
08/29 (金)更新
特定技能外国人の雇用手順とは?製造業で受け入れる企業が知るべきこと
人手不足が深刻化するなか、製造業における即戦力確保の手段として注目されているのが「特定技能」制度です。
特に、工業製品や電気電子分野を中心とする製造業では、外国人材の活用が現場の生産性と継続性を支える鍵となりつつあります。
しかし、制度の仕組みや対象業務、評価試験、雇用契約の注意点など、受け入れには多くの知識と準備が求められます。
さらに、技能実習との違いや受け入れ企業の要件、法改正による影響も理解しておく必要があります。
本記事では、製造業が特定技能外国人を採用するうえで押さえておくべきポイントを網羅的に解説します。
これから制度導入を検討している企業担当者の方が、自社の状況に適した判断を行えるよう、実務的な視点からわかりやすく整理しました。
特定技能人材の受け入れが初めての方でも安心して読めるように構成しておりますので、ぜひ参考にしてください。
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特定技能「工業製品製造業」とは?対象となる業種と制度の概要
特定技能制度は、深刻な人手不足が続く業種に即戦力の外国人材を受け入れることを目的に創設されました。
その中でも「工業製品製造業分野」は、製造現場を支える重要な対象領域として注目されています。
特定技能制度における製造業の分類は、かつて「素形材製造業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連製造業」の3分野に分かれていましたが、現在は統合され「工業製品製造業分野」として一本化されています。
このセクションでは、制度の背景や対象業種の特徴、そして製造業における外国人材のニーズや実態に焦点をあて、企業が制度を活用する際の理解を深めるための情報を整理しています。
特定技能で就労できる製造業分野の背景と目的
工業製品製造業分野における特定技能制度の導入背景には、日本国内の深刻な労働力不足があります。
少子高齢化の影響により若年層の労働人口が減少し、特に現場を支える製造工程の人材確保が難しくなっているのが実情です。
そのような状況において、一定の技能水準を持つ外国人材を活用し、即戦力として現場で活躍してもらうことが特定技能制度の大きな狙いです。
技能実習と異なり、「就労を目的とした制度」であるため、労働契約の締結や処遇面の整備が義務づけられており、企業側にも一定の責任が求められます。
特定技能の対象業務には、機械加工や鋳造、溶接、電気機器組立てなど、日本のものづくりを支える重要な製造工程が含まれています。
「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の統合と名称変更の流れ
もともと分かれていた3つの製造業分野は、2022年の制度見直しにより「工業製品製造業分野」として統合されました。
これは、現場業務の類似性や管理体制の効率化を図るための変更であり、実務上のメリットが多いとされています。
統合の前
- 素形材製造業(鋳造、鍛造、プレスなど)
- 産業機械製造業(機械加工、仕上げ、組立など)
- 電気電子情報関連製造業(組立て、検査、保守など)
統合後
- 工業製品製造業分野として一本化
この統合により、企業側は一貫した管理体制のもとで特定技能外国人を受け入れることが可能となり、制度運用の柔軟性と実務効率が高まったと言えます。
製造業分野で働く外国人労働者の実態とニーズ
実際に工業製品製造業分野で働く外国人労働者は、アジア圏(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)出身者が中心であり、技能実習からの移行者が多いという特徴があります。
多くの外国人労働者は、日本での長期的な就労を希望しており、特定技能はそのニーズと企業側の人手不足をマッチさせる制度となっています。
また、技術指導を受けながら成長し、戦力化していく姿勢が高く評価されており、現場でも信頼を得ているケースが増加しています。
一方で、言語や文化の壁、労務管理の手間、制度理解不足によるトラブルも依然として存在します。
こうした課題に対処するためにも、企業側の体制整備や情報共有が重要となります。
◎製造業における外国人材受け入れは制度理解から始まる
特定技能「工業製品製造業分野」は、日本のものづくり現場を支える重要な制度として拡大しています。
分野統合により制度のわかりやすさが向上し、現場での活用もしやすくなりました。
しかし、制度の本質を理解せずに導入した場合、受け入れ後にトラブルが生じる可能性もあります。
外国人労働者と企業の双方にとってメリットのある受け入れ体制を整えるためには、まず企業側が制度の背景や対象範囲を正しく把握することが必要です。
次のステップでは、受け入れまでの具体的な流れや必要書類についても確認しておくと良いでしょう。
就労可能な業務区分と実務内容の詳細
外国人が特定技能「工業製品製造業」の在留資格で働く場合、対象となる業務はあらかじめ定められた“業務区分”に限られています。
そのため、雇用を考える企業にとっては、「自社の業務が就労対象となるのかどうか」を正確に把握することが極めて重要です。
ここでは、製造業分野で認められている業務区分の詳細や、制度上の運用ルール、注意すべきポイントをわかりやすく整理します。
対象となる主な業務区分(機械金属加工・電子機器組立など)
現在、特定技能の工業製品製造業で就労可能とされている主な業務区分には、以下のようなものがあります。
- 鋳造・鍛造・仕上げ・溶接
- 機械加工(NC・マシニングセンタ等含む)
- 塗装・工業包装
- 製品検査・機械検査
- 電子機器組立て・電気機器組立
これらの業務は、日本の製造現場において中核を担う工程ばかりで、即戦力となる人材の確保が課題となっている分野です。
企業はこれらの業務に該当するポジションであれば、特定技能外国人を積極的に受け入れることができます。
特に電子機器組立や電気機器組立は、高度な手作業や精密な工程が多いため、技能実習で経験を積んだ外国人が多く移行しています。
新たに追加された業務区分とその技能範囲
2024年以降の見直しにより、一部の業務区分が新たに追加されたり、既存の業務内容が拡張的に認められるケースも出てきています。
たとえば以下のような業務です。
- 自動化機器のメンテナンス業務
- AI・IoTを活用した生産ラインの保守・調整
- 部品管理・資材受発注など周辺業務の一部
これらの追加は、製造業の高度化・スマートファクトリー化に対応した人材育成と確保を見据えたものです。
ただし、すべての周辺業務が対象になるわけではなく、主業務と密接に関連し、専門性があることが前提となります。
企業は、最新の制度改正や通知の内容を随時確認し、自社の業務が対象範囲に含まれるか慎重に判断する必要があります。
メイン業務と関連業務の区別とその運用例
制度上、特定技能で外国人が従事できるのは“主たる業務”に限られており、「関連業務」であっても、その内容や時間配分によっては制度違反とみなされるリスクがあります。
たとえば以下のようなケースが考えられます。
- 主たる業務 – 機械加工 → 可
- 関連業務 – 加工品の簡単な梱包や材料の運搬 → 条件付きで可
- 周辺業務 – 事務作業、配送補助、営業サポート → 原則不可
厚労省や出入国在留管理庁のガイドラインでは、関連業務の割合は「主たる業務が50%以上であること」が原則とされており、逸脱すると在留資格取り消しや企業への指導対象となるおそれがあります。
したがって、現場レベルでの業務配分の明確化や、職務記述書(ジョブディスクリプション)の整備が重要になります。
雇用主は人事部門・現場監督者・受け入れ支援機関が連携し、業務内容の適正管理に努める必要があります。
◎業務範囲を正しく理解し、リスクのない雇用へ
特定技能「工業製品製造業」では、就労できる業務範囲が明確に定義されている一方で、現場の実務と制度要件が乖離しやすい課題もあります。
企業側が受け入れ時点で制度を十分に理解していないと、違反リスクやトラブルの原因になるおそれがあるため注意が必要です。
「どの業務が対象となるか」、「関連業務の運用ルール」などを正確に把握し、制度に準拠した適正な雇用体制を構築することが、長期的な戦力確保と企業の信頼につながります。
受け入れ企業の要件と注意すべきポイント
特定技能制度を活用して外国人材を受け入れるにあたっては、企業側にも一定の要件や注意点が課せられています。
特に製造業においては、対象業種が広い一方で、制度理解の浅さによるトラブルや認識のズレによる不適切な運用も散見されます。
このセクションでは、受け入れ企業が満たすべき条件と、事前に押さえておきたい実務上の注意点を具体的に解説します。
原材料や製品に関する自社製造基準の有無
受け入れ企業として認められるには、製品や部品を自社で製造していることが基本要件となります。
これは特定技能「製造3分野」が“製造業務”に就く人材であるため、業務内容に製造行為が含まれていない場合は対象外と判断されるためです。
たとえば、以下のようなケースでは要注意です。
- 自社では最終組立のみを行い、製造工程の大部分を外注している
- 原材料を輸入して組立・検査のみを行うOEM的な業態
- 物流・倉庫業務の一環として商品仕分けなどを行う場合
このような業務は特定技能の対象と見なされない可能性があるため、事前に「自社の製造工程が技能水準を満たしているか」を整理しておく必要があります。
外国人材受け入れ協議会への加入とその役割
製造業分野では、受け入れ企業は「外国人材受入れ協議会」への加入が義務となっています。
協議会は、地域や業界単位で構成され、以下のような機能を担っています。
- 技能実習との適切な線引きの監視
- 業界内の不正受入れの抑止
- 外国人との適切な関係性を保つための情報共有
特定技能制度では、外国人が転職する自由が認められているため、協議会による一定のモニタリング体制が制度運用の前提条件となります。
協議会に加入していない企業は受け入れができないため、事前の確認と手続きが必須です。
紡織製品製造・縫製分野などにおける追加条件
特定技能「製造3分野」の中でも、特に「紡織製品製造業」や「縫製業」など一部業種には独自の条件が設けられています。
これは、過去に技能実習制度下で問題が多発していた業界であり、より厳格な監視が必要とされているためです。
追加条件の一例としては
- 適正な労働時間の管理と実績報告の義務
- 独自の就労管理チェックリストの提出
- 労働安全衛生教育の定期的実施
- 有給休暇取得率の記録と改善報告
これらの要件を満たしていない場合、制度利用そのものを拒否されるケースもあるため、対象業種であるか否かにかかわらず、事前に業界ごとの条件を確認することが重要です。
◎企業要件を満たすことが“制度活用の出発点”
特定技能制度における製造業での外国人材受け入れは、企業の体制と業務内容が制度に適合しているかどうかが出発点です。
特に自社が対象業種に該当していても、「製造工程が外注中心」や「協議会未加入」であれば受け入れはできません。
また、業種によってはさらに厳しい条件が課されるため、制度理解と実務対応力の両立が求められます。
制度を単なる人手不足解消の手段としてではなく、中長期的な戦力確保の一環として正しく運用することが、企業の信頼性と成長にも直結します。
外国人労働者側が満たすべき条件と2つのルート
特定技能「製造業」分野において外国人を受け入れるには、企業側だけでなく外国人労働者自身にも一定の条件やルートが定められています。
これにより、即戦力としての技能と知識を備えた人材のみが就労できる仕組みとなっており、採用ミスマッチや現場でのトラブルを防ぐ役割も担っています。
ここでは、外国人側が満たすべき条件と、その取得ルートについて解説します。
特定技能評価試験の合格が必要なケース
外国人が特定技能1号として日本の製造業で働くための主要ルートのひとつが、「特定技能評価試験」の合格です。
この試験では、実務に必要な技能水準と日本語能力の2つが問われます。
- 技能試験は、業務区分ごとに設定されており、加工や組立など現場に即した技術の理解度が測られます。
- 日本語試験としては、一般的にJFT-Basic(日本語基礎テスト)などが指定されており、最低限の業務指示が理解できるレベルが求められます。
この試験に合格すれば、日本国内外から直接「特定技能」資格での就労が可能です。
技能実習2号修了者からの移行パターン
もう一つの代表的ルートが技能実習2号修了者からのスムーズな移行です。
こちらは試験を受けずに特定技能1号へ切り替えることが可能で、多くの企業にとっては現場で育てた人材を引き続き雇用できる点でメリットがあります。
- 3年間の技能実習で培った知識と日本語スキルを活かし、即戦力として採用できる
- 社内環境に慣れている人材のため、定着率も高くなる傾向にある
- 実習修了者であっても、分野外に転職する場合は評価試験の受験が必要となるため注意が必要
特定技能1号・2号の制度的違いと受入条件
制度上、「特定技能」には1号と2号の2種類の在留資格があり、それぞれで要件が大きく異なります。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
在留期間 | 最長5年(更新制) | 制限なし(家族帯同可) |
対象業務 | 比較的単純・補助的業務を含む | 熟練技能を要する高度な業務 |
家族帯同 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
必要条件 | 技能試験・日本語試験に合格(または技能実習2号修了) | さらに上位の熟練技能の試験合格が必要 |
製造業分野では現在のところ、特定技能2号の対象は拡大予定にとどまっており、1号人材の受け入れが中心です。
しかし、今後の制度改正により2号の対象業種が広がれば、企業にとっても人材の長期活用がしやすくなる可能性があります。
◎受入の鍵は「条件把握」と「計画的ルート設計」
特定技能制度において、外国人労働者側が満たすべき条件を正しく理解し、どのルートを経て人材が入国・就労するのかを明確にしておくことは、企業の人材戦略にとって非常に重要です。
試験ルートと実習修了ルートでは、それぞれメリットと注意点が異なるため、受け入れ目的や求めるスキルレベルに応じた選択が求められます。
また、将来的に特定技能2号への移行や制度拡大も視野に入れ、長期的な採用・育成戦略の一環として制度活用を進めることが、外国人材の定着と企業成長のカギを握ります。
特定技能評価試験の内容と受験の流れ
特定技能制度のもとで外国人材を受け入れるには、評価試験の合格が必要不可欠です。
この試験は、日本国内外で実施され、制度の目的に沿って技能と日本語能力の確認が行われます。
受け入れ企業としても、試験制度の内容や手続きの流れを把握しておくことで、円滑な採用活動が可能になります。
ここでは、特定技能1号・2号の試験内容、申込み方法、そして一部の免除規定までを網羅的に解説します。
特定技能1号評価試験の内容と実施方式
特定技能1号評価試験は、「業種ごとの技能試験」と「日本語能力試験(またはJFT-Basic)」の2つで構成されています。
- 技能試験では、対象となる業務に必要な基礎的技能を問う内容が中心で、学科試験と実技試験に分かれています。
- 実施方式はCBT(Computer Based Testing)が主流で、海外および日本国内の指定会場で受験可能です。
- 一例として、製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)では、「機械図面の読み方」「工具の使用」「安全衛生」などが出題範囲に含まれます。
業種によって出題形式や配点基準が異なるため、事前にガイドラインを確認することが重要です。
特定技能2号評価試験の対象者と出題傾向
特定技能2号は、2024年より対象分野が大幅に拡大され、製造業を含む11分野での活用が可能になっています。
- 特定技能2号評価試験は、1号と比べてより高度な専門知識と実務経験に基づく応用力が問われる内容です。
- 受験できるのは、原則として「特定技能1号」での在留経験者のみ。一定期間の実務経験を積んだ後に試験を受けられます。
- 出題内容は業種に応じて細かく設計され、熟練技能の判断基準に即した内容が重視されます。
特定技能2号は在留資格の更新制限がなく、家族帯同も可能となるため、外国人材にとってもキャリアパス上の重要なステップです。
評価試験の申し込み方法・注意点
評価試験は、公式サイトからオンラインでの申し込みが主流です。分野によっては試験機関のサイトが異なり、それぞれに登録が必要になります。
- 定員制限があるため、申込み開始直後に満席になることも。特に海外開催分は早期締切になる傾向があります。
- 受験者の本人確認資料(パスポートなど)を事前に用意し、入力ミスに注意する必要があります。
- 受験費用も分野によって異なり、3,000〜8,000円程度が相場です。
企業が採用支援として申込サポートを行う場合、試験スケジュールと連動した準備が求められます。
実務経験による免除や例外規定の有無
一部の受験者は、過去の技能実習修了や特定の資格保有を理由に、試験が免除されるケースもあります。
- 技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号の技能試験と日本語試験が免除対象です。
- ただし、修了から一定期間が経過していたり、他分野に転職する場合には再受験が必要になるケースもあります。
- また、一部の業種では、日本語試験に限り国内大学卒業者などが免除対象となることもあります。
免除条件は分野・出身国・過去の在留資格などによって変わるため、常に最新の入管庁・試験機関の情報を確認することが重要です。
▷制度を理解し、計画的な採用へとつなげよう
特定技能評価試験は、単なる“登竜門”ではなく、外国人材の適正を見極める制度的フィルターとして設けられています。
企業にとっては、試験制度を理解したうえで計画的に採用・受け入れ準備を行うことが、スムーズな戦力化のカギとなります。
「試験日程・申し込みタイミング・免除規定」の把握が、成功する外国人雇用戦略の第一歩です。情報収集と社内体制の整備を両輪に、受け入れ体制の質を高めていきましょう。
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雇用契約・報酬・受け入れ期間に関する実務ポイント
特定技能制度の運用において、雇用契約の内容や報酬水準、受け入れ期間の制限は、企業側にとって実務的な課題であり、コンプライアンスを確保するうえで避けて通れません。
特に製造業では、派遣の可否や契約形態、更新条件といった細かい点が労務管理にも大きな影響を与えるため、正確な理解と実践が求められます。
ここでは、受け入れ企業が押さえるべき契約・報酬・期間のルールについて、実務視点からわかりやすく解説します。
雇用形態|直接雇用・派遣の可否
原則として、特定技能外国人の受け入れは直接雇用が必須です。企業は受け入れる本人と直接雇用契約を結ばなければなりません。
ただし、特定技能においても例外的に派遣が認められる分野が存在し、製造業がその一つです。
- 「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連製造業」では派遣形態の雇用が許可されています。
- ただし派遣元企業は出入国在留管理庁への届出義務など、管理責任を適切に果たす必要があります。
このように、製造業分野では派遣型雇用が可能な特例がある一方で、厳格な管理体制が求められる点に注意しましょう。
報酬は日本人と同等水準か?
特定技能外国人の報酬については、「同一業務に従事する日本人と同等以上の報酬水準であること」が法令上義務づけられています。
この基準を満たすためには、以下のような実務措置が必要です。
- 業務内容・スキル・就業場所が類似する日本人従業員の賃金との比較
- 月給・時給・手当・賞与・昇給制度の整合性
- 客観的な給与台帳や労働契約書類による説明責任
日本人と同様の就労実態でありながら、報酬が著しく低い場合、在留資格の取り消しや企業への行政指導対象となる可能性があります。
したがって、報酬設定には慎重かつ透明な判断が不可欠です。
受け入れ可能な期間と延長要件
特定技能には1号と2号があり、それぞれで在留期間の上限が異なります。
- 特定技能1号 – 最長5年間まで(1年・6か月・4か月などの単位で更新)
- 特定技能2号 – 在留期間に上限なし(更新制)
製造業分野では現在、2号への移行は制度上想定されていないため、実質的に「最長5年」が上限となります。
延長には以下のような要件があります。
- 受入企業と本人が継続雇用を希望
- 直近の契約内容が適切かつ法令順守されている
- 定期的な技能評価試験や健康診断の実施
制度改正によって将来的に2号が製造業へ拡大される可能性もあるため、最新動向には注視しておく必要があります。
人数枠の有無とその規定
特定技能の人数制限については、在留資格制度上の明確な「企業別の上限」は設けられていません。
しかし、実際の受け入れは以下の条件によって制限されることがあります。
- 企業規模・職場の教育体制・支援体制に応じた「適正数」
- 1名につきフルタイムで支援を行える体制(支援計画)の確保
- 同一部署に複数名の外国人を配置する際の日本人従業員とのバランス
過剰な受け入れは「人権侵害リスク」「安全衛生上の懸念」などから入管当局の審査で不許可となるケースもあるため、計画的な受け入れ人数の設計が求められます。
▷雇用・契約に関する実務まとめ
雇用形態・報酬・期間・人数管理といった実務ポイントは、外国人材の活用において制度理解だけでなく、実際の労務設計に直結する重要事項です。
特に製造業では派遣雇用の許容という特例もあり、より高度な管理が求められます。
制度の柔軟性を活かしながらも、常にコンプライアンスを意識した運用が信頼確保と企業価値の向上に繋がることを忘れてはなりません。
今後の制度改正や受け入れ枠の変更にも備え、社内の体制を整えていくことが、継続的な外国人雇用成功の鍵となります。
特定技能と技能実習の違いとは?制度上の比較
外国人材の受け入れ制度として、企業が選択肢に悩むのが「特定技能」と「技能実習」です。
両制度はともに製造業や建設業などでの就労が可能ですが、制度の目的や受け入れ体制、本人のキャリアへの影響などに大きな違いがあります。
ここでは、雇用主と外国人労働者の双方にとって重要となる制度上の違いをわかりやすく整理します。
雇用安定性や本人のキャリア形成への影響
技能実習制度は本来「技能の移転」を目的としており、母国への技術普及を主眼に置いています。そのため、期間終了後に日本での就労を継続できる制度ではありません。
一方、特定技能制度は人手不足分野での労働力確保を目的としており、制度上は就労が前提で、一定条件下での在留期間の延長や永住への道も開かれています。
特に製造業などでは、特定技能を活用することで長期的に人材を確保し、現場の即戦力として育成できる可能性があるため、雇用主にとってもキャリア形成支援の観点から魅力があります。
雇用主側の責任とサポート体制の違い
技能実習では、監理団体(組合など)を通じての受け入れが基本であり、雇用主は実習計画の策定や報告、定期的な指導などの義務を負います。
また、労働契約ではなく「実習生」という立場であるため、労働者保護に課題が残るケースもあります。
一方、特定技能は原則として直接雇用が求められ、さらに「支援計画」の策定と実施が義務付けられています。
この支援内容には、日本語教育、生活サポート、行政手続き支援などが含まれ、雇用主の責任は重くなりますが、より実務に即した関係性が構築されやすくなっています。
技能実習から移行するメリット・デメリット
技能実習2号を修了した外国人は、試験免除で特定技能1号へ移行できる特例措置があります。
これにより、すでに日本での実務経験がある人材を、スムーズに即戦力として再雇用できるという点で大きな利点があります。
ただし、移行後は直接雇用への切り替えが必要なため、労働契約の締結や支援計画の策定など、雇用主側の準備負担が増す点には注意が必要です。
また、受け入れ枠や職種の違いによっては、希望通りに移行できないケースもあるため、事前の制度理解と準備が重要です。
▷制度比較から見える最適な人材受け入れ戦略とは
特定技能と技能実習は制度の目的・支援体制・雇用安定性において明確な違いがあり、受け入れ企業がどの制度を選ぶかによって、人材育成や企業内での定着率にも大きく影響します。
短期的な育成や技能移転が目的なら技能実習、長期的に即戦力を確保したいなら特定技能の活用が有効です。
自社の戦略に応じて、制度の特性を理解し、最適な選択をすることが重要です。
製造業での外国人採用を成功させるためのステップ
外国人材の採用は、慢性的な人手不足が続く製造業界にとって重要な戦略のひとつです。
特定技能制度の活用により、即戦力となる外国人材の雇用が可能になった今、採用準備から定着までを見据えた対応が企業の成否を左右します。
ここでは、製造業における特定技能外国人の採用をスムーズに進め、定着率を高めるために企業が踏むべき具体的なステップを解説します。
採用準備から協議会入会、在留資格申請までの流れ
外国人材の受け入れには明確なフローがあり、適切な順序で進めることが成功の鍵です。
- 社内の採用方針の明確化
どの業務区分で外国人を雇用するのか、配置予定部署や求めるスキルレベルを明確にします。 - 受け入れ要件の確認
製造業分野での特定技能の要件(例:自社での製造実績や外国人材受け入れ協議会への加入)を満たしているか確認します。 - 協議会への入会手続き
各地域の「外国人材受入れ協議会」に加入し、地域との連携を確保します。これは行政との橋渡しやトラブル時の相談窓口にもなります。 - 雇用契約の締結
契約内容は日本人と同等以上である必要があり、待遇差別があってはなりません。 - 在留資格(特定技能1号)申請
必要書類を整えて出入国在留管理庁に申請。審査期間は1~2か月が目安です。
これらのステップを抜け漏れなく実施することが、採用後のトラブルを回避し、円滑な就労開始につながります。
採用時の費用感と助成制度の活用可能性
外国人材の採用には一定のコストがかかるため、予算と資金繰りの準備が欠かせません。
- 採用にかかる主な費用
求人媒体や仲介機関への支払い、面接通訳費用、在留資格申請サポート、入国・住居手配に関する初期費用などが挙げられます。 - 費用の目安
採用1人あたりの初期費用は約20~40万円、年間での雇用維持費を含めると100万円超になるケースもあります。 - 助成金制度の活用
外国人材の雇用促進を目的とした自治体の補助金や、厚労省が実施する「人材確保等支援助成金」の一部が活用可能です。条件は地域や年度により異なるため、事前の情報収集が必須です。
採用コストを正しく見積もることで、無理のない受け入れ計画を立てることができます。
定着率向上に必要な社内体制整備と教育施策
採用した人材が長く働き続けるかどうかは、企業側のサポート体制に大きく左右されます。
- 日本語教育の提供
業務で使う日本語の指導を定期的に実施することで、業務効率だけでなくモチベーションの向上にもつながります。 - メンター制度の導入
同僚や先輩社員が日常生活の相談役となることで、文化的ギャップや孤立を防止できます。 - 多文化共生の意識啓発
社内において外国人への理解を深めるための研修や、食事・宗教習慣に配慮した制度設計が必要です。 - キャリア支援の仕組み
特定技能2号への移行や技能向上の機会を提供することで、本人の将来像と雇用の継続を両立できます。
このような体制整備により、離職を防ぎ、外国人材が戦力として活躍し続ける職場づくりが実現します。
▷制度理解と社内準備が採用成功の鍵
特定技能制度を活用した製造業での外国人採用は、制度の理解と適切な社内体制の準備があってこそ成功します。
採用前の計画段階から在留資格申請、採用後のサポート体制に至るまで、各ステップを丁寧に進めることが人材定着と企業成長のカギです。
制度面・実務面の両方を押さえ、外国人材と企業がともに持続可能な関係を築けるよう備えておきましょう。
製造業における特定技能外国人材活用の今後と展望
日本の製造業界では、深刻な人手不足が続く中、特定技能制度を活用した外国人材の採用が注目を集めています。
とくに現場の技能職においては、高齢化や若年層の労働離れが進み、国内人材の確保が難しい状況です。
その打開策として期待されているのが、即戦力として働ける外国人材の「特定技能」制度です。
ここでは、今後の製造業界における外国人材の活用について、課題と展望を整理しながら、企業が備えるべき視点を解説します。
国内人材不足への対応と事業継続のための役割
少子高齢化が進む中、製造業の現場では慢性的な人手不足が深刻な課題です。
中小企業では特に、求人を出しても応募がない、若手が定着しないといった悩みが日常化しています。
こうした状況で、特定技能外国人は一定の日本語能力と技能評価をクリアした即戦力人材として、工場や製造ラインにおいて貴重な存在となります。
事業継続においても、設備や受注があっても人手がなければ生産できないため、人材確保は死活問題です。
特定技能制度により安定的な労働力を確保できることは、企業の存続や成長に直結すると言えます。
単なる「穴埋め」ではなく、長期的な戦力として育成する意識が重要です。
技術力・品質担保とのバランスをどう取るか
外国人材活用において、「品質の維持」が懸念される声もあります。特に日本の製造業は高い技術力と緻密な品質管理を強みとしてきたため、言語や文化の壁が影響するのではと心配する企業も少なくありません。
しかし、特定技能制度では業務に必要な技能水準の試験合格が前提であり、基本的な作業能力は保証されています。
加えて、受け入れ企業が日本人従業員と同等の教育・研修体制を整えることで、外国人材も日本人と同じように品質担保の戦力として活躍できます。
また、現場レベルでの多言語マニュアルやピクトグラム、動画マニュアルの導入など、視覚的・直感的に理解できる教育ツールの活用も効果的です。
単なる即戦力としてだけでなく、チームとしての一体感づくりが今後の鍵を握ります。
法改正・制度変更の動向と企業が備えるべき点
特定技能制度は、導入から数年が経ち、運用上の見直しや制度改正が随時行われています。
たとえば、2023年には一部業種での「特定技能2号」の対象拡大が行われ、より長期的な雇用が可能になる方向性が示されました。
これにより、外国人材を短期的に使い捨てるのではなく、中堅人材として定着させる枠組みが強化されています。
さらに、支援機関や協議会の役割も明確化され、企業側に求められる対応も増加しています。
今後は「特定技能1号」から「2号」への移行支援や、就業管理体制の整備、生活支援の充実などが重要なテーマとなっていくでしょう。
企業としては、制度変更の動向に常にアンテナを張ること、行政や支援機関との連携を深めること、そして法令順守とコンプライアンス対応を怠らないことが長期的な受け入れ成功の鍵となります。
▷今後の展望を見据えた戦略的な人材活用を
特定技能外国人の活用は、単なる労働力の補填ではなく、製造業の持続的成長を支える「中核人材の育成」としての可能性を秘めています。
技術の伝承と品質の維持を両立しながら、多様な人材とともに新たな製造業の形を築くことが求められています。
今後は制度の柔軟化と企業側の体制整備が進むことで、より安定した外国人材の活用が可能になります。
経営戦略の一環として、人材確保と教育の両輪で取り組むことが、企業の競争力を左右する重要なポイントとなるでしょう。
制度理解と準備が製造業の競争力を高めるカギ
特定技能制度を活用した外国人材の受け入れは、製造業界の深刻な人手不足を補う実践的な解決策です。
特に「工業製品製造業」における就労は、機械金属加工や電子機器組立といった重要分野をカバーしており、現場の即戦力となる人材確保が可能となります。
ただし、制度を活用するには企業側・外国人労働者側の要件を正しく理解することが不可欠です。
受け入れ業務や人数枠、報酬基準、在留期間といった諸条件に加え、評価試験の内容や申請の手順も押さえておくべきポイントとなります。
また、技能実習との違いを理解したうえで、制度間の移行や定着支援も戦略的に設計する必要があります。
企業が制度を“使いこなす”ためには、以下の点を意識することが成功のカギとなります。
- 対象業種・業務を明確に把握し、受け入れ体制を整備すること
- 協議会加入や雇用契約面の整備など、事前準備を丁寧に行うこと
- 採用後も教育・支援体制を整え、長期定着を図ること
これらを実行できる企業こそが、将来の労働力確保と事業継続において競争力を維持・強化できる存在となります。
特定技能制度は、単なる労働力確保ではなく、企業の成長と持続可能性を支える基盤として活用できるのです。
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