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10/03 (金)更新

特定技能を「自社支援」で運用するには?|制度理解から導入手順まで徹底解説

特定技能制度の活用が進むなか、「自社で支援体制を整えられるのか?」という問いに直面している企業も少なくありません。

 

登録支援機関への委託だけが選択肢ではなく、自社での支援(自社支援)という選択肢も現実的な選択となっています。

 

自社支援には、コスト削減や対応スピードの向上といった利点がある一方で、制度理解や人材体制、言語対応などの準備が欠かせません。

 

また、支援内容の義務と任意の違い、支援計画書の策定、行政への報告義務など実務的な負担も考慮する必要があります。

 

本記事では、特定技能を「自社支援」で運用するために必要な制度理解から導入のステップ、他社との違い、注意点までを実務担当者目線で徹底解説します。

 

また、自社支援の可否を判断するためのチェックポイントや、企業ブランディングに活かす視点についても掘り下げます。

 

特定技能制度をただ「活用する」だけでなく、「企業の成長戦略」に昇華させたい方に向けた内容です。

 

初めての企業様にもわかりやすく、必要な情報を網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。

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特定技能を自社支援できる企業の要件とは

特定技能制度における「自社支援」は、登録支援機関に委託せず、自社内で外国人材への支援業務を実施する形態です。

 

コスト削減や現場への即応性といったメリットがある一方で、法的・制度的に満たすべき要件も明確に定められています。

 

特定技能所属機関が「自社支援」を行うには、出入国在留管理庁が定めた複数の条件をクリアしなければなりません。

 

これらの条件は単なるチェック項目ではなく、外国人材の安心・安全な日本での生活や就労を確保するための重要な指標でもあります。

 

ここでは、自社支援を行う企業が満たすべき6つの要件について、ひとつずつ解説していきます。

過去2年以内に外国人の雇用・生活支援の実績があること

まず最も基本的な要件として挙げられるのが、「過去2年以内に外国人材の雇用・支援実績があること」です。

これは特定技能外国人を受け入れる以前に、外国人労働者に対して一定の支援経験があることを示す必要があるということです。

一例としては、技能実習や留学生アルバイトを雇用し、日常生活の支援(住居探し、役所手続きの同行など)を行っていた事例が該当します。

支援実績があることを示すには、業務日報、住居斡旋履歴、支援内容の記録等の書面を保管しておくことが重要です。

支援実績が「形式的」なものではなく、実態として行われていたかが審査されるため、客観的なエビデンスが求められる点に注意しましょう。

支援責任者・担当者が適格であること

次に求められるのは、支援業務を統括・実行する人材の適格性です。

特定技能制度では、「支援責任者」と「支援担当者」の選任が必須とされており、いずれも一定の条件を満たす必要があります。

たとえば、以下のような要件が求められます。

  • 支援責任者は常勤であること
  • 支援業務に関する十分な知識・経験があること
  • 外国人との意思疎通が可能なこと
  • 刑事罰や行政処分の履歴がないこと

単に「人を割り当てればよい」という話ではなく、支援対象者の安心に直結する人材配置が求められている点を理解しておくことが重要です。

外国人が理解できる言語で支援できる体制を有すること

支援の根幹となるのが、「外国人が理解できる言語で支援できる体制」の整備です。

特定技能外国人は日本語能力に個人差があり、日本語だけで支援を完結させるのは非現実的な場合も多々あります

そのため、以下のような言語対応体制を構築することが求められます。

  • 支援担当者に外国語スキル(英語・ベトナム語・インドネシア語など)がある
  • 必要に応じて通訳・翻訳スタッフを配置している
  • 多言語対応の資料やガイドラインを用意している

特に生活ガイダンスなど、初期支援の場面では本人が母国語で正確に理解することが求められるため、翻訳支援の質が問われる局面もあります。

支援記録の作成・保管体制が整っていること

自社支援を行う際には、実施した支援内容を記録として残し、それを一定期間保管する義務があります。

これは「支援の透明性」と「後からの検証可能性」を確保するための仕組みです。

支援記録には以下のような内容が含まれます。

  • 実施日・時間・場所
  • 支援内容(例:生活ガイダンスの実施、定期面談など)
  • 対応者の名前
  • 支援対象者のサインや同意確認

これらをデジタルまたは紙媒体で管理し、原則5年間の保存が義務付けられている点にも注意が必要です。

システムで管理する場合は、記録の改ざん防止やバックアップ体制も審査対象となります。

中立性・信頼性が確保されていること

特定技能外国人の生活を支える支援には、雇用主と被雇用者という立場を超えた“中立性”と“信頼性”が不可欠です。

支援内容に偏りがあったり、企業都合で形骸化した場合には、制度の本質が損なわれます。

この中立性を示すためには以下のような配慮が求められます。

  • 支援担当者が公正な立場で業務にあたっていること
  • 苦情や相談への受付体制が整っていること
  • 第三者が確認できる支援体制マニュアルを有していること

形式的な支援体制ではなく、「信頼される運用体制」が構築されていることを証明する姿勢が重要です。

過去5年以内に支援義務違反がないこと

最後に確認されるのが、過去5年以内に外国人材支援に関する法令違反や行政処分を受けていないことです。

これは“制度の信用性を損なわない企業”であることを示す要件です。

たとえば、過去に以下のような事案があった場合は、自社支援を行うことができない、あるいは制限される可能性があります。

  • 技能実習での不正行為(長時間労働、賃金未払い)
  • 外国人への支援放棄
  • 登録支援機関としての義務違反

過去の信頼性が問われるため、支援実績がある企業ほど履歴チェックは重要になります。

導入前にコンプライアンス体制を再点検しておくべきです。

▼自社支援は“信頼と体制”があってこそ成り立つ

特定技能の自社支援は、単にコスト削減の手段として捉えるのではなく、“企業としての社会的責任”と“人材育成力”が問われる制度運用のひとつです。
求められる6つの要件は、どれも外国人材の生活と成長に直結する要素ばかりです。

  • 過去の支援実績
  • 適格な人材の配置
  • 言語・記録・中立性の体制整備
  • 違反履歴の有無

これらをすべて満たし、かつ持続可能な運用体制を築いてこそ、真の意味での「自社支援」が可能になります。
特定技能制度を長期的に活かすためには、制度理解とともに、誠実な体制づくりが企業成長の鍵を握るのです。

自社支援で必要となる具体的な支援内容

特定技能制度において自社で支援を行う企業は、法令で定められた支援内容を確実に実施する責任を負います。

 

支援の範囲は単なる生活のサポートにとどまらず、外国人材が安心して長期的に就業できる環境づくりまで広く及びます。

 

ここでは、自社支援を選択する際に押さえておくべき具体的な義務的・任意的支援の内容と、計画書作成や行政対応に必要なポイントを整理して解説します。

義務的支援(生活ガイダンス、住居支援など)

義務的支援は、「特定技能所属機関等支援計画」で定められている必須項目です。

代表的な支援内容は以下の通りです。

  • 生活ガイダンスの実施
    入国直後または雇用開始時に、日本の生活ルール・マナー・交通機関の利用方法などについて説明を行います。
    外国人材が不安なく生活を始められるよう、母国語や理解可能な言語で実施することが求められます。
  • 住居の確保支援
    住居探しが困難な外国人材のために、賃貸契約の補助や連帯保証人の確保、住居の斡旋などを行います。
    初期費用の立て替えや生活必需品の準備支援も含まれることがあります。
  • 行政手続き等の同行
    住民登録、社会保険手続き、銀行口座開設などに同行し、スムーズに生活基盤を整えられるよう支援することが義務とされています。
  • 相談・苦情対応体制の整備
    職場や生活での困りごとに迅速に対応できるよう、専用の相談窓口や、定期的な聞き取りの実施体制が必要です。

これらの義務的支援を怠ると、制度違反とみなされ指導や改善命令の対象になるため、慎重な運用が求められます。

任意的支援(日本語学習、交流促進など)

義務ではないものの、実施することで定着率向上や職場の活性化に貢献できる支援が「任意的支援」です。

  • 日本語教育の提供
    業務上の指示理解、コミュニケーション円滑化を目的として、日本語教室の斡旋や受講費の補助を実施する企業が増えています。
  • 地域・社内交流イベントの開催
    地域住民や同僚との交流を促進することで、外国人材が孤立しにくい職場環境を整えます。BBQ、工場見学、文化体験ツアーなども有効です。
  • キャリア支援や資格取得補助
    技能のステップアップやモチベーション向上につながる支援は、長期的な雇用維持にも効果的です。

こうした取り組みは、「支援の質」が企業評価につながる時代において、他社との差別化要素にもなり得ます。

支援計画書の作成と遂行

支援計画書は、入管庁への提出が義務づけられており、自社支援を行う場合は自らこの計画を策定し、確実に遂行しなければなりません。

  • 計画書には支援の内容・頻度・担当者の情報などを明記する必要があります。
  • 内容は、対象者の国籍や事情に応じて柔軟に調整することが望ましく、画一的な支援では不十分とされる傾向があります。
  • 計画書に記載された内容は、入管からの実地調査や書類確認の対象にもなるため、計画どおりの履行が不可欠です。

特に、任意的支援も含めて計画書に盛り込むことで、制度運用の誠実さをアピールする材料にもなります。

定期面談・行政機関への報告対応

定期面談や行政報告も、支援内容の中核をなす重要業務です。

  • 面談は少なくとも3ヶ月に1回以上の頻度で実施し、業務や生活における困りごとの有無を確認する必要があります。
  • 面談結果は記録として残し、支援記録とともに保管することが義務です。
  • 問題がある場合には速やかに入管に報告する体制も整えておく必要があります。

このように、支援は単なる形式的なものではなく、継続的・実効的に実施する運用体制が求められます。

▼「支援の質」が制度活用の成否を左右する

自社支援を実施する企業にとって、義務的支援の確実な履行は最低条件であり、それを上回る任意的支援をいかに充実させるかが、人材の定着や組織の活性化に直結します。
また、支援計画書の策定・面談・報告体制の整備は、制度上の義務であると同時に、企業の誠実さ・透明性を示す重要な要素です。
特定技能制度を“採用戦略”として活用するためには、支援業務を「付加的な負担」ではなく「企業価値向上の機会」として捉える発想がカギとなるでしょう。

自社支援と登録支援機関の違い|メリット・デメリット比較

特定技能の受け入れにおいて、自社支援と登録支援機関の活用は大きな分かれ道となります。

 

どちらを選択するかによって、企業の負担・コスト・リスクマネジメントの方法が大きく変わるため、制度の正しい理解が不可欠です。

 

本セクションでは、自社支援と登録支援機関それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、自社に最適な選択を導き出す判断軸をご紹介します。

自社支援のメリット(コスト削減・即応性など)

自社支援を選ぶ最大のメリットは、コストの削減と自社の裁量で支援体制を構築できる点です。

  • 支援委託料の削減
    登録支援機関に支払う月額数万円〜十数万円の委託費が不要になるため、複数人を雇用する場合には大幅なコスト削減が期待できます。
  • 社内で即応できる体制構築
    外国人従業員が抱える悩みやトラブルに、自社内の担当者が即時に対応できることは、トラブルの長期化を防ぎ、安心感にもつながります。
  • 企業文化に合わせた柔軟な支援が可能
    生活ガイダンスや面談も、社内の雰囲気や実態に即した対応ができるため、外国人材にとっても違和感のないサポートが実現しやすくなります。
  • 外国人材との信頼関係が深まりやすい
    支援者=雇用主という関係性が築かれるため、信頼関係の構築や定着率の向上につながる傾向もあります。

これらの点から、支援体制を自社で整備できる余力がある企業には魅力的な選択肢となるでしょう。

自社支援のデメリット(工数・専門知識の負担など)

一方で、自社支援には人的・時間的リソースの確保や法的責任の重さという明確な課題も存在します。

  • 対応業務が多岐にわたる
    住居探し、行政同行、生活ガイダンス、定期面談、支援記録作成・保管など、幅広い業務を正確に遂行する必要があります。
  • 専門知識と語学力が必要
    入管法の知識、日本語以外の言語での説明能力、報告書類の整備など、高度な知識・スキルが求められる場面も多いです。
  • 法的責任の所在がすべて企業にある
    仮に支援漏れや不適切な対応が発生した場合、その責任はすべて自社が負うことになります。改善命令や受入停止処分のリスクも無視できません。
  • 支援計画書作成とその実行に継続的な管理が必要
    書類提出時だけでなく、日々の実行と記録、定期面談・報告の積み重ねが求められるため、業務負担は想像以上です。

このように、人的リソースやノウハウのない企業が安易に自社支援を選ぶと、制度運用が形骸化しやすくなるリスクがある点には注意が必要です。

どちらを選ぶべきかの判断ポイント

「どちらが正解か」ではなく、「どちらが自社に合っているか」を見極めることが最も重要です。

以下のような観点で判断するとよいでしょう。

  • 支援経験の有無と体制の有無
    すでに技能実習生や留学生の支援経験がある企業であれば、自社支援を円滑にスタートできる下地があるといえます。
  • 社内に多言語対応できる人材や専任担当者がいるか
    社内に外国語対応可能なスタッフがいれば、支援の質を担保しやすくなります。言語対応の可否は大きな判断基準です。
  • 初期コストと継続的コストのどちらを重視するか
    短期的なコストを抑えるために自社支援を選んだものの、内部工数が増えて長期的には非効率になるケースも存在します。
  • 人材の定着や成長をどの程度重視するか
    外国人材を単なる労働力ではなく、中長期的な戦力として育成したいと考える企業ほど、柔軟な自社支援が有効に機能します。
  • 法令順守とトラブル対応に対するリスク管理の姿勢
    登録支援機関を利用すれば、一定の法的リスクは外部に分散できます。社内で法令対応に不安がある場合は委託も有効です。

つまり、自社の「体制・人材・目的」によって最適解は変わります。万能な選択肢は存在せず、正確な現状分析と目的整理が重要です。

▼自社支援は「準備が整っていれば最適解」

自社支援は、準備と体制が整っていれば非常に有効な選択肢です。
コストを抑えつつ、柔軟で信頼性の高い支援体制を築けることは、企業と外国人材双方にとって大きなメリットになります。
しかしその一方で、法令順守・記録管理・多言語対応など、多面的な負担を担う覚悟が必要です。
リソースや支援経験が乏しい企業であれば、登録支援機関を活用して制度運用の安定性を確保するほうが賢明な場合もあります。
目指すべきは「持続可能な支援体制」。その視点をもとに、最適な支援方法を選択しましょう。

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自社支援を導入するためのステップと注意点

特定技能制度において「自社支援」を選択するには、単なる意思決定だけでなく、明確な計画と体制構築が不可欠です。

 

援業務の実施には法的な要件が課されており、担当人材の確保や多言語対応など、事前に検討すべき事項が数多く存在します。

 

本セクションでは、自社支援の導入ステップを体系的に解説するとともに、現場でよく直面する課題とその対応策も併せて紹介します。

導入までの流れ(計画、体制構築、届け出等)

自社支援を始めるには、以下のような段階的な準備と届け出のプロセスが必要です。

  1. 支援体制の計画立案
    どの部署が支援を担うのか、どの範囲を社内対応とするかなどを事前に明確化します。
  2. 支援責任者・担当者の任命
    法令上、支援責任者と支援担当者を明確にし、要件を満たしていること(実務経験・知識等)を確認する必要があります。
  3. 支援内容・言語対応の体制整備
    義務的支援項目(生活ガイダンス、住宅確保など)に対する実施計画と、対応言語での実施方法を準備します。
  4. 支援計画書の作成・提出
    出入国在留管理庁への届出時に支援計画書が求められるため、全支援内容を文書で整備し、適正に記録・保管できる体制も構築します。
  5. 支援記録の整備・保存方法の確立
    支援実施後は、いつ・誰が・どのような内容で支援したかを記録に残し、5年間保存する必要があります。

導入時点で制度理解と体制が整っていない場合、不備を理由に申請が却下されることもあるため注意が必要です。

社内に支援担当人材がいない場合の対応策

中小企業や初めて外国人材を受け入れる企業では、支援担当者に適した人材が社内にいないことも珍しくありません。

そのような場合には以下の対応策が考えられます。

  • 他部署からの配置転換と教育
    外国人と接する業務経験のある社員を支援担当に任命し、必要に応じて行政書士や専門団体によるセミナー・研修で育成します。
  • OB・OGや地域の支援人材を活用
    過去に技能実習や外国人材の支援に携わっていた人材、地域の多文化共生支援団体との連携なども有効です。
  • 支援業務のうち一部を外部委託
    支援全体ではなく、特定項目(住居確保、生活ガイダンス等)を外部事業者にスポット委託する方法も認められています。

重要なのは、法令上必要な支援責任者の要件を満たした人物を明確に配置することであり、名ばかり担当者にならないよう実行力を持つ人選が求められます。

通訳・翻訳スタッフがいない場合の代替方法

多言語対応ができないことを理由に自社支援を断念するケースもありますが、代替手段は多数存在します。

  • 通訳翻訳サービス会社との業務契約
    月額契約またはスポット契約で、必要な場面だけオンライン通訳を活用する方法が一般化しています。
  • 在住外国人・留学生のアルバイト活用
    同じ母語を話せる人材を短時間勤務やパートタイムで雇用することで、自然な言語支援が可能です。
  • 無料または低価格の翻訳ツールの併用
    行政手続きや生活ガイドなどは定型文が多いため、AI翻訳+ネイティブチェックで精度を保つこともできます。
  • 登録支援機関から通訳対応だけを委託
    全支援ではなく、通訳業務だけを委託する「一部支援」も合法的に可能です。

つまり、自社内に外国語人材がいなくても工夫と連携で十分対応可能であり、必ずしも通訳スタッフの常駐は必要ありません。

一部業務のみ委託する「併用型支援」は可能か?

結論から言えば、自社支援と登録支援機関を併用する「一部委託支援」は制度上認められています。

  • 主たる支援は自社で行い、専門性が必要な部分を外部委託
    例:生活ガイダンスや行政同行は登録支援機関へ依頼し、日常的なサポートは社内担当者が実施
  • 支援計画書への記載が必須
    委託する業務と委託先を明確にした上で、支援計画書に反映させる必要があります。
  • 委託先は必ず登録支援機関であること
    支援を委託できるのは、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」のみです。
    未登録の業者や個人に依頼した場合、法令違反となります。

この「併用型支援」によって、自社のリソースと外部の専門性をうまく組み合わせた効率的な支援体制を実現することができます。

▼自社支援の導入には段階的な準備と柔軟な発想が鍵

自社支援の導入は、制度理解と実行力が問われるプロセスです。
届け出前の準備、社内体制の整備、支援計画の作成、そして実務の実行に至るまで、多岐にわたるステップが必要となります。
ただし、社内に支援人材がいない場合や語学対応が難しい場合でも、「一部委託」や「翻訳サービスの活用」など柔軟な工夫でカバー可能です。
完璧な体制を最初から目指すのではなく、段階的に支援体制を構築しながら、自社に合った形で制度を活用していく姿勢が大切です。

よくある質問と実務での悩み

特定技能外国人を受け入れるにあたって「自社支援」を選んだ企業の多くが、実務の運用面で様々な悩みや疑問を抱えています。

 

とくに制度理解が十分でない初期段階や、支援人数が増えてきたときには、現場対応に混乱が生じることも少なくありません。

 

本セクションでは、企業がよく直面する実務面での代表的な質問に焦点を当て、具体的な対応方法やポイントをわかりやすく解説します。

ビザ申請書類の作成は自社で対応できる?

結論として、自社でもビザ申請書類の作成は可能ですが、専門的知識と正確性が求められます。

在留資格「特定技能」を申請する際には、出入国在留管理庁に対して以下のような書類を提出する必要があります。

  • 特定技能所属機関に関する届出
  • 支援計画書
  • 雇用契約書
  • 技能評価試験や日本語試験の合格証明
  • 各種申請書(在留資格認定証明書交付申請書など)

これらの書類には制度特有の用語や構成があり、少しの誤記でも不受理や審査遅延のリスクがあります。

そのため、

  • 社内に入管業務の経験者がいる
  • 支援担当者が制度に精通している
  • 外部の行政書士と連携してチェックできる体制がある

といった条件を満たしていれば、自社での作成も十分可能です。

逆に、制度への理解が浅い段階では、最初の1人目だけでも専門家のサポートを受けて正しい手順を学ぶことをおすすめします。

中立性を保つ支援体制とはどのようなものか?

自社支援では「中立性」が問われる場面が多々あります。

とくに、外国人労働者が業務に関して不満を抱いたり、トラブルが発生した場合に、適切に対応できる体制が整っていないと、法令違反と判断される恐れもあるのです。

中立性を担保するために推奨されるのが以下の方法です。

  • 支援担当者と現場上司を明確に分ける
    → 業務指導と生活支援の役割を分離することで、意見の聞きづらさを解消。
  • 第三者相談窓口の設置
    → 社内に別ラインの相談先を設ける、または地域の外国人支援NPOと連携することで、相談しやすい環境づくりが可能です。
  • 定期的な個別面談の実施
    → 上司のいない場で支援担当者と本人が対話する時間を確保することで、信頼関係の構築と早期の課題発見につながります。

企業としても支援の公平性と本人の安心感を両立させるには、物理的・心理的に分離したサポート構造を構築することが不可欠です。

支援対象人数が多い場合の対応策は?

10名以上の特定技能外国人を受け入れている企業では、支援業務が膨大になり、1人の担当者だけでは対応が難しくなります。

このような場合には、次のような組織的対応が有効です。

  • 複数名の支援担当体制を構築する
    → 可能であれば母語・出身国ごとに担当を割り振ると、言語・文化面での配慮もしやすくなります。
  • 業務内容ごとに分業する
    → 入管関連書類、生活相談、労務管理などを機能別に分担することで負担を軽減
  • 支援記録の一元管理体制を整える
    → 支援内容を共有できるクラウド型の管理ツールやExcel台帳などを導入し、担当者間の連携をスムーズに。
  • 外部リソースとの連携を視野に入れる
    → 増員が難しい場合は、一部の業務だけを登録支援機関へ委託する「併用型」も検討価値ありです。

規模が大きくなるほど、属人的対応では限界が来ます。

支援を“組織的タスク”として再定義することが成功の鍵です。

支援対象国が複数ある場合の言語対応は?

特定技能では、ベトナム・ミャンマー・フィリピン・インドネシア・ネパールなど多国籍の人材が在籍するケースが増加しています。

そのため「全員に対して同じ日本語対応で済ませる」ことは現実的ではありません。

言語対応のコツは以下の通りです。

  • 言語ごとに支援担当者または通訳者を配置
    → 難しい場合は、「日本語+母語で解説できる多言語資料」を整備することで代用可能です。
  • 必要最小限の支援文書は翻訳済みテンプレートを活用
    → 出入国在留管理庁や自治体が配布している「多言語生活ガイド」などは活用価値が高いです。
  • 日常連絡はLINEやSNSでの母語対応
    → カジュアルな相談は、LINEで送信→翻訳アプリで確認→日本語で返すといった運用でも問題ありません。
  • 緊急時のために、翻訳アプリや電話通訳サービスを準備
    → 有事対応こそ事前準備が命です。

一つの言語に偏らず、最低限の母語支援体制を持つことが多国籍支援の第一歩です。

▼悩みは多いが、段階的な対策で自社支援は実現可能

自社支援の現場では、書類作成・中立性の確保・多人数対応・多言語支援など多くの課題に直面します。
しかし、こうした悩みの多くは、事前の仕組みづくりや外部資源の併用により段階的に解決可能です。
完璧な体制でなくても、「無理せずできる範囲から始めてみる」ことが最も現実的なスタートラインです。
必要に応じて専門家や登録支援機関との併用を検討しつつ、企業規模や支援対象者の国籍に応じた柔軟な設計を心がけましょう。

特定技能制度を“企業成長戦略”として活かすには?

単なる人手不足対策としての導入にとどめていては、特定技能制度の本当の価値を引き出すことはできません。

 

近年、制度を「成長戦略」として位置づけ、自社の人材力や組織文化の進化につなげる企業が増えつつあります。

 

このセクションでは、特定技能外国人を「一時的な労働力」ではなく、持続的な成長の鍵を握る“戦略的人材”として迎えるための視点を解説します。

 

支援の質や人材育成の在り方を見直すことで、制度を経営資源に昇華させるヒントが見えてくるはずです。

即戦力確保から組織の多様性推進へとつなげる視点

特定技能制度の最大の特徴は、即戦力となる外国人材を比較的短期間で受け入れられることにあります。

技能評価試験や日本語能力試験をクリアした人材が中心であるため、現場配属後の立ち上がりが早いというメリットがあるのは事実です。

しかし、ここで終わらせてしまうのは非常にもったいないことです。

本制度はむしろ、企業にとって「組織の多様性(ダイバーシティ)」を促進する起点となる可能性を秘めています。

具体的な効果としては以下が挙げられます。

  • 多様な価値観が業務改善やサービスの質向上につながる
  • 既存社員のマネジメント力・コミュニケーション力の強化
  • 社内に異文化理解が根付き、海外展開への視野も広がる

特定技能を「短期的な戦力」と見るか「企業風土を変える触媒」と捉えるかで、制度導入による企業の成長曲線は大きく異なります。

“支援の質”が人材定着と企業評価に直結する理由

特定技能制度には、「外国人が安心して働けるよう生活・労働環境をサポートする」ことが法的に義務付けられています。

この“支援”の質が、企業の人材戦略全体に大きな影響を及ぼすことを忘れてはなりません。

支援の質が高い企業では以下のような効果が明確に現れます:

  • 外国人材の定着率が高まり、採用コストが抑制される
  • 外国人同士の口コミやSNSで好意的な評価が広がる
  • 自治体や監督機関との信頼関係が強化される

一方で、支援体制が形骸化している企業では、トラブルの表面化や早期離職が相次ぎ、制度利用そのものが企業リスクに変わることもあります。

特定技能人材の本音に目を向けると、「給与」よりも「支援の手厚さ」や「相談のしやすさ」「成長できる環境」を重視しているケースが多く、支援の質こそが“見えない報酬”として機能していると言えるでしょう。

人材育成×制度活用がもたらす中長期的リターン

「特定技能人材は長期雇用ができないから育成する意味がない」と考える企業はまだ少なくありません。しかし、これは非常に短絡的な視点です。

実際には、以下のような“中長期的なリターン”が見込めます。

  • 再入国制度の活用により、帰国後も同一人材が戻ってくる可能性
  • 技能実習→特定技能→高度人材というステップアップ支援の実現
  • 帰国後に現地拠点を立ち上げる際の橋渡し人材として活躍

さらに、特定技能制度を通じて「教育・評価・昇進モデル」を磨くことで、既存社員への研修制度にも好影響が波及します。

社内に「教える文化」が生まれ、日本人社員のリーダーシップや指導力が強化される副次効果も見逃せません。

育成投資の回収を“短期雇用期間”だけで判断するのではなく、制度横断的・国際的な視野で人材の可能性を見出す姿勢が企業力を底上げします。

▼制度を“受け身”で使うか、“攻め”の成長戦略にするか

特定技能制度は、人手不足の解消という即効性だけでなく、企業全体の変革・成長を促す起爆剤になり得る制度です。

  • 即戦力人材の受け入れで現場を安定させつつ
  • 支援の質で定着率と企業ブランドを高め
  • 育成戦略と組み合わせて中長期的リターンを最大化する

こうしたアプローチを取ることで、特定技能制度は単なる制度利用を超えて、企業経営そのものの成長戦略に直結するものとなります。

制度を“受け身”で使うのではなく、“攻め”の視点で活用する。
この意識こそが、これからの外国人材活用時代における“勝ち組企業”の共通点です。

まとめ|「自社支援」は特定技能制度を企業の成長に活かす鍵

特定技能制度を活用する上で、「自社支援」は単なる義務対応ではなく、企業のブランディングや人材戦略と直結する重要な選択肢となります。

 

企業が自社で支援を行うには、支援実績や担当者の適格性、記録管理体制など明確な要件を満たすことが求められます。

 

さらに、義務的支援と任意的支援の両面をバランスよく実施し、支援計画書を通じて継続的なフォローアップが不可欠です。

 

また、登録支援機関との違いや、社内体制の構築が難しい場合の代替案も理解しておくことで、自社にとって最適な支援体制を選ぶ判断材料になります。

 

多国籍人材の受け入れが進む中、支援の質がそのまま人材の定着率や企業評価に直結する時代です。

 

「支援=コスト」ではなく、「支援=投資」と捉える視点を持ち、中長期的な企業成長を見据えた制度活用を進めていくことが、これからの人材戦略において重要になるでしょう。

 

特定技能制度をただの労働力確保に留めず、“企業の未来を創る仕組み”として自社支援を捉え直すことが、今後ますます求められます。

 

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