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10/22 (水)更新

特定技能「看護助手」とは?制度・要件・採用のポイントを徹底解説

少子高齢化が加速する中、日本の医療現場では慢性的な人手不足が深刻化しています。

中でも看護師をサポートする「看護助手」の人材確保は、病院や介護施設の現場において急務となっています。こうした課題の打開策として注目されているのが、特定技能制度を活用した外国人看護助手の受け入れです。

看護助手は医療行為を直接行うわけではないものの、入院患者の生活支援や清掃、備品管理など、医療チームの一員として重要な役割を担います。

そしてこの分野でも、一定の条件を満たせば**在留資格「特定技能1号」**の対象として外国人材の雇用が可能です。

この記事では、特定技能制度における看護助手の受け入れ条件や従事可能な業務内容、試験制度、導入メリット、現場での工夫や成功事例、今後の制度動向まで、最新の情報をもとに詳しく解説します。
制度の基本だけでなく、実務や現場のリアルにも踏み込んだ構成となっているため、

  • 「自院でも外国人を看護助手として採用できるのか知りたい」

     

  • 「制度の概要だけでなく、導入の注意点や現場の対応まで知りたい」

     

  • 「特定技能を活用して安定した人材確保を目指したい」

     

という医療機関・施設のご担当者にとって、実践的なヒントを得られる内容になっています。

特定技能「看護助手」という新たな選択肢を、制度から実務、定着支援まで包括的に捉え、自社の採用戦略にぜひお役立てください。

特定技能「看護助手」の制度概要と基本知識

外国人材の雇用を検討する際に欠かせないのが「特定技能」制度です。特定技能は、一定の専門性・技能を有する外国人に就労を認める在留資格で、介護・建設・外食など幅広い14分野に対応しています。

そして近年注目を集めているのが、その中でも「介護分野」の枠組みを活用して、「看護助手」として外国人を採用するケースです。

このセクションでは、特定技能制度の全体像と看護助手としての位置づけ、さらに「介護分野」との相違点、将来的に永住も視野に入れられるキャリアパスまで、制度理解の土台となる基本情報を解説します。

特定技能制度の概要と看護助手の位置づけ

特定技能制度は、深刻な人手不足が認められる分野において、即戦力となる外国人材の受け入れを可能とする制度です。

2019年に創設され、一定の技能試験と日本語能力を満たすことで、「特定技能1号」として就労が認められます。

「看護助手」という職種そのものに専用の在留資格はありませんが、特定技能の「介護分野」の範囲内で、一定の要件を満たす業務内容であれば外国人の就労が認められています。

つまり、看護助手として雇用するには、「介護業務に該当する範囲の仕事」である必要があり、病院等で行う身体介護補助、生活支援、ベッドメイキング、清掃などが該当します。

なお、看護師や准看護師のような医療行為は対象外です。

介護分野(特定技能1号)との違いと特徴

特定技能1号の「介護分野」は、主に高齢者福祉施設等での勤務を想定していますが、医療機関での看護助手業務も、その内容が介護分野と重なる部分に限り、該当とされるケースがあります

ただし注意すべきなのは、業務内容の「範囲」が明確に定められていることです。

  • 対象となる業務例:入浴・排せつ・食事の介助、生活支援、環境整備、備品管理など

     

  • 対象外となる業務例:バイタルチェック、服薬管理、注射などの医療行為全般

     

また、受け入れ施設の種類や要件も異なる場合があり、介護施設に比べて医療機関では受け入れ実績が少ない分、制度理解と適正な運用がより求められます。

特定技能2号・永住へのキャリアパス

現在のところ、「介護分野」は特定技能2号の対象外となっており、原則として最長5年間の在留が可能な「特定技能1号」のみが認められています。

ただし、5年間の就労経験を積む中で、

  • 介護福祉士の資格を取得する

     

  • 別の分野で2号への切り替えを検討する

     

  • 技能実習 → 特定技能 → 技能向上・在留資格変更 → 永住申請

     

といったように、中長期的な視点でのキャリア形成も可能です

また、在留期間中に介護福祉士の国家資格を取得し、「介護」ビザへ変更すれば、在留期限の上限がなくなり、将来的な永住申請も見据えられます

病院や施設側にとっても、「単なる短期雇用」ではなく、「長く働いてもらう前提での育成」が重要な視点となるでしょう。

制度理解が導入成功の第一歩に

特定技能制度を活用して看護助手として外国人を採用するには、制度そのものの理解と、対象業務・在留資格の適用範囲を正確に把握することが欠かせません。

「介護分野」における就労として見なされる範囲であれば、医療機関でも受け入れが可能です。

ただし、医療行為が伴わない業務に限定される点や、現時点では5年までの在留が上限となっている点には留意が必要です。

将来的には介護福祉士資格取得による「介護」ビザへの移行、さらには永住への道も見据えられることから、制度の活用は短期的な人材補充にとどまらない“育成型採用”としての戦略が求められます。

看護助手として従事できる業務内容

特定技能制度を活用して外国人を看護助手として受け入れる場合、最も重要なのが従事可能な業務内容の正確な理解です。

特定技能1号(介護分野)は、一定の業務範囲に限定して外国人材の就労を認めているため、医療機関での看護助手業務でも、内容によっては在留資格の対象外となるリスクがあります。

ここでは、外国人看護助手が従事できる代表的な業務や、制限される医療行為との境界、そして実務上の注意点について詳しく解説します。

身体介助・生活支援業務の具体例

看護助手が従事できる中心的な業務が、患者の身体的・生活的な支援を行う業務です。

これは、介護分野として認められている業務と重なる部分が多く、特定技能の在留資格でも対応可能とされています。

代表的な業務内容の一例としては以下の通りです:

  • 食事の配膳・介助

     

  • 排せつの補助(トイレ誘導、オムツ交換など)

     

  • 入浴介助・着替え補助

     

  • ベッド上での体位変換、移動補助

     

  • 車いすへの移乗・移動補助

     

これらは、患者の日常生活をサポートする上で欠かせない業務であり、医療行為に該当しない範囲内での「身体介助」は、特定技能での就労が認められています

特に高齢者が多い病棟や療養型施設などでは、これらの業務に対応できる看護助手の存在が現場の大きな支えとなります。

病院内環境整備・物品管理業務

看護助手の業務は、身体介助にとどまらず、病棟や施設内の環境整備や備品管理など、周辺業務にも広く対応します。

これらは直接的な介護ではないものの、間接的に患者の生活や医療現場の円滑な運営を支える重要な仕事です。

▼主な業務内容の例▼

  • 病室・廊下・共用スペースの清掃

     

  • リネン類(シーツ・毛布など)の交換

     

  • ベッドメイキング

     

  • 医療用消耗品・備品の補充と在庫管理

     

  • 配膳準備・片付け

     

これらの業務も医療行為には該当せず、特定技能での対応が可能です。

また、清潔な環境の維持は院内感染予防にもつながるため、看護助手が果たす役割は非常に大きいと言えるでしょう。

医療行為の制限と注意点

特定技能制度の枠内で外国人を看護助手として採用する上で、最も注意すべきポイントが「医療行為の禁止」です

看護助手はあくまで医療従事者の補助的な立場であり、診療や治療、判断を伴う業務を行うことは法律で厳しく制限されています。

外国人看護助手が従事できない業務の代表例:

  • 血圧測定・採血・注射

     

  • 点滴管理・投薬・服薬指導

     

  • 医師・看護師の診療補助(診療録の記録など)

     

  • 患者の状態観察に基づく判断行為

     

これらは医師法・保健師助産師看護師法の定める「医療行為」に該当するため、特定技能の対象外であり、従事させると不法就労や資格外活動として処分の対象になる可能性があります。

また、医療行為に該当しない業務でも、指示系統や責任の所在が曖昧なまま実施させることはトラブルの原因になるため、明確なマニュアルと教育体制を整備することが不可欠です。

看護助手の業務範囲を正しく理解することが制度活用の第一歩

特定技能制度を活用して看護助手を採用する際は、業務範囲の明確化が最重要事項です。

身体介助や生活支援、環境整備といった医療行為に該当しない業務であれば、特定技能の対象として受け入れが可能であり、病院や施設の運営に大きな助力となります。

一方で、医療行為の禁止事項をしっかり理解し、明確な業務指示・教育体制を整えることが、制度の適正運用とスタッフの安全・安心な労働環境につながります。

特定技能での外国人雇用は、単なる労働力補填ではなく、信頼できるチームの一員として長く定着してもらうことを見据えた導入が求められます。

そのためにも、業務範囲を誤解なく共有する仕組みづくりが成功の鍵を握ります。

特定技能「看護助手」取得要件と試験制度

外国人を特定技能制度で看護助手として雇用するには、制度上定められた試験と要件をクリアする必要があります

対象となるのは原則「介護分野」であり、一定のスキル・知識を持つ人材のみが在留資格「特定技能1号」を得ることが可能です。

本セクションでは、看護助手業務に従事する外国人材が求められる技能試験・日本語試験の概要や、技能実習2号修了者に適用される例外措置、さらに資格取得後の更新・在留管理上の注意点について詳しく解説します。

介護技能評価試験・日本語試験の概要

特定技能「介護分野」の資格を得るには、主に以下2つの試験に合格する必要があります:

  • 介護技能評価試験
     → 実務レベルの介護知識・技術を問う多肢選択式テストです。
     → ベッドメイキング、移乗介助、排泄・食事支援などの内容が出題対象。

     

  • 日本語能力試験(いずれか)
     - 日本語能力試験(JLPT)N4以上
     - 国際交流基金 日本語基礎テスト(JFT-Basic)合格
     → 日常的な会話、読み書きが可能であるかを確認する試験です。

     

さらに、介護日本語評価試験への合格も求められるため、計3つの要件を満たす必要があります(介護技能試験+日本語評価試験+JLPT N4以上またはJFT-Basic合格)。

なお、試験は海外・国内の両方で実施されており、合格者名簿は法務省や厚労省関連機関により公開されています。

技能実習2号からの移行・試験免除ケース

特定技能制度では、過去に技能実習(介護職種)を2号まで修了している外国人について、特定技能1号への移行が可能であり、一定の条件を満たすことで試験免除の特例が適用されます。

具体的には、

  • 技能実習2号の良好修了者(修了評価試験に合格し、実習計画を全うした者)

     

  • かつ、直近の実習先での勤務態度や出席状況が問題ないと評価されている者

     

これらの条件をクリアしていれば、介護技能評価試験および日本語試験の一部が免除され、スムーズに特定技能1号へ移行可能となります。

この仕組みは、実習生としての経験を十分に積んだ人材を即戦力として活用できるため、採用側にとってもメリットが大きい制度です。

資格取得後の更新・在留管理のポイント

特定技能1号の在留期間は、最長5年間とされており、在留期間ごとに1年・6か月・4か月のいずれかで区切って更新申請を行う必要があります。

更新時に必要なポイントは以下の通りです。

  • 就労先が引き続き適正な受入機関であること(基準未満の労働条件やトラブルがないか)

     

  • 登録支援機関による支援計画が継続されていること(未実施の場合は注意)

     

  • 本人が引き続き同一分野・業務で働いており、転職があった場合は届け出がされていること

     

また、特定技能外国人の雇用状況は、四半期ごとに「受入状況報告書」の提出が義務付けられており、行政との連携・記録保持が必要です。

違反や虚偽報告があった場合、在留資格の取消や更新拒否のリスクがあるため、受け入れ機関は法的責任の認識と日常的な管理体制の強化が求められます。

特定技能人材の受け入れは「制度理解+実務管理」が成功の鍵

特定技能で外国人を看護助手として受け入れるためには、制度上の要件を的確に把握し、必要な試験への対応や、在留資格管理の体制を整備することが不可欠です。

特に、試験免除制度や技能実習からのスムーズな移行を活用すれば、即戦力人材の確保にもつながります。

一方で、取得後の在留資格更新や支援体制の継続管理を怠ると、制度違反とみなされるリスクもあります。

だからこそ、導入前に試験・更新・支援体制まで一貫して把握することが、制度活用の成否を分ける要素になるのです。

受け入れ医療機関が満たすべき条件・手続き

特定技能制度を通じて外国人看護助手を雇用するには、単に「人材を採用する」だけではなく、医療機関側にも厳格な要件と体制整備が求められます

受入機関としての基準を満たすことはもちろん、外国人材が安心して働けるように支援体制や在留資格管理の整備が欠かせません。

このセクションでは、受け入れ医療機関が順守すべき要件・登録支援機関の活用方法・支援計画の立て方・法令順守の実務対応について解説します。

受入機関の要件と登録支援機関の活用

外国人を特定技能で受け入れるには、医療機関自体が「受入機関」として一定の条件を満たす必要があります。

受入機関としての主な要件は以下の通りです。

  • 法人であること(個人事業では不可)

     

  • 労働関係法令・社会保険制度を遵守していること

     

  • 過去に外国人の不適切な雇用歴や法令違反がないこと

     

  • 外国人に対して、同等業務の日本人と同じ水準の報酬を支払うこと

     

  • 生活支援・職場定着支援などを実施できる体制があること

     

これらに加えて、多くの医療機関では「登録支援機関」と連携することで支援義務を外部委託し、制度運用の負担を軽減しています。

登録支援機関は、出入国在留管理庁に登録された専門事業者であり、以下のような支援を実施します。

  • 生活オリエンテーション(入国直後の研修)

     

  • 住居確保・日本語学習支援

     

  • 相談・苦情対応、行政手続きのサポート

     

  • 定期的な面談・定着支援の記録作成

     

自社で十分な支援体制を構築できない場合は、信頼できる登録支援機関との連携が制度上必須となります。

採用・入国前後の支援計画とフォロー体制

受け入れ医療機関は、外国人材の採用から入国・定着に至るまで、段階ごとの支援計画と運用体制を整えておく必要があります。

▼入国前の対応例▼

  • 雇用契約の締結

     

  • 在留資格認定証明書交付申請(COE)の準備

     

  • ビザ取得手続きのサポート

     

  • 生活ガイドブックや職場マニュアルの翻訳提供

     

▼入国後の対応例▼

  • 空港への出迎え・住居案内

     

  • 生活オリエンテーションの実施(ゴミ出しルール・交通機関の使い方など)

     

  • 配属先でのOJT、先輩社員によるサポート制度

     

  • 日本語学習や定期面談などを含む“定着支援”

     

これらの支援内容は「支援計画」として文書化し、出入国在留管理庁に提出・実施報告を行う必要があります。

なお、支援実施状況は定期的に監査対象となるため、形式だけではなく実態のあるフォロー体制の整備が不可欠です。

法令遵守・適正管理の重要性

制度を正しく活用するには、単に採用するだけでなく、継続的な法令遵守と記録管理を徹底することが求められます

違反があった場合、医療機関は「受入機関」としての登録取り消しや、外国人の在留資格剥奪に発展するリスクもあります。

具体的な注意点としては以下のようなものがあります:

  • 雇用契約・報酬内容の不備

     

  • 医療行為を行わせた(資格外活動)

     

  • 支援内容の実施記録が不十分・虚偽報告

     

  • 転職・退職に関する報告義務を怠った

     

また、四半期ごとに提出が求められる**「受入状況報告書」や「支援実施状況報告書」**の記録を適切に行い、万が一の監査に備えた情報管理も重要です。

適正に制度を運用すれば、外国人スタッフとの信頼関係が深まり、組織にとっても長期的なメリットにつながります。

制度の信頼性は「受け入れ側の責任体制」によって守られる

外国人看護助手を特定技能制度で受け入れるには、医療機関側が法令・制度への深い理解と、支援体制の実行力を備えていることが大前提です。

登録支援機関との連携を通じて実務の負担を軽減しつつも、最終的な責任は受入機関自身にあることを忘れてはいけません。

採用前の書類整備から、入国後の生活支援・業務研修、さらには継続的なフォローアップまで、一貫した体制づくりこそが「安心して働ける職場」への第一歩です。

制度を“形だけ”でなく“実態のある支援”として運用することが、外国人材の定着と、医療現場の信頼向上につながります。

特定技能「看護助手」導入のメリット・リスク・注意点

看護助手は病院・医療施設において、日々の業務を支える重要な存在です。

しかし、少子高齢化や人材流出により、国内では慢性的な人手不足が続いています。

そうしたなかで、特定技能制度を活用した外国人看護助手の受け入れは、現場の労働力確保において大きな選択肢となりつつあります。

一方で、制度の導入には一定のリスクや配慮事項も存在します。

このセクションでは、導入によって得られるメリットと、事前に認識すべきリスク・法制度上の注意点について詳しく解説します。

人手不足解消・多様な人材確保のメリット

特定技能制度を活用する最大の利点は、人手不足の深刻な看護助手業務において、即戦力となる外国人材を確保できることです。

実際、多くの医療機関では以下のようなメリットを実感しています。

  • 常に採用困難な職種への人材確保が可能

     

  • 若年層の労働力が確保でき、体力を要する業務にも対応しやすい

     

  • 多国籍なスタッフによる職場の活性化・チームワークの変化

     

  • 長期雇用を前提とした育成で、将来的な人材育成コストの削減も期待

     

一例として、介護技能評価試験に合格した外国人は、一定の訓練を受けており、指示を理解しながら業務を遂行できるレベルの即戦力となるケースも少なくありません。

さらに、組織文化として多様性が進むことで、スタッフ間の相互理解や対話が増えるという副次的効果も報告されています。

コミュニケーション・文化的課題などのリスク

制度導入による恩恵がある一方で、現場ではさまざまなリスクや課題も生じやすいのが実情です。

特に注意すべきリスクは以下の通りです。

  • 言語の壁:医療現場では細かなニュアンスや緊急時の対応が求められるため、日本語の理解不足がトラブルを招くことも

     

  • 文化・宗教の違い:価値観や習慣の違いにより、同僚や患者との関係構築に壁が生まれる可能性

     

  • 業務範囲の誤解:特定技能では医療行為はできないため、現場での役割が曖昧だと法令違反の恐れあり

     

  • 定着率の不安定さ:支援体制が整っていない職場では、早期離職や不満が生じる傾向も

     

こうしたリスクは、導入前に明確な研修・指導マニュアルや、現場との認識共有体制を整えておくことで軽減できます。

とくに、先輩スタッフの巻き込みと継続的な面談の実施は、定着に向けた鍵となります。

導入前に押さえるべき法制度・支援策

制度を適切に活用するには、法律・制度上の義務を正確に理解したうえで、運用に必要な支援体制を整えておく必要があります。

▼導入前に確認すべき主なポイント▼

  • 従事可能な業務の範囲:医療行為は禁止。生活支援・環境整備が中心

     

  • 登録支援機関の選定:自社で支援体制を構築できない場合は、信頼できる外部機関と連携が必須

     

  • 雇用契約・在留管理の実務:雇用期間、支援実施報告、四半期ごとの提出義務など

     

  • 定着支援の体制づくり:語学・生活支援、日本文化理解、職場内教育の整備

     

また、補助金や支援金制度を活用することで、初期コストの負担を抑えながら制度導入をスムーズに進める事例も増えています。

制度を“使うだけ”でなく、“活かす”ためには、現場主導の受け入れ設計と丁寧なコミュニケーション設計が不可欠です。

制度を活かす鍵は「期待」と「備え」のバランスにある

特定技能「看護助手」の導入は、人手不足解消と現場活性化の有効な手段であると同時に、制度上の制限と現場運用の難しさが伴う取り組みです。

メリットに目を向けつつも、リスクや課題に対する“備え”を事前に整えておくことが、成功の分岐点となります。

採用段階から支援体制・教育・法令順守にいたるまで、職場全体で共通認識を持つことが、定着と活用の両立につながります

制度の“仕組み”に依存するのではなく、人を迎え入れる“姿勢”こそが、外国人看護助手との信頼構築を生む最大の要素です。

今後の制度動向と企業が注視すべきポイント

導入文

外国人材の雇用制度は、社会状況や人手不足の深刻度に応じて年々見直しが進められています。
とくに特定技能制度は創設から5年が経ち、2025年以降の制度改正や対象分野の拡大、在留期間の緩和などが本格的に議論されている状況です。

このセクションでは、看護助手の受け入れにも関係する**「特定技能2号」の拡大見通しや、医療・介護分野での制度改正の可能性、そして看護助手として働く外国人がキャリアアップしていく支援策**について解説します。

特定技能2号拡大の見通し

特定技能制度には現在、

  • 在留期間の上限がある「特定技能1号」

  • 在留期間の制限がなく、家族帯同も認められる「特定技能2号」

の2段階があります。

しかし、2024年6月に政府が発表した見直し方針により、特定技能2号の対象分野は、現行の2分野(建設・造船)から大幅に拡大される見込みです。
将来的には、介護分野もその対象となる可能性があり、看護助手に近い業務に従事する人材にも、長期就労・定住の道が開ける可能性があります。

この拡大により、企業にとっては以下のようなメリットが期待されます:

  • 優秀な人材を長期間にわたり雇用・育成できる基盤が整う

  • 外国人本人の生活安定(家族帯同可)が実現し、離職率の低下につながる

  • 在留資格の切り替え負担が減り、管理コストの削減が可能

そのため、今後の制度動向を定期的にウォッチし、早期に対応方針を検討しておくことが重要です。

医療・介護分野での制度改正可能性

2025年以降、医療・介護分野における外国人就労制度は、以下のような見直しの可能性が高まっています。

  • 技能実習制度の廃止と「育成就労制度」への移行
     → より透明性の高い制度に変更され、職場定着やキャリア支援が重視される構成へ

  • 特定技能の試験内容の見直し
     → 現場の実情に合わせたスキル評価や、日本語能力の確認方法の改善が検討中

  • 医療分野での受け入れ緩和
     → 看護助手のように医療行為を伴わない業務については、特定技能の対象明確化・拡充が進む可能性あり

これらの制度変更により、受け入れ側の負担軽減や長期雇用の見通しが改善される反面、新たな支援義務や書類対応なども求められる可能性があるため、柔軟な制度対応力が求められます。

看護助手からキャリアアップへの支援策

現在の制度下でも、外国人看護助手が日本でキャリアを積み、さらに上位の資格や職種へステップアップすることは十分可能です。

主なキャリアパスの例:

  • 特定技能1号(看護助手)
     → 介護福祉士資格の取得を目指す
     → 「介護」ビザへ切り替え(在留期限なし)
     → 永住申請の対象に

また、施設や病院によっては、日本語教育の支援だけでなく、介護福祉士試験に向けた研修制度を整備しているところもあります。
外国人スタッフが将来的に介護・医療分野でリーダー的役割を果たすためには、以下のような支援が有効です。

  • 日本語能力試験(JLPT N3以上)への合格支援

  • 介護福祉士養成校との連携

  • 働きながら通える通信制・夜間コースの紹介

  • 国家試験受験料やテキスト費用の補助

こうした支援体制は、本人の意欲を引き出すと同時に、企業側にとっても優秀な人材を長期にわたり確保する手段となります。

制度の先を見据えた採用戦略が、未来の競争力を左右する

制度は常に変化しますが、それに受け身で対応するだけでは人材競争には勝てません。
「特定技能2号の拡大」「制度改正」「キャリア支援」の3つの視点を持ち、今から具体的な備えを始めることが重要です。

未来を見据えた制度理解と柔軟な採用設計ができる組織は、外国人スタッフとの長期的な信頼関係を築き、現場の安定と質の向上を同時に実現することができます。

制度は“ツール”であり、主役は“人”。
その意識を持つことが、これからの医療・介護現場に求められる人材戦略の基本となります。

現場のリアルに学ぶ、外国人看護助手の「定着率を高める工夫」

導入文

特定技能制度を活用して外国人看護助手を受け入れたものの、「せっかく採用しても定着しない」「すぐに辞めてしまう」という悩みを抱える医療機関も少なくありません。
制度を正しく理解することと同じくらい重要なのが、実際の現場での受け入れ体制やコミュニケーションの工夫です。

本セクションでは、実際の現場で効果を上げている**“辞めない職場”の共通点や文化ギャップへの対応、現場発の支援マニュアルやフォロー体制の取り組み**を紹介し、長期的な雇用に向けたヒントを提供します。

外国人スタッフが「辞めない」職場の共通点とは?

外国人スタッフの定着率が高い職場には、いくつかの明確な共通点があります。

  1. 「受け入れる意識」が職員全体に浸透している
    受け入れの可否を経営判断だけで終わらせず、現場の職員全員が“仲間を迎える意識”を持っているかどうかが鍵になります。
    入職前から「この病棟で一緒に働く予定です」と全体に共有し、歓迎の雰囲気をつくることが、初期の心理的不安を大きく軽減します。
  2. わかりやすい業務マニュアルが整っている
    言語の壁を越えるには、ビジュアルや簡易日本語で構成された業務マニュアルの整備が有効です。写真やイラスト付きの手順書があると、指示が伝わりやすく、トラブル防止にもつながります。
  3. 日常的な声かけ・確認の習慣がある
    外国人スタッフは“質問してはいけない”と誤解することもあります。そこで、「わからないことがあったらいつでも聞いてね」と日常的に声をかける文化がある職場は、安心感が違います。

このような組織風土が根付いている職場は、外国人材にとって「また明日も来たい」と思える環境になっているのです。

先輩職員との関係づくりと“文化の壁”の乗り越え方

外国人スタッフの離職要因として多いのが、先輩職員とのコミュニケーション不全価値観の違いからくる孤立感です。
これを解消するには、意図的に関係構築のきっかけを設けることが効果的です。

  1. バディ制度(ペア制度)の導入
    入職後一定期間、1人の先輩職員が日常的な業務や生活面の相談役を兼ねることで、不安を抱え込まずに済みます。
    「専属の相談相手」がいるという安心感は、外国人に限らず誰にとっても心強いものです。
  2. 多文化理解の共有研修
    「文化が違うと常識も違う」という前提を、職員全体で学ぶ機会を設けます。
    たとえば、“遅刻”に対する感覚や、“YES”と答えても理解していないケースなど、国による行動特性を理解することで衝突を防げます
  3. 共同イベントで距離を縮める
    バーベキューや納涼会、誕生日会など、業務外のコミュニケーションの場を意識的につくることで、言葉を超えた信頼関係が生まれます。

こうした小さな積み重ねが、「違い」ではなく「多様性」として捉える意識を育て、職場全体の風土改善にもつながっていきます。

現場から生まれた支援マニュアルとフォロー体制の工夫

定着率の高い医療機関では、現場で試行錯誤を重ねながら独自のマニュアルやフォロー体制を構築しています。以下はその一例です。

◎「3か月定着プログラム」の導入(ある介護医療院の事例)

  • 1か月目:生活オリエンテーション+OJT

  • 2か月目:簡単な業務を任せながら先輩がついて指導

  • 3か月目:週1面談と目標シートの確認で振り返り

これにより、「何をどこまでできたか」が明確になり、本人の達成感と安心感につながっています。

◎ピクトグラム+やさしい日本語マニュアル

  • 「清掃」「移乗」「食事補助」などをアイコンで視覚的に伝える冊子を整備。

  • “日本語”で指示しなくても、内容が伝わるよう工夫されています。

◎翻訳アプリや音声翻訳機の導入

  • 急ぎの業務連絡などは、アプリ翻訳で瞬時に補完することでストレスを減らし、ミスの防止にも効果あり。

現場が自ら考え、改善を積み重ねてきたからこそ、制度を“活かせる職場”に育っているのです。

「制度より人」を見る現場の姿勢が、定着率を決める

外国人看護助手の定着を成功させるカギは、制度やマニュアルだけでなく、現場の人がどれだけ“人”として向き合えるかにかかっています。
辞めない職場には、「安心して働ける仕組み」と「支えてくれる人」が存在します。

言葉の違いも、文化の違いも、丁寧なコミュニケーションと歩み寄りの工夫で乗り越えられます。
大切なのは、**「制度だからやる」のではなく、「この人と働きたいから支援する」**という姿勢です。

制度を“守る”だけでなく、“育てる”視点で向き合うことで、外国人スタッフは戦力以上の存在へと育っていきます

特定技能「看護助手」制度は、これからの医療現場に不可欠な選択肢へ

日本の医療・介護現場における人手不足の深刻化は、もはや一時的な問題ではありません。
そのなかで、特定技能制度を活用した外国人看護助手の受け入れは、即戦力確保に加え、多様性ある職場づくりや人材育成という面でも注目されています。

この記事では、以下のような重要なポイントを体系的に解説しました:

  • 特定技能「看護助手」とは何か、どんな制度なのか

  • 従事可能な業務範囲と法的な制限点

  • 試験・要件・更新の制度理解と実務対応

  • 受け入れ医療機関側に求められる条件や支援体制

  • 制度導入によるメリットとリスク、導入前に押さえるべき支援策

  • 現場での成功事例・失敗事例から学ぶ定着のヒント

  • 今後の制度改正と、看護助手のキャリア形成支援の可能性

特定技能制度は“導入すること”がゴールではなく、「制度を活かし、人を育て、現場に根づかせる」ことが本質的な活用です。
また、外国人材を“補充要員”としてではなく、“仲間”として迎える意識こそが、長期的な戦力化と定着につながります。

今後の制度改正にも柔軟に対応しながら、外国人看護助手との協働体制を築いていくことが、これからの医療機関に求められる人材戦略となるでしょう。

 

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  • 監修弁護士

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