
10/03 (金)更新
特定技能の受け入れ状況を正しく把握する|職種別・国別の最新傾向と実態
特定技能制度の開始から数年が経過し、受け入れ人数や制度運用の実態が徐々に見えるようになってきました。
とはいえ、実際にどの職種でどれだけの外国人が働いているのか、どの国からの人材が多いのか、といった「リアルな受け入れ状況」は、断片的な情報しか得られないことも少なくありません。
本記事では、最新の統計データと公的情報をもとに、特定技能の「職種別」「国別」受け入れ実績を可視化し、制度の現状をわかりやすく整理します。
さらに、制度改正による動きや、定着率を高めるための実践的な視点にも踏み込むことで、単なる数値分析にとどまらず、実務や採用戦略に役立つ情報をお届けします。
「今、どの分野で、どの国から、どれだけの人材が日本で働いているのか?」
「今後、自社の採用や育成にどう活かせるのか?」
こうした問いに答えるための情報を、ここで網羅的にご紹介します。
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特定技能での外国人受け入れ数はどれくらい?最新の全体像
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を補うために2019年に創設され、これまでさまざまな業種で外国人材の受け入れが進められてきました。
しかし、制度が始まって数年が経った今、実際に何人が受け入れられているのか、その全体像を正確に把握している企業は少なくありません。
本セクションでは、在留資格「特定技能」の外国人受け入れ人数の推移や、設定された枠数とのギャップ、2024年以降の見通しなど、制度全体の現状を正しく理解するための最新情報をお伝えします。
在留外国人数と特定技能保持者の推移
2024年6月末時点の法務省の発表によれば、「特定技能」の在留資格で日本に滞在している外国人は約20万人に達しています。
これは2019年の制度開始当初から比べて大きな増加であり、年々その存在感は高まっています。
特に2023年から2024年にかけては、コロナ禍の影響が薄れたこともあり、受け入れ人数の伸びが顕著です。
2022年末には約13万人だった特定技能保持者数が、1年半で約7万人増加した形になります。
また、特定技能全体の在留外国人の中では、「技能実習」からの移行組が過半数を占めているのが特徴です。
これは、技能実習制度の見直しや廃止が進む中で、より実務に即した制度として特定技能が注目されていることを示しています。
受け入れ枠数との比較とそのギャップ
特定技能制度では、政府によって分野別に受け入れ上限枠(5年間で最大約34万人)が設けられています。
しかし、2024年6月時点での累計受け入れ人数はまだその60%程度にとどまっているというのが実情です。
たとえば、特に受け入れの多い分野である「介護」「外食業」「建設」では、一定の進展が見られる一方で、「航空」「自動車整備」「素形材産業」などでは目標値に遠く及んでいません。
この背景には、試験制度の整備状況や現場側の受け入れ体制、人材の送り出し国との連携状況の差などが影響しています。
つまり、制度上は多くの外国人材を受け入れる余地があるにもかかわらず、「制度のハードル」や「現場での導入遅れ」によってフルに活用されていないのが現状だと言えます。
2024年以降の見通しと今後の方向性
2024年には特定技能制度に大きな動きがありました。制度の拡充や、特定技能2号の適用職種の拡大、在留期間の延長に関する議論などが進んでおり、受け入れ枠のさらなる上限緩和も検討されています。
政府は、2029年までの新たな受け入れ計画として最大82万人規模の受け入れを想定しており、これまで以上に多様な国籍・職種での採用が期待されています。
特に、従来は特定技能2号の対象でなかった分野でも長期就労が可能になる見込みで、これにより企業側も長期的な雇用設計がしやすくなると考えられます。
また、DXや自動化の進展とともに、単純な労働力としてだけでなく、日本語や業務理解の高い「即戦力人材」としての外国人材の評価も高まっています。
単なる数の拡大ではなく、「質の確保」と「戦力化」へのシフトが、今後の制度運用における鍵となるでしょう。
▽受け入れ状況の正確な把握が制度活用の第一歩
特定技能制度は着実に拡大しており、2024年には20万人の在留者を超えるなど、その存在感は増しています。
しかし、設定された受け入れ上限にはまだ達しておらず、制度が「ポテンシャルを活かしきれていない」状態が続いているのも事実です。
企業が制度を活用する際には、まず受け入れ実績や枠数の現状を把握し、自社が参入すべきタイミングや分野を見極めることが重要です。
今後は、単なる人数確保ではなく、中長期的な定着・戦力化を見据えた採用計画と現場体制の構築が求められます。
特定技能制度の“最新全体像”を理解し、制度の波をうまく捉えることが、企業の持続的な人材戦略の一歩となるでしょう。
職種別に見る特定技能外国人の分布と特徴
特定技能制度の導入により、さまざまな分野で外国人労働者の活用が進んでいます。
しかし、すべての分野で均等に人材が配置されているわけではありません。
受け入れが集中している職種もあれば、制度の活用が進んでいない分野も存在します。
このセクションでは、特定技能外国人の受け入れが多い職種のランキングと、各分野における技能要件や試験制度の違い、今後の拡大見通しや課題について詳しく解説します。
採用を検討する企業が、どの分野でどのような人材を確保できるのかを見極めるヒントとなるはずです。
受け入れ人数が多い職種ランキング
2024年6月時点の法務省のデータによると、特定技能外国人の受け入れ人数が多い職種は以下の通りです。
- 飲食料品製造業
- 介護
- 建設
- 農業
- 産業機械製造業
なかでも飲食料品製造業は、全体の約20%を占めており、食品工場などでの安定的な受け入れが進んでいます。
介護分野は日本語能力や実務スキルが求められるにもかかわらず、慢性的な人手不足から安定した人気を誇っています。
一方、航空分野や宿泊業、素形材産業などは受け入れが伸び悩んでおり、試験の実施体制や就業環境などが課題となっています。
分野ごとの技能レベルや試験制度の違い
特定技能には分野ごとに固有の技能評価試験が設定されており、その難易度や内容もさまざまです。
たとえば、
- 介護分野では、日本語能力試験(N4相当)と介護技能評価試験の両方に合格する必要があります。
- 建設分野では、作業種別ごとに細かく試験が分かれており、さらに安全衛生教育もセットで求められます。
- 外食業は比較的シンプルな筆記試験が中心で、受験者数が多く、合格率も高い傾向にあります。
これらの違いは、人材の確保しやすさや、採用後の現場教育コストにも大きく影響します。
企業としては、必要なスキルセットに応じた分野選定と、採用後の教育体制の構築が欠かせません。
分野別の今後の拡大見通しと課題
政府は2024年に特定技能制度の見直しを行い、一部分野において「特定技能2号」への移行を可能としました。
建設・造船・自動車整備などの分野では、長期就労が可能になったことで、制度の魅力が向上しています。
さらに、以下のような動きも見られます。
- 介護分野では、定着率向上を目指し、教育研修制度や日本語支援体制の拡充が進行中。
- 農業・漁業分野では、季節波動の激しさや生活インフラの整備が課題。
- 宿泊業・外食業は、コロナ禍からの回復と同時に、再び受け入れ数の増加が期待されています。
一方で、全体的な共通課題としては、試験の実施頻度・地域格差・情報不足などが挙げられます。
また、送り出し国によっては手続きが煩雑なケースもあり、制度の使いやすさに国際的なバラつきが存在する点にも注意が必要です。
▽分野ごとの特性を把握して最適な採用戦略を
特定技能外国人の受け入れは、分野ごとに大きな偏りがあります。
飲食料品製造や介護、建設が主要な受け入れ先となる一方で、他の分野では試験制度の整備や現場環境の改善が今後の拡大の鍵となります。
採用を検討する企業にとって重要なのは、単に人数を確保することではなく、自社の業務内容とマッチする分野を見極め、制度の特性を理解したうえで戦略的に活用することです。
制度は拡充を続けており、長期的な活用も見込める今だからこそ、職種ごとの受け入れ動向と制度の全体像を把握したうえで、確実な一手を打つことが求められています。
出身国別の受け入れ実績とその割合
特定技能制度のもとで日本に就労している外国人の数は年々増加していますが、その出身国の内訳には大きな偏りがあることをご存知でしょうか。
制度自体は12分野での受け入れを想定していますが、国によって対応できる分野や志向する業種に差があるため、特定の国籍の人材が特定の職種に集中する傾向があります。
本セクションでは、特定技能外国人の出身国別の受け入れ実績とその割合を整理し、職種との関係性や、受け入れに強い国の背景要因についても解説します。
これから外国人材の採用を検討する企業にとって、どの国の人材がどの職種に適しているかを見極めるための実務的なヒントが得られる内容です。
国別で見た特定技能の在留資格保持者数
2024年6月時点の法務省のデータによると、特定技能の在留資格保持者(約20万人超)の出身国トップ5は以下の通りです:
- ベトナム:約58%
- インドネシア:約13%
- フィリピン:約11%
- ミャンマー:約5%
- ネパール:約3%
このように、ベトナム出身者が圧倒的多数を占めているのが特徴です。
技能実習制度からの移行が多いこと、試験対策支援体制の整備が進んでいること、日本でのコミュニティが大きいことなどが要因として挙げられます。
続くインドネシア・フィリピンも、母国での日本語教育の体制や介護人材の育成に力を入れている点で有利です。
ミャンマーやネパールは成長段階にありつつも、送出し体制の整備が進めば今後の伸びしろが期待されています。
職種との関連性と国ごとの傾向
特定技能の受け入れ職種と出身国の関係を見ると、いくつかの明確な傾向があります。
- 介護分野 – フィリピン・インドネシアが中心
- 両国はもともとEPA(経済連携協定)に基づく介護人材の派遣実績があり、日本語能力や介護に特化した教育制度が整備されている。
- 両国はもともとEPA(経済連携協定)に基づく介護人材の派遣実績があり、日本語能力や介護に特化した教育制度が整備されている。
- 建設・製造・農業分野:ベトナムが圧倒的
- 技能実習制度からの移行がスムーズに行われており、現場経験が豊富な人材が多い。建設・溶接・食品加工などの受け入れが顕著。
- 技能実習制度からの移行がスムーズに行われており、現場経験が豊富な人材が多い。建設・溶接・食品加工などの受け入れが顕著。
- 漁業・宿泊・外食 – 多国籍に分散
- 外食や宿泊分野では、日本語の接客能力が求められるため、比較的日本語力の高い国(例:ネパールやフィリピン)からの応募が増えている。
このように、国ごとの教育水準・日本語習得率・文化適応度などが、職種選定やマッチング精度に直結しています。
企業側も採用する国によって就業後の教育コストや定着率が大きく異なることを認識する必要があります。
受け入れに強い国・地域と背景要因
受け入れ実績が多い国々には、共通する“制度面”と“文化面”の強みがあります。
制度面での要因
- 日本との連携協定(MOC)を早期に締結している国は、制度の理解と試験実施の体制が整っている。
- 技能実習から特定技能へのスムーズな移行制度が確立されている(特にベトナムやフィリピン)。
- 母国政府による送り出し管理や就労後のフォローアップ体制が整備されている。
文化面・実務面での要因
- 日本との文化的な親和性や勤勉性が高く、受け入れ先企業の満足度も高い。
- 日本語教育の普及度が高い国は、コミュニケーション面でのトラブルが少ない。
- 宗教・食文化の違いが少ない地域ほど、定着率が高い傾向がある。
今後さらに注目されるのは、教育投資が進んでいるバングラデシュやカンボジアなどの新興国。
これらの国々が制度に適応し、送り出しインフラを整備できれば、第二の“ベトナム”的ポジションを獲得する可能性があります。
▽出身国の傾向を理解して、戦略的な採用へ
特定技能制度の実態を見ると、受け入れは特定の国に偏っていることが明確です。
特にベトナム・フィリピン・インドネシアの3国が主軸となっており、それぞれの強みが職種と密接に結びついています。
企業が採用活動を進める際は、単に「人手が足りないから外国人を採る」という視点ではなく、国ごとの特性と制度背景を理解したうえでの“戦略的な採用”が不可欠です。
また、文化的な相性や日本語能力、技能実習からの移行実績なども考慮すれば、定着率の高い人材確保と職場の安定につながります。
出身国の傾向を掴むことで、より効果的な人材戦略が描けるはずです。
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特定技能1号と2号の受け入れ実態の違い
外国人材の受け入れ制度として注目されている「特定技能」には、「1号」と「2号」の2種類が存在します。
制度開始当初は特定技能1号が中心でしたが、近年ではより長期的な雇用や人材の定着を可能とする特定技能2号への関心が高まりつつあります。
このセクションでは、特定技能1号と2号の制度上の違いを整理したうえで、2号移行が進んでいる職種や背景、さらに長期的な人材戦略としてどのように採用計画に組み込むべきかを実務的に解説していきます。
制度上の違いと移行要件
まず、特定技能1号と2号の主な違いを整理すると以下の通りです。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
在留期間 | 通算5年まで | 無期限(更新可) |
家族帯同 | 原則不可 | 配偶者・子供の帯同可 |
試験要件 | 分野別の技能・日本語試験に合格 | 1号での実務経験+さらに高度な技能評価試験に合格 |
対象分野 | 12分野 | 一部の建設業、造船・舶用工業など2分野に限定(今後拡大予定) |
このように、2号は長期在留や家族帯同が認められる反面、移行条件が厳しいことが特徴です。
特に、技能評価試験の難易度が高く、受験機会や実施地域が限られていることがボトルネックとなっています。
加えて、企業側も「2号に移行させるメリットはあるのか」「永住志向が強くなって管理が難しくなるのでは」といった不安を感じていることも、制度活用を妨げる要因の一つです。
2号移行が進む職種とその理由
現時点で、特定技能2号への移行が進んでいるのは主に以下の2職種です。
- 建設業(とくに型枠施工、鉄筋、配管など)
- 造船・舶用工業(溶接、塗装など)
これらの職種は、技術継承に時間がかかり、熟練度が重要視される業務が多いため、企業側が長期雇用を望む傾向にあります。
また、特定技能1号では5年しか働けないという制限の中で、育てた人材を引き留める手段として2号移行が有効とされています。
実際、国土交通省などは建設業界向けに2号試験の実施頻度を増やしたり、移行促進を目的としたガイドライン整備を進めており、今後さらに利用が広がることが期待されています。
一方で、介護や外食などの分野は現状では2号の対象外となっており、制度的な限界が長期雇用戦略の足かせになっています。
長期雇用・定着を見据えた採用計画
特定技能2号は、企業にとって安定的な労働力確保が可能となる制度です。
しかし、制度上のハードルを乗り越えるには、以下のような計画的・戦略的な対応が不可欠です。
- 採用時点での育成前提
特定技能1号で採用する段階から、2号移行を見据えて教育・定着支援を計画に組み込む必要があります。
業務内容だけでなく、日本語能力、マナー・文化理解まで含めた多面的な支援が重要です。
- 試験対策と学習支援の整備
2号移行のためには、高度な技能試験への合格が必須です。
そのため、企業主導での講習支援、模擬試験の実施、専門スクールとの提携など、学習インフラの整備が求められます。
- 家族帯同と生活支援の準備
2号人材の受け入れには、配偶者や子どもの生活支援も企業の責任範囲に含まれる可能性があります。
居住環境の確保、子どもの教育支援、行政との連携体制など、地域全体での受け入れ環境整備がカギとなります。
このように、単なる労働力確保という短期的な視点ではなく、人材育成・地域共生までを見据えた長期的な取り組みが求められているのです。
▽“育成型雇用”が企業の競争力を左右する時代へ
特定技能1号と2号の違いは、単なる在留期間や制度の違いではなく、企業の採用戦略そのものに直結する課題です。
短期的な人手不足対策として1号を活用するのか、長期定着・技術承継を見据えて2号移行を目指すのかで、企業の将来像は大きく変わります。
今後、建設や製造業を中心に2号への移行支援が当たり前の流れとなる中で、早期に対応を始めた企業が優秀な人材を囲い込むチャンスを得るでしょう。
制度の変化を“チャンス”と捉え、育成型雇用を前提とした採用・教育体制の再構築が、企業の競争力を支えるカギとなるはずです。
今後の制度運用における注目点と受け入れ企業への影響
特定技能制度は、2019年の導入以降、多くの企業にとって外国人材の新たな受け入れルートとして活用されてきました。
そして2024年、その制度は大きな節目を迎えています。
制度の対象分野の拡張や運用要件の見直しなど、国の方針が本格的に“長期活用”へと舵を切り始めた今、企業にとっては採用・育成・定着までを見据えた視点が不可欠になっています。
ここでは、最新の制度改正内容や今後の動向、他の在留制度との関係性などを踏まえ、今後企業が直面する人材確保競争や戦略的な対応の必要性について詳しく解説します。
2024年改正内容と制度拡張の動き
2024年は、特定技能制度にとって大きな転換点となる年です。
政府はこれまで12分野に限定されていた対象職種のうち、一部を特定技能2号の対象に追加。
これにより、「建設」「造船・舶用工業」の2分野に限られていた2号の適用が、さらに製造業分野や自動車整備などにも拡大される見通しです。
また、以下のような制度面の見直しも進行中です。
- 2号への移行要件の緩和(試験機会の拡大、試験形式の柔軟化)
- 地方自治体との連携強化(受け入れ環境整備への支援)
- 技能実習制度との統合を視野に入れた再編案の検討
これらの改正は、単なる雇用枠の拡大にとどまらず、外国人が「働きに来る場所」から「定着・生活する場所」へと日本の立ち位置を変化させる兆しでもあります。
今後の制度運用では、「短期労働力確保」ではなく、「社会との共生・中長期的な育成」がキーワードになってくるでしょう。
人材確保競争の激化と採用戦略の重要性
制度拡張と並行して、外国人材の獲得競争は年々激化しています。
特定技能に関しては、2023年末時点で約17万人が在留しており、今後数年で30万人超えを目指す方針が示されていますが、同時に企業間の“採用競争”も加速しています。
特に以下のような課題が顕在化しています。
- 人気分野・都市部に応募が集中し、地方や不人気職種には応募が来ない
- 人材紹介会社の競争も激しく、採用コストが高騰
- 外国人が職場を選ぶ時代に移行し、企業ブランディングや労働環境整備が差別化要因に
この状況を踏まえると、企業は単に「受け入れる」だけではなく、「選ばれる存在」になるための施策が必要です。
たとえば、
- 在留資格の切り替えに対応可能なキャリアパスの設計
- 住宅手配・生活支援の充実
- 技能試験や日本語教育のサポート体制整備
など、制度の要件を満たすだけでなく、外国人材の“定着・活躍”をサポートする視点が重要となります。
外国人雇用に関わる他制度との関係性
今後の特定技能制度運用を考える上で、他の在留制度との連携や棲み分けも見逃せません。
とくに注目すべきは以下の3制度です。
技能実習制度
政府は技能実習制度の廃止・再編を含む抜本的見直しを進めており、将来的には「育成就労制度」として一本化される可能性があります。
技能実習→特定技能という現在の流れも再構築されることで、より実践的な人材育成フローが形成される見込みです。
技術・人文知識・国際業務ビザ(いわゆる就労ビザ)
特定技能と比較して、専門性が求められる就労ビザとのすみ分けも課題です。
製造業やIT分野などでは、「高度人材」としての就労ビザと、「中間人材」としての特定技能が併存するため、職務内容の明確化と適正な在留資格の選定が重要になります。
永住・定住ビザ
特定技能2号を経た外国人が永住権や定住者ビザへとステップアップしていくケースも増加が見込まれます。
そのため、採用時点から将来的な移行可能性を念頭に置き、制度的なキャリアパスを描くことが企業にとって有利となるでしょう。
▽制度変化に対応できる企業が、次代の人材確保をリードする
特定技能制度は、今まさに“短期の労働力確保”から“長期的な人材育成”へと変貌を遂げようとしている段階にあります。
制度改正によってチャンスが広がる一方で、企業側には受け入れ体制の再構築や、他制度との組み合わせを踏まえた戦略設計が求められる時代となっています。
これからは、単に「雇う」だけの企業ではなく、外国人材に選ばれ、育て、活かせる企業が人材獲得競争をリードしていくでしょう。
人事部門や経営層が制度理解を深めることはもちろん、現場レベルでも外国人材と協働する意識改革が必要です。
制度の変化を恐れるのではなく、変化を活かす柔軟さこそが、これからの人材戦略の鍵となるはずです。
受け入れ“数”だけでなく“質”で考える特定技能の戦略的活用
特定技能制度が広がる中、多くの企業では「何人採用できるか」に意識が向きがちです。
しかし、真に企業の成長につながる外国人材活用を実現するには、“数”ではなく“質”に重きを置いた戦略的視点が必要不可欠です。
ただ人数を確保するだけでは、離職やミスマッチが増え、結果として現場の生産性は上がりません。
そこで本記事では、外国人材を「戦力化」するための採用・配置・教育の最適バランスや、職種と出身国の相性を活かした成功事例など、質を重視した実践的アプローチを紹介します。
人数確保にとどまらない「戦力化」の視点とは
特定技能の受け入れにおいて、採用数の多さ=成功ではありません。
むしろ、重要なのは「受け入れた人材がどれだけ戦力として機能しているか」という“質”の視点です。
外国人材が即戦力になるには、以下の要素がそろっている必要があります。
- 業務への適性と技術理解
- 言語や文化に対する適応力
- 企業側の受け入れ体制とフォローの有無
これらを無視して人数だけを追い求めると、配属先とのミスマッチや短期離職が発生し、採用コストと教育コストが無駄になるリスクが高まります。
特に、特定技能1号は最長5年という制限があるため、短期間で成果を出せる育成プロセスが必要です。
また、日本人社員の意識改革も戦力化の重要なポイントです。
文化の違いを受け入れ、育成に主体的に関わる姿勢が現場に根付くことで、外国人材の定着率と成長スピードは大きく変わります。
現場定着率を上げる採用・配置・教育の最適バランス
質の高い外国人材活用を実現するには、採用・配置・教育の3つを連動させた“設計”が不可欠です。
まず採用段階では、「スキル」だけでなく「人物特性」「動機」「過去の職歴」などを多角的に評価する必要があります。
たとえば、以下のような点に注目することでミスマッチを防げます。
- なぜ日本で働きたいのか(動機の強さ)
- 同じ職種の経験があるか
- 生活インフラ(住居・家族・日本語能力)の安定度
次に配置においては、言語面・指導面のフォローがしやすい環境に初期配属することで、離職率の低下に直結します。
配属先の日本人スタッフに対しても、事前に「文化理解研修」などを行うことで、相互理解が進み、現場トラブルを未然に防げます。
教育においては、マニュアル化された業務指導とあわせて、
- 視覚的教材(動画・図解)
- 母国語対応のサポートツール
- 日本語学習支援(e-learningや外部スクールとの提携)
などを導入する企業が増えています。
特に、日本語能力試験(JLPT)対策を支援することは、2号への移行を視野に入れた中長期雇用にもつながります。
このように、採用から教育までを戦略的に設計することで、外国人材は単なる「労働力」ではなく、「現場に根付いた戦力」へと変化します。
「この職種×この国」の成功事例に学ぶ採用パターン
受け入れの“質”を高めるうえで、職種と出身国の相性を意識することも有効です。
これは、単なる偏見ではなく、文化的背景・教育制度・価値観・宗教観・労働観の違いが実務に影響を与えるからです。
たとえば以下のような成功パターンがあります。
- 介護分野 × フィリピン人材
英語力とホスピタリティの高さから、高齢者とのコミュニケーションに強みを発揮。
家族重視の価値観が定着することにも好影響。 - 食品製造業 × ベトナム人材
まじめで手先が器用という国民性が、ライン作業や衛生管理にマッチ。既存の実習制度で多くの経験者も多く、スムーズな移行が可能。 - 建設業 × インドネシア人材
体力と根気が必要な現場作業に適応しやすく、同業他社の定着率も高い。信仰に配慮した休憩・食事対応で満足度向上。
こうした情報は、自治体・送り出し機関・人材紹介企業などからも得ることができるため、採用戦略立案時に「どの国のどの人材が、どの職種にフィットするか」を分析することは、実践的かつ効果的な施策です。
▽量から「質」へ。選ばれる企業こそが外国人戦力化を実現する
特定技能制度の本質は、単なる労働力の確保ではなく、“即戦力化と定着”を前提とした制度設計にあります。
したがって、受け入れ数を追いかけるだけでなく、質を高める工夫こそが、採用効果を最大化させる鍵となります。
採用の段階から、配置・教育・フォロー体制に至るまで、丁寧に設計された企業は、結果として外国人材に「選ばれる企業」となり、長期的に安定した人材活用を実現しています。
今後の人手不足社会において、外国人材の質的活用は、企業の競争力そのものに直結します。
今こそ、外国人材を“単なる労働力”ではなく、“企業の未来を支える戦力”として捉える視点への転換が求められているのです。
特定技能制度の現状と今後を読み解き、戦略的な受け入れ体制を構築しよう
特定技能制度は、外国人労働者の受け入れを通じて人手不足の解消を図る一方で、職種・国別に大きな傾向と偏りが見られるのが実情です。
制度開始からの数年間で、特定技能1号を中心に受け入れ人数は着実に増加しており、分野別では「介護」「外食業」「農業」などが特に多く、出身国別では「ベトナム」「インドネシア」「フィリピン」などが上位を占めています。
また、制度改正による2号職種の拡大や、他制度(技能実習・育成就労など)との連携も注目される中で、単に人数を確保するだけでなく、「どの職種に」「どの国から」「どんなスキル・文化背景を持った人材をどう活かすか」という“質”の視点がより重要になっています。
今後は、以下のような視点が企業にとって鍵となるでしょう。
- 受け入れ枠と実数のギャップを踏まえた現実的な採用計画
- 試験制度や技能水準を踏まえた職種別の戦力化設計
- 国別傾向を活かしたマッチングと教育体制の構築
- 現場主導のルール整備による定着支援と改善サイクルの確立
つまり、特定技能制度を“活かす”か“使いこなす”かは、受け入れ企業の理解・準備・戦略にかかっていると言っても過言ではありません。
今後の変化に柔軟に対応しつつ、自社にとって最適な受け入れ体制を描いていくことが、制度を通じた持続的な成長につながるはずです。
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