
10/22 (水)更新
特定技能でインドネシア人を雇用するには?制度の流れと成功のポイント
特定技能制度を活用してインドネシア人材を受け入れたいと考える企業・団体は増えています。
ただし、単純に「人手が欲しいから導入すればいい」というものではありません。
インドネシア政府固有の送り出し制度(SISKOP2MI・IPKOL・SISKOTKLN 等)や、現地・日本双方での手続き、そして文化・信頼構築の取り組みが非常に重要な要素となります。
本記事では、インドネシア人材を特定技能で受け入れる際の制度の流れと成功のポイントを、まず全体像から押さえ、送り出し制度の違いや手続き上の注意点
さらに企業が現場で信頼を築くための戦略までを包括的に解説します。
制度設計と実務対応を両立させて、持続可能な外国人材活用を実現したい方に向けたガイドです。
インドネシアからの特定技能人材受け入れの全体像
インドネシアは特定技能制度の開始以降、日本での雇用に積極的な送り出し国の一つとなっています。
日本政府とインドネシア政府の覚書(MoC)に基づき、送り出しスキームや現地手続きが厳格化・体系化され、企業側も制度に沿った受け入れ体制を整備することが求められています。
本章では、インドネシアから特定技能人材を受け入れる際の全体像を、送り出しスキームから現地・日本側の手続きまで整理します。
インドネシア政府が認定する送り出しスキームとは
インドネシアからの特定技能人材受け入れは、政府公認のスキームを通じて行われるのが原則です。主に以下の2系統があります。
- IPKOL(求人・求職マッチングシステム)
インドネシア政府が運営する公的求人サイトで、日本企業が直接求人登録でき、求職者とのマッチングを行います。悪質な仲介業者を排除できる「政府認定ルート」として注目されています。 - P3MI(職業紹介事業者)
従来型の送り出し機関で、求職者登録・面接・選考・出国管理などを一貫してサポートする仕組みです。現在はP3MI経由が主流ですが、政府はIPKOLを中心とした公認ルートへの移行を進めています。
両スキームとも、非公認の中介業者を排除する目的があり、利用者・企業双方の安全性と透明性が確保されています。
送り出しから受け入れまでの基本フロー
インドネシア人材の送り出しから日本での受け入れまでの流れは、以下のステップに整理されます。
- 求人登録・募集
日本企業がIPKOLまたはP3MIに求人登録し、求職者とマッチング、面接・内定まで進めます。 - 雇用契約・書類準備
雇用契約書や健康診断証明・教育証明などの必要書類を用意します。求職者は日本語試験・技能試験に合格することが前提です。 - 在留資格認定申請
日本の入管に在留資格認定証明書(COE)を申請。インドネシア側ではIPKOL/SISKOP2MI登録を行い、P3MIが出国前の手続きを支援します。 - ビザ申請・取得
COEや各種証明書を基に、在インドネシア日本大使館・領事館でビザ申請を行います。 - 渡航・就業開始
入国後、企業がオリエンテーション・定着支援を実施します。生活支援や日本語サポートは登録支援機関が代行することも可能です。
現地で必要となる手続きと日本側の対応
インドネシア現地で必要な手続き
- IPKOLシステムへの求人・求職者登録
- 日本語試験・技能試験の受験・合格
- P3MIによる職業紹介・採用管理
- SISKOP2MI登録による出国管理
- 健康診断・教育訓練証明などの各種証明書取得
日本側で必要な対応
- 雇用契約書の作成、支援計画策定(生活支援義務含む)
- 在留資格認定証明申請書類の準備・提出
- 現地への必要書類送付・ビザ申請サポート
- 入国後のオリエンテーション・生活・労務・教育面の定着支援
インドネシアは送り出し国として制度を整備しており、現地手続きと日本側手続きを同時進行で進めることがスムーズな受け入れの鍵です。
インドネシアから特定技能人材を受け入れる際のポイント
- インドネシア政府はIPKOL・P3MIなど公認スキームを整備し、悪質な仲介業者の排除や制度透明化を進めています。
- 受け入れには「求人登録→マッチング→雇用契約・試験→在留資格認定→ビザ申請→入国・支援開始」という複数のステップが必要です。
- 日本側企業は、現地制度との整合性を確認しつつ、支援計画・書類準備・オリエンテーションを適切に実施することが重要です。
この全体像を把握しておくことで、インドネシアからの特定技能人材受け入れを安全かつ効率的に進めることができます。
SISKOP2MI・IPKOL・SISKOTKLNの違いと使い分け
インドネシアから特定技能人材を受け入れる際、現地での登録・管理に必要となる主要システムが「SISKOP2MI」「IPKOL」「SISKOTKLN」の3つです。
これらのシステムはすべてインドネシア政府が運営しており、それぞれが異なる役割と機能を担っているため、正しく理解して運用することが求められます。
本章では、これらのシステムの違いや連携関係、企業・支援機関が注意すべきポイントについて整理します。
各システムの役割と連携関係を整理
まずは3つのシステムそれぞれの役割を明確にし、それらがどのように連携して人材送り出しを支えているかを見ていきましょう。
SISKOP2MI(旧SISKOTKLN)は、インドネシア労働省傘下のBP2MI(送り出し機関管理局)が運営する海外就労者データベース兼出国管理システムです。
出国予定の候補者情報を記録し、政府によるモニタリング・安全管理を可能にします。
すべての海外就労者(特定技能含む)は、このシステムへの登録が義務です。
IPKOLは求人情報の掲載・マッチングに特化した政府公式の求人・求職システムです。
日本企業はこのシステム上で求人票を公開し、求職者は自ら応募します。
仲介業者を通さず、企業と応募者が直接つながる透明性の高いルートであり、インドネシア政府が今後の標準スキームと位置づけています。
SISKOTKLN(旧名称)は、過去に使用されていた海外労働者情報管理システムであり、2022年以降はSISKOP2MIに統合・移行されています。
現在はSISKOTKLNという名称が一部現場で残っているものの、公式にはSISKOP2MIに一本化されています。
3システムの関係性としては、
- 求人・マッチング:IPKOL
- 出国登録・労務管理:SISKOP2MI
- (旧)出国管理:SISKOTKLN(廃止・統合済)
という分担構造です。
現在インドネシア政府が求める最新登録ルール
2024年以降、インドネシア政府は「すべての送出業務は政府認定システム経由で行うこと」を徹底しており、特定技能人材の送り出しに関しても以下の登録手順を厳格に求めています。
- 日本企業がIPKOLに求人登録
- 現地認定職業紹介機関(P3MI)を通じて代行登録するケースも可
- 現地認定職業紹介機関(P3MI)を通じて代行登録するケースも可
- 応募者がIPKOL上で求人に応募
- 面接・選考・内定
- 面接・選考・内定
- 合格後、P3MIまたは送出管理者がSISKOP2MIに候補者情報を登録
- 雇用契約書、健康診断書、技能試験合格証などが必要
- 雇用契約書、健康診断書、技能試験合格証などが必要
- SISKOP2MI上で出国許可処理と労働者カード(Kartu TKI)の発行
- ビザ申請・渡航
この流れに乗らない非公認ルート(無登録の仲介業者など)は原則違法とされ、企業側にも制裁が科されるリスクがあります。
とくにSISKOP2MI登録がない場合、インドネシア側からの出国が認可されないため、申請フローのどこかを飛ばすことはできません。
また、旧システム(SISKOTKLN)での登録はすでに無効であり、企業側も現地パートナーに対して「SISKOP2MI対応済みであるか」の確認が必須です。
企業・支援機関が注意すべき申請の手順
企業や登録支援機関がスムーズにインドネシア人材を受け入れるには、以下の点に特に注意する必要があります。
- 求人は必ずIPKOLを通して行う
民間職業紹介所(P3MI)が支援する場合でも、最終的な求人登録はIPKOL経由でなければなりません。 - 現地送出パートナーがSISKOP2MIに精通しているかを確認する
未経験の業者では手続きの遅延や不備が起こりやすく、結果的に在留資格やビザ発行のタイミングにズレが生じるおそれがあります。 - SISKOP2MIへの登録資料(契約書・試験合格証・診断書)を漏れなく提供する
書類の不備による申請却下や再提出は日程遅延の原因となります。企業側からの正確かつ迅速な書類提供が求められます。 - 旧システムのSISKOTKLNに依存していないかをチェックする
現地関係者が旧制度を慣習的に使っている場合もあり、現在は無効である旨を事前に共有しておくことがトラブル回避に有効です。
このように、システムごとの役割や申請順序を誤ると、想定外のトラブルに繋がるため、インドネシア政府が求める正規の運用ルールに沿って手続きすることが最重要です。
システムの違いを理解し、正規手続きで安全に受け入れを進めよう
インドネシアからの特定技能人材受け入れでは、「SISKOP2MI」「IPKOL」の正しい使い分けが制度運用の大前提です。
とくに、出国が許可されるかどうかはSISKOP2MIの登録完了が鍵を握っており、企業や支援機関の対応スピードと正確性が問われます。
旧名称である「SISKOTKLN」はすでに廃止されており、最新制度に則った管理・申請を行うことが円滑な受け入れにつながります。
現地パートナーとの連携・最新制度の把握・正規スキームの徹底を通じて、安全かつ効率的なインドネシア人材の活用を目指しましょう。
インドネシア人材の受け入れで企業が押さえるべき実務ポイント
インドネシアからの特定技能人材を受け入れる際、制度や申請フローを理解することはもちろん重要ですが、現場での運用や受け入れ前後の対応までを適切に行うことが成功の鍵となります。
文化や言語の違いがある中で、誤解やトラブルを未然に防ぎ、円滑な就労環境を構築するためには、企業側が「制度を超えた実務の視点」を持つことが欠かせません。
このセクションでは、採用から入国後までに企業が特に注意すべきポイントを整理して解説します。
面接・契約時に誤解を防ぐための対応策
面接や雇用契約は、インドネシア人材との信頼構築の第一歩です。
しかし、日本語の壁や制度理解の不足から、意図しない業務や労働条件でのトラブルが後から発生するケースも少なくありません。
たとえば、「厨房スタッフ募集」と記載していても、実際にはホール業務も兼ねるケースや、「製造補助」としながら倉庫作業を中心に行わせていたなどの事例が見られます。
これらは、契約内容と実務に乖離があると判断され、行政指導や支援機関との信頼低下の要因にもなり得ます。
そのため、面接段階から業務内容をできる限り具体的に説明し、視覚資料や翻訳資料を交えることで、候補者が内容を正しく理解できる環境づくりが必要です。
また、契約書にもその内容を明文化し、候補者が署名前に再確認できる時間的猶予を設けることが望ましいでしょう。
来日前後で必要な書類とサポート体制
採用が決定した後は、来日準備と入国後の定着支援という2つのフェーズに分かれます。
それぞれのフェーズで企業が果たすべき役割を理解しておくことが大切です。
【来日前】
- 在留資格認定証明書交付申請(COE)に必要な資料準備
- 雇用契約書(インドネシア語訳付き)
- 支援計画書の作成と認定登録支援機関の確認
- SISKOP2MI・IPKOL での手続きサポート
【来日後】
- 住居の確保と生活オリエンテーション
- 行政手続きの同行(住民登録、年金・健康保険の加入など)
- 就労初日のサポートと定着支援
こうした準備を企業単独で行うのが難しい場合は、登録支援機関や行政書士との連携が不可欠です。
支援が不十分だと早期離職につながるリスクが高まり、受け入れ制度自体が破綻する恐れもあるため、事前に体制を整えておきましょう。
不適切なプロセスを避けるための注意点
特定技能人材の受け入れにおいては、「技能実習生と同じ感覚」で運用してしまうことがトラブルの原因となるケースが多々あります。
特定技能は雇用契約に基づく労働者であるため、労基法や最低賃金法の対象であり、実習制度とは異なる法的責任が企業に課されます。
以下のような行為は、制度違反に該当する恐れがあるため要注意です。
- 契約外の作業(例:介護職の契約者に清掃業務を常態化)
- 労働時間外の無償労働
- 実費を超える住居費・水光熱費の天引き
- 支援計画の履行漏れや報告不備
これらを回避するには、支援機関や行政書士との定期的な情報共有、および社内の受け入れ責任者の制度理解の徹底が必要です。
また、不明点があれば出入国在留管理庁や特定技能総合支援センターへの相談も有効です。
実務運用こそが成功の分かれ道になる
インドネシアからの特定技能人材を受け入れる際、制度理解に加えて、実務的な細部への配慮が人材の定着と満足度に直結します。
面接・契約段階での丁寧な説明、来日前後のスムーズな対応、そして制度に則った適切な運用体制を整えることで、企業と外国人材の双方にとって良好な就労関係が築かれます。
受け入れの成否は“受け入れてから”が本番であることを忘れず、支援体制を万全に整えて臨みましょう。
インドネシア人材との信頼構築が成果を左右する
インドネシアからの特定技能人材を受け入れる企業が増加する中で、単なる人手確保にとどまらず、定着・戦力化を目指すには信頼関係の構築が不可欠です。
言語や文化、価値観の違いがある中でも、相互理解と継続的なサポートを行うことで、長期的に安定した雇用が可能になります。
このセクションでは、インドネシア人材と信頼関係を築くために企業が実践すべきポイントを詳しく解説します。
文化理解と宗教的配慮が定着率を高める鍵
インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を有しており、礼拝や食文化など宗教的な価値観を尊重する姿勢が、信頼形成に直結します。
企業としては、ムスリムの従業員に対して以下のような配慮を行うことが求められます。
- 昼休みに礼拝の時間を確保する
- ハラールに配慮した食事や調理環境の提供
- ラマダン期間中の勤務時間や作業負担の調整
また、日本との文化的な違いを理解しようとする姿勢自体が、彼らにとっては大きな安心感につながります。
宗教や習慣への敬意が、職場における心理的安全性を高め、定着率の向上にもつながるでしょう。
たとえば、ある製造業ではイスラム礼拝用スペースを設けたことで、従業員満足度が大きく向上した事例もあります。
こうした文化的配慮はコストをかけずに始められる「信頼投資」と言えるでしょう。
“送り出し機関まかせ”にしない現場との関わり方
インドネシアでは多くの特定技能人材が「送り出し機関」経由で来日しますが、現場で働く企業がその後のフォローを機関任せにしてしまうと、信頼の溝が生まれやすくなります。
送り出し機関は渡日前後の初期サポートには強みがありますが、実際の就労現場で起こる問題には企業自身が積極的に関与する必要があります。
たとえば以下のような取り組みが効果的です。
- 定期的に現場責任者が面談を実施する
- 文化や労働観の違いによるすれ違いを逐一フォローする
- 成果や努力を認め、言語を超えた承認コミュニケーションを図る
特定技能制度は「即戦力」のイメージが先行しがちですが、異文化での生活と労働には不安がつきものです。
その点に寄り添える現場づくりが、インドネシア人材にとっては「信頼できる職場」として映ります。
トラブル回避のための定期的な対話とフォロー体制
信頼関係を築く上で最も重要なのが、継続的なコミュニケーションとフォロー体制の整備です。
インドネシア人材は、表面上は我慢や遠慮をする傾向があり、問題が顕在化したときにはすでに深刻化しているケースも少なくありません。
そうした事態を防ぐには、企業側が「気軽に相談できる仕組み」を意識的に作っておくことが大切です。
たとえば…
- 通訳を介した定期ヒアリングの実施(月1回など)
- LINEやチャットアプリを使った相談窓口の設置
- メンタルケア・生活相談窓口の明示
さらに、問題が起きてからの対応ではなく、未然防止の視点でルールや職場慣習の説明を徹底することも有効です。
例えば、安全衛生ルールや作業工程なども、動画やピクトグラムを活用して視覚的に理解できる工夫が求められます。
「言ってくれれば対応できたのに」では遅い。企業の側から歩み寄る姿勢が、インドネシア人材との信頼を築き、トラブルの予防にも直結します。
信頼関係の構築こそが長期的成果への近道
インドネシア人材を受け入れる際、単なる制度対応や人手不足解消だけで終わらせず、その先にある“人と人”の関係構築に目を向けることが定着率・生産性の向上につながります。
宗教や文化を理解し、送り出し機関に任せきりにせず、現場での声を継続的に拾い上げていく。
そうした積み重ねが「この会社で働き続けたい」と思ってもらえる土台になります。
人材育成は時間も手間もかかりますが、そのプロセスに誠実であるほど、企業としての信頼もインドネシア国内で高まり、今後の人材獲得競争でも有利に働くでしょう。
信頼構築を投資と捉え、中長期の視点で取り組む姿勢が、今後ますます求められます。
インドネシア人材との良好な関係構築が受け入れの鍵となる
インドネシアからの特定技能人材を受け入れるにあたっては、制度の正確な理解とスムーズな実務対応だけでなく、文化的背景や信頼関係の構築までを含めた“総合的な対応力”が問われます。
制度だけに頼った受け入れは、思わぬトラブルや定着率の低下を招くこともあり、現場でのコミュニケーションや配慮が何より重要です。
具体的には、以下の3点を意識することで、より良い受け入れ環境を築くことができます。
- 制度・スキームの理解と正確な手続きの実行
IPKOLやSISKOP2MIといった登録システムの役割や連携を把握し、インドネシア政府が求める手順に沿った対応を行う。 - 現場運用における実務的な配慮
面接時の説明、契約内容の明文化、来日前後の生活支援や通訳体制など、企業の実務力が人材の安心につながる。 - 信頼関係を築く継続的なフォローアップ
文化・宗教的配慮を踏まえた関わり方を意識し、送り出し機関に任せきりにせず、定期的な対話や現場の声の吸い上げを行う。
インドネシア人材は誠実で勤勉な気質を持ち、しっかりと向き合えば企業の大きな戦力となります。
制度だけに頼らず、信頼と配慮のある受け入れ体制を整えることこそが、長期的な成果への第一歩となるでしょう。
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