
10/03 (金)更新
特定技能の雇用条件書・雇用契約書とは?記載内容・注意点・日本語訳のルールまで徹底ガイド
外国人材の雇用が進む中で、特定技能ビザで受け入れる際に必ず作成しなければならないのが「雇用条件書」や「雇用契約書」です。
これは単なる書類のやり取りではなく、適切な内容の記載や母国語での説明義務があり、不備があると制度自体が認められないリスクもある重要な書類です。
しかし、「日本語で作成した契約書をそのまま渡してもいいのか?」「どこまで説明責任があるのか?」といった不安を感じる企業担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、特定技能における雇用契約書・雇用条件書の基礎知識から、記載すべき具体的項目、言語対応のルール、実務で気をつけるべきポイントまで、企業が安心して運用するために必要な情報を網羅的にわかりやすく解説していきます。
「形式だけ整えればいい」と誤解していると、トラブルや行政指導につながる可能性も。
本記事でリスクを未然に防ぎ、特定技能人材との健全な雇用関係を築くための第一歩を踏み出しましょう。
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特定技能における雇用契約書とは?基本理解と役割
特定技能制度で外国人材を受け入れる際、雇用契約書の作成は「必須事項」とされています。
ただの形式的な書類だと誤解されがちですが、実際には契約書の内容や説明方法に不備があると、制度の認定が下りないこともあるほど重要な役割を担っています。
特定技能の雇用では、雇用契約書と雇用条件書という2種類の文書が存在し、それぞれに意味と機能の違いがあります。
また、契約内容の明確化はトラブル回避の観点からも極めて重要です。
このセクションでは、特定技能における雇用契約書とは何か、その役割と重要性について、実務に役立つ観点から解説します。
なぜ契約書の作成が必須なのか
特定技能ビザで外国人材を雇用する企業は、雇用契約の締結が在留資格認定の前提条件となっています。
これは、労働条件の明示や待遇の公平性を保証するためだけでなく、出入国在留管理庁が制度の適正運用を確認するための書類審査にも関係しています。
契約書がなければ、在留資格の申請は認められず、特定技能外国人としての就労もできません。
さらに、内容が曖昧であったり、日本語だけで説明されていたりする場合には、「説明義務違反」として認定が却下されるリスクもあります。
つまり、契約書の作成は法的義務であると同時に、企業の受入体制の信頼性を証明する材料にもなるのです。
雇用契約書と雇用条件書はどう違う?
一見似ているこの2つの書類には、実務上の明確な違いがあります。
- 雇用契約書(Employment Contract)
企業と外国人本人が締結する正式な契約書であり、法的拘束力があります。
署名・押印が必要で、契約の成立を証明する書類です。 - 雇用条件書(Statement of Working Conditions)
契約書に記載された内容を外国人材が理解しやすいよう整理・翻訳したもの。
説明責任を果たすための資料であり、日本語が不自由な外国人でも内容を正確に把握できるように配慮されています。
どちらも必要であり、片方だけでは不十分です。契約の成立と内容理解の両立を図るうえで、セットで運用されるのが原則です。
契約書がトラブル回避につながる理由
雇用契約書は、外国人材と企業双方の「約束ごと」を明文化したものであり、労働条件に関する誤解や紛争を防ぐ役割を持ちます。
実際、トラブルの多くは以下のような「認識のズレ」から生じます。
- 残業代が支払われない
- 休日数や勤務時間が違う
- 配属先が聞いていた内容と異なる
こうしたケースで、契約書が曖昧だったり、説明が不十分だったりすると企業側に不利な判断が下されることも珍しくありません。
逆に、きちんと契約書を整備し、説明責任を果たしておけば、トラブルを未然に防ぎ、信頼関係を維持することが可能になります。
◆制度の信用を支える「契約書」の重みを正しく理解しよう
特定技能における雇用契約書は、単なる「就業条件の記録」ではなく、制度全体の適正運用や外国人材の権利保護を支える重要書類です。
雇用条件書とセットで運用することで、トラブル回避と制度活用の両立が可能になります。
適切な契約書の作成と、外国人材への丁寧な説明は、企業にとっても長期的な信頼の礎になります。
「とりあえず作った」では済まされない重要な書類として、ぜひこの機会に内容の見直しをおすすめします。
雇用契約書に記載すべき項目一覧|漏れなく対応できているか
特定技能外国人を受け入れる際の雇用契約書の不備や記載漏れは、ビザの不許可や制度違反に直結する重大なリスクとなります。
形式的に「一応作った」という書類では通用せず、制度が求める記載項目を正しく、網羅的に盛り込むことが必要不可欠です。
特に特定技能では、通常の雇用契約書には含まれない、制度特有の記載義務項目もあり、それらを把握していないと認定申請時に差し戻しや不受理の可能性があります。
この記事では、企業が雇用契約書に必ず記載すべき基本項目と、特定技能ならではの記載ポイントを整理し、支援計画など他書類との整合性を確保する重要性についても解説します。
就業場所・業務内容・労働時間・賃金などの基本情報
まず、特定技能に限らず全ての雇用契約に共通して求められる基本項目があります。
これらは労働基準法第15条に基づき明示が義務付けられている内容であり、記載が不十分だと「契約の体をなしていない」と判断されることもあります。
具体的な記載事項は以下のとおりです。
- 契約期間 – 有期雇用の場合はその期間、更新有無の明示
- 就業場所 – 本社、工場、現場など勤務地の明記
- 業務内容 – 技能実習・単純労働と誤解されないよう、特定技能に該当する業務内容を正確に表現
- 労働時間・休憩・休日 – 始業終業時間、残業の有無、休憩時間、週休制など
- 賃金 – 時給または月給、支払日、締め日、残業代の扱い、控除項目の明示
- 退職に関する事項 – 自己都合・会社都合における取り扱いと通知方法
これらに加え、日本語能力に配慮し、やさしい日本語や母国語での説明・翻訳対応も望ましいとされています。
特定技能外国人ならではの必要記載項目
特定技能では、出入国在留管理庁が定めた基準に適合するための特有の記載項目が追加で求められます。
これらの漏れは申請不備となるため、特に注意が必要です。
代表的なものは以下の通りです。
- 支援の有無と内容 – 生活支援、相談体制、日本語学習支援の実施有無
- 受入機関による保証 – 費用の本人負担がないこと、退職時の帰国支援等の義務
- 転職制限の条件 – 同一業種内であれば転職可である旨の認識合わせ
- 住宅に関する情報 – 住居提供の有無、家賃額、光熱費などの負担詳細
- 技能測定試験・日本語試験の合格情報 – すでに取得済みであれば記載、未取得で条件付き雇用ならその旨明記
また、特定技能1号か2号かによっても求められる内容が一部異なるため、自社の受け入れ対象と契約書の記述が矛盾しないよう確認が必要です。
技能試験や支援計画との整合性も重要
見落とされがちですが、雇用契約書の記載内容と支援計画書・在留資格申請書類との整合性は、制度審査における重要なチェックポイントです。
たとえば以下のようなケースはNGとされます。
- 契約書には「月給制」とあるのに、支援計画には「時給」で記載されている
- 契約書では寮費5,000円とあるのに、支援計画では10,000円と記載
- 就業時間が契約書と申請書類でズレている
このような「書類間の食い違い」は信頼性を損なう要因となり、最悪の場合は在留資格が不認可となります。
雇用契約書を作成する際には、他書類との整合チェックを行うことが必須です。
また、書類のバージョン管理や翻訳文書の内容一致も忘れずに確認しましょう。
◆形式より「実務で使える契約書」が重要
特定技能外国人を受け入れる際の雇用契約書は、単なる形式的な書類ではなく、制度全体の要を担う重要文書です。
労働条件の明示という観点だけでなく、在留資格申請の審査通過、支援体制との整合性、トラブル防止といった、実務のあらゆる局面で活用されます。
記載すべき項目を網羅し、制度の要件に沿った契約書を整備することが、安心して外国人材を受け入れるための第一歩です。
今一度、自社の契約書が制度要件を満たしているか、見直しをおすすめします。
母国語での説明が義務|理解されなければ無効になるリスクも
特定技能制度においては、雇用契約書や雇用条件書の内容を本人に正確に理解させることが法的に求められています。
単に書類を交わすだけでは不十分で、本人が内容を“理解して同意”していなければ、その契約は実質的に無効と判断される恐れもあります。
この「理解させる義務」は受入企業側に課されており、説明方法や言語対応、記録の残し方まで、制度上は非常に厳格にチェックされます。
本記事では、母国語による説明の必要性や実務上どの言語・手段で対応すべきかの判断基準、さらに「本人が理解した」という証明の仕方までを、申請審査の観点からもわかりやすく解説します。
どの言語で説明すべきか?対応言語の考え方
「母国語で説明を行う」といっても、一律に“その国の公用語”でよいとは限りません。
実際には、本人が最も自然に理解できる言語で説明することが原則です。
例えば、以下のようなケースでは配慮が必要です。
- フィリピン出身だが、英語よりもビサヤ語の方が理解できる
- 中国籍だが、標準語よりも広東語での説明が適切
- ミャンマー出身者に対してビルマ語でなく少数民族言語が必要
行政側のチェックポイントとしても、「当人が実際に理解できる言語で説明がされたか」が問われます。
そのため、単に国籍ベースで機械的に言語を選ぶのではなく、個人の理解状況に合わせた判断が求められます。
説明方法(通訳・翻訳・母語対応書類)の工夫
説明方法は1つに限らず、複数の手段を組み合わせることで理解度を高め、トラブル防止にも繋がります。
主な対応策は以下の通りです。
- 通訳者による対面説明
社内に対応言語がわかるスタッフがいない場合、外部の通訳者を雇って説明を行う方法が一般的です。
費用はかかりますが、最も確実に理解を促せる手段とされています。 - 翻訳済み契約書・条件書の交付
出入国在留管理庁が示す標準様式に基づき、母国語に翻訳した契約書類を作成・交付します。
英語、中国語、ベトナム語など主要言語には翻訳テンプレートも存在します。 - やさしい日本語との併記
難解な表現を避けた“やさしい日本語”と、母語訳の併記で理解を補助する方法です。
読み合わせ時に相互確認しやすいメリットがあります。 - 映像や図解を使った説明補助
労働条件や支援内容などは、動画やイラスト付き資料を用いて視覚的に説明する方法も有効です。
重要なのは、「説明した」という事実よりも、「理解されたか」を重視する姿勢です。
「理解した」ことの確認方法と記録の残し方
制度上、「説明したこと」だけでなく、本人が内容を理解したという事実の“証拠”を残すことが非常に重要です。
以下のような方法が推奨されています。
- 署名付きの説明記録書を作成
説明日・使用言語・説明手段(通訳、翻訳等)を明記した記録書に、外国人本人の署名またはサインをもらうことが確実な方法です。 - 通訳者の記名・立ち会い記録の保存
説明時に第三者が立ち会った場合、その通訳者や支援担当者の記名も記録に残すことで信頼性が向上します。 - 動画・音声で説明の様子を記録
対面やオンラインで説明を行った場合、その模様を録画・録音しておくことも有効な証拠となります。 - 確認テストやクイズ形式で理解度を確認
要点ごとに簡単な質問を投げかけ、「はい・いいえ」や選択肢で回答してもらう形式を使うことで、理解の有無を間接的に測ることも可能です。
いずれにしても、「形だけの署名」では意味がありません。
“実際に理解していたこと”を裏付ける記録を残しておくことが、トラブル回避・審査通過の両面で極めて重要です。
◆説明責任を果たすことが信頼構築につながる
母国語での説明は、特定技能制度における「形式的義務」ではなく、企業と外国人材との信頼関係のスタート地点です。
内容を理解しないまま契約させれば、のちのトラブルや申請不備を招くだけでなく、受け入れ体制全体の信用を損なうことにも繋がります。
企業としては、説明手段・使用言語・確認方法の3つを丁寧に設計し、記録を残すことが、制度対応としても、人材マネジメントとしても不可欠です。
外国人材が「納得して働ける環境」を整えることが、長期的な戦力化と人材定着への第一歩となるのです。
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日本人と同等以上の待遇が必須|不備があると認定されない可能性
特定技能制度では、「外国人だから」という理由で待遇を下げることは法律上、明確に禁止されています。
日本人と同等以上の待遇を保障することが、制度の根幹を支える原則のひとつであり、受入企業には高い遵守義務が課せられています。
この待遇要件が満たされていない場合、在留資格の認定が下りなかったり、更新ができないという深刻なリスクが生じます。
また、差別的な取り扱いが発覚した際には、行政指導や企業名の公表、さらには受け入れ停止措置などの制裁もあり得ます。
本記事では、どのような項目が「待遇の同等性」として判断されるのか、待遇差が生じやすいポイントと是正方法、さらに監査や行政チェックで実際に見られる内容までを、現場視点でわかりやすく解説します。
賃金・労働条件・福利厚生で比較されるポイント
日本人と同等以上の待遇を確保する際、比較対象となるのは「同じ業務に従事する日本人労働者」です。
以下のような項目が具体的な比較対象となります。
- 基本給や時給
同職種・同内容の業務に就く日本人と同水準である必要があります。
最低賃金を上回っているだけでは不十分です。 - 割増賃金・各種手当
時間外労働・深夜・休日手当なども、日本人と同様の計算方法・支給基準が求められます。 - 労働時間・休憩・休日制度
法定通りであるだけでなく、日本人と同じ社内制度が適用されているかも見られます。 - 福利厚生(社宅、交通費、食事補助等)
外国人だけ除外されていないか、日本人より明らかに条件が悪くないかといった視点で審査されます。 - 賞与・昇給制度の適用有無
必ずしも支給が義務ではありませんが、社内制度として日本人に適用している場合、外国人にも同様に運用されていることが原則です。
形式的な記載だけでなく、実態ベースで平等性が確保されているかが審査のポイントとなります。
待遇差が出るケースと是正方法
企業側の意図にかかわらず、「無意識の待遇差」や「制度の理解不足」により、日本人と同等でない扱いとなってしまうケースも少なくありません。
以下は実務上よくある例です。
- 外国人には賞与制度が説明されておらず、支給実績もない
- 特定技能の社員だけ制服代・社宅費が自己負担になっている
- 支給対象の手当(通勤手当、精勤手当など)を除外していた
- 同じ作業時間でも、休憩時間の設定が異なる
こうした差異があった場合、速やかに是正する必要があります。
対応方法の一例は以下のとおりです。
- 社内就業規則・賃金規定を再確認し、運用を統一する
- 日本人・外国人を問わず共通の説明資料・契約書を作成
- すでに差があった場合は、過去分も含めた差額支給や説明のやり直し
- 監理団体や専門家(社労士)に制度運用チェックを依頼
「うっかりミス」でも結果として差別的待遇になることがあるため、制度理解と内部チェック体制の整備が不可欠です。
行政指導や監査で見られるチェック項目
待遇の同等性に関するチェックは、在留資格の認定審査時だけでなく、監理団体の定期訪問や出入国在留管理庁の実地調査など、さまざまな場面で行われます。
チェック項目として特に見られるのは以下のような点です。
- 日本人従業員の賃金明細・労働契約書との比較資料
- 外国人と日本人の労働条件の違いがある場合、その理由と合理性
- 外国人の待遇改善措置や見直し履歴の有無
- 手当や福利厚生制度が共通の運用ルールであるか
- 就業規則や社内制度が外国人にも適用されている証拠
さらに、外国人本人へのヒアリング調査や、匿名での通報により“待遇の不平等”が発覚するケースも増えており、形式的な整備だけでなく実態の平等性が求められます。
不備が見つかった場合は、是正指導や再提出要求、悪質な場合は受入れ停止処分などの厳しい対応が取られることもあるため、事前の備えと定期的なチェックが極めて重要です。
◆待遇差のない環境づくりが信頼と申請通過のカギ
特定技能外国人を雇用する際に重要なのは、“名目上”ではなく“実質的”に日本人と同等以上の待遇を提供しているかという点です。
仮に待遇差があった場合、それが意図的でなくても、在留資格の不許可や、企業としての信頼失墜に直結するリスクがあります。
だからこそ、待遇面の見直しは「制度対応」ではなく「人材活用の基盤づくり」と捉えるべきです。
「外国人だから仕方ない」ではなく、「外国人であってもフェアに働ける職場」を整えることが、申請成功と長期的な人材定着の両立に繋がる最良の一手となります。
契約書の様式とサンプルについて知りたい方へ
特定技能外国人を雇用する際には、法律に基づいた適切な雇用契約書の作成が不可欠です。
形式が整っていない、または内容が不十分な場合、在留資格の申請が却下されるリスクや、監査・指導の対象になる可能性があります。
そのため、公的な機関が提供するサンプルや様式を活用することが推奨されており、内容の正確性・網羅性を担保しつつ、自社に合わせたカスタマイズが重要となります。
この記事では、契約書のひな形が手に入る出典元や、カスタマイズする際にありがちなNG例、そして作成支援を受けられる窓口について、実務担当者向けに丁寧に解説していきます。
ひな形の入手方法と出典(出入国在留管理庁など)
特定技能制度に対応した契約書のひな形は、国の公的機関が無料で提供しており、信頼性の高い資料として活用できます。
主な入手先は以下のとおりです。
- 出入国在留管理庁(入管)
→「特定技能制度運用要領」や「雇用契約書サンプル(様式第2号)」としてPDFで掲載。日本語・英語併記のものもあります。 - 厚生労働省 特定技能制度ページ
→ 各分野別(介護・外食・建設など)に対応した契約書の様式を提供。 - 外国人技能実習機構(OTIT)
→ 監理団体や受入企業向けにガイドラインとセットで雛形を配布。 - 地方自治体(例:東京都産業労働局など)
→ 地域独自の支援冊子として、雇用契約書例や解説付き書式を掲載しているケースもあります。
これらのサンプルを使うことで、法令に準拠した記載項目が網羅された契約書を効率的に作成することが可能です。
ただし、そのまま使用せず、自社の労務環境や支給体系に合わせて調整することが前提です。
カスタマイズ時の注意点とNG例
雛形はあくまで「ひな型」であり、そのまま全ての会社に適用できるわけではありません。
自社の実情に合わせた内容調整が必要ですが、その際に以下のような注意点とNG行動があります。
注意すべきポイント
- 労働条件通知書の記載と整合性を持たせる
→ 契約書と通知書の内容に矛盾があると、行政審査で不備と判断されます。 - 就業規則との整合も重要
→ 就業時間や手当などが就業規則と異なる場合、トラブルの原因になります。 - 外国人本人の理解を前提とした文言の選定
→ 難解な表現や曖昧な日本語は避け、必要に応じて母語併記や注釈も検討しましょう。
よくあるNG例
- 雛形の業種をそのまま使い、実際の業務内容と異なっている
- 契約期間の記載が不明瞭(特定技能では原則1年更新)
- 日本語のみで契約書を作成し、母国語での説明を行っていない
- 就業場所を複数記載せず、「本社」とだけ記載している
- 試験合格日や支援計画との整合性が取れていない
些細な記載ミスが、在留資格の申請拒否や更新不可といった重大な結果を招くため、慎重な文面調整とダブルチェックが必要です。
作成支援を受けたい場合の相談先・支援機関
雇用契約書の作成に自信がない場合や、法令改正への対応が不安な場合は、専門機関や支援窓口に相談するのが最も確実です。
以下のような窓口が利用可能です。
- 監理団体(登録支援機関)
→ 特定技能外国人の受け入れ支援を行う法人。契約書のレビューや翻訳サポートも含む。 - 社会保険労務士(社労士)
→ 労働契約・就業規則に関する専門家。外国人雇用に詳しい社労士なら、制度対応も万全です。 - 外国人技能実習機構(OTIT)
→ 実習制度と連携する企業への助言や書類確認を実施。電話・対面での対応あり。 - 地方自治体の外国人支援窓口
→ 各都道府県・市区町村で無料相談を受け付けている場合があります。 - 中小企業向け支援機関(商工会、よろず支援拠点など)
→ 書類作成や雇用管理に関するアドバイスを、無料または低コストで提供。
また、一部の支援団体では、契約書のテンプレートに加えて「多言語対応版」や「記入例つきフォーマット」も配布しており、初めての雇用でも安心して取り組めます。
◆サンプル活用と専門支援で制度対応を確実に
特定技能外国人の受け入れにおいて、雇用契約書の正確性は制度全体の根幹を支える重要な要素です。
公的なひな形を参考にしつつ、自社に最適化した内容で作成・運用することが、申請成功とトラブル回避の両面で重要となります。
カスタマイズの際には、単なる形式的な整備ではなく、実際の運用と一致しているかを常に確認する姿勢が求められます。
疑問があれば、遠慮なく専門家や支援機関のサポートを活用することが、成功への最短ルートです。
正しい契約書の整備は、外国人材との信頼構築の第一歩でもあります。
形式だけでなく、「安心して働ける環境づくり」の一環として取り組むことが、結果的に企業の持続的な成長にもつながっていくでしょう。
条件書の“説明義務”はどこまで必要?伝え方と注意点をチェック
特定技能外国人を雇用する企業にとって、雇用条件書の交付だけでなく、内容を「十分に理解させる」ことが法令上の義務とされています。
単に書面を渡すだけでは不十分で、説明の丁寧さや相手の理解度に応じた配慮が求められます。
特に、言語や文化的背景の異なる外国人材との契約では、情報の伝え方を誤ることでトラブルに発展するリスクが高まるため、「説明責任」をどこまで果たせばよいのか、どう伝えるべきかを明確に理解することが重要です。
この記事では、条件書の説明義務の範囲と実務上の注意点、具体的な伝え方の工夫、そして説明不足によって生じた実例とリスクについて、実務担当者向けに詳しく解説します。
単に渡すだけではNG?雇用条件書の「説明責任」の本質
外国人雇用における「説明義務」は、単に契約書類を手渡せば完了というわけではありません。
雇用契約書や労働条件通知書に記載された内容を、労働者が正しく理解していることを確認する責任が企業側にあるのです。
出入国在留管理庁が定める「運用要領」では、外国人本人に母国語または理解できる言語で説明を行うことが明示されています。
これは形式的な説明ではなく、実質的な「理解」を重視した対応が求められていることを意味します。
具体的には、以下のような対応が必要です。
- 母語資料や通訳を活用した説明の実施
- 質問に対応できる時間の確保とフォロー
- 説明内容を記録し、説明履歴を残す
「説明を行った」という証拠を残すことも重要で、書面交付日と説明実施日を記録しておくことで、後々のトラブル回避にもつながります。
外国人材に“理解してもらう”ために重要な3つの工夫
外国人材に条件書の内容をしっかりと伝えるためには、単なる翻訳以上の工夫が不可欠です。ここでは、実際の現場で効果的とされている3つの工夫を紹介します。
- 視覚的な資料を使う(イラスト・表・図解など)
→ 特に業務内容や勤務時間の説明には、タイムテーブル形式や図解資料が有効です。 - 母国語または準母国語による説明対応
→ 英語での説明では理解が難しい場合、日本語に加えてベトナム語・ネパール語・インドネシア語などのサポートも検討しましょう。 - 確認テストまたは理解度チェックの実施
→ 書面を説明した後に簡単な○×テストや口頭確認を行うことで、理解度を可視化できます。
また、「質問があればいつでも相談してほしい」という体制を示すことも、信頼関係構築のうえで重要な要素です。形式ではなく、相手の不安や疑問に丁寧に応える姿勢が求められます。
説明不足が引き起こすトラブル事例と企業側のリスクとは
説明が不十分なまま契約を進めた場合、以下のような深刻なトラブルに発展する事例があります。
実例1:賃金トラブルによる申告と行政指導
「月給20万円」と記載されていたものの、残業手当や各種控除の説明がなく、手取りが想定より低かったため外国人本人が入管へ申告。監査対象となったケースがあります。
実例2:職務内容の誤解による早期離職
建設業として採用された外国人が、現場作業ではなく事務処理を主に担当させられ、「契約内容と違う」として退職。再入国不可処分となった事例もあります。
企業側にとってのリスクは以下の通りです。
- 在留資格の更新拒否や取消し
- 行政指導・処分による企業名公表
- 外国人本人や仲介機関との信頼関係崩壊
- 最悪の場合、特定技能受け入れ停止
「伝えていなかった」では通用せず、「理解してもらっていなかった」ことに対する責任が企業側に求められることを理解する必要があります。
◆“理解を得る説明”が信頼の礎になる
外国人材の雇用においては、書面交付だけでなく、その内容を本人が「きちんと理解しているか」に焦点を当てた説明責任が問われます。
形式的に済ませるのではなく、相手の理解度に応じた丁寧な伝え方こそが、法令順守の土台となります。
視覚的資料の活用、母国語支援、理解度チェックなど、ちょっとした工夫が大きな誤解やトラブルを未然に防ぐ鍵となるでしょう。
さらに、説明履歴を記録として残すことで、企業自身のリスクヘッジにもつながります。
「説明の質」が外国人との信頼関係を築き、安定した雇用継続と組織の健全な発展に直結することを、あらためて認識しておきましょう。
まとめ|特定技能の雇用条件書で“信頼される企業”に
特定技能外国人を受け入れるうえで、雇用条件書・雇用契約書は単なる形式的な書類ではありません。
これらは、外国人材と雇用主の間に信頼関係を築き、トラブルを未然に防ぐための法的かつ実務的な基盤です。
契約書の作成では、就業場所や業務内容、労働時間、賃金などの基本情報に加えて、特定技能ならではの記載項目も盛り込む必要があります。
また、支援計画との整合性や技能試験の記録とのつながりにも配慮しなければなりません。
さらに、外国人本人が内容を理解していることが前提であり、母国語での説明義務が課されている点にも注意が必要です。
形式的に渡すだけでは不十分で、説明責任を果たし「理解されたこと」を確認・記録することが求められます。
待遇面についても、日本人と同等以上の条件を確保しなければ、受入れ企業として不適格と判断されるリスクがあります。
行政の監査や指導対象にもなり得るため、記載内容の正確性と整合性、実態との乖離がないかのチェックが不可欠です。
雛形の活用や外部機関への相談も選択肢となるなかで、企業としては「正しく、わかりやすく、丁寧に伝える姿勢」が求められます。
特定技能人材との間に誠実なコミュニケーションを築き、長期的に安定した雇用関係を育てていくためにも、雇用条件書の整備と説明対応には今一度、注力することが重要です。
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