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07/16 (水)更新

特定技能の派遣はNG?農業・漁業だけOKな理由と注意点を解説

「特定技能の外国人って派遣で雇えるの?」

 

そう疑問に思った企業担当者は多いかもしれません。結論から言えば、特定技能での派遣雇用が認められているのは「農業」と「漁業」の2分野のみです。

 

その他の分野では原則として派遣は禁止されており、直接雇用が必須となります。

 

制度を誤って理解してしまうと、不法就労助長罪や在留資格取消などの重大なリスクを招く可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

 

この記事では以下のポイントを網羅的に解説します。

  • 特定技能で派遣可能な分野一覧と理由

     

  • 派遣で雇用する際の法的条件と注意点

     

  • 派遣以外で外国人材を雇うための代替手段と比較

     

  • 現場での活用成功事例と今後の制度動向

特定技能外国人の受け入れを検討中の方は、必ず知っておきたい内容です。

 

制度を正しく理解し、安全かつ効果的な雇用戦略を構築していきましょう。

特定技能外国人の派遣が可能な業種一覧

「特定技能での外国人派遣は可能なのか?」という疑問に対して、最初に押さえておきたいのは、原則として派遣は禁止されているという点です。

 

ですが例外的に、農業と漁業の2分野だけは、労働者派遣が制度上認められています

 

このルールを知らずに他の業種で派遣契約を行うと、入管法違反や不法就労助長罪に問われるリスクもあるため、制度の正確な理解が不可欠です。

 

この章では、どの分野で派遣が可能か・その理由・直接雇用との違いなどをわかりやすく整理していきます。

派遣可能なのは農業・漁業分野のみ

特定技能外国人は、原則として直接雇用のみが許可されています

しかし、例外として「農業」と「漁業」の2分野に限り、労働者派遣形態による就労が認められています

これは農繁期・漁期など、季節的な人手不足が発生しやすい業界特性に対応するための特例措置です。

この制度を正しく理解せずに他業種で派遣を行うと、入管法違反や不法就労助長罪に問われるリスクがあるため、派遣の可否を明確に把握しておくことが重要です。

派遣が認められた背景と制度の目的

農業・漁業における派遣が認められたのは、雇用の安定性よりも柔軟な人員配置が優先される業界事情があるためです。

  • 農業分野では、収穫期に集中する人手不足が慢性化しており、派遣により繁忙期対応が可能となります。

     

  • 漁業分野でも、海況・天候に左右される作業が多く、スポット的な人材供給が求められる現場ニーズに応じています。

このため、「期間的・地理的に分散した労働需要」に対応する柔軟な制度設計として、農業・漁業での派遣が容認されています。

派遣と直接雇用の違いを整理

比較項目派遣雇用(農業・漁業のみ)直接雇用(全14分野共通)
雇用契約の相手派遣元企業(人材会社)受入企業(飲食店、工場など)
業務指示の主体派遣先企業(実際に働く企業)雇用主(自社)
支援計画の実施主体派遣元が実施受入企業または登録支援機関
在留資格の扱い特定技能1号で就労可能(農・漁限定)全14分野で可能(原則直接雇用)
主な利用分野農業、漁業建設、介護、外食、製造、宿泊など

派遣を誤って他業種で運用すると、「偽装請負」や「不法就労助長罪」に問われるリスクがあるため、雇用形態と業種の整合性は徹底して確認が必要です。

【一覧表】特定技能の各業種と派遣可否

分野名派遣の可否備考
農業繁忙期対応として例外的に派遣可
漁業季節変動・地域分散のため派遣可
介護×直接雇用のみ。派遣不可
外食業×派遣不可(飲食店業務は直接雇用)
飲食料品製造業×派遣不可
宿泊業×派遣不可
ビルクリーニング×派遣不可
建設業×派遣不可。現場管理上の理由
素形材産業×派遣不可
産業機械製造業×派遣不可
自動車整備業×派遣不可
電気・電子情報関連産業×派遣不可
航空業×派遣不可
農業・漁業以外全て×原則すべての分野で派遣は認められていない

 

  • 派遣できるのは「農業」と「漁業」のみと覚えておこう

特定技能外国人を派遣で雇用できるのは農業・漁業分野のみで、それ以外はすべてNGです。
雇用形態の誤解によって法令違反に発展するリスクがあるため、派遣の可否については業種ごとの制度理解を徹底することが重要です。

今後、技能実習制度の見直しや特定技能制度の拡充も予定されており、制度改正による派遣の扱いが変わる可能性もあります。
常に最新情報を把握し、法令遵守を徹底した受け入れ体制を整えましょう。

農業・漁業で特定技能を派遣雇用する条件

特定技能制度では、原則として外国人材の派遣雇用は認められていませんが、農業と漁業分野に限っては例外的に派遣が許可されています。

 

ただし、自由な雇用形態が容認されているわけではなく、受入側・派遣元ともに厳格な条件を満たす必要があります

この章では、農業・漁業で特定技能外国人を派遣雇用するために必要な法的条件や体制整備のポイントを解説します。

 

制度の誤解による不許可や違反リスクを回避するために、事前の理解が不可欠です。

派遣先が満たすべき法令遵守と受入体制の条件

農業・漁業の派遣先(実際に外国人が働く現場)は、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 労働関係法令を順守していること(過去に重大な違反がない)

     

  • 過去2年以内に特定技能外国人の「失踪」「不法残留」等を発生させていない

     

  • 外国人の労務管理・安全配慮を行える体制が整っている

     

  • 就業場所・業務内容が入管に申請した内容と一致している

これらに違反があると、派遣先としての登録が認められず、制度の利用自体ができなくなるため注意が必要です。

派遣元が満たすべき登録要件と体制整備

外国人材を派遣する派遣元企業(人材会社)にも、以下のような要件が課されます。

  • 人材派遣業の正式な許可を得ていること

     

  • 特定技能の登録支援機関としての届出または連携体制の構築

     

  • 受入れ人数に応じた支援体制(通訳・生活相談・研修)が整っていること

     

  • 外国人本人への説明責任・雇用契約の明確化

また、派遣元・派遣先ともに、契約内容・就業条件・業務範囲を記した管理台帳の作成と保管が義務付けられています。

地域間距離制限などの実務上の留意点

農業・漁業での派遣は、地理的に一定の制約も存在します。

  • 派遣元と派遣先の距離が近接している必要がある(原則、同一都道府県または近接地域)

     

  • 派遣先の事業所が複数ある場合でも、登録された所在地ごとに管理責任が問われる

     

  • 住居提供や通勤手段の確保が義務となる場合もある

つまり、広域派遣や越境派遣のような形態は基本的に認められず、移動コストや生活支援の実現可能性を前提に判断されます。

支援計画や協議会加入は派遣でも必須

直接雇用と同様、派遣雇用においても以下の制度的要件は絶対条件です。

  • 「1号特定技能外国人支援計画」の策定と実施

     

  • 分野別協議会(農業→農林水産省系、漁業→水産庁系)への加入

     

  • 定期報告・モニタリング対応の体制整備

特に支援計画については、派遣元が主に担いますが、派遣先との役割分担や責任所在の明確化が必要です。

これが曖昧な場合、審査で不許可になるリスクが高まります。

  • 派遣雇用は“特例”だからこそ慎重に

農業・漁業分野における特定技能の派遣は、あくまで例外措置として制度化されているものです。
そのため、受入側・派遣元の双方に対する要件は非常に厳格です。

安易な派遣活用ではなく、法令順守・生活支援・定着支援を一体で実施できる体制を整えることが成功のカギとなります。
中長期的な人材戦略として活用したい場合は、正社員雇用への転換も見据えた運用をおすすめします。

特定技能外国人を派遣で雇う際の注意点とリスク

特定技能制度の中でも、派遣という雇用形態は農業・漁業分野に限って例外的に認められているに過ぎません。

 

しかし、この“例外”に依存した運用が進む中で、実務上のトラブルや制度違反の事例も報告されています。

 

本章では、特定技能外国人を派遣で受け入れる際に注意すべきポイントや、実際に起こりうるリスクとその影響について詳しく解説します。

 

制度を正しく理解し、トラブルを未然に防ぐための視点を押さえておきましょう。

入管法違反や「不法就労助長罪」につながるケース

派遣制度を誤って運用すると、重大な法令違反に発展するおそれがあります。

  • 派遣可能な分野(農業・漁業)以外での派遣は明確な違法行為

     

  • 業務内容・就業場所の逸脱があると「入管法違反」と見なされる

     

  • 特に、制度外の業種に従事させた場合、雇用側が「不法就労助長罪」に問われることも

一例として、農業分野の名目で在留資格を取得した外国人を、実際には飲食店の配膳業務に就かせていた事例では、企業と派遣元双方に行政指導が入りました。

協議会未加入・支援未実施による不許可事例

派遣であっても、特定技能制度においては分野別協議会への加入や支援計画の実施が必須です。

  • 協議会未加入のまま申請を進めた結果、入管から在留資格認定証明書の発行が却下

     

  • 支援業務を外注したまま管理が行き届いていなかったため、更新時に不許可とされ帰国を余儀なくされた事例も

派遣=緩い制度運用が許されるという誤解はトラブルの原因となります。直接雇用と同等の義務が課されることを忘れてはなりません。

派遣契約が適切でないと認定された事例と影響

派遣契約の内容そのものが不明確であったり、業務の実態と契約書が一致していない場合、以下のようなリスクがあります。

  • 入管による事前審査で不許可になる

     

  • 雇用開始後に監査や報告義務違反が発覚し、派遣事業の停止処分を受ける

     

  • 外国人本人に不信感を与え、早期離職や訴訟に発展するケース

派遣契約書には、業務範囲・就業時間・報酬・支援内容・住居支援などの詳細な記載が必要であり、テンプレート任せの運用は避けるべきです。

正社員雇用・登録支援機関との役割分担の不明確さ

派遣という形態では、雇用主が派遣元企業であるにもかかわらず、実際の業務管理は派遣先が担うという構造的な問題があります。

  • 支援計画はどちらが実施すべきかが不明確なまま放置され、計画未履行と見なされることがある

     

  • 登録支援機関を活用していても、現場との連携不足により、生活支援や定着支援が形骸化するケースが多数報告

派遣だからこそ、役割分担と情報共有の体制整備が重要です。

定期ミーティングや業務報告書の提出フローを作るなど、日常的な管理体制が問われます。

  • 派遣という“例外的枠組み”だからこそ慎重な運用を

特定技能制度における派遣雇用は、制度上きわめて限定的に認められた“例外的措置”です。
そのため、法令遵守・制度理解・役割分担の徹底が必要不可欠です。

以下の3点を徹底することが、リスクを避けるカギです。

  • 制度理解の共有 – 農業・漁業以外は派遣不可。支援義務は派遣でも変わらない

     

  • 契約管理の透明化 – 業務内容・支援計画・管理責任を文書化し明示

     

  • 派遣よりも直接雇用への転換検討 – 長期的安定性とリスク回避を両立

正しい知識と運用が、企業にとっても外国人材にとっても安心できる雇用環境をつくる第一歩となります。

派遣以外で特定技能外国人を雇う方法と比較

特定技能外国人の雇用では、「派遣」という形態が使えるのは農業と漁業の2分野に限定されています。

 

他の分野で外国人材を受け入れたい場合、直接雇用を基本としたアプローチが求められます。

 

本章では、派遣以外の代表的な受け入れ方法である正社員雇用(直接雇用)や登録支援機関との連携人材紹介会社の活用方法などについて詳しく解説し、それぞれのメリット・適用のコツを紹介します。

正社員(直接雇用)でのメリットと安定性

特定技能制度では、基本的に受け入れ企業が雇用主となる「直接雇用」が原則です。

直接雇用には以下のような利点があります。

  • 安定的な人材確保ができる(最低契約期間を定めやすい)

     

  • 職場に対する帰属意識が高まりやすく、離職率が低下

     

  • 支援計画や教育体制の実施を自社内で管理しやすい

実際、飲食料品製造や介護分野では、正社員雇用によって3年以上の定着を実現した事例も多く、長期的な人材育成に向いています。

登録支援機関と連携することで負担軽減が可能

直接雇用の際、企業は特定技能人材に対して支援計画の策定と実施を担う必要があります。

しかし、これを自社で行うのが難しい場合には、登録支援機関を活用することで大幅に業務負担を減らすことが可能です。

登録支援機関が代行できる主な内容

  • 生活オリエンテーションの実施

     

  • 住居・銀行口座・行政手続きのサポート

     

  • 日本語学習支援や相談窓口の設置

支援内容の質や実績に差があるため、登録支援機関の選定時には、過去の対応数や業界知識の有無を確認することが大切です。

人材紹介会社を通じた直接雇用の流れ

自社で外国人を募集・採用するのが難しい場合は、特定技能に対応した人材紹介会社を活用することで、事前審査済みの候補者を効率的に確保できます。

一般的な紹介の流れは以下のとおりです。

  1. 紹介会社に求人条件を提示

     

  2. 候補者の紹介(スクリーニング済み)

     

  3. 面接・技能試験・日本語試験の確認

     

  4. 採用後、雇用契約と支援計画の整備

     

  5. 在留資格申請・就労開始

多くの紹介会社では、採用後のアフターフォローや支援機関との連携も提供しており、はじめての外国人雇用にも対応しやすい体制です。

農業・漁業以外の分野では「紹介型」に切り替える対応を

農業や漁業分野であっても、「繁忙期以外の人材確保」や「中長期的な人材育成」を視野に入れる企業では、あえて直接雇用+紹介型へ切り替える動きが増えています。

また、外食業、介護業、建設業など派遣不可の業種においては、「紹介型+登録支援機関連携」の組み合わせがもっとも実用的です。

紹介型の利点

  • 在留資格の手続きから支援まで一貫したサポートが可能

     

  • 長期雇用に向いた候補者とマッチングしやすい

     

  • 派遣よりも制度違反リスクが低く、入管監査にも対応しやすい
  • 安易な派遣頼みではなく、制度に合った雇用形態を選ぶ

特定技能人材を活用する上で最も重要なのは、「制度に準拠した正しい受け入れ方法を選ぶこと」です。
農業・漁業以外での派遣は原則禁止されており、直接雇用を基本とした設計が求められます

  • 正社員雇用は長期的な安定性に優れる

     

  • 登録支援機関との連携で支援の質を担保

     

  • 人材紹介を活用すれば初期の候補者確保がスムーズに

業種や自社の体制に応じて最適な方法を選び、制度違反を避けながら外国人材の戦力化を進めることが、今後の人手不足時代を乗り越える鍵となるでしょう。

特定技能外国人派遣にかかる費用と契約管理

特定技能外国人の派遣雇用は、農業と漁業に限って認められている特例的な制度です。

 

派遣形態での雇用を検討する企業にとって、費用面のシミュレーションや契約管理の理解は不可欠です。

 

本セクションでは、派遣元との契約金額の目安や、派遣先として守るべき管理台帳・報告義務、そして提出が必要な行政書類まで、具体的に解説します。

派遣元企業との契約費用・月額の目安

特定技能の派遣では、派遣元企業(人材派遣会社)との契約に基づいて労働者を受け入れます。

この際、費用の構成は以下の通りです。

  • 人件費(時給ベースまたは月給換算)

     

  • 派遣手数料(20〜30%が相場)

     

  • 支援関連費用(日本語学習支援・生活支援)

たとえば、月給20万円の技能者を1名受け入れる場合、

  • 人件費 – 200,000円

     

  • 派遣手数料(25%) – 50,000円

     

  • 合計 – 月額250,000円前後

また、技能や日本語能力によって単価が異なるため、詳細は派遣元企業と個別相談が必要です。

派遣先で求められる管理台帳と報告義務

派遣先企業には、労務管理に関する複数の記録と報告が求められます

具体的には以下の書類が必須です。

  • 就業状況管理台帳 – 出勤簿、勤務時間、業務内容などを明記

     

  • 支援記録 – 生活支援や相談内容の記録(派遣元が支援する場合も報告対象)

     

  • 在籍確認書類 – 特定技能外国人が実際に勤務している証拠資料

これらの記録は、監査や更新審査時に提出を求められることがあり、3〜5年間の保管が原則とされています。

必要となる書類と行政への報告書類

派遣で特定技能人材を受け入れる場合、以下の行政手続きが必要です:

  • 派遣受入計画書の提出(地方出入国在留管理局)

     

  • 協議会加入証明書の提出

     

  • 派遣開始時・終了時の報告書

     

  • 変更届(勤務条件変更・支援体制変更時)

これらは、派遣元企業が代行提出する場合もありますが、派遣先企業も確認責任を負います

また、都道府県ごとに様式が微妙に異なるケースもあるため、地域の入管情報や支援協議会と連携を取ることが重要です。

  • 費用と管理体制の理解が派遣活用の第一歩

農業・漁業で特定技能外国人を派遣雇用する場合、派遣元との契約費用を把握し、契約管理・行政報告の負担も視野に入れることが必須です。

ポイントまとめ

  • 費用相場は月額25万円前後/1人が目安

     

  • 管理台帳・支援記録・在籍証明は必ず保管・提出

     

  • 派遣でも行政手続きの責任は受入側にも発生

安易なコスト重視ではなく、制度に準拠した受け入れ体制の整備こそが、安定した雇用とトラブル回避につながります。
制度理解を深め、農業・漁業における戦力化の基盤を築くことが成功の鍵です。

制度改正や今後の動向に注目すべき理由

現在の特定技能制度は、「人手不足の深刻化」に対応するために生まれた就労資格であり、なかでも派遣雇用が例外的に認められている農業・漁業分野は注目の的となっています。

 

しかし、技能実習制度の廃止・再編や特定技能2号の拡大といった制度改正が進むなかで、派遣のあり方も再検討されつつあります。

 

ここでは、今後の制度動向が派遣制度にどのような影響を与えるか、また地方自治体や企業がどのように対応すべきかを解説します。

技能実習制度の見直しにより派遣への流れは変わる?

現在、技能実習制度は「人材育成」から「労働力確保」に実質的に移行しており、2027年には廃止・新制度へ統合される方針が出されています。

この新制度では、派遣形態の柔軟化も検討されています。

現行では農業・漁業のみで認められている派遣ですが、今後は一部業種(建設・製造など)での派遣解禁の可能性も議論の対象になると見られています。

ただし、労働者保護や仲介ビジネスの不正対策が条件となる見通しです。

特定技能2号への移行と派遣可否の扱い

特定技能2号は長期雇用・家族帯同が可能な在留資格ですが、派遣という雇用形態については、現在も明確な制度上の可否が定められていません。

ただし、将来的に特定技能2号対象職種が広がることで、企業の人材活用戦略において「派遣→2号への切替」などの流れが生まれる可能性があります。

その際、政府が「2号は基本的に直接雇用を原則」と打ち出す可能性が高く、派遣先から正社員化の方向へ誘導される制度改正が検討される可能性もあるため、注意が必要です。

政府・自治体による受け入れ支援の強化方針

政府は現在、外国人材の安定雇用と地域定着を支援する補助制度を整備中です。

たとえば、

  • 「特定技能等外国人材受入れ促進事業」

     

  • 「生活支援・地域共生モデル推進事業」

などを通じて、地方自治体による支援員配置や、多言語生活ガイドブックの配布が進められています。

農業や漁業の事業者がこのような支援制度を活用すれば、派遣であっても定着率を高める取り組みが実現可能になります。

地方における派遣活用の可能性と制限

地方では、特に農業・漁業の季節労働において派遣のニーズが高まっています。

短期集中型の業務(収穫期のピッキング作業など)では、派遣雇用が非常に有効です。

ただし、過疎地域では派遣元からの移動距離制限宿舎の確保難など、実務的なハードルが存在します。

これを克服するためには

  • 自治体の住宅支援制度と連携

     

  • 多拠点間の派遣連携モデルの導入

     

  • 地元農協などを巻き込んだ雇用体制の整備

など、地域ぐるみの受け入れ体制構築が今後のカギとなります。

  • 制度改正を見据えた柔軟な受け入れ戦略が必要

今後の制度改正と動向を踏まえると、派遣による受け入れは今まで以上に規制強化と柔軟性の両面を持つテーマになります。

企業や団体が今から備えるべきポイントは以下の通りです。

  • 制度変更の方向性を常にキャッチアップする

     

  • 正社員雇用や2号移行を視野に入れた人材戦略を設計する

     

  • 派遣を使う場合でも、行政支援や自治体連携を活用する

特定技能人材の活用は「安価な労働力確保」ではなく、地域と企業の持続性を築く投資であるという視点が重要です。
制度の変化を機会に変え、適切な活用方法を見極めましょう。

農業・漁業分野での成功事例と現場の工夫

農業・漁業分野における特定技能外国人の派遣雇用は、繁忙期の労働力確保という目的を超えて、現場の業務効率化や多文化共生の推進にもつながる重要な取り組みです。

 

派遣が限定的に認められているこの2分野では、工夫と制度理解の深さが成果の分かれ目となっています。

ここでは、実際の事例に基づき、現場がどう課題を克服し、どのような工夫で労働環境を改善しているかを具体的にご紹介します。

繁忙期限定での派遣活用による収穫効率の改善

ある東北地方の農業法人では、収穫期(7月〜9月)に限定してベトナム人技能者を派遣雇用しています。

地域の高齢化が進み、日中の人手が不足するなかで、1日平均収穫量が30%アップしたという成果が得られました。

ポイントは以下の通りです。

  • 事前に作業工程を動画で共有し、初日から即戦力として稼働可能

     

  • 土日含めた柔軟なシフト設計により、限られた期間でも最大稼働が可能

     

  • 通訳を1名配置し、指示伝達のロスを最小限に

このように、期間限定の集中投入×事前教育が、派遣の利点を最大化させています。

派遣スタッフの定着支援策(多言語マニュアル・宿舎支援)

山梨県の果樹農家では、英語・ベトナム語対応の多言語マニュアルを導入。

作業手順や危険箇所、休憩ルールなどを視覚的に伝える工夫が施されています。

また、住宅支援として

  • 派遣会社と連携し、近隣の空き家を宿舎にリフォーム

     

  • 家電・Wi-Fi完備+生活指導を週1回実施

     

  • 「生活者」として地域に馴染むための地域イベント参加推奨

こうした生活支援によって、派遣期間終了後に正社員として再雇用を希望する外国人も出現。定着率の向上にも寄与しています。

外国人材と日本人スタッフとの連携体制の構築方法

北海道の漁協では、朝礼時に多言語ピクトグラム(イラスト+簡単な英単語)で連携強化を図っています。

具体的な取り組みは以下の通り

  • 毎朝、作業内容と注意点をホワイトボードに日英2言語で掲示

     

  • 日本人リーダーと外国人サブリーダーをペアで配置

     

  • LINEグループで日々のフィードバックを共有

その結果、「意思疎通の摩擦が激減し、作業トラブルが50%以上減少」という実績も得られました。

「派遣ではなく正社員化」を進めた農業法人の成果

長野県のある大規模農業法人は、派遣で実績を積んだ外国人スタッフのうち3割を正社員登用しています。

背景には以下の戦略があります。

  • 多能工育成制度 – 収穫・配送・事務作業もローテーションで習得

     

  • 2号資格取得支援制度 – 試験対策講座+受験費補助

     

  • 外国人向けキャリア面談 – 半年ごとに将来の進路や希望をヒアリング

これにより、人材流出を防ぎ、農業の担い手不足にも長期的な貢献が可能に。

「派遣から始まり、正社員化へつなげる」モデルは、今後多くの農業法人が目指す形と言えるでしょう。

  • 工夫次第で派遣は“戦力”になる

農業・漁業分野における特定技能外国人の派遣は、単なる補助人員ではなく、戦略的に活用することで業務改善・組織の多様化・地域活性にもつながる存在です。

成功する企業・農家の共通点は以下の通りです。

  • 短期間でも教育と支援を惜しまない

     

  • 言語・文化の壁をマニュアルと制度でカバーする

     

  • 派遣後の正社員登用を視野に入れた長期戦略を持つ

今後も特定技能制度が拡充されるなかで、こうした“現場発の工夫”が制度の進化を後押ししていくでしょう。
派遣という選択肢を「一時的な対応」ではなく「持続的成長の一手」と捉えることが重要です。

特定技能の派遣活用は“例外”だからこそ戦略的に

特定技能制度における外国人労働者の派遣雇用は、農業・漁業の2分野に限定された特例的な運用です。

 

その背景には、慢性的な人手不足や季節労働のニーズへの柔軟な対応という政策的意図があります。

 

しかし、「派遣=自由な人材配置」ではなく、厳格な条件と遵守義務が課せられており、以下の点に十分な注意が必要です。

  • 派遣可能分野は農業・漁業のみで、それ以外の業種では派遣は一切不可

     

  • 派遣先・派遣元ともに法令遵守・登録・距離制限といった要件を満たす必要がある

     

  • 支援計画の実施や協議会加入など、直接雇用と同等以上の管理責任が伴う

     

  • 手続きや管理を怠れば、不許可や入管法違反のリスクも現実的

また、農業・漁業以外の分野で外国人材を活用したい場合には、正社員雇用や登録支援機関との連携が現実的な選択肢です。

 

さらに、地域や事業所によっては、紹介型雇用へのシフトも検討され始めています。

 

特定技能制度の活用においては、「制度をどう使うか」よりも「どのように運用し、定着を図るか」が企業にとっての競争力の分岐点になります。

 

農業・漁業の派遣はその一例であり、戦略的・計画的な活用こそが成功の鍵となるでしょう。

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