認められています。
これは、季節によって人手不足が変動するという業界特性に配慮した措置です。
例えば、農繁期のみ人手を増やしたい農家では、派遣会社を通じて特定技能外国人を短期的に雇用することが可能です。
しかし、この派遣就労も正式なルートで手続きを行い、就業時間・就業場所・業務内容などが明確に契約で定められていることが前提です。
口約束や曖昧な条件での雇用は、不法就労とみなされる可能性があるため注意が必要です。
特定技能ビザでのアルバイト就労は不可とされる理由
なぜここまで明確にアルバイト就労が禁止されているのでしょうか。
その理由は主に以下の3点にあります。
- 制度の目的と整合性が取れないため
特定技能制度は、日本の人手不足を補うために「就労者としての外国人」を受け入れる仕組みです。
フルタイムで安定的に働くことが前提であり、学生アルバイトのような働き方とは合致しません。 - 支援体制の前提が崩れるため
受け入れ企業には、外国人の生活支援や労働環境の整備といった「支援計画の実施義務」があります。
短時間の不安定な雇用ではこの支援義務が果たされにくく、制度趣旨から外れてしまいます。 - 不正雇用・労働搾取の温床となり得るため
アルバイトという形で雇用した場合、法的な責任の所在が曖昧になりがちです。
結果として、適正な労働時間・賃金が守られず、トラブルに発展するリスクが高まります。
これらの理由から、特定技能外国人をアルバイトとして雇うことは基本的に認められておらず、企業は在留資格の趣旨に即した適切な雇用形態を選ぶ必要があります。
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▼原則を理解して適切な雇用判断を
特定技能外国人は原則としてフルタイムの直接雇用が求められ、アルバイトという形での就労は認められていません。
ただし、農業や漁業分野では例外的に派遣就労が可能となっているため、該当する業種の場合は制度を正しく理解して活用することが重要です。
制度趣旨に反する雇用は、不法就労や行政処分といった重大なリスクにつながる可能性もあるため、採用を検討する際には在留カードの確認や法務省のガイドラインなどをしっかりと参照するようにしましょう。
企業の信頼を守るためにも、正しい雇用判断が求められます。
アルバイトとしての雇用が可能な在留資格一覧
外国人材を雇用する際、「どの在留資格ならアルバイト雇用が可能なのか」は非常に重要なポイントです。
特に特定技能や技能実習と混同されやすい他の在留資格の中には、条件付きでアルバイトが可能なものや、そもそも制限がないものもあります。
ここでは、企業が適切に雇用判断を下せるように、アルバイトとしての雇用が可能な代表的な在留資格の種類と、その特徴をわかりやすく整理して解説します。
誤った採用によるトラブルを防ぐためにも、ぜひチェックしておきましょう。
永住者・日本人の配偶者・定住者などの「身分系在留資格」
「永住者」「日本人の配偶者」「定住者」などのいわゆる「身分に基づく在留資格」を持つ外国人については、働く時間や職種に制限はありません。
これは、これらの在留資格が「家族との生活維持」や「日本社会との密接な関係性」を前提としたものであり、就労活動が自由に認められているためです。
したがって、アルバイト・パート・正社員など、どのような形態でも雇用が可能です。
企業としては、労働基準法さえ守っていれば特別な許可や手続きは必要ありませんが、在留カードを確認して資格内容が上記に該当するかを必ずチェックすることが重要です。
留学・家族滞在での資格外活動許可の取得による就労
「留学」や「家族滞在」など、本来は就労が認められていない在留資格であっても、資格外活動許可を取得すればアルバイトが可能になります。
たとえば、留学生は出入国在留管理庁から資格外活動許可を得れば、週28時間以内(学校の長期休暇中は1日8時間)のアルバイトが認められます。
家族滞在も同様の範囲で働くことができます。
ただし、以下のような注意点があります。
- 許可を得る前のアルバイトは不法就労扱いになる
- 時間制限を超えて働くと資格外活動違反に該当し、在留資格の更新や変更に支障が出る
- 就労先企業にも法的責任が及ぶ可能性がある
そのため、採用前に「資格外活動許可」欄の有無と有効性を確認することが不可欠です。
「技術・人文知識・国際業務」などの就労系ビザ保持者
「技術・人文知識・国際業務」などの就労系の在留資格を持つ外国人も、日本国内で労働することが認められています。
ただしこの場合、許可された職務内容以外のアルバイトは原則不可です。
たとえば、「ITエンジニア」として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ方が、コンビニや飲食店でのアルバイトを行うことは原則違法です。
企業がこうした人材をアルバイトとして雇用する場合は、その仕事内容が在留資格の範囲内に含まれているかどうかを十分に確認する必要があります。
例
- OK – 英語教師が英語教室での業務を掛け持ちする(同じカテゴリー内)
- NG – 事務職の資格を持つ人が飲食業で働く
就労系ビザは「職務内容が限定されている」点に注意が必要です。
特定活動(ワーホリ等)の柔軟な就労範囲
「特定活動」の中にも、ワーキングホリデーや高度専門職準備期間など、アルバイトが自由にできるケースがあります。
とくにワーホリビザ(ワーキングホリデー)は、観光と就労の両立を目的としており、フルタイム・パートタイムを問わず働くことが可能です。
また、就職活動中の「特定活動」や、大学卒業後の起業準備期間にあたる特定活動など、比較的自由度の高いものもあります。
ただし一方で、医療インターンや家事支援活動など「活動範囲が限定されているタイプ」も存在するため注意が必要です。
企業側としては、「特定活動」と書かれた在留カードを見ただけでは就労可否が判断できないことが多いため、活動内容欄の記載と詳細な就労範囲を確認することが必須です。
▼在留資格ごとの就労可能範囲を正確に理解する
アルバイトとしての雇用が可能な在留資格は多岐にわたり、自由に働けるものもあれば、厳しい制限があるものも存在します。
特に、留学・家族滞在・就労系ビザ・特定活動といった資格では、就労可能な時間や職種に細かい条件が設けられていることが一般的です。
これらを正確に理解せずに採用を進めると、企業側にもリスクが及ぶ可能性があります。
採用前には必ず在留カードの記載内容を確認し、必要であれば資格外活動許可や就労制限の有無をチェックすることで、安全かつ適法な外国人雇用を実現しましょう。
資格外活動許可とは?アルバイト前に確認すべきポイント
外国人をアルバイトとして採用する際に、見落としてはならないのが「資格外活動許可」の有無です。
本来、留学や家族滞在などの在留資格では原則として就労が認められていませんが、「資格外活動許可」を取得すれば、所定の条件のもとでアルバイトが可能となります。
一方で、この許可を得ずに働いた場合には、不法就労とみなされ、本人だけでなく雇用主にも罰則が科される可能性があります。
ここでは、企業側が採用前に確認すべき資格外活動許可の概要と、申請の流れ、違反時のリスクについて詳しく解説します。
資格外活動許可の申請が必要なケースとは
資格外活動許可は、在留資格に本来含まれていない活動(=本業以外の就労など)を行う場合に必要な許可です。
以下のようなケースでは、申請と許可取得が必要です。
- 「留学」ビザの外国人がアルバイトをする場合(週28時間以内の範囲で)
- 「家族滞在」ビザの方が就労を希望する場合
- 研究や研修目的で滞在中の外国人が、副業を希望する場合
一方、永住者や日本人の配偶者、定住者のように、在留資格そのものに就労が含まれる場合は、資格外活動許可は不要です。
企業としては、採用時に在留カードの資格欄と、資格外活動許可の有無を必ず確認しなければなりません。
許可がない状態で就労させると、企業にも法的責任が及ぶおそれがあります。
申請手続きと許可が下りるまでの期間
資格外活動許可の申請は、本人が出入国在留管理局に行います。
主な手続きの流れは以下の通りです。
- 申請書の記入と必要書類の準備
- 申請書
- パスポートと在留カード
- 雇用予定先の勤務条件書や理由書(学校の推薦状が必要な場合も)
- 申請書
- 管轄の出入国在留管理局で申請
- 審査期間:約2週間~1ヶ月
- 混雑状況により前後します。
許可が下りると、在留カードの裏面に「資格外活動許可:包括許可」などの記載がなされます。
この記載があることで、企業は安心して雇用することができます。
ただし、資格外活動許可が下りるまでは就労はできません。内定を出しても勤務開始日は許可取得後に設定することが安全です。
資格外活動違反に対する罰則と企業リスク
資格外活動許可を得ずに働いた場合、当事者である外国人は資格外活動違反(入管法違反)となり、次のようなリスクが生じます。
- 強制退去処分
- 今後の在留資格の取得が困難になる
- 刑事罰が科される場合もある
さらに、雇用主側も重大な責任を問われます。
- 不法就労助長罪に該当する場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 企業名の公表・行政指導・許認可停止などの影響
「知らなかった」「本人が大丈夫と言っていた」は通用しないため、採用前の在留カード確認と、資格外活動許可の有無のチェックは必須です。
▼許可の確認が企業を守る第一歩
外国人材をアルバイトとして雇用する際、資格外活動許可の有無を確認することは企業にとって極めて重要なリスクマネジメントです。
留学生や家族滞在など、就労が前提ではない在留資格を持つ外国人が働くには、この許可が法的に必要であり、無許可の就労は違法行為に直結します。
企業は、在留カードの記載と就労可否を丁寧に確認し、必要であれば本人に申請を促すことで、法令遵守と安全な外国人雇用の土台を築くことができます。
正しい知識が、企業と外国人双方の未来を守ります。
特定技能や技能実習制度での副業・アルバイトに関する注意点
外国人労働者の採用において、「本業以外で働けるのか?」という副業・アルバイトに関する質問が多く寄せられます。
しかし、特定技能や技能実習制度といった在留資格では、就労の内容や雇用形態が厳しく制限されており、原則として副業やアルバイトは禁止されています。
このルールを破ると、本人だけでなく企業にも重大なペナルティが科されるリスクがあります。
ここでは、制度上の禁止事項やチェックポイント、違反時の影響などを具体的に解説します。
在留カードで確認すべき記載事項
副業やアルバイトが可能かどうかを判断するうえで、まず確認すべきは本人の在留カードの内容です。以下のポイントを必ずチェックしましょう。
- 在留資格の種類(特定技能・技能実習など)
- 在留期間の満了日
- 就労制限の有無(裏面の「資格外活動許可」記載)
特定技能1号や技能実習では、裏面に「就労不可」や「特定の業務に限る」と明記されています。
これはあくまで本来の雇用契約に基づく業務のみが認められ、副業やアルバイトは含まれないという意味です。
たとえば、技能実習の在留カードには「技術習得のための業務に限る」などと記載されており、他業種での勤務は違反行為となります。
特定技能外国人が副業した場合の罰則
特定技能1号の在留資格はフルタイム前提での雇用を前提としており、副業やアルバイトは認められていません。もし副業が発覚した場合、以下のようなリスクが生じます。
- 本人側のリスク
- 在留資格の取消し
- 強制退去・再入国禁止
- 信用情報に傷が付き、将来的な在留資格取得が困難に
- 在留資格の取消し
- 雇用側(副業先企業)のリスク
- 不法就労助長罪の適用(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)
- 企業名の公表や行政指導
- 業種によっては事業許可の取り消しの可能性も
- 不法就労助長罪の適用(3年以下の懲役、300万円以下の罰金)
本人が「大丈夫」と言っていても、在留資格上は禁止されている以上、副業を容認した企業側にも重大な責任が問われる点に注意が必要です。
技能実習生のアルバイトは原則禁止、その理由とは
技能実習制度の趣旨は「開発途上国への技術移転」であり、あくまで特定の業務内容に限定した技術の習得が目的です。
そのため、実習生が他の業種・職種でアルバイトを行うことは、制度の目的に反する行為とみなされます。
この原則には以下のような背景があります。
- 技能の習得に集中させるため
- 労働者ではなく「実習生」としての立場を守るため
- 労働力確保目的の不正利用を防止するため
仮に実習外の労働が発覚すれば、実習生本人は帰国を余儀なくされ、企業も実習受入れ停止処分を受けるリスクがあります。
実習生アルバイト発覚時の企業側の責任
技能実習生が許可されていないアルバイトをしていた場合、その責任は実習生本人だけでなく、受け入れ企業やアルバイト先の事業者にも及びます。
特にアルバイト先が外国人の在留資格を確認せずに雇用した場合、以下の罰則が考えられます。
- 不法就労助長罪に該当
- 監理団体からの除名処分
- 受け入れ停止や実習枠縮小といった行政指導
また、監理団体の責任も問われることになり、企業と団体の信頼を大きく損なう可能性があります。
▼副業・アルバイトは原則NG、確認と教育がカギ
特定技能や技能実習といった在留資格では、副業やアルバイトは原則として認められていません。
そのため、企業は採用や業務中の管理において、在留カードの記載や就労内容を厳密に確認する必要があります。
もし許可されていない就労が発覚すれば、本人だけでなく企業側にも重大な法的・信用上のリスクが及ぶため、教育体制の強化や定期的なヒアリングも欠かせません。
外国人雇用を行う以上、法令を正しく理解し、トラブルの芽を未然に防ぐ姿勢が重要です。
留学生アルバイトとの違いと「特定技能人材」の代替可能性
近年、人手不足の対策として外国人アルバイトの活用を検討する企業が増加しています。
特に飲食・小売・介護などでは、留学生が多く働いていますが、制度的な制限も多く、長期雇用には不安が残ることも。
そこで注目されているのが「特定技能人材」の活用です。
アルバイトとしての就労はできませんが、フルタイムでの長期就労が可能であり、人材定着にもつながるという点で、留学生アルバイトとは根本的に異なります。
本章では、留学生と特定技能人材の違いや、それぞれのメリット・制限、そして特定技能への移行の流れについて詳しく解説します。
留学生のアルバイト時間上限と制限
留学生は「資格外活動許可」を取得すればアルバイトが可能ですが、その働き方には厳しい時間制限があります。
- 原則 – 週28時間以内(長期休暇中は1日8時間まで)
- 許可を得ていない業種では就労不可(風俗・パチンコなど)
- 深夜勤務も基本的に禁止
この制限の中で働くため、企業側もシフト調整や戦力化に苦労することが多いのが実情です。
また、学業が本業のため、突然のテストや帰国で退職するケースも珍しくありません。
特定技能人材との違い(労働時間・就労安定性)
特定技能人材は、在留資格に基づいてフルタイムでの就労が認められている外国人労働者で、留学生とは以下の点で明確に異なります。
比較項目 | 留学生 | 特定技能 |
就労時間 | 週28時間まで | 週40時間(フルタイム) |
就労目的 | 学費・生活費補助 | 生活のための正規雇用 |
雇用期間 | 学業終了や卒業で終了することが多い | 最長5年間の在留可能(更新あり) |
業務制限 | 職種制限あり・一部業種不可 | 指定分野であれば就労可能 |
シフト調整 | 授業・テストの影響あり | 安定してフルシフト勤務可能 |
このように、特定技能人材の方が労働力としての安定性や戦力化のしやすさが高いことがわかります。
特定技能人材が長期雇用に向く理由
特定技能人材は、日本政府が深刻な人手不足を補うために制度化した在留資格であり、一定の技能と日本語能力を有する外国人が対象です。
以下の理由から、長期雇用に適しています。
- 就労目的で来日しており、職場定着率が高い
- 入国前に技能試験・日本語試験を合格済み
- 就労可能分野が限定されているため、企業とのマッチング精度が高い
- 5年間まで在留可能で、企業側も計画的な人材育成がしやすい
一時的な人手ではなく、「育成して戦力化する」ことを前提とした雇用が可能なのが、留学生との最大の違いです。
留学生から特定技能への移行とその利点
実は、留学生として日本に滞在している外国人が、特定技能に在留資格を変更することも可能です。
これは、両制度の連携による柔軟な人材活用の一例と言えます。
留学生が特定技能に移行するメリットは次の通りです。
- 在留資格を変更すれば、フルタイムで安定して働ける
- 長期雇用に切り替えることで、企業側も人材確保が容易になる
- すでに日本で生活しているため、文化・言語への適応が進んでいる
企業側としては、優秀なアルバイト留学生を見つけた際に、特定技能人材として引き続き雇用できる可能性があるというのは、大きな利点です。
▼短期的な労働力確保か、長期戦力化かを見極める
留学生のアルバイトは、短期的な人手不足には有効ですが、シフト制限や在留期限などから長期的な雇用には向かない側面もあります。
一方、特定技能人材は、法的にも安定した就労が可能な戦力として位置づけられており、教育や育成を前提とした雇用が可能です。
企業は、即戦力を一時的に求めるのか、それとも将来を見据えた人材育成を行うのか、自社の目的に応じて適切な在留資格と制度を活用することが鍵となります。
在留資格変更中や転職時のアルバイト制限に注意
外国人を雇用するうえで見落とされがちなのが、在留資格の変更手続き中や転職期間中の「就労制限」です。
たとえば「特定技能」への変更申請中や、他社からの転職途中である外国人を、一時的にアルバイトとして雇用したいと考える企業もありますが、これは法的にリスクを伴う行為となる場合があります。
本セクションでは、在留資格変更中や転職時に発生しやすい就労制限や、アルバイト採用時の注意点について詳しく解説します。
在留資格変更中は他社でのアルバイトが禁止される理由
在留資格を変更する期間中(例:留学→特定技能など)は、「新たな在留資格の許可が下りるまで」就労が認められないのが原則です。
これは、変更申請中の身分は「審査待ち」状態であり、就労許可の有無が確定していないためです。
特に、以下のようなケースでの就労は不法就労と見なされる可能性があるため注意が必要です。
- 留学から特定技能への変更中にアルバイト継続
- 技術・人文知識・国際業務などから特定技能への切り替え中の副業
一時的な人手不足の補填としてアルバイトを依頼したとしても、本人と企業の双方が処罰対象になるリスクがあります。
転職予定の特定技能外国人をアルバイトで採用してよいか?
たとえば、ある企業での雇用契約が終了し、次の企業への転職手続き中である特定技能外国人を、「その間だけアルバイトで雇いたい」と考える企業もありますが、このような採用も原則NGです。
特定技能ビザは「所属機関(就労先)」が決まっていることを前提とした在留資格のため、雇用元が不明確な期間中は働くこと自体が認められていません。
たとえ次の企業が決まっていても、在留カードの内容が更新されていない状態では、その人材を業務に従事させることはできません。
さらに注意すべき点として、資格外活動許可を取得していない場合、そもそも副業やアルバイト自体が認められません。
変更・移行のタイミングで生じる雇用リスク
在留資格変更や転職が関係する局面では、雇用契約のタイミング・申請の進捗・就労開始時期を慎重に見極める必要があります。
たとえば次のようなリスクが存在します。
- 雇用開始前に在留資格変更が完了せず、入管から不法就労とみなされる
- 在留カードの更新前に勤務を始め、企業側が不正就労助長罪に問われる
- 対象者が資格外活動許可を得ていないにも関わらず副業させてしまう
企業は、採用したい人材が「現在どの在留資格で、どのステータスにあるのか」を正確に確認することが求められます。
特に転職や在留資格変更の「狭間の期間」はリスクが高いため、社内での共有と判断基準の明確化が不可欠です。
▼制度を知らずに採用すると、企業側が責任を問われる
在留資格の変更中や転職タイミングでのアルバイト採用は、一見柔軟な対応に見えても、法的には極めて危険な行為となる可能性があります。
就労可能かどうかの判断を誤れば、企業が不法就労助長罪などで処罰されるリスクも。
採用前には、必ず以下の点を確認しましょう。
- 在留カードに記載された現在の資格
- 資格外活動許可の有無
- 変更・転職申請の進行状況と許可日
企業としては、一時的な人手不足に対処するためであっても、法令を遵守した採用判断が不可欠です。
人材を守るためにも、自社を守るためにも、在留資格の運用について正しい知識を持つことが求められます。
なぜ「アルバイト」にこだわるのか?企業と外国人双方のニーズを再考する
外国人雇用に関する相談の中で、しばしば耳にするのが「特定技能でアルバイトはできないの?」という問いです。
制度的には不可能であると分かっていても、企業側・外国人側の双方に“アルバイトで済ませたい/働きたい”というニーズが根強く存在しています。
この背景には、人手不足や柔軟な働き方への希望など、経済・労働構造に起因する深い課題があります。
本セクションでは、なぜ「アルバイト」という形式にこだわりが生まれるのかを掘り下げながら、特定技能人材の本来の活用方法を見直すヒントをお伝えします。
企業側の「人手不足=短期就労」で済ませたい意識
中小企業や飲食・小売・介護・建設といった現場では、慢性的な人手不足が続いています。
しかし、正社員やフルタイム雇用を前提とした人材育成にはコストも時間もかかるため、短期的に穴を埋める「即戦力的な労働力」としてのアルバイト雇用が望まれているのが実情です。
企業側からすると、
- 「今月からでもシフトに入ってくれる人が欲しい」
- 「辞めてもすぐ補充できる人材がいればいい」
といった、“スポット対応”を前提とした雇用思考になりがちです。このような背景から、「特定技能でもアルバイトできれば便利なのに…」という発想が出てくるのです。
しかしながら、特定技能はフルタイム・技能習得を前提とした制度であるため、こうした短期的ニーズとの間には制度上の大きなギャップが存在します。
外国人側の「柔軟な働き方」への希望と現実のギャップ
一方で外国人側にも、「フルタイムはまだ不安だから、最初はアルバイトから始めたい」といった希望があります。
特に来日したばかりの外国人は、以下のような不安やニーズを持つことが多く見られます。
- 日本語の聞き取りに自信がない
- 文化や職場環境に馴染むか不安
- 家族の都合で労働時間に制限がある
こうした状況下で、「まずは週2〜3日のアルバイトから始めてみたい」という希望が出るのは自然なことです。
しかし特定技能では原則フルタイム就労が求められるため、こうしたニーズには制度的に応えることができません。
そのため、制度と実情の間に大きなギャップが生まれ、結果的に“制度を無視して働かせてしまう”というリスクの温床にもなっているのです。
「アルバイト」で解決しない構造的課題とは?
そもそも「アルバイトで人手不足を乗り切る」という発想自体が、本質的な労働力不足の解決につながっていない可能性があります。
特定技能制度の趣旨は、一定のスキルを有する外国人を受け入れて、長期的な人材として育てていくことです。
この目的を無視して、アルバイト感覚での短期就労ばかりに頼ってしまうと、
- 業務の引き継ぎやスキル伝承が進まない
- 離職率が高くなり、現場の混乱が絶えない
- 外国人労働者との信頼関係が築けない
といった負の連鎖が生まれてしまいます。
本来、企業は「アルバイト」ではなく「戦力としての外国人材活用」にシフトしていく必要があります。
そのためには、制度に則った正規の雇用体制・教育体制の整備が欠かせません。
▼求められるのは「便利さ」ではなく「制度を活かす戦略」
特定技能人材に「アルバイト的な柔軟さ」を求めてしまうのは、企業にとっても外国人にとっても現実的な感情ではあります。
しかし制度としては、短期雇用や副業的な就労を認めておらず、ルールを破れば不法就労・不正雇用という深刻なリスクに直結します。
本当に大切なのは、短期の便利さではなく、制度を活かした中長期的な人材育成戦略です。
- 外国人が安心して働ける就労環境
- 企業が育成コストを投資できる制度的後押し
- 雇用側・被雇用側のミスマッチを減らす支援体制
こうした本質的な視点に立ち返ることで、初めて「特定技能」という制度が本来の目的を果たすことができるのです。
まとめ|特定技能外国人とアルバイト雇用の正しい理解を
特定技能外国人の雇用について、「アルバイトでも雇えるのでは?」という誤解は根強く存在しますが、制度上は原則フルタイムの直接雇用が義務付けられており、アルバイト的な就労は認められていません。
以下に要点を整理します。
特定技能ビザではアルバイト雇用は原則不可
特定技能1号の在留資格は、対象業種における一定の技能と日本語能力を持つ外国人を、即戦力として受け入れる制度です。
そのため、フルタイム勤務を前提とした直接雇用が原則であり、コンビニや飲食店などでの副業的・短時間的なアルバイトは制度違反になります。
在留資格に応じた適正な雇用判断が重要
外国人をアルバイトで雇用したい場合は、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」といった就労制限のない“身分系”在留資格の人材、または「留学生」や「家族滞在」などで資格外活動許可を得ているケースに限定されます。
在留カードの記載や就労制限の有無を確認することが不可欠です。
企業側が確認すべき制度・法令のポイント
誤って制度に違反した雇用を行った場合、企業には不法就労助長罪などの重いペナルティが科される可能性があります。
また、労務トラブルや入管調査の対象となることもあるため、採用前の在留資格確認と法令理解は必須です。
制度の正しい理解と適切な運用が、企業にとっても外国人にとっても持続可能な雇用関係の第一歩となります。
アルバイト採用の柔軟性を求める前に、まずは「どの在留資格なら雇用が可能なのか」を見極め、合法かつ信頼性のある雇用体制を構築することが、長期的な人材活用のカギとなるでしょう。
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