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10/03 (金)更新

特定技能の二国間協定とは?採用前に必ず確認すべき国別ルール一覧

日本企業が特定技能外国人を採用する際、「二国間協定」の有無や内容が大きな意味を持つことをご存じでしょうか。

 

この協定は、外国人の送り出し国と日本との間で結ばれる公式な取り決めであり、採用プロセスや支援体制に直接影響します。

 

たとえば、ベトナムやフィリピンなどの協定締結国では、政府による推薦状制度や送出機関の指定など、独自のルールが存在し、事前に把握していなければ採用が遅延するリスクも。

 

逆に、協定を結んでいない国からの受け入れはそもそも制度上不可能なケースもあり、実務担当者にとっては極めて重要なチェック項目です。

 

本記事では、「二国間協定とは何か」から「国別の対応ポイント」「採用戦略への活かし方」まで、制度を深く理解し、トラブルを避けるための知識を網羅的に解説します。

 

制度理解だけでなく、文化的な背景や信頼関係構築のヒントにも触れながら、特定技能制度を企業の成長戦略として活かす道筋をご紹介します。

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特定技能における二国間協定とは何か?

外国人材の採用が企業の成長に欠かせない現在、制度を正しく理解することはもはや必須事項です。

 

特に「特定技能制度」において重要な役割を果たすのが「二国間協定」という制度的な枠組み。

 

これは単なる国同士の合意にとどまらず、企業が円滑に外国人材を受け入れ、かつ適正な環境で働いてもらうための土台ともいえるものです。

 

本セクションでは、二国間協定とは何か?なぜ必要なのか?そして送り出し国・受け入れ国双方にとってどのようなメリットがあるのか?

 

といった基礎的な内容を整理し、採用担当者が押さえておくべき視点をわかりやすく解説します。

二国間協定の定義と背景

「二国間協定(Bilateral Agreement)」とは、日本と特定技能制度に基づいて外国人材を送り出す国との間で結ばれる政府間の公式な取り決めです。

この協定には、送り出し手続きの管理方法、手数料の透明性、送り出し機関の認定要件、就労環境の適正化に関する合意内容などが詳細に定められており、特定技能制度の運用においては非常に重要な基盤となります。

この枠組みが導入された背景には、技能実習制度で過去に発生した中間搾取や違法ブローカー問題への反省があります。

特定技能ではこれらの問題を回避し、より公正で透明性のある仕組みを構築することが目指されているのです。

協定が必要とされる理由とは?

二国間協定が必要とされる最大の理由は、外国人労働者の権利保護と適正な就労環境の確保にあります。

たとえば、協定によって定められた手続きを踏まずに人材を受け入れた場合、法的なトラブルや不適正な送り出し手続きが生じるリスクが高まります。

さらに、協定締結国には政府公認の送り出し機関や認定フローが整備されているため、企業側も信頼できる人材を安定的に採用しやすくなります

その一方で、協定未締結国からの受け入れはそもそも制度上できないため、事前の国別確認は必須です。

企業にとっては「どの国と協定があるか」「その国で必要な書類や手続きは何か」を明確に把握し、制度的なリスクを回避する意識が求められます

送り出し国と受け入れ国の両方にとってのメリット

二国間協定は、送り出し国と日本企業の双方にとって“メリット”をもたらすウィンウィンの仕組みです。

送り出し国にとっては、国としての管理体制が強化されることで、自国民が安心して海外で就労できるようになります。

ブローカーによる違法請求や過剰な費用負担の抑制、送り出し手続きの簡素化など、政府による関与が高まることで、人材流出ではなく「人材活用」へと視点を転換できます。

一方、受け入れ側の日本企業にとっても、透明性の高い採用ルートの確保信頼性のある人材とのマッチングトラブル回避など多くの利点があります。

また、協定によって文化・言語支援に関する政府レベルの協力が得られるケースもあり、外国人材の定着率向上にも寄与するのです。

◎制度理解が企業の信頼をつくる第一歩

二国間協定は、単なる書類上の制度ではなく、外国人材の安心・安全な就労と、企業の適正な受け入れを実現するための“制度のかなめ”です。
協定の存在を正しく理解し、国ごとのルールに沿った採用・支援を実践することは、結果的に企業のブランド価値や人材定着率を高める要素にもなります。

採用戦略を国際水準で整備する第一歩として、二国間協定の内容や背景を丁寧に押さえ、次のアクションにつなげましょう。

二国間協定の目的と3つの柱

特定技能制度における「二国間協定」は、単なる手続き上の取り決めではありません。

 

その根底には、外国人材の適正な受け入れ体制の構築と、送り出し国との信頼関係を築くという、明確な目的があります。

 

この制度設計において、政府は3つの柱を中心に運用方針を定めています。

 

それは「円滑かつ適正な送り出し・受け入れ」「人権保護と不当労働の防止」「信頼関係と相互利益の確立」という3点です。

 

本セクションでは、これら3つの柱が何を意味し、企業の採用活動にどう影響するのかを、具体的に解説していきます。

特定技能外国人の円滑かつ適正な送り出し・受け入れ

二国間協定の第一の目的は、外国人材が適切なルートで来日し、日本国内で問題なく働けるようにすることです。

これにより、違法な仲介業者の介在を防ぎ、送り出し国側の政府や公認機関を通じた安全な流れが確保されます。

たとえばベトナムやフィリピンなどの協定国では、政府指定の送り出し機関を通じた手続きが義務化されており、日本側でも「受け入れ機関の責任体制」が問われます。

このような制度により、事前に教育や書類確認がなされ、トラブルの予防や定着率の向上が実現しています。

企業にとっては、信頼性の高い手続きの確立と、採用フローの透明化が大きなメリットとなり、安心して外国人材を迎え入れられる体制が整うのです。

外国人労働者の人権保護と不当労働の防止

二つ目の柱は、外国人労働者の権利を守ることにあります。

過去の技能実習制度では、中間搾取・劣悪な労働環境・強制労働など、数々の人権問題が報告されてきました。

これに対し特定技能制度では、国際的な人権基準を踏まえた「適正就労」が制度の中核に据えられており、二国間協定でも明確にその重要性がうたわれています

協定国との間では、雇用契約の内容や労働条件、賃金、福利厚生の明示など、労働者を保護するためのガイドラインや監督体制が構築されています。

企業側にとっても、協定を守ることが“コンプライアンス遵守”と“企業の社会的信頼”につながるという点で非常に重要です。

また、適正な労働環境が確保されることで、外国人材が長く働き続ける意欲を持ちやすくなるという利点もあります。

両国の信頼関係と相互利益の強化

三つ目の柱は、日本と送り出し国双方の信頼関係を築くことです。

二国間協定は、日本が単に労働力を受け入れる立場としてではなく、「国際協力」として人材交流を進める意思表示でもあります。

協定を通じて、日本側は送り出し国の制度を尊重し、相手国の政府と協調しながら制度運用を行います。

一方、送り出し国も自国民が安心して働けるように管理体制を強化し、教育・訓練・マナー・語学支援などを通じて人材の質を高める努力をしています。

このような信頼関係の構築は、長期的には人材の質やマッチング精度の向上にも直結し、企業・国・個人すべてにとって好循環を生み出します

また、こうした相互信頼があるからこそ、送り出し国も日本企業に人材を安心して送り出せるのです。

◎協定の「3本柱」が未来の人材戦略を変える

特定技能制度における二国間協定は、「制度を回すための手続き」ではなく、「未来の信頼と共生社会をつくるための取り決め」です。

  • 適正な送り出し・受け入れ体制の整備

  • 人権を守る就労環境の構築

  • 国際的な信頼関係の強化

これら3つの柱を理解し、企業側でもその意義を踏まえた運用を心がけることで、トラブルの少ない採用が実現し、優秀な人材が自然と集まる企業文化をつくることが可能になります

グローバル人材戦略の一環として、今こそ「二国間協定の本質」に目を向けてみてはいかがでしょうか。

日本が二国間協定を締結している国一覧

特定技能制度の運用において、日本は外国人材の“送り出しルートの健全性”を確保するために、各国との間で「二国間協定(MOC)」を締結しています。

 

この協定を結んでいる国の出身者に限り、正規の送り出しルートから特定技能で来日することが可能になります。

 

逆に、協定未締結の国からの人材については原則として受け入れ不可となるケースもあり、企業側はこの点を正しく把握する必要があります。

 

ここでは、現在日本が特定技能制度において二国間協定を締結している主要な国を3つのグループに分けて紹介し、あわせて「協定対象外国や除外国の扱い」についても解説します。

ベトナム/タイ/カンボジア

このグループは、特定技能制度が開始された初期段階から日本との協力体制を築いてきた代表的な国々です。

ベトナム
特定技能外国人の受け入れ数が最も多い国であり、日本語教育や職業訓練が政府レベルで整備されています。
送り出し機関も多数存在し、制度利用のノウハウが十分蓄積されています。

タイ
特に外食業や農業などの分野で人材供給が進んでおり、日本との経済的関係も深い国のひとつ。
政府が送り出し事業を統括しており、労働者保護への意識が高いのが特徴です。

カンボジア
まだ受け入れ人数こそ多くないものの、政府が特定技能制度の推進に積極的で、若年層を中心とした送り出し体制の構築が進められています

これらの国との協定によって、事前教育の質・労働者保護の徹底・ブローカー排除が制度上の強みとなっています。

フィリピン/インドネシア/ネパール

このグループは、既存のEPA(経済連携協定)や技能実習制度でも日本との結びつきが深い国々であり、特定技能制度への移行がスムーズな傾向にあります。

フィリピン
英語力の高い人材が多く、介護や宿泊業、外食など多様な分野でニーズが高い国です。
フィリピン政府は送り出しルールを厳格に管理しており、職業訓練と人権保護に力を入れています

インドネシア
技能実習制度での受け入れが長く、特定技能への移行が進んでいます。
送り出し国としての経験が豊富で、宗教(イスラム教)に配慮した支援体制の整備が企業側にも求められます。

ネパール
主に建設や飲食分野でのニーズが高く、日本での就労を希望する若者が多い国です。
ネパール政府も公的送り出し機関を通じて、不正行為や仲介業者による搾取を防止する体制を整えています。

これらの国では、宗教・文化への理解や支援体制の多言語化が定着率を左右する重要な要素となります。

ミャンマー/バングラデシュ/パキスタン/モンゴル

このグループは、今後の人材供給国として注目されている国々であり、多くが成長著しい人口増加国でもあります

ミャンマー
技能実習制度での受け入れも多く、日本語教育が根付いている一方で、政情不安定さから送り出し体制の一時停止や変更も発生しやすい国です。
企業は情報の最新化に注意が必要です。

バングラデシュ
建設や製造業を中心に今後の受け入れ拡大が見込まれています。
英語力が高い層も多く、国策として海外就労を推進している点が特徴です。

パキスタン
まだ人数は少ないですが、農業・外食分野などで将来的な人材供給が期待されており、政府間の協議を重視した体制整備が進行中です。

モンゴル
日本文化への関心が高く、日本語能力試験(JLPT)の取得者も多いため、比較的スムーズなコミュニケーションが可能とされています。

これらの国との協定により、今後の人材戦略において「多様化」と「分散化」を見据えた採用ルートの確保が企業にとって重要になるでしょう。

(補足)協定対象外・除外国の扱いとは?

特定技能制度において、二国間協定を結んでいない国からの人材は、原則として制度の対象外となります。

仮に制度上の条件(技能試験・日本語試験の合格など)を満たしていても、協定国でなければ「正規の送り出しルート」が存在せず、受け入れ企業にとってリスクの高い採用となってしまいます。

また、すでに協定を締結していても、送り出し国側の都合により一時的に人材の送り出しが停止されるケースもあります。

例として、政変・パンデミック・不正輸出案件の発覚などが挙げられます。こうした場合は、出入国在留管理庁(入管)の最新発表や、現地大使館の情報を随時確認することが重要です。

◎採用前に「協定国かどうか」の確認は必須

特定技能外国人の採用において、「この人材が協定国出身かどうか」は制度活用のスタートラインです。

  • 協定国出身であることが適正なルート確保の前提

  • 国ごとに送り出し体制や文化・語学教育の特徴が異なる

  • 政情や制度の変更に伴うリスクへのアンテナも重要

以上を踏まえ、企業は協定国の一覧を把握し、送り出し状況や支援体制の構築に役立てていくことが不可欠です。

制度の活用を単なる採用活動ととらえず、「パートナー国との協力のうえに成り立つ人材戦略」として捉えることが、長期的な成功に繋がる視点といえるでしょう。

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協定締結国ごとに異なる手続きと注意点

特定技能制度で外国人材を受け入れる際、「協定国」であっても手続きや必要書類は国ごとに大きく異なります。

 

協定によって定められた送り出し体制には、それぞれの国の事情や制度、文化的背景が反映されており、企業がこれを十分に理解しておかないと、不備による不受理・送出国での出国停止・不正ルート扱いなどの重大なトラブルを招く可能性があります。

 

本セクションでは、特に受け入れが多い主要国を中心に、各国の手続き上の特徴と注意点を整理しました。

 

これから特定技能で外国人を採用しようとしている企業や人材紹介事業者にとって、実務面での重要な指針となるはずです。

ベトナム|推薦状制度と政府指定送り出し機関

ベトナムは、日本にとって最大の特定技能人材供給国ですが、推薦状制度という独自の事前承認プロセスが存在します。

まず、受け入れ企業または監理団体は、送り出し予定者の情報を日本側で整え、ベトナム政府労働・傷病兵・社会問題省(MOLISA)に提出し、推薦状の発行を受ける必要があります。

この推薦状がなければ、ベトナム人は原則出国できません。

また、送り出し機関は政府によって認定された事業者に限られており、未認定機関を通じた送り出しは不正扱いとなります。

ブローカーによる高額手数料の請求や不正行為のリスクがあるため、企業はベトナムの公認リストを必ず確認することが求められます。

フィリピン|POEA登録と公的訓練要件

フィリピンでは、海外就労を行うすべての労働者がPOEA(フィリピン海外雇用庁)に登録され、認可を受ける必要があります。

企業側が直接採用する場合であっても、POEAに登録された送り出し機関との契約が義務付けられており、求人票や雇用条件書、面接結果などの書類提出を通じた審査手続きを経る必要があります。

さらに、フィリピン政府はTESDAという職業訓練機関を通じたスキル認証や語学教育の履修を義務づけるケースもあり、この訓練証明書の提出が出国条件となる場合もあります。

不正なルートを使った場合は、労働者が「無許可就労」とみなされ、将来的な再入国禁止・日本企業への制裁のリスクも発生するため、POEAとの手続きは必ず正規ルートで行う必要があります。

ネパール|DOFEの許可手続きとその流れ

ネパールでは、海外での就労を希望する労働者はDOFE(Department of Foreign Employment)=外国雇用局の許可を取得しなければ出国できません。

その流れは以下の通りです。

  1. 雇用契約書・労働条件通知書を企業側が準備

  2. DOFE登録の送り出し機関がこれらの書類を提出

  3. 労働者は健康診断・研修・語学訓練を受講

  4. すべての書類・証明書類をそろえた上で、DOFEによる審査

  5. 承認後、「労働許可証」が発行され、ようやく出国可能

特に注意が必要なのは、DOFEが発行する「承認番号」がないと査証発給自体が無効扱いになる点です。

また、送り出し前の事前講習(Pre-departure Orientation)も義務化されており、修了証明書の添付が必要となります。

ネパールは、政府の労働者保護姿勢が非常に強いため、書類不備や契約内容の曖昧さが致命的な問題につながりやすく、日本企業側の細かな対応が成功のカギになります。

インドネシア・ミャンマー・モンゴル|独自の管理体制と書類要件

この3か国も、それぞれ異なる管理機関と書類手続きが必要であり、まとめて理解することはできません。以下に各国の特徴を示します。

インドネシア
BP2MI(海外労働者保護庁)の下で送り出し制度が管理されており、訓練受講・健康診断・契約書翻訳などを含む厳格なプロセスがあります。
特に宗教上の配慮(ハラール対応など)や文化的価値観への理解が求められ、企業にも信頼構築の姿勢が必要です。

ミャンマー
MOLIP(労働・移民・人口省)を通じた送り出しが基本であり、事前教育・送り出し同意書・公的身分証明書などの提出が必要です。
ただし、政情の影響で送り出しが一時停止になるケースもあり、渡航タイミングには注意が必要です。

モンゴル
モンゴル政府指定の送り出し機関を通じて手続きされ、日本側の企業は雇用契約書をモンゴル語に翻訳したものを提出しなければなりません。
また、日本語能力の証明書や技能試験の結果だけでなく、家庭環境や将来的な定住意向に関する面談が行われることもあります。

いずれの国においても、送り出し国の制度・情勢・文化に応じたきめ細かな対応が、適正な受け入れの前提になります。

◎国別手続きの理解が、受け入れ成功の第一歩

特定技能制度における受け入れは、「国ごとの制度理解と実務対応」が成否を分けるカギとなります。

  • ベトナムの推薦状制度や政府認定機関の確認

  • フィリピンのPOEA登録と訓練証明

  • ネパールのDOFEによる厳格な審査

  • インドネシアやミャンマーなどの文化的・政治的事情をふまえた対応

これらはすべて、「制度の枠内」で適切な受け入れを行うための基本事項です。
単に試験合格者を雇うだけでなく、その背後にある国ごとの制度や事情に敬意を払い、信頼関係を築きながら受け入れる姿勢こそが、長期定着とトラブル防止につながるのです。

今後の人材戦略では、「どの国から採るか」ではなく「その国とどう向き合うか」が問われる時代になっているといえるでしょう。

協定で変わる!採用戦略に効く国別コミュニケーション設計

特定技能制度における「二国間協定」は、手続きや制度だけでなく、採用コミュニケーションにも大きな影響を与えます。

 

単に人材を受け入れるだけではなく、「どのように伝え、どう信頼関係を築き、どう定着を促すか」が、制度活用の成功可否を分けるポイントです。

 

とくに協定締結国は、自国政府が送り出し制度を管理しているため、国ごとの価値観や文化を尊重した対応が不可欠です。

 

このセクションでは、国別の文化背景を踏まえた採用時の伝え方の工夫や、協定内容に即した信頼構築法、そして初期接点の設計が定着に与える影響について、具体的に整理していきます。

国ごとの文化背景と採用時の伝え方の工夫

各国の文化的価値観や国民性を理解したうえでの情報提供やコミュニケーション設計は、採用活動において非常に重要です。

たとえば、ベトナムやミャンマーでは「家族との相談」が非常に重視される傾向があり、面接時に雇用条件を明確に伝えるだけでなく、「家族にどう伝えるか」を丁寧にアドバイスすることが求められます。

一方、フィリピンでは「明るく、フレンドリーな職場環境」を重視する人が多いため、職場の雰囲気やレクリエーション情報を伝えることが効果的です。

また、モンゴルやネパールでは、公的な説明文書に加えて「口頭での丁寧な説明」が信頼構築につながるとされ、逐語訳よりも現地語ネイティブによる解説動画などが有効です。

重要なのは、単なる翻訳ではなく、「相手の文化に響く伝え方」を設計すること。

これは、求人情報・説明会・面接時・事前ガイダンスなど、すべてのフェーズにおいて意識すべき視点といえるでしょう。

協定内容を踏まえた信頼構築のポイント

二国間協定では、出国前教育の義務化、送り出し機関の政府認定制、職業訓練の実施要件などが定められており、これらの制度を“面倒なハードル”と捉えるのではなく、信頼形成のフレームとして活用する発想が必要です。

たとえば、ベトナムでは推薦状制度のもと、政府との協調姿勢が評価基準になります。

この際、企業が自らの就業規則やキャリアパスを丁寧に示し、「誠実な受け入れ企業」であることを政府機関や送り出し機関に示すことが、候補者の獲得にもつながります。

また、フィリピンのPOEA認証においては、過去の受け入れ履歴やトラブルの有無が問われるため、誠実な管理と透明性ある契約実施が前提条件となります。

つまり、協定に則ったプロセスを**「信用を可視化するための構造」としてとらえ、それを自社の信頼構築の材料として使う**ことが、競争優位性につながるのです。

定着率を左右する“初期接点”の最適化とは

採用した外国人が日本企業に定着するかどうかは、「最初の接点」での印象や情報量に大きく左右されます。

特定技能人材は、来日前から訓練や面接を経て一定の期待を抱いていますが、実際の勤務や生活がその期待とギャップがあると、早期離職や不信感につながるリスクが高くなります。

そのため、渡日前の段階での“オリエンテーション設計”が極めて重要になります。

たとえば

  • 実際の職場風景や業務内容を動画で共有する

  • 寮や生活圏の写真や案内を母語で伝える

  • 出迎え担当者と事前にオンラインで顔合わせする

  • 質問・懸念に個別対応できるチャット窓口を設置する

こうした対応を取ることで、「この会社は信頼できる」と感じてもらい、心理的安全性と共に“定着への土台”が築かれていきます。

また、初期接点における説明が曖昧だと、SNSなどを通じてマイナスな情報が広まりやすくなり、将来的な採用難を招く可能性もあるため注意が必要です。

◎採用成功のカギは“制度理解 × 文化対応”

特定技能の採用戦略においては、制度の理解だけでなく、相手国の文化・協定・価値観をふまえた「コミュニケーション設計」こそが成果を左右します。

  • 国ごとの文化的配慮で、情報伝達に工夫を

  • 協定の内容を逆手に取り、信頼形成のフレームとして活用

  • 初期接点を丁寧に設計し、定着と口コミに繋げる

これらの視点を採用活動に組み込むことで、単なる“外国人労働力の確保”ではなく、「共に働き、共に成長する人材パートナー」としての信頼関係が築かれていくでしょう。

時代は今、「制度対応」から「文化対応」へと、企業の姿勢が問われる段階に入っています。

採用前に押さえておきたい「二国間協定」と国別対応の全体像

特定技能外国人を受け入れる企業にとって、「二国間協定」は単なる制度的な枠組みではなく、採用・定着・信頼構築に直結する極めて重要な要素です。

 

この記事では、特定技能制度における二国間協定の基本から、日本が協定を結んでいる各国の制度、そして現場で役立つ国別のコミュニケーション設計まで、網羅的に解説しました。

 

以下のポイントが特に重要です。

  • 二国間協定は、送り出し・受け入れ双方のトラブル防止や人権保護を目的としており、特定技能制度の根幹を支える仕組みです

  • 日本はアジア中心の10カ国以上と協定を結んでおり、それぞれに固有の制度や書類要件が存在します

  • 協定締結国ごとに異なる申請・訓練・推薦制度への理解がないと、手続きミスや受け入れ遅延に繋がるリスクがあります

  • 文化的背景や国民性を踏まえた「伝え方」や「初期対応」の工夫は、定着率や信頼度を大きく左右します

今後ますます特定技能人材のニーズが高まる中で、「制度理解 × 文化理解」の両輪が、採用戦略の成否を分ける鍵となるでしょう。

 

制度の表面だけでなく、その背景にある価値観・習慣・信頼の構築フローまでを理解し、戦略的な採用・育成・定着プロセスを実践することが、これからの国際採用には欠かせません。

 

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