11/07 (金)更新
特定技能で会社都合退職になったら?在留資格・転職・手続きのすべてを徹底解説
特定技能で働く外国人にとって、突然の「会社都合退職」は大きな不安を伴う出来事です。
「会社の経営不振で契約が打ち切られた」「解雇と言われたが今後どうすればいいのか分からない」——このようなケースは決して珍しくありません。
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を補うために設けられた在留資格ですが、企業側の経営状況や契約内容の変化によって退職せざるを得ない状況が生じることもあります。
その際に重要なのが、「会社都合退職後の在留資格の扱い」と「企業側の届出・外国人本人の手続き」です。
特定技能外国人が会社都合で退職になった場合、
- 在留資格はどうなるのか?
- 転職や再就職はできるのか?
- 企業はどのような届出や説明義務を負うのか?
といった実務上の疑問に正しく対応することが、不法滞在の防止や信頼関係の維持につながります。
この記事では、最新の行政情報と現場実例を交えて分かりやすく解説します。
- 会社都合退職の定義と特定技能における位置づけ
- 企業側が行うべき届出・手続きの流れ
- 退職後の外国人本人の在留資格・転職対応
- トラブルを防ぐための注意点と支援体制の整備
企業担当者・登録支援機関・特定技能外国人本人のいずれにも役立つ、実務的かつ安心できるガイドラインです。
会社都合での退職とは何か?特定技能外国人をめぐる基本理解

特定技能で働く外国人が退職する場合、「自己都合退職」と「会社都合退職」のどちらにあたるかによって、その後の在留資格・転職可否・企業の義務が大きく変わります。
とくに会社都合による退職は、企業の判断や経営状況に起因するケースが多く、外国人本人の意思では避けられない場合も少なくありません。
ここでは、特定技能制度における会社都合退職の定義や典型的な事例、在留資格への影響について解説します。
会社都合退職と自己都合退職の違い(特定技能制度の位置づけ)
会社都合退職とは、企業側の理由によって雇用契約が終了することを指します。
これには、経営悪化・事業縮小・雇用削減・契約期間満了後の更新拒否など、労働者本人に非がないケースが含まれます。
一方、自己都合退職は、本人の意思による退職であり、転職や帰国、家庭の事情などが理由です。
特定技能制度では、会社都合退職か自己都合退職かによって次のような差があります。
| 区分 | 主な理由 | 企業側届出の要否 | 在留資格の影響 |
| 会社都合退職 | 経営難・解雇・契約終了など | あり(出入国在留管理庁へ) | 転職活動期間中の在留資格維持が可能 |
| 自己都合退職 | 本人の希望による退職 | あり | 原則として速やかな転職・帰国が必要 |
このように、会社都合退職は本人に不利益が生じないよう制度的な保護が設けられているのが特徴です。
どのような「会社都合」が退職理由とされるか(解雇・契約終了・経営悪化など)
会社都合退職として扱われる主なケースは以下のとおりです。
- 経営悪化や人員整理による雇用契約の終了
- 企業の廃業・事業縮小に伴う解雇
- 契約期間満了後、会社側が更新を拒否した場合
- 労働災害・安全上の理由で業務継続が困難な場合
これらはすべて、「本人の意思に基づかない雇用終了」であることがポイントです。
ただし、本人の勤務態度や重大な規律違反による懲戒解雇などは会社都合退職ではなく、「懲戒事由による契約終了」として別区分になります。
そのため、退職理由書や離職票の記載内容を正しく分けることが重要です。
特定技能外国人が会社都合退職となった場合の在留資格・雇用継続への影響
会社都合で退職となった場合、特定技能外国人は在留資格を即時に失うわけではありません。
出入国在留管理庁は、本人の責に帰さない雇用終了については、「転職活動期間(原則3か月、最長6か月)」を認めています。
この期間中に次の就職先を見つければ、同一分野であれば在留資格「特定技能」のまま雇用契約を再締結可能。
分野が異なる場合は、在留資格変更の申請で対応可能となります。
一方で、企業側が退職手続きや届出を怠った場合、外国人本人が「在留資格喪失」扱いとなるリスクもあるため、所属機関の届出は極めて重要です。
まとめ:会社都合退職は「保護と誠実対応」が求められる場面
会社都合退職は、外国人本人にとっても企業にとっても大きな転機となる出来事です。
しかし、特定技能制度では本人が不利にならないよう、転職活動の猶予期間や行政への届出制度が整備されています。
企業は「正確な退職理由の明示」と「迅速な届出」を徹底し、本人には「在留資格を維持しながら再就職を目指せること」をきちんと説明することが、信頼を損なわないポイントです。
会社都合退職=終わりではなく、新たな雇用支援の始まり。
制度を正しく理解し、誠実な対応を取ることで、双方にとって前向きな再スタートが可能になります。
会社都合退職が発生した際の企業側手続きと届出義務

会社都合退職が発生した場合、企業側には出入国在留管理庁への届出や雇用保険・社会保険の手続き義務があります。
これらを怠ると、企業は「適正な受入れを行っていない」と判断され、登録支援機関や所属機関としての資格停止・取消のリスクも発生します。
ここでは、実務で最も重要な2つの届出とその期限を中心に整理します。
雇用契約終了・解雇の理由を「所属機関の都合による場合」に記載する様式の使い方
特定技能外国人との雇用契約を終了する際には、**「契約終了に係る届出書」**の提出が必要です。
この書類は、出入国在留管理庁が定める公式様式(別記第5号様式)で、
- 契約終了の年月日
- 理由(所属機関の都合による/本人の都合による)
- 次の就職予定の有無
などを明記します。
ポイントは、「所属機関の都合による」かどうかを正確に選択すること。
誤って「本人都合」で提出すると、本人が転職活動を行うための在留資格維持が認められない場合があります。
また、退職証明書や離職票にも同様の記載を行うことで、
本人がハローワークや次の雇用先で在留継続手続きをスムーズに進められるようにしましょう。
出入国在留管理庁への「受入れ困難に係る届出」「契約終了に係る届出」の期限と手続き
所属機関(企業)は、次の2つの届出を期限内に提出する義務があります。
| 届出の種類 | 内容 | 提出期限 | 提出先 |
| 契約終了に係る届出 | 雇用契約の終了を報告 | 契約終了から14日以内 | 出入国在留管理庁 |
| 受入れ困難に係る届出 | 経営難・事業縮小などで継続雇用が困難な場合の報告 | 判断日から14日以内 | 出入国在留管理庁 |
これらは**オンライン届出システム(所属機関等管理システム)**または郵送で提出可能です。
届出を怠った場合、所属機関の適正性が欠けると判断され、
「登録支援機関や受入れ企業としての登録取消」「新規受入れ停止」などの行政処分を受けるおそれがあります。
まとめ:会社都合退職時は「迅速・正確な届出」が信頼維持のカギ
特定技能外国人の会社都合退職は、企業にとっても慎重な対応が求められる重要な局面です。
届出内容に誤りがあると、本人の在留資格更新や再就職に支障をきたすだけでなく、企業側の信用問題にも直結します。
したがって、
- 契約終了理由の明確化
- 届出書類の期限遵守
- 本人への説明・支援の実施
などを確実に行うことが、法令遵守と信頼ある雇用管理の両立につながります。
正確な手続きが、特定技能制度を活かすための第一歩です。
会社都合退職時に特定技能外国人本人が知るべき手続きと選択肢

会社都合で退職した場合、特定技能外国人本人が正しい手続きを取らないと、在留資格の失効や不法滞在のリスクが発生します。
しかし、制度上は「本人の責任によらない退職」であるため、在留資格を維持しながら転職や再就職を行う道も用意されています。
ここでは、退職後の行動の選択肢と、必要な届出・支援制度について詳しく見ていきます。
退職後在留資格を維持して転職活動できるケースとその条件
特定技能外国人が会社都合で退職した場合、出入国在留管理庁の運用上、**「転職活動期間(最大6か月)」**が認められています。
この期間中は、次のような条件を満たすことで合法的に在留を継続できます。
【転職活動期間の主な条件】
- 退職理由が本人の責によらない(=会社都合)
- 所属機関(企業)が契約終了届出を14日以内に提出している
- 本人が転職活動の意思を示し、生活資金・住居を確保している
- 管理支援機関や行政書士などがサポート体制を整えている
この期間内に次の雇用先が見つかれば、在留資格「特定技能」のまま転職先で就労可能です。
また、転職先が同じ分野であれば資格変更は不要ですが、異なる分野に移る場合は「特定技能○○分野」への在留資格変更許可申請が必要になります。
帰国または在留資格変更を選ぶ際のポイント(転職先・手続き・支援機関)
転職活動を行っても再就職が難しい場合や、本人が帰国を希望する場合は、自主的な帰国または在留資格変更の手続きを選択します。
【主な選択肢】
- 帰国を選ぶ場合: 出国前に市区町村で「転出届」および「社会保険・住民税清算」を完了し、年金の「脱退一時金請求書」を提出する。
- 資格変更を行う場合: 新たな雇用形態(例:留学・技術・人文知識・国際業務など)に適した在留資格変更許可申請を入管に提出。
支援機関がある場合は、帰国支援・転職支援・書類作成支援などを無料で受けられるケースもあります。
特定技能は企業と本人の双方が行政の監督下にあるため、支援機関との連携が非常に重要です。
会社都合退職者が申請できる制度・救済措置(退職証明・支援紹介等)
会社都合退職となった場合、以下のような行政的支援や手続きが利用できます。
【代表的な支援・救済制度】
- 退職証明書の発行依頼
雇用契約終了の事実を証明する書面。転職先への提出や在留資格更新時に必要です。 - 公共職業安定所(ハローワーク)による職業紹介
特定技能外国人も登録でき、次の雇用先探しをサポートしてくれます。 - 登録支援機関・地方入管局による就職支援
受入れ困難届が出された場合、入管が外国人を登録支援機関に紹介し、再雇用を支援します。
これらを活用することで、会社都合退職で不利益を被ることなく、再スタートを切ることが可能です。
まとめ:退職後の「早期行動」と「正しい手続き」が在留継続の鍵
特定技能外国人が会社都合で退職した場合、焦らずに在留資格の維持・転職活動・届出を確実に行うことが最重要です。
行政や支援機関を頼ることで、在留資格を守りながら新しい職場を見つけることも十分可能です。
退職=終わりではなく、次の機会へのスタート。
外国人本人が主体的に情報を集め、企業・支援機関と協力して行動することで、将来につながるキャリアを築けます。
トラブル回避のため企業が注意すべき実務ポイント

会社都合退職は、本人の生活だけでなく、企業の信頼性にも直結するデリケートな問題です。
不当な解雇や届出漏れが発覚すれば、所属機関の登録取消や行政指導につながるおそれがあります。
ここでは、トラブルを未然に防ぐために企業が押さえておくべき実務上の注意点を解説します。
重大な服務規律違反・経営上の理由など「正当な解雇理由」が必要な場面
会社都合退職を「解雇」として扱う場合、企業側には合理的な理由と社会的相当性が求められます。
たとえば、以下のようなケースは「正当な理由」が必要です。
- 勤務態度の不良・無断欠勤など、改善指導を経た上での解雇
- 経営上やむを得ない人員整理に伴う解雇
- 業務縮小・受注減による雇用維持困難
一方で、「一時的なトラブル」や「文化・言語の違い」を理由に安易に解雇することは、不当解雇とみなされる可能性があります。
正当な理由を裏づける書面や経緯を残すことが、後々のリスク回避に繋がります。
無届・不適切な手続きが受入れ機関欠格事由になるリスク
特定技能制度では、契約終了や受入れ困難が生じた際に出入国在留管理庁への届出を14日以内に行う義務があります。
これを怠ると、企業は「受入れ機関としての適格性を欠く」と判断され、次のような措置を受けるおそれがあります。
- 新規特定技能外国人の受入れ禁止
- 登録支援機関の登録取消
- 行政指導・企業名公表
このため、退職の判断が下された時点で、速やかに支援機関・社労士・行政書士と連携し、届出と証拠書類の整備を進めることが大切です。
文化・言語の壁による誤解防止策と支援機関との連携
特定技能外国人とのトラブルの多くは、「伝達不足」や「文化的誤解」から発生します。
たとえば、「退職」を「解雇」と誤解されたり、通知文が理解できず一方的な契約終了と感じてしまうケースです。
こうした誤解を防ぐために、
- 通訳・翻訳サポートを伴う書面通知
- 支援機関を通じた三者面談(企業・本人・支援機関)
- 退職理由・届出内容の丁寧な説明
などを徹底することが重要です。
東京人材開発センターなどの専門支援団体では、こうした相談にも対応しており、企業単独で抱え込まないことがトラブル防止につながります。
まとめ:誠実な対応と支援連携が信頼を守る最善策
会社都合退職は、企業にとっても避けがたい状況で発生します。
しかし、制度を理解し、正当な理由・適切な手続き・支援連携を行えば、トラブルや行政リスクを最小限に抑えることが可能です。
特定技能制度は「人材活用」と「人材保護」の両立を目指した仕組みです。
その理念を踏まえ、誠実で透明性のある対応を行うことが、企業の社会的信頼と外国人雇用の安定につながります。
会社都合退職後の再雇用・制度活用を視野に入れた支援体制構築

特定技能外国人が会社都合退職となった場合、企業の責務は単に雇用契約を終了させるだけではありません。
むしろ、その後の「繋ぎ支援」や「再雇用への協力」こそが、受入れ機関としての信頼を左右する重要な要素です。
出入国在留管理庁は、企業が「正当な理由のない雇用打ち切り」や「支援を怠った状態」で退職者を生じさせた場合、受入れ停止・登録取消などの行政処分を行うとしています。
したがって、企業には退職後も外国人が適切に次の雇用へ移行できるよう、制度を活用した支援体制の構築が求められます。
ここでは、退職直後の支援から再雇用・転職支援までを一貫して行うための実践的ポイントを解説します。
退職直後から次の雇用機会までの“繋ぎ”支援と企業の役割
会社都合退職が発生した際、企業が最初に取り組むべきは、「雇用終了後も本人が孤立しない環境づくり」です。
特定技能外国人は多くが日本での生活基盤を企業に依存しているため、突然の契約終了は生活・在留・収入すべてに影響します。
企業が担うべき主な繋ぎ支援は以下の通りです。
- 退職証明書・離職票の発行
→ 転職活動・在留資格更新に必要。発行を遅らせると次の就職手続きが遅延します。 - 住居・生活支援
→ 寮・社宅を退去する場合でも、一定期間の猶予を設け、生活再建の時間を確保します。 - 支援機関・行政への情報共有
→ 登録支援機関・入管・ハローワークなどと連携し、本人が再就職支援を受けられるようにします。
特定技能の根本には「人材の循環的活用」という理念があります。
したがって、退職後の支援を行うことは義務ではなく制度を正しく運用する責任といえます。
退職理由が企業側都合である場合の企業メッセージと外国人マネジメント戦略
会社都合退職では、退職理由を正確に説明し、誤解を防ぐためのコミュニケーションが非常に重要です。
外国人にとって「解雇」や「契約終了」は、文化的に処罰や信頼喪失と捉えられやすい傾向があるため、企業は透明性のある説明と誠意ある姿勢を示すことが求められます。
効果的な企業メッセージのポイントは以下の通りです。
- 「あなたの責任ではない」ことを明確に伝える
→ 経営上の理由や業務縮小による退職である場合、本人の評価と関係ない旨を説明。 - 再就職支援に協力する姿勢を示す
→ 登録支援機関への紹介や推薦書発行を行うことで、企業の信頼を守ります。 - 今後の関係維持を意識する
→ 一時的な退職であっても、将来的に再雇用や別事業での再会があり得ます。
これらの対応は、単に「退職対応」ではなく、外国人マネジメント”の一環として企業ブランドを高める行動になります。
転職・再就職を前提とした支援計画の整備(言語支援・職業紹介・在留変更)
会社都合退職者を発生させた企業には、「支援計画の継続的な履行」または「再雇用支援」が求められます。
とくに登録支援機関と連携して、以下の支援体制を整えることが理想です。
- 言語支援
通知書や説明資料を多言語化し、本人が在留・転職手続きを理解できるようサポート。 - 職業紹介
登録支援機関・行政機関・職業安定所(ハローワーク)と連携して再就職を支援。 - 在留資格変更支援
分野変更や一時帰国を伴う場合に、必要書類や入管手続きのサポートを行う。
これらの支援内容は、「再就職支援計画書」などの形で文書化しておくと、後の行政調査や登録支援機関の報告にも活用できます。
退職後の支援を“形式的なフォロー”で終わらせず、**次の雇用へ繋ぐ「社会的責任の継続」**として捉えることが、信頼される受入れ企業の条件です。
まとめ:退職後も続く“支援の責任”が信頼ある受入れ企業をつくる
会社都合退職が発生した際、企業が「支援をどこまで行うか」で評価は大きく変わります。
退職後のサポートを丁寧に行う企業ほど、行政・支援機関・外国人本人の三者から高く評価され、将来的な受入れ体制の安定と採用力の向上にもつながります。
特定技能制度は「終わりのない人材育成システム」です。
退職の瞬間を切り離すのではなく、“次へ繋ぐ支援”を企業文化として定着させることが、国際的に信頼される組織運営の第一歩です。
まとめ|会社都合退職でも在留資格は守れる。重要なのは正しい手続きと支援

特定技能外国人が会社都合退職となった場合でも、必ずしも「在留資格を失う」わけではありません。
制度上、本人の責によらない退職であれば、最長6か月間の転職活動期間が認められ、次の就職先が見つかれば特定技能のまま働き続けることが可能です。
企業側も、退職が発生した時点で届出義務・支援継続義務を果たすことが求められます。
これを怠ると行政指導や登録取消のリスクがあり、受入れ体制そのものが信頼を失う結果になりかねません。
一方で、誠実な対応と支援を行う企業は、外国人材・行政・地域社会の三者から信頼を得て、長期的な雇用安定とブランド価値の向上を実現しています。
会社都合退職は、制度の“終わり”ではなく、再雇用・再スタートのチャンスでもあります。
外国人本人も企業も、制度を正しく理解し、行政や支援機関と連携して次のステップを築いていくことが、持続的な外国人雇用のカギです。
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