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11/28 (金)更新

特定技能外国人にも租税条約は適用される?免除条件と手続きを徹底解説

外国人労働者の受け入れが拡大するなか、**「特定技能外国人にも租税条約は適用されるのか?」**という疑問を持つ企業担当者が増えています。

特に給与計算や源泉徴収の場面では、租税条約の理解不足が税務リスクやトラブルに直結するケースも少なくありません。

租税条約とは、二重課税の防止や税負担の公平性を確保するために国同士で結ばれる取り決めです。

しかし、特定技能制度のように在留資格や滞在期間が複雑なケースでは、**「条約の適用対象になるかどうか」「どの書類を提出すべきか」**を正しく判断することが難しいのが現実です。

本記事では、以下についてわかりやすく整理しながらすすめていきます。

  • 租税条約の基本的な仕組み

     

  • 特定技能外国人が対象となる条件

     

  • 申請手続きの流れと注意点

     

  • 企業が取るべき実務対応とトラブル防止策

     

国際税務の基礎知識がない方でも理解できるよう、具体例や実務視点のポイントを交えて解説します。

この記事を読めば、自社で受け入れている特定技能外国人に租税条約が適用できるかどうかを判断でき、誤った課税や申請漏れを防ぐための実務対応が明確になります。

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租税条約とは何か、特定技能外国人にも関係あるのか

外国人労働者が日本で働く場合、母国と日本の双方で課税されてしまう「二重課税」の問題が発生することがあります。

このような不公平を避けるために締結されているのが「租税条約」です。

特定技能外国人もこの対象に含まれる場合があり、税負担の軽減や免除を受けられる可能性があります。

まずは、租税条約の目的や基本的な仕組みを理解しておきましょう。

租税条約の目的と役割(なぜ必要とされるのか)

租税条約の最大の目的は、同じ所得に対して2つの国で重複して課税されるのを防ぐことです。

国際的に人材が移動する時代において、これを防止しなければ、外国人労働者や企業の経済活動が大きく制限されてしまいます。

具体的な役割としては以下のとおりです。

  • 二重課税の防止:同一の所得に対し、母国と日本の両方で課税されるのを回避

     

  • 租税回避の防止:税率の低い国を利用して不当な節税を行う行為の抑止

     

  • 税務情報の交換:加盟国間で納税情報を共有し、透明性を高める

     

これにより、特定技能外国人が不必要に高い税負担を負うことを防ぎ、正しい課税関係を維持することが可能になります。

日本が締結している主な租税条約の国一覧

日本は現在、約80か国・地域と租税条約を締結しています。
その中には、特定技能外国人の受け入れが多い国も多く含まれます。

代表的な締結国の一部は以下の通りです。

地域主な締結国
アジアフィリピン、インドネシア、ベトナム、タイ、ミャンマー、カンボジア
南アジアネパール、インド、バングラデシュ
欧州イギリス、フランス、ドイツ、イタリア
その他アメリカ、オーストラリア、カナダ、メキシコ

これらの国出身の特定技能外国人は、母国との租税条約によって税金の免除や軽減が適用される可能性があります。

ただし、母国が条約を締結していない場合や、条約の条件を満たさない場合には通常課税が行われる点に注意が必要です。

特定技能を含む外国人労働者の税務上の位置づけ(居住者・非居住者の違い)

日本では、外国人の税務上の扱いは「居住者」か「非居住者」かによって異なります。

  • 居住者:1年以上日本に住所または居所がある人。日本国内外の所得すべてに課税される。

     

  • 非居住者:日本での滞在が1年未満。日本国内で得た所得のみ課税対象となる。

     

特定技能外国人は原則として1年以上の在留を前提とするため、居住者扱いになるケースが多いですが、来日初年度は期間によって「非居住者」と判断される場合もあります。

この区分を誤ると、過剰課税や免除漏れが発生する恐れがあるため、企業側は雇用開始時点で慎重に確認することが重要です。

まとめ:租税条約の基本理解が適正課税の第一歩

租税条約は、外国人労働者が公平に課税されるための国際的なルールです。

特定技能外国人にとっても関係が深く、所属国が条約締結国であるか・在留期間がどの程度かによって税負担が大きく変わります。

企業はまず、雇用している外国人がどの国籍で、どの課税区分に該当するかを把握し、正しい対応を取ることが求められます。

特定技能外国人が租税条約の対象となる条件

特定技能外国人が租税条約の対象になるかどうかは、在留資格・滞在期間・雇用形態など、複数の要素で判断されます。

この条件を正しく理解しないまま給与を支給すると、過大な源泉徴収や申請漏れによる追徴課税が発生する可能性があります。

ここでは、適用の可否を左右する主要な条件を整理します。

在留資格による適用範囲の違い(技能実習・特定技能・留学生など)

租税条約の適用は、在留資格の種類によって大きく異なります。

在留資格条約適用の可能性主な特徴
技能実習高い(短期滞在扱い)教育的要素が強く、所得税が免除される場合あり
特定技能条件付きであり得る就労目的が明確で、在留期間や雇用契約内容により判断
留学生一部のみ学費・生活費支給が所得と見なされない場合もある

特定技能の場合は、「教育目的」よりも「労働目的」が強いため、技能実習生のように一律免除にはなりません。
ただし、国別条約の規定や雇用形態によって免税対象となることもあるため、詳細な確認が必要です。

滞在期間・就労期間による免除可否の基準

租税条約では、滞在期間が183日(約半年)以内であれば非課税とされるケースが多く見られます。
一例として、母国企業から派遣されて短期間日本で働く場合や、報酬を日本国外の雇用主から受け取る場合などが該当します。

一方、1年以上の就労契約を結ぶ特定技能外国人は、日本の居住者扱いになるため、通常の課税対象になります。
つまり、「短期派遣」か「長期雇用」かによって、同じ国籍でも税務上の取り扱いが変わる点が重要です。

条約適用を受けるための基本要件と判断の流れ

租税条約を適用するには、以下のような流れで手続きを進めます。

  1. 本人の出身国が日本と租税条約を締結しているか確認

     

  2. 在留資格・雇用形態・滞在期間が条約条件を満たしているか判断

     

  3. 「租税条約に関する届出書」を税務署に提出

     

  4. 認定後、企業は源泉徴収を免除または軽減して処理

     

このプロセスを省略した場合、免除が適用されず、通常税率で課税されてしまうため注意が必要です。
また、条約は国ごとに細かな規定が異なるため、税理士や行政書士と連携して内容を精査することが望ましいです。

まとめ:対象判断は「在留資格×滞在期間×契約内容」で決まる

特定技能外国人が租税条約の適用を受けるには、「在留資格」「滞在期間」「契約形態」の3点がカギになります。
制度の誤解や手続きの遅れによって免除が無効になるケースも多いため、
企業担当者は雇用契約の段階から税務上の条件を確認し、必要な届出を確実に行う体制を整えることが大切です。

租税条約の申請手続きと注意点

租税条約の適用を受けるためには、所定の届出を期限内に提出することが欠かせません。
制度そのものを理解していても、申請の流れや必要書類を誤ると、免税措置が認められないケースが多く見られます。
ここでは、企業と特定技能外国人が押さえておくべき申請手続きの流れと、よくある注意点を解説します。

「租税条約に関する届出書」の提出先と提出時期

租税条約の適用を受けるには、まず**「租税条約に関する届出書」**を提出する必要があります。

  • 提出先:勤務先の所在地を管轄する税務署(法人の場合は所轄税務署)

     

  • 提出者:原則として外国人本人だが、企業側が代理提出するケースも可能

     

  • 提出時期:初回給与支給の前までに提出するのが原則

     

届出書を提出していない場合、税務署は租税条約の適用を認めません。
その結果、免除対象であっても通常の所得税率(原則20.42%)が課されることになります。
企業担当者は、雇用契約締結時に本人と書類の準備スケジュールを共有しておくことが重要です。

提出に必要な書類(国籍証明・雇用契約書・在留カードなど)

届出書の提出には、以下の書類が必要です。

書類名内容・目的
国籍証明書出身国と条約の適用国を確認するために必要
雇用契約書または派遣契約書報酬の支払者や勤務期間を明示する書類
在留カードの写し在留資格と滞在期間を証明するために添付
届出書(原本)条約適用を正式に申請するための主要書類

これらのうち国籍証明書や契約書は母国語で発行される場合もあるため、日本語訳の添付が求められることがあります。
また、企業側が代理提出する際は、委任状を添付することで円滑に処理されます。

書類の不備や提出遅れは免除無効の原因となるため、提出前に税務署へ確認しておくと安心です。

在留資格変更・滞在延長時の再手続きに関する注意点

特定技能外国人は、在留資格の更新や特定技能1号から2号への移行が行われることがあります。
この場合、届出書の再提出が必要になる点に注意が必要です。

たとえば、

  • 在留資格を変更した

     

  • 滞在期間を延長した

     

  • 雇用先が変わった

     

といった場合には、既存の届出は無効になり、再度申請手続きを行わなければなりません。
また、雇用契約が中断した場合や転職した場合にも税務署への変更届を提出することが求められます。

再手続きが遅れると、免除対象期間が途切れるリスクがあるため、企業側が定期的に在留状況をチェックし、税務処理部門と連携しておくことが大切です。

まとめ:申請は「期限」「書類」「再提出」の3点が肝心

租税条約の適用を確実に受けるには、①期限内の届出、②必要書類の不備防止、③変更時の再手続きが必須です。
制度自体はシンプルですが、実務では提出忘れや書類ミスによって免除が無効になるケースが少なくありません。
企業担当者は、採用時から更新・再雇用までの一連のフローに「租税条約の確認」を組み込み、継続的な税務管理体制を整えておきましょう。

適用後の税金計算と免除範囲

租税条約の申請が受理されると、外国人労働者の所得税や住民税の扱いが通常とは異なります。

免除または軽減の対象範囲を正しく理解しておかないと、企業側の源泉徴収処理や外国人本人の納税に誤りが生じることがあります。

ここでは、条約適用後の税金計算や免除範囲を具体的に見ていきましょう。

租税条約適用による所得税・住民税の扱い

租税条約が適用されると、給与所得にかかる所得税の一部または全部が免除されるケースがあります。
免除の対象となるのは主に国外からの派遣・短期滞在者であり、国内での長期就労者は通常課税となります。

一方、住民税は租税条約の対象外である点に注意が必要です。
そのため、所得税が免除されても、翌年度以降の住民税は発生するケースがあります。

企業としては、給与計算時に

  • 条約適用期間中の所得税の源泉徴収免除

     

  • 翌年度住民税の課税有無
    を明確に分けて処理する必要があります。

     

租税条約によって軽減・免除される代表的なケース

租税条約に基づき免除・軽減される主なケースは以下の通りです。

区分内容
短期滞在者(183日以内)母国で課税される前提で、日本での所得税が免除される
教授・研究者一定期間、日本での所得が免除対象となる
学生学費・生活費などの支給が非課税扱いになる
派遣労働者海外の企業から給与を受け取る場合、日本で課税されないことがある

特定技能外国人の場合、滞在期間や報酬支払元が国内であることが多いため、完全免除になるケースは少ないものの、
国によっては一部軽減措置が適用される場合もあります。
企業側は、雇用契約時に「報酬の支払元」「滞在期間」「契約期間」を確認し、どの条文が該当するかを精査することが大切です。

免除されないケース(非締結国・長期滞在など)

以下のようなケースでは、租税条約が適用されず通常通り課税されます。

  • 日本と租税条約を締結していない国の出身者

     

  • 1年以上の長期滞在で居住者扱いとなる場合

     

  • 日本国内の企業から給与が支払われている場合

     

  • 届出書の提出が遅延・不備で認められなかった場合

     

特定技能外国人の多くは長期就労者であり、租税条約による完全免除の対象外となるケースが大半です。
ただし、条約を結んでいる国では、教育・研究・研修などの一部所得が免除対象になる可能性があります。
そのため、「免除対象にならない=条約が無関係」という誤解を避け、内容を正しく確認する姿勢が求められます。

まとめ:免除範囲は「在留形態」と「収入源」で決まる

租税条約の免除・軽減は、在留資格・滞在期間・報酬の支払元によって大きく異なります。
特定技能外国人の場合、完全な免除は難しくても、一部軽減措置を受けられる国も存在します。
企業は免除の可否を国別に確認し、所得税・住民税それぞれの取り扱いを分けて管理することで、正しい税務処理とコンプライアンスの維持につながります。

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企業が行うべき実務対応

租税条約の仕組みを理解していても、実務での対応を誤ると免除適用漏れや税務署からの指摘につながることがあります。
特に企業の経理・人事担当者は、源泉徴収や年末調整での正確な処理が求められます。
ここでは、特定技能外国人を雇用する企業が実務上押さえておくべきポイントを整理します。

源泉徴収に関する実務ポイントと注意点

租税条約の届出書が受理されるまでは、通常どおりの源泉徴収を行う必要があります。
免除が確定した後に税務署から通知が届いた時点で、対象期間分の還付処理を行うのが正しい流れです。

源泉徴収時に注意すべきポイントは次の通りです。

  • 届出書の有無で源泉税率が変わる(未提出なら通常税率20.42%)

     

  • 提出済みでも税務署の確認前に免除処理を行わない

     

  • 対象期間を超えて免除処理を継続しない(滞在延長時は再手続きが必要)

     

特に、届出書未提出のまま源泉免除処理をしてしまうと、追徴課税や加算税が発生する可能性があります。
企業は、書類の控えを必ず保管し、処理担当者間で情報を共有する体制を整えることが重要です。

年末調整・確定申告時の留意点

租税条約が適用されている外国人でも、年末調整や確定申告の対象になる場合があります。
主な留意点は以下の通りです。

  • 所得税が免除されている場合でも、住民税は課税される

     

  • 年度途中で資格変更・再雇用があった場合は、所得期間を分けて処理

     

  • 母国での課税証明が必要になるケースもある

     

また、租税条約による免除は所得税法上の扱いに限定されるため、
社会保険料や住民税の控除処理とは連動しない点に注意が必要です。
年末調整の際は、条約適用期間を正確に把握し、外国人ごとに課税区分を分けて処理することが求められます。

条約適用者と非適用者が混在する場合の処理手順

外国人労働者を複数雇用している企業では、租税条約の適用者と非適用者が混在することがよくあります。
この場合、処理手順を統一せずに行うと、源泉徴収額や年末調整で差異が生じることがあります。

対応の流れとしては、以下の手順が有効です。

  1. 雇用時に租税条約の有無を確認し、社員区分を登録

     

  2. 給与計算ソフトや管理表で適用区分を設定(免除/通常課税)

     

  3. 毎月の給与処理で区分ごとに源泉税計算を自動反映

     

  4. 年末調整時に、適用期間を再確認して再計算

     

このように、区分管理と書類保管の徹底が、税務上のトラブル防止につながります。
とくに監理団体や派遣元が関与する場合は、契約先企業との情報共有も不可欠です。

まとめ:企業の税務管理は「仕組み化」がカギ

租税条約を正しく運用するには、担当者の知識だけでなく、社内フローの整備と管理体制が不可欠です。
源泉徴収・年末調整・再雇用対応のそれぞれで明確なルールを設け、書類管理をシステム化することで人的ミスを防止できます。
企業は「租税条約を理解しているか」ではなく、**「運用できる仕組みを持っているか」**が問われます。

制度を正しく活用するためのポイント

租税条約は制度として理解していても、実際に活かせていない企業が多いのが現実です。
特定技能外国人の受け入れが増える中で、企業と外国人双方が制度を正しく活用できるよう、
ここでは実務と運用の両面からのポイントを整理します。

外国人本人が確認すべき税務関連手続き

外国人本人にとっても、租税条約の理解は重要です。
自分の母国が日本と条約を結んでいるかどうかを知らないまま働くと、本来免除されるはずの税金を納めてしまうケースがあります。

本人が確認しておくべきポイントは以下の通りです。

  • 自国が日本と租税条約を締結しているか

     

  • 「租税条約に関する届出書」を勤務先と一緒に提出しているか

     

  • 在留資格や滞在期間に変更があった際の再手続き状況

     

企業は、採用時のオリエンテーションなどで税務関連書類の提出方法を案内することで、本人の理解促進をサポートできます。

企業が整えておくべき社内対応と相談先

租税条約の手続きは、経理担当だけで完結するものではありません。
人事・労務・監理団体・税理士の複数部署連携が不可欠です。

効果的な社内対応として、以下の体制を整えると良いでしょう。

  • 外国人雇用時に税務チェックリストを活用

     

  • 在留資格・滞在期間を管理する専用シートを作成

     

  • 税理士・行政書士との定期的な情報共有

     

また、税務署や地方自治体の相談窓口でも、租税条約の適用可否や書類の確認を行ってもらえる場合があります。
社内で完結させず、外部専門家を巻き込んだ運用が最も安全です。

今後の制度改正や国際的な動向に備える方法

外国人労働者の増加に伴い、今後も租税条約や関連制度の改正が進むと見込まれます。
OECD(経済協力開発機構)の「BEPS防止行動計画」など、国際的な課税ルールの見直しも進行中です。

企業としては、以下のような情報収集を継続することが望まれます。

  • 国税庁・法務省の最新通達の確認

     

  • 外国人労働者支援サイトでの制度変更情報のチェック

     

  • 監理団体や専門士業によるセミナーへの参加

     

こうした取り組みにより、制度変更時にも迅速に対応できる柔軟な税務管理体制を構築できます。

まとめ:制度理解を「運用レベル」に引き上げる

租税条約を単なる知識で終わらせず、現場で正しく運用できる体制を整えることが企業の責任です。
外国人本人への説明、社内管理システムの整備、外部専門家との連携を通じて、税務の透明性と信頼性を高めることができます。
制度を“知っている”だけでなく、“使いこなす”ことが税務コンプライアンスの鍵となります。

特定技能外国人の税務トラブルを防ぐための実践ポイント

特定技能外国人の受け入れが増えるにつれ、税金に関する誤解や手続きミスによるトラブルが目立っています。
租税条約を理解していても、書類の遅れや判断ミスひとつで、免除が無効になったり追徴課税を受けたりするケースも少なくありません。
ここでは、企業が現場で起こりやすいトラブルを防ぐために押さえておくべき実践的なポイントを紹介します。

租税条約の誤解で起こりやすいミスと企業側のリスク

租税条約に関するトラブルの多くは、制度の誤解や情報共有不足から発生します。
代表的なミスと、それに伴う企業側のリスクを整理すると以下の通りです。

よくある誤解・ミス想定されるリスク
届出書を提出しなくても免除されると思い込む通常課税が適用され、追徴課税の可能性
居住者・非居住者の判定を誤る誤課税・過徴収による返金トラブル
条約未締結国の外国人にも免除を適用してしまう不適切な免税処理による税務調査リスク
申請期限を過ぎて提出条約の適用が認められず免除が無効化

このようなミスは、担当者の異動や担当部署の連携不足でも起こりやすいものです。
とくに外国人雇用が初めての企業では、「税金の仕組みはすべて同じ」と思い込む危険があり、結果的に制度の誤適用につながります。
したがって、**租税条約は「申請があって初めて適用される制度」**であることを社内で徹底する必要があります。

申請漏れ・書類不備を防ぐ社内フローの作り方

トラブルを防ぐためには、人に依存しない仕組み化された社内フローが重要です。
以下のようなステップで体制を整えると、申請漏れを防ぎやすくなります。

  1. 採用段階で税務区分チェックリストを作成
     → 出身国・在留資格・雇用形態を一覧化し、租税条約の有無を確認。

     

  2. 入社時オリエンテーションで必要書類を案内
     → 外国人本人に届出書の提出手順や期限を明確に説明。

     

  3. 届出書のコピーと控えを必ず保管
     → 監査や税務調査に備えてデジタル・紙双方で保存。

     

  4. 在留資格変更・更新時の再確認をルーチン化
     → 「滞在期間変更時に再提出が必要」という意識を全員で共有。

     

このように、チェックリスト化と更新タイミングの明確化を行うことで、属人的なミスを減らせます。
また、担当者不在時にも対応できるよう、申請スケジュールを共有カレンダーや人事システムで可視化しておくとより効果的です。

税理士・行政書士との連携で制度運用を安定させるコツ

租税条約の判断は、国籍・雇用形態・報酬形態などが絡み合うため、社内だけで完結させるのは難しいのが実情です。
そのため、税理士・行政書士などの専門家との連携を早期に行うことが理想的です。

具体的には次のような運用が有効です。

  • 年1回の税務顧問レビューを設定し、届出書類や免除処理の妥当性を確認。

     

  • 行政書士との連携で、在留資格変更時の税務手続きも一括で管理。

     

  • 条約改定や税率変更の情報を専門家から定期的にアップデートしてもらう。

     

こうした外部連携により、国ごとの微細な条約差や税務署の運用傾向を早期に把握でき、社内では対応しきれない部分を補完できます。
特に受け入れ人数が多い企業や監理団体では、税務顧問契約の導入がトラブル防止に大きく寄与します。

まとめ:ミスを防ぐ最強の対策は「仕組み+専門家+情報更新」

租税条約に関するトラブルを防ぐためには、人ではなく仕組みで管理することが重要です。
そのうえで、専門家と定期的に情報を共有し、制度変更に即応できる体制を築くことがリスク回避の鍵となります。
最終的に、企業が取るべき姿勢は「理解する」ではなく、「継続的に運用・改善していく」こと
こうした積み重ねが、外国人雇用全体の信頼性を高め、税務リスクのない安定した経営基盤へとつながります。

まとめ:租税条約を正しく理解し、特定技能雇用の税務リスクを防ぐ

特定技能外国人に対する租税条約の適用は、**「国籍」「在留資格」「滞在期間」「雇用形態」**といった複数の要素で判断されます。
母国と日本が租税条約を結んでいれば、一定条件のもとで所得税が免除または軽減される可能性がありますが、
手続きや届出を誤ると、免除が無効になり過剰課税や追徴課税を受けるリスクも存在します。

企業が守るべき基本は、次の3点です。

  • 期限内に届出書を提出すること

     

  • 在留資格・滞在期間の変更時に再手続きを行うこと

     

  • 免除対象者と通常課税者を明確に区分して管理すること

     

一方で、外国人本人も自国の条約状況を把握し、自分の在留条件に基づく税務ルールを理解する責任があります。
企業と本人が連携して情報を共有することで、税務トラブルの大半は未然に防ぐことができます。

また、税理士や行政書士など外部専門家との定期的な情報交換は、制度改正や国際条約の変更に即応するうえで不可欠です。
税務リスクを避ける最大のポイントは、「理解」よりも**“運用できる仕組みを持つこと”**にあります。

正しい知識・確実な手続き・継続的な体制整備。
この3つを揃えることで、特定技能外国人の雇用は法令に沿った安定運営となり、
企業の信頼性向上と外国人材の安心した就労環境づくりにつながります。

 

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