
10/03 (金)更新
特定技能に健康診断は必要?実施時期・項目・注意点を徹底解説
特定技能制度で外国人を受け入れる際、健康診断が「本当に必要かどうか」という疑問を持つ企業や本人は少なくありません。
制度の要件、どのタイミングで受けるべきか、どの検査項目が必要か、さらには結果の保存や扱いまで、これらを誤ると、在留申請拒否や制度運用上のトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、特定技能外国人に対する健康診断の制度上の義務と目的から、実際に採るべき検査項目・タイミング、そしてコスト・実施機関・結果管理など注意すべきポイントについて、実務者目線で整理します。
特定技能の受け入れ準備をしている企業や外国人本人にとって、必要な情報を漏れなくお届けします。
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なぜ特定技能外国人に健康診断が必要なのか
特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野において即戦力となる外国人を受け入れる制度です。
健康状態の確認は、その円滑な制度運用と職場定着に直結するため、単なる形式的な対応ではなく、制度の根幹に関わる重要事項として位置づけられています。
制度上の位置づけと目的
特定技能制度において健康診断は、労働安全衛生法や入管法上の要請を満たすためだけでなく、受け入れ後の職場環境への適応や本人の長期的な健康管理という観点からも重要です。
とくに、在留資格の申請時や更新時に健康診断結果の提出が求められるケースがあり、制度に基づく審査の一環として扱われます。
また、介護や食品製造など特定分野では、感染症対策の観点から事前に結核・肝炎などの検査を義務付ける例もあります。
これらは、労働者本人の健康確保だけでなく、業務上のリスク管理にもつながるため、結果的に事業者側のリスク回避にもなるのです。
受け入れ機関・登録支援機関の責任範囲
健康診断の実施主体は、基本的に受け入れ機関(雇用主)です。
ただし、登録支援機関を活用している場合は、支援計画に基づいて必要な手続きや日程調整、医療機関の案内などを支援機関が担うこともあります。
また、法務省・出入国在留管理庁は、支援責任の一環として「外国人が健康診断を受けられる体制を整えること」を支援計画に含めるよう明記しています。
したがって、雇用主と支援機関の連携体制が適切に構築されていないと、支援義務違反と見なされる可能性もあるのです。
とくに初期段階(入社前・入国後)では、本人が自力で受診手続きを行うのが難しい場合が多いため、支援側のフォローが不可欠となります。
実施しない場合に起こりうるリスク
健康診断を怠ることで発生するリスクは、以下のように多岐にわたります。
- 在留資格申請・更新の不備 – 診断結果の提出が必要なケースで書類不備により不許可となる可能性がある
- 雇用トラブル・労災リスクの増大 – 持病や感染症が見過ごされた結果、職場内でトラブルが起きることも
- 監査や行政指導の対象 – 出入国在留管理庁や労基署の監査で、健康管理体制の不備が発覚すると是正勧告を受ける場合も
また、本人の健康状態によっては業務が制限されることもあるため、採用後に判明するよりも、事前に把握しておくほうが企業側のリスクも最小限に抑えられます。
▼健康診断は制度運用の出発点
特定技能制度における健康診断は、単なる“形式的な準備”ではなく、適正な制度運用・安全な職場環境・本人の継続就労のすべてに関係する重要なプロセスです。
特定技能外国人の受け入れを計画している企業や支援機関は、制度の趣旨とリスクを正しく理解したうえで、実施・管理体制を整備しておくことが不可欠です。
初動の丁寧な対応が、トラブルのないスムーズな制度活用につながります。
健康診断のタイミングと回数|事前・入国後・定期で分けて考える
特定技能外国人を受け入れる企業にとって、健康診断のタイミングとその実施回数を正しく把握しておくことは、制度上の義務を果たすだけでなく、現場でのトラブル防止にも直結する大切なポイントです。
とくに「いつ・どの段階で・誰の責任で」健康診断を行うべきかを曖昧にしたままでは、在留資格の申請ミスや、職場配属時の不適合といった問題を引き起こしかねません。
ここでは、在留資格の申請前・入社時・就労開始後の定期健診の3つの段階に分けて、具体的な注意点や必要性を解説します。
在留資格申請時に必要なケースとは?
特定技能ビザを新規で取得する際、すべてのケースで健康診断書の提出が必要なわけではありません。
しかし、以下のようなケースでは、診断書の添付が必須または推奨されることがあります。
- 業種によって感染症対策が重視される(例:介護・飲食料品製造など)
- 本人の既往歴や体調面に関する申告がある
- 技能実習からの移行ではなく、新規で特定技能を申請する場合
入管庁のガイドラインにおいても、「就労に支障を来さないことを確認するために必要に応じて診断書を添付」と明記されており、審査官の裁量により提出が求められるケースがある点に注意が必要です。
また、送り出し国側で医療機関による健診が義務化されている場合もあり、日本側の企業・支援機関は、その内容との整合性を確認しておくことが求められます。
入社時・就労開始前の健康診断の位置づけ
在留資格が許可され、入国後に雇用契約を結ぶ段階では、就労開始前の健康診断が非常に重要なプロセスとなります。
これは単に法的義務というだけでなく、次のような観点から実施が強く推奨されます。
- 業務に支障がないかの最終確認
- 企業の安全配慮義務の履行
- 支援計画に基づく生活サポートの一環
特定技能制度では、入社後すぐに業務に従事するケースが多く、健康状態の確認を怠った場合、配属後に病気や体調不良が発覚するリスクもあります。
これは受け入れ企業にとっても労災や人員調整などのリスクにつながるため、就労前に必ず医療機関での健診を行い、記録として残しておくことが推奨されます。
また、外国人本人が健診の意義を理解しやすいよう、通訳支援や翻訳済みの説明書類を用意することも重要です。
就労後の定期健康診断|年1回は必須
就労開始後は、労働安全衛生法第66条に基づき、年1回の定期健康診断を実施する義務があります。
これは日本人従業員と同様に、特定技能外国人にも適用されます。
定期健診の主な目的は、就労中の健康状態の変化を早期に発見し、業務上の疾病リスクを最小限に抑えることにあります。
たとえば、以下のような検査項目が一般的です。
- 身体測定(身長・体重・視力・聴力など)
- 血圧測定
- 胸部X線検査
- 尿検査・血液検査
また、介護職や食品製造業などでは、定期的に感染症関連(結核・肝炎など)の再検査が必要となるケースもあり、業種ごとの対応が求められます。
企業側には、健診の実施記録を保存・管理し、必要に応じて入管・監督官庁に提出できる体制を整えておくことが求められます。
あわせて、外国人本人への結果説明やフォローアップも支援機関と連携して実施するのが望ましい運用です。
▼段階ごとの対応がトラブル回避のカギ
特定技能外国人に対する健康診断は、「入国前・雇用前・就労中」といった複数の段階での実施が重要です。
それぞれのタイミングで目的や必要書類が異なるため、制度理解とスケジューリングを徹底することが、トラブルの未然防止につながります。
また、企業と登録支援機関が連携し、健診の受診案内や日程調整、費用負担の取り決めを明確にしておくことで、外国人本人も安心して働き始めることができます。
制度の信頼性と職場の安全性を保つためにも、段階ごとの対応を丁寧に行うことが不可欠です。
健康診断で必要な主な検査項目とその内容
特定技能外国人を雇用する際、健康診断の実施は単なる形式ではなく、業務への適性確認や感染症対策、安全配慮義務の履行という重要な目的を担っています。
特に業種によっては、基本的な健診に加えて、特定の検査項目が求められることもあり、内容を正しく把握することが不可欠です。
ここでは、受け入れ時・定期健診の両方において求められることの多い基本検査・精密検査・業種別の追加検査について、それぞれの目的やポイントを整理して解説します。
基本検査(身長・体重・視力・血圧など)
健康診断の基本検査は、身体的な基礎状態の把握を目的として行われるもので、以下の項目が一般的に実施されます。
- 身長・体重測定 – 肥満や低体重といった身体状況を確認し、業務への影響を評価。
- 視力・聴力検査 – 作業内容に応じた感覚機能の確認。運転や機械操作がある場合は特に重要。
- 血圧測定 – 高血圧や低血圧などの慢性症状がないかをチェックし、体調管理に役立てる。
これらの項目は、全ての労働者に対して年1回の定期健康診断で求められる法定項目であり、外国人労働者も例外ではありません。
加えて、就労前に初回健診として行う場合も多く、業務への影響がないかを見極める基本情報として活用されます。
血液・尿検査や胸部X線などの精密検査
基本検査に加え、内部的な健康状態を把握するための検査も実施されます。
特に以下の項目は、生活習慣病のリスクや重大な疾患の兆候を早期発見する目的で行われます。
- 尿検査 – 糖尿病や腎疾患のリスク確認。
- 血液検査 – 貧血、肝機能、腎機能、脂質異常症などの早期発見。生活習慣病リスクの判断材料にもなります。
- 胸部X線検査 – 肺結核や肺炎、腫瘍などの呼吸器疾患を検出。特に介護職や飲食関連では必須とされることも多い。
これらの検査は企業の安全配慮義務の一環として非常に重要であり、仮に問題が見つかった場合には、就業前の対応(医師の意見聴取や業務調整など)も必要になる可能性があります。
感染症関連(結核・肝炎)など業種別の追加検査
特定技能制度においては、就業する業種によって追加的な検査項目が求められるケースも多く、企業側にはそれを把握する義務があります。
主な追加検査の例は以下の通りです。
- 結核検査(ツベルクリン反応・胸部X線) – 介護・医療・食品加工・宿泊業など、人との接触が多い業種で重要視されます。
- B型・C型肝炎ウイルス検査 – 介護や調理業務では、血液・体液を扱う機会もあるため実施が推奨されることがあります。
- 腸管感染症検査(赤痢・サルモネラなど) – 飲食料品製造業などで特に必要とされる検査。
厚労省や入管庁のガイドラインでは明記されていないこともありますが、自治体や業界団体が独自に定める健診基準を上乗せして求めるケースも多いため、事前確認が不可欠です。
また、海外の医療機関で行った検査が日本の基準と異なる場合、再度国内で受診が必要になるケースもあり、受け入れ前にフローを明確にしておくと安心です。
▼内容と意図を正しく理解して対応を
特定技能外国人の健康診断では、「何を検査するか」だけでなく、「なぜ必要なのか」「業種ごとの違いは何か」までを理解して実施することが重要です。
とくに感染症関連や精密検査は、業務の適性や職場全体の衛生安全を左右する要素となるため、企業側の責任で必要な項目を把握し、確実に対応する姿勢が求められます。
受診対象者本人が検査内容に不安を感じたり、理解不足のまま検査を受けることがないよう、事前の説明支援や通訳サポート、検査後の丁寧なフィードバックも重要なポイントです。
制度理解と実務運用を両立させることで、健診の効果を最大限に高め、安心して働ける環境づくりにつなげていきましょう。
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どこで受けられる?健康診断の実施機関と費用相場
特定技能外国人を受け入れる企業にとって、健康診断の実施先や費用負担の把握は、採用準備・定着支援における重要ポイントです。
とくに在留資格申請や就労開始前の健診では、「どこで受けるべきか」「誰が費用を負担するのか」「診断結果の扱いはどうするのか」といった実務面の不明点が多く、対応を迷う企業も少なくありません。
このセクションでは、実施機関の選び方・料金相場・結果の提出までの流れを整理し、受け入れ企業がスムーズに健康診断を手配できるよう、実務的な観点から解説します。
地域の指定医療機関・企業向け健診サービスなど
健康診断を受けられる場所は、主に以下のような実施機関があります。
- 地域の医療機関(クリニック・病院)
内科を中心に健診項目を網羅している施設で、自治体指定の医療機関や外国人対応が整っている病院が安心です。
外国語対応や海外診断書の読み取りに慣れているケースもあります。 - 産業医や提携健診センターを活用する企業向けサービス
複数人をまとめて受診させる場合、出張健診や団体契約が可能な健診センターを利用する企業も増えています。
特に建設・介護・宿泊業などでは、人材派遣元が一括して手配することも。 - 外国人支援に特化した健診サービス
外国語による説明資料の提供や、特定技能制度に準じた健診項目のパッケージ対応が可能な医療機関も一部存在します。
登録支援機関と連携している医療機関であれば、よりスムーズな案内が可能です。
受診先を選ぶ際は、業種ごとに必要とされる検査内容に対応しているかどうか、外国語での診断書発行や通訳の有無なども確認しておくと、トラブルを防げます。
料金相場と企業・本人負担の考え方
健康診断の費用は、検査項目や医療機関によって大きく異なるのが実情です。
参考までに、一般的な費用相場は以下のとおりです。
健診の種類 | 費用目安(1人あたり) |
一般的な定期健康診断 | 約6,000~12,000円 |
採用前・入国前の健診(追加項目含む) | 約10,000~20,000円 |
感染症(B型肝炎・結核など)を含む業種別検査 | 約15,000~25,000円 |
費用の負担者は企業側が担うのが望ましいとされていますが、法律上は明確な定めがないため、以下のような対応が見られます。
- 入国前の健診 – 基本的に本人負担(送出し国で実施)
- 就労前や就業中の健診 – 企業側が負担するケースが多い
- 登録支援機関が手配・負担を一部代行することもある
重要なのは、健診が制度要件であることを理由に、本人に全額負担させるような一方的な対応を避けること。
本人負担とする場合も、事前に文書などで同意を得ておくことが必要です。
結果が出るまでの期間と提出書類の扱い
健康診断の結果は、一般的には3日〜2週間程度で交付されます。
内容や検査項目、医療機関の混雑具合によって異なるため、在留資格申請や雇用開始のスケジュールと逆算して予約・受診することが大切です。
診断結果は、以下の用途で提出・保管されることがあります。
- 出入国在留管理庁への提出(在留資格「特定技能1号」など一部ケース)
- 企業の雇用管理資料として保管
- 登録支援機関が健康診断結果を元に支援計画を作成するケース
また、一部の地方入管局では診断書の日本語訳提出を求める場合があるため、外国語で作成された結果については翻訳対応も忘れずに準備しましょう。
健診結果に「要治療」や「要再検査」がある場合には、就業の可否判断や就労条件の調整(業務内容の見直しなど)を行う必要があり、企業側の対応体制も問われます。
▼実施先・費用・スケジュールを事前に確認しておくことが鍵
特定技能外国人の健康診断において、「どこで受けるか」「費用は誰が負担するか」「結果はいつ出るか」といった実務面の整理は、円滑な受け入れに直結します。
とくに健診実施機関の選定は、業種ごとの検査要件や外国語対応の有無によって適正な選択肢が変わるため、地域の医療機関情報を早めに収集しておくことが大切です。
また、健診結果の扱いをめぐるトラブルを防ぐためにも、企業・本人・登録支援機関の間で、費用負担や提出方法などのルールを明文化しておくことが望ましい対応です。
受け入れ準備の一環として、健康診断の流れをマニュアル化し、運用に落とし込んでおくと安心です。
健康診断結果の保存・管理と提出義務
特定技能外国人を受け入れる企業にとって、健康診断の実施だけでなく「その後の管理体制」も非常に重要です。
診断結果の保存義務や入管対応の備え、個人情報としての取扱いルールなど、制度上・法令上の理解が不十分なままだと、思わぬトラブルや行政指導のリスクにもつながりかねません。
このセクションでは、健康診断結果の保存期間や管理責任、提出義務の有無、そして個人情報保護の観点から企業が注意すべきポイントを、実務視点でわかりやすく解説します。
保存期間・管理責任は誰にある?
健康診断結果は、労働安全衛生法や関連通知に基づき、企業(雇用主)側に保存・管理責任があるとされています。
具体的には、以下のルールが基本です。
- 保存期間 – 5年間(労働安全衛生法 第66条)
- 管理責任 – 事業者(受入企業)が負う
- 保管方法 – 漏洩防止措置を講じたうえで、紙または電子で保存
この規定は日本人労働者と同様に、特定技能外国人にも適用されます。
つまり、採用時や定期健診で取得した診断書や結果通知は、受入企業が適切に管理しなければなりません。
また、登録支援機関が健康診断の手配を行った場合でも、最終的な保存責任は雇用主にある点に注意が必要です。
支援機関にコピーを渡すケースもありますが、原本または正式な写しは企業内で保管しましょう。
入管・監査対応で求められること
健康診断結果は、在留資格申請時や入管からの調査・監査において、提出を求められる可能性があります。
代表的な場面としては以下の通りです。
- 在留資格「特定技能」1号申請時(医療・介護・建設分野など)
- 更新・変更許可申請の補足資料として
- 監査・実地調査(受入企業・支援機関の適正性確認)
これらの場面では、「診断書の有無」「就労が可能な健康状態かどうか」「雇用後に定期健診を実施しているか」などが確認されます。
とくに感染症対策や安全衛生管理が厳格に求められる業種では、健診記録の不備が制度違反とみなされる可能性もあります。
そのため、企業側は診断書の保管に加え、健診の実施日や結果通知日を記録に残しておくと安心です。
また、支援機関が健診支援をしている場合でも、企業としても提出義務や監査対応の認識を共有しておく必要があります。
企業・支援機関が注意すべき個人情報の扱い
健康診断の結果は、個人のセンシティブ情報(要配慮個人情報)に該当するため、個人情報保護法の観点からも厳重な取り扱いが求められます。
企業や登録支援機関は以下の点に注意が必要です。
- 診断書のコピー・転送を行う場合は、本人の同意を得る
- 支援機関や外部委託先に提供する際も、提供目的を明確化
- 社内で共有する場合も、担当者を限定しアクセス制限を設定
たとえば、登録支援機関が本人の健康状態を把握し、適切な生活支援計画を立てる目的で診断書を参照することは問題ありませんが、その範囲を超えて無断で社内共有・外部開示することは法的リスクを伴います。
また、外国人本人が診断書の内容を理解できない場合もあるため、本人説明用に多言語対応のフォーマットを用意するなど、配慮も重要です。
企業としては、個人情報の管理体制を整えたうえで、「収集目的の限定」「必要最小限の保存」「定期的な破棄基準の整備」などをルール化しておくと安心です。
▼診断結果は「保管・提出・情報保護」の三本柱で対応を
特定技能制度における健康診断は、実施して終わりではなく、結果をいかに適正に「保存・活用・保護」できるかが重要な視点です。
企業には5年間の保存義務があり、入管対応や監査時に備えて、誰が管理し、どのように提出するかの運用体制をあらかじめ整備しておく必要があります。
また、診断結果は要配慮個人情報として、本人同意や最小限の取扱いルールを徹底することが、企業のコンプライアンスと信頼性を高めるポイントとなります。
受け入れ企業・登録支援機関ともに、健康診断の取り扱いを単なる「書類準備」とせず、外国人本人の安心・安全な就労環境を整えるための基盤づくりと位置づける姿勢が求められます。
業種別に異なる健康診断の要件と注意点
特定技能外国人の受け入れにあたり、実施すべき健康診断の内容は業種によって異なることをご存じでしょうか。
労働安全衛生法に基づく一般的な健康診断だけでは不十分な場合もあり、職種に応じた追加検査や対応が必要になるケースも少なくありません。
特に介護や食品製造といった衛生管理や身体的負担が大きい業種では、健康状態が業務適正と直結するため、企業側の対応不足が就業制限や契約トラブルにつながるリスクもあります。
この記事では、業種別に必要となる検査の違いや注意点、就業制限リスクの判断基準、支援計画との整合性確保の重要性について解説します。
介護・食品製造などで追加が必要な検査
特定技能制度の対象業種のうち、とくに注意が必要なのが介護・食品製造関連です。
これらの分野では、以下のような業種特有の健康診断要件が求められることがあります。
- 介護分野
- 肝炎(B型・C型)ウイルス検査
- 結核(ツベルクリン反応・胸部X線)
- 感染症全般(インフルエンザ・MR・水痘などの抗体確認)
- 肝炎(B型・C型)ウイルス検査
- 食品製造業
- 腸管系病原菌(赤痢・サルモネラ・O-157など)
- ノロウイルス抗原検査
- 皮膚疾患・化膿性疾患の有無
- 腸管系病原菌(赤痢・サルモネラ・O-157など)
これらは、法令に基づく義務というよりも、業界団体ガイドラインや自治体の要請、企業のリスク管理方針に基づいて追加されることが多い点も特徴です。
たとえば、介護施設では利用者への感染拡大リスクを抑えるために、肝炎ウイルスの検査を入社時に必須とし、食品工場では入社後すぐに腸内細菌検査を求めることが一般的です。
通常の健康診断だけでは不十分な業種では、入社前の段階から追加検査の手配や説明が必要になります。
就業制限のリスクがある結果の取り扱い
健康診断の結果によっては、特定技能外国人が就業できない、あるいは業務制限を受けるケースが存在します。
これは、労働者の安全と同時に、業務上のリスク(感染症伝播や労災リスク)を防ぐための措置として、企業に求められる判断です。
たとえば以下のような例が該当します。
- 介護施設での勤務を希望する外国人が活動性結核と診断された場合 → 一時的に就業不可
- 食品工場の従業員が腸内細菌の陽性反応 → 再検査・陰性確認まで業務制限
- 重度の高血圧・心疾患を抱えている場合 → 肉体的に負荷の高い業務への配置制限
これらの対応において重要なのは、単なる診断結果の有無ではなく、「現場での安全配慮義務をどう果たすか」という視点です。
また、外国人本人の理解が不十分なまま結果通知や業務制限が行われると、不信感や契約トラブルに発展するリスクもあるため、通訳や多言語フォローを含めた配慮が求められます。
支援計画との整合性が求められる理由
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、登録支援機関または自社で作成する「支援計画」において、健康診断の実施や体調管理に関する項目を明記する必要があります。
たとえば、以下のような記載が求められます。
- 定期健康診断のスケジュールと実施体制
- 病気や体調不良時の相談窓口・病院紹介体制
- 感染症の疑いが出た際の対応フロー
業種特有の健康リスク(例:感染症・重労働・化学薬品取り扱いなど)がある場合には、そのリスクに応じた支援体制や安全配慮の方針も支援計画に盛り込まなければなりません。
また、支援計画が入管や地方出入国在留管理局から審査・指導を受けることもあるため、実施している健康診断の内容や運用状況と計画の整合性を保つことが極めて重要です。
記載内容と実態に乖離があると、登録支援機関や受け入れ企業の信頼性が損なわれ、最悪の場合は受け入れ停止の措置もあり得ます。
▼業種に応じた柔軟な健康診断体制が信頼と安全を生む
特定技能制度における健康診断は、すべての業種で同じではありません。介護や食品関連など、高リスクな分野では業務内容に応じた追加検査や体調管理の徹底が不可欠です。
また、就業制限の可能性がある結果の取扱いには、法令遵守と本人への丁寧な説明の両立が求められます。
さらに、健康管理体制は支援計画との整合性も重視されるため、書類上だけでなく実務面でも一貫した対応が必要です。
業種別の要件を理解し、現場の実態に合った柔軟な運用体制を整えることが、外国人材の安心・安全な就労を実現する鍵となるでしょう。
まとめ|健康診断対応は「制度義務+現場の安全管理」の両輪で
特定技能外国人を受け入れる際、健康診断は単なる形式ではなく、制度を遵守するだけでなく、労働者と職場の安全・安心を守る基盤です。
本記事で取り上げた以下のポイントを押さえることで、トラブルやリスクを未然に防ぐことができます。
✅ 本記事で押さえた主なポイント
- 健康診断は、制度上の要件として・また企業の責任として必須であり、未実施・不足があると認定審査や制度運用で不利になる。
- 健康診断を行うタイミングには、「在留資格申請前」「就労開始前」「定期(通常年1回)」があり、それぞれ目的と必要性が異なる。
- 検査項目も基本検査のみならず、血液・尿・胸部X線などの精密検査、さらに業種別(介護・食品製造など)で追加される検査がある。
- 健診を受ける医療機関の選定、費用負担、結果が出るまでの時間、提出書類の扱いなど、実務上の手配事項はあらかじめ確認しておくこと。
- 健診結果の保存・管理(保存期間・責任主体・入管・監査対応)と、個人情報保護の観点での扱いが重要。
- 業種によっては追加リスクや検査要件が異なり、支援計画との整合性を保つこと、就業制限の判断をあらかじめ定めておくことが望ましい。
🔍 次に取るべきアクション
- 自社の業種と仕事内容を確認し、必要な検査項目をリストアップする。業種ごとの追加検査要件を把握すること。
- 健康診断を行う医療機関と予算を確保し、受診スケジュールを就労開始前までに調整する。
- 支援機関や社内担当者と連携し、検査結果の保存・管理体制を整備する。個人情報保護の観点からも文書の取り扱いルールを設ける。
- 制度運用と実務が乖離しないように、支援計画との内容を見比べておく。業務内容や検査結果に応じたフォローアップ体制を設ける。
特定技能制度を円滑に活用し、外国人材が安心して働ける職場環境を作るためには、健康診断を含めた健全な制度理解としっかりとした対応が不可欠です。
これらを準備することで、申請の不安を減らし、制度の信頼性と受け入れ体制の質を高めることができるでしょう。
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