11/07 (金)更新
特定技能「支援責任者・支援担当者」の要件とは?違い・条件・業務内容を徹底解説
特定技能外国人を受け入れる企業や登録支援機関にとって、「支援責任者」と「支援担当者」の選任は制度運用の要です。
どちらの役職も、外国人が安心して日本で生活・就労できるよう支援するために欠かせない存在ですが、
それぞれの役割・要件・選任条件には明確な違いがあります。
特に近年、出入国在留管理庁による監査や行政指導が厳格化しており、
「支援担当者の経験要件を満たしていない」「支援責任者と兼任して中立性を欠いた」といった事例も見られます。
正しい理解と体制構築は、企業や支援機関の信頼性を守るためにも不可欠です。
この記事では、以下について網羅的に解説します。
- 支援責任者と支援担当者の違いと役割
- 各職に求められる要件・条件・選任手続き
- 兼任の可否や変更時の注意点
- 実務で求められる支援内容と体制づくりのポイント
さらに、支援体制の品質を高めるための実務チェックリストも紹介し、
「何を・誰が・どのように」支援すべきかをわかりやすく整理します。
特定技能の支援業務を適切に運用したい担当者はもちろん、
登録支援機関の立ち上げや見直しを検討している企業にも役立つ内容です。
支援責任者と支援担当者とは?役割と違いを理解する

特定技能制度では、外国人材を適切に支援するために「支援責任者」と「支援担当者」を選任することが義務付けられています。
両者は同じ「支援業務」に関わりますが、責任の範囲や役割の重さは明確に異なるため、混同して運用すると制度違反に繋がるおそれがあります。
まずは、それぞれの定義と役割の違いを整理しましょう。
特定技能における「支援責任者」と「支援担当者」の定義
支援責任者とは、外国人支援全体を統括し、支援計画の実施・管理を担う責任者です。
受入れ機関や登録支援機関の代表として、支援計画の策定・実施状況の確認・行政への報告などを行います。
一方の支援担当者は、実際に現場で外国人に対する生活支援・相談対応・同行支援を行う役割を持ちます。
つまり、
- 支援責任者=支援体制の統括・責任を持つ立場
- 支援担当者=現場で支援業務を実施する立場
という明確な役割分担があります。
どちらも「特定技能外国人が安心して働ける環境を整える」ために不可欠な存在であり、相互連携が重要です。
両者の主な違い(責任範囲・担当業務・立場の違い)
| 比較項目 | 支援責任者 | 支援担当者 |
| 主な役割 | 支援計画全体の管理・監督 | 外国人への生活支援・同行・相談対応 |
| 責任範囲 | 全支援業務の結果責任 | 担当範囲内での実務遂行 |
| 主な業務 | 計画策定、行政報告、体制整備 | 生活支援、面談、通訳対応、同行支援 |
| 立場 | 管理者(マネージャー) | 現場実務者(スタッフ) |
| 必要な資質 | 中立性・マネジメント力・法令理解 | 対応力・共感力・多文化理解 |
支援責任者は、制度遵守と支援品質の両立を監督する立場にあるため、
**中立性と管理能力が求められる「管理的職務」**です。
支援担当者は、外国人と直接関わりながら支援を実施するため、現場理解と柔軟な対応力が重要となります。
支援責任者・支援担当者になれない人(欠格要件)
支援責任者・支援担当者は、法令に基づく欠格事由があります。
次のような人は原則として選任できません。
- 出入国在留管理庁により登録支援機関の登録を取り消された経験がある人
- 禁錮以上の刑に処せられ、執行終了から5年を経過していない人
- 不法就労助長や人身取引などの違反行為に関与したことがある人
- 外国人雇用に関して不正または著しく不適正な行為を行った者
これらの条件は、支援の中立性・信頼性を確保するための最低条件です。
選任時には、経歴確認・誓約書の提出などを通して適格性を確認する必要があります。
まとめ:役割の違いを正しく理解し、責任体制を明確に
支援責任者と支援担当者は、いずれも外国人支援の中核を担う重要な役割です。
しかし、両者の責任範囲を混同したまま運用すると、行政監査で問題となるケースもあります。
支援責任者=統括・監督の立場、支援担当者=現場実務の実行者。
この役割を正しく区分し、連携を密にすることで、支援体制全体の質を高めることができます。
支援責任者の要件と業務内容

支援責任者は、特定技能制度における「支援の要」といえる存在です。
支援計画の策定から実施状況の監督、行政報告までを統括する立場にあるため、高い責任性と経験が求められます。
ここでは、支援責任者に必要な要件と具体的な職務内容を解説します。
支援責任者の主な職務(支援計画の統括・実施管理)
支援責任者は、支援計画全体の実施状況を管理し、制度に基づいた支援が行われているかを常に確認します。
主な職務は以下の通りです。
- 支援計画の作成および定期的な見直し
- 支援担当者への指示・支援方針の共有
- 支援内容の実施確認・報告書の作成
- 出入国在留管理庁への届出・行政対応
- 外国人本人・企業双方へのフォローアップ
特定技能制度における「支援10項目(入国支援・住居支援・生活オリエンテーションなど)」が
計画通り実施されているかを把握・改善することが求められます。
支援責任者になるための要件(経験・立場・中立性)
支援責任者として認められるためには、以下のような要件が必要です。
| 要件区分 | 内容 |
| 経験要件 | 外国人の生活支援・就労支援に関する経験があること(通算3年以上が望ましい) |
| 在留資格 | 中長期在留資格を有し、適法に在留している者であること |
| 立場 | 受入れ機関・登録支援機関の職員であり、責任ある管理職相当の立場にあること |
| 中立性 | 外国人の権利を侵害しない中立的立場で支援できること |
| 道徳性 | 法令順守・倫理性が高く、過去に不正行為のない人物であること |
このように、支援責任者は管理職・統括者としての資質と社会的信頼性が重視されます。
単なる名義上の配置ではなく、実際に業務を遂行できる体制が必要です。
受入れ機関が選任する場合の条件と注意点
受入れ機関(企業)が自社内で支援責任者を選任する場合は、
- 外国人支援の実務経験があること
- 支援担当者を適切に指導・監督できる立場にあること
- 外国人雇用管理に関する法令知識を有していること
が求められます。
特に中小企業では、兼任体制(総務担当者などが担うケース)が多いため、
支援計画の管理を怠ると行政指導や支援不備と判断されるリスクがあります。
定期的に登録支援機関や行政書士など外部の専門家と連携するのが理想です。
登録支援機関が選任する場合の条件と留意点
登録支援機関では、支援責任者が業務全体を統括し、複数の支援担当者を指揮するケースが多いです。
したがって、次の点に注意する必要があります。
- 複数案件を担当する場合でも、支援の質を維持できる体制を確保する
- 支援担当者の報告を定期的に確認し、支援実施記録を保管する
- 支援責任者が過剰な業務を抱えないよう、役割分担を明確化する
また、出入国在留管理庁への登録情報(責任者氏名・体制変更)は変更時に必ず届出が必要です。
報告漏れは登録支援機関の信用失墜につながるため、厳重な管理が求められます。
まとめ:支援責任者は“支援の質”を守るキーパーソン
支援責任者は、制度の中心で支援体制全体を管理する「舵取り役」です。
要件を満たした人材を配置することは、単に法令遵守のためだけでなく、
外国人が安心して働ける環境を維持するための経営基盤といえます。
責任者が制度理解・管理能力・中立性を兼ね備えていれば、
支援担当者の活動もスムーズに進み、結果として企業と外国人双方の信頼が高まります。
誰を責任者にするかは支援体制の成否を分ける最重要ポイントです。
支援担当者の要件と業務内容

支援担当者は、特定技能外国人に最も近い立場で支援を行う現場責任者です。
支援責任者が支援計画全体を統括するのに対し、支援担当者は日々の生活や就労支援を実際に行う役割を担います。
制度上の要件を満たすだけでなく、文化理解やコミュニケーション力が欠かせないポジションです。
支援担当者の役割(現場での生活・就労支援)
支援担当者の主な役割は、外国人が日本で安心して生活・就労できるよう、日常的な支援を実施することです。
業務内容は多岐にわたり、特定技能制度で定められた「支援10項目」を直接的に遂行します。
【主な業務例】
- 入国時の空港送迎・住居確保・ライフラインの開設支援
- 日本での生活オリエンテーション(生活ルール・交通・医療・税金など)
- 定期的な面談・相談対応・トラブル時の通訳支援
- 日本語学習のサポートや地域との関係づくり
- 退職・転職時の行政連携・再就職支援
つまり支援担当者は、現場で外国人と直接向き合う最前線の支援者です。
一つひとつの行動が、外国人本人の安心感や定着率に直結します。
支援担当者になるための主な条件(在留資格・経験など)
支援担当者として活動するには、法令で定められた一定の要件を満たす必要があります。
出入国在留管理庁が示す条件は次の通りです。
| 要件項目 | 内容 |
| 経験要件 | 外国人支援・生活相談・教育などの業務経験があること(目安:2年以上) |
| 在留資格 | 中長期在留者であること(日本人・永住者・定住者・日本で適法に活動する外国人) |
| 中立性 | 受入れ企業の経営判断や雇用関係から独立し、公正な立場で支援を行えること |
| 誠実性 | 法令遵守・秘密保持・倫理観を備えていること |
| コミュニケーション能力 | 外国人本人の母語・英語・やさしい日本語などで対応できる能力 |
特に「中立性」と「経験」は重視されます。
支援担当者は外国人からの相談を受ける立場にあるため、企業や上司の意向に左右されず公平に判断できる姿勢が求められます。
支援責任者との連携と報告体制の整え方
支援担当者は単独で行動するのではなく、支援責任者と連携して支援計画を遂行します。
円滑な連携のためには、以下のような体制づくりが重要です。
- 定期報告の仕組み化:支援活動の記録・面談内容を週次または月次で報告
- 情報共有ツールの導入:支援計画・進捗をデジタル化し、誰でも確認できる体制
- 緊急時の指揮命令系統の明確化:トラブル発生時に責任者へ迅速に報告できるルートを整備
このように、支援担当者と責任者の間で「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」が機能すれば、
支援体制全体の透明性と信頼性が高まります。
まとめ:支援担当者は“現場の橋渡し役”
支援担当者は、外国人と企業・行政をつなぐ支援の実行者であり、信頼の架け橋です。
制度的な要件を満たすだけでなく、「寄り添う姿勢」と「報告の正確さ」が求められます。
一人の担当者の対応が、支援体制全体の印象を左右する——それほど重要なポジションです。
支援責任者と支援担当者の兼任は可能?実務上の考え方

特定技能の支援体制を整える際、多くの企業が「支援責任者と支援担当者を兼任しても良いのか?」という疑問を持ちます。
結論から言えば、一定の条件を満たせば兼任は可能です。
ただし、兼任には明確な制約と運用上の注意点があるため、慎重な判断が必要です。
兼任できるケースとできないケース
支援責任者と支援担当者の兼任は、法令上禁止されていません。
しかし、兼任できるのは支援の中立性と支援品質が確保できる場合のみです。
▼兼任が認められるケース▼
- 受入れ企業内で外国人支援を少人数で行っている場合
- 支援対象人数が少なく、支援内容を適正に管理できる場合
- 支援責任者が実際に現場の支援を把握し、記録を残している場合
▼兼任が難しいケース▼
- 支援対象者が多く、1人で全体を管理できない場合
- 責任者が経営者・監督者など、支援対象者に対して人事的権限を持つ立場の場合
- 支援実施記録の検証ができない(監査時に第三者確認が困難)
兼任する場合は、支援の客観性が保たれるよう、報告書や記録の形式的裏付けを残すことが重要です。
兼任によるメリット・デメリット
| 区分 | メリット | デメリット |
| メリット | ・支援体制を簡素化できる ・情報共有がスムーズ ・小規模事業所でも運用可能 | |
| デメリット | ・責任と実務が同一人物に集中する ・中立性を欠くおそれ ・監査時に第三者性が疑われるリスク |
特に、中立性と客観性の欠如は大きなリスクです。
兼任が「管理の簡略化」だけを目的として行われると、支援の実効性を損ねる結果になりかねません。
中立性を維持するための注意点
支援責任者と支援担当者を兼任する場合は、実務上の中立性確保が最重要です。
以下のような対策を行いましょう。
- 支援内容・面談記録を第三者(他部署・外部顧問)が定期的に確認
- 外国人本人に「苦情・相談窓口」を別途設置
- 支援責任者が自らの業務を記録し、支援の公正性を証明できるようにする
このように、内部牽制の仕組みをつくることで、兼任体制でも信頼性を維持することが可能になります。
まとめ:兼任は可能だが“制度理解と管理能力”が鍵
支援責任者と支援担当者の兼任は、制度上は認められています。
しかし、「中立性・支援品質・記録管理」の3点を確保できなければ、行政監査で指摘されるリスクがあります。
少人数の組織では兼任も有効な選択肢ですが、その場合でも支援体制を定期的に見直し、外部支援機関との併用や第三者チェックを導入することが理想的です。
最終的に大切なのは、形式ではなく実効性のある支援を継続できる体制を築くことです。
支援責任者・支援担当者の選任手続きと変更時の対応

支援責任者・支援担当者の選任は、特定技能制度における最初の重要なステップです。
出入国在留管理庁では、適切な人材を選任し、支援計画とともに正確な届出を行うことを義務付けています。
手続きの不備や届出漏れは、行政指導や登録支援機関の取消リスクにも直結するため、正確な対応が求められます。
選任時に必要な書類と届出先(出入国在留管理庁への届出)
支援責任者・支援担当者を選任する際は、特定技能外国人の支援計画と同時に、選任情報を出入国在留管理庁に届け出る必要があります。
【主な提出書類】
- 支援責任者・支援担当者の選任届出書(所定様式)
- 履歴書・職務経歴書(支援経験や在留資格を確認)
- 誓約書(法令遵守・中立性の確保に関するもの)
- 登録支援機関または受入れ機関の支援計画書
- 身分証明書類(在留カード・資格証明等)
【届出先】
- 管轄の地方出入国在留管理局
- 提出タイミングは「特定技能在留資格の申請時」または「登録支援機関の登録申請時」
支援体制に変更が生じた場合(人事異動・退職・委託先変更など)は、14日以内に変更届を提出することが求められます。
支援担当者・支援責任者を変更する場合の流れ
支援責任者または支援担当者の変更が生じた場合、出入国在留管理庁に速やかに届出を行います。
変更手続きの一般的な流れ。
- 変更事由の確認(退職・人事異動・契約終了など)
- 新任候補者の適格性確認(経験・中立性・在留資格)
- 「支援責任者・支援担当者変更届」の作成
- 届出書類・誓約書を添付して入管局へ提出
- 支援体制変更後の支援計画を再確認・共有
特に登録支援機関の場合は、複数の案件に影響するため、早急な代替者選任と記録の引き継ぎが不可欠です。
届出を怠った場合の行政指導・登録取消リスク
支援体制の変更届を怠ると、法令違反(特定技能所属機関等登録規則第19条等)とみなされ、以下のような行政処分を受ける可能性があります。
- 行政指導(改善命令・再発防止報告の提出)
- 登録支援機関の業務停止・登録取消
- 特定技能外国人の新規受入れ停止措置
さらに、支援責任者・担当者の不在期間に支援が行われなかった場合、「支援未実施」として外国人本人の信頼を損なうリスクもあります。
体制変更が生じたら、即日で対応する意識を持ちましょう。
まとめ:支援体制の変更届は“スピードと正確さ”が命
支援責任者・支援担当者の選任や変更は、支援体制の信頼を守る根幹的な手続きです。
届出の遅延や記載漏れは、企業・機関双方の信用に関わります。
「担当者が辞めた」「体制が変わった」時こそ、速やかに入管へ報告し、書面・記録を残すことが重要です。
支援業務の実践ポイントと注意事項

支援責任者・支援担当者の任命後、最も重要になるのが日常業務での支援の実践です。
制度上は10項目の支援内容が定められており、これを適切に実行することが特定技能制度の基本です。
ここでは、実務における具体的な支援ポイントと注意すべき事項を整理します。
支援責任者・担当者が行うべき10項目の支援内容(入国支援〜定期面談)
出入国在留管理庁が定める「特定技能外国人支援10項目」は、次の通りです。
- 入国前ガイダンスの実施
- 空港送迎・住居の確保・生活に必要な契約手続き支援
- 日本での生活オリエンテーションの実施
- 生活に関する相談対応・苦情処理
- 日本語学習の支援
- 各種行政手続きの同行支援(市役所・銀行・病院など)
- 日本人との交流促進支援(地域イベント・文化交流)
- 転職・離職時の支援(再就職の紹介・行政手続き)
- 定期面談の実施・支援記録の作成
- 支援実施状況の出入国在留管理庁への報告
これらはすべて「計画に基づいて継続的に実施する義務」があり、実施記録を保管することが求められます。
支援担当者はこれらを現場で遂行し、支援責任者が統括・確認を行います。
支援実施時に重視すべき中立性と個人情報管理
支援業務では、外国人と企業の間に立つ中立性の確保が最も重要です。
たとえば、労働条件や職場トラブルが発生した際に企業寄りの判断をしてしまうと、
「支援の独立性が欠ける」とみなされ、行政からの指導対象となる場合があります。
また、外国人の個人情報(在留カード番号・住居・健康状態など)を扱うため、支援担当者・責任者には個人情報保護法・入管法双方の理解と遵守が求められます。
ファイル共有やクラウド管理を行う場合も、アクセス権限・ログ管理を徹底することが必要です。
外国人本人・企業・行政の“三方良し”を実現する支援姿勢とは
支援業務は、「外国人の安心」「企業の安定」「行政の信頼」を同時に支える三者連携で成り立ちます。
そのために意識すべきポイントは以下の3点です。
- 外国人に寄り添う支援:文化や言語の壁を超え、本人の立場に立った相談対応を行う。
- 企業と協働する姿勢:雇用主の課題や要望を共有し、現場の改善へつなげる。
- 行政との信頼構築:支援記録や報告を正確に提出し、透明性のある体制を維持する。
この「三方良し」のバランスを保つことが、特定技能制度の持続的運用と信頼確保につながります。
まとめ:支援業務は“制度運用の現場力”で差が出る
支援責任者・支援担当者の業務は、書類上の手続きだけでは完結しません。
外国人と日々向き合い、安心・定着・成長を支える実践力が問われます。
10項目の支援を着実に行い、記録を残し、中立性を保つことこそが、
支援体制の信頼性と継続性を高める最も確実な方法です。
支援責任者・支援担当者を選任できない場合の対応策
中小企業や新規参入の受入れ機関では、支援責任者や支援担当者を社内で確保できないケースも珍しくありません。
特定技能制度では、適格な人材を自社で選任できない場合、登録支援機関への外部委託という選択肢が用意されています。
ここでは、代替手段としての登録支援機関の活用方法と、そのメリット・注意点を整理します。
自社で選任が難しい場合の代替手段(登録支援機関委託)
支援体制を社内で整備できない場合は、登録支援機関に支援業務を委託することが可能です。
登録支援機関は、出入国在留管理庁に正式に登録され、特定技能外国人への支援業務を代行できる事業者を指します。
委託できる支援業務には以下が含まれます。
- 入国前ガイダンス・空港送迎・住居確保支援
- 生活オリエンテーション・相談対応・行政手続き同行
- 日本語学習支援・地域交流支援・転職時支援
このように、登録支援機関に委託することで、支援10項目すべてを包括的に対応してもらうことができます。
ただし、最終的な責任(支援計画の実施責任)は受入れ機関にも残るため、丸投げは不可です。
外部委託のメリットとリスク(委託費・管理体制の違い)
登録支援機関へ委託するメリットは多いものの、コスト・管理・透明性の観点からリスクもあります。
| 区分 | メリット | リスク・注意点 |
| 費用・体制面 | ・支援体制を短期間で構築できる ・支援担当者を雇用する必要がない | ・委託費(1人あたり月1〜3万円程度)が発生 ・外部業者の品質に依存する |
| 実務・運用面 | ・専門知識を持つ担当者による確実な支援 ・行政報告・書類作成を代行 | ・支援内容の進捗把握が難しくなる場合がある ・連絡ミスや情報共有の遅延が発生しやすい |
| 信頼・管理面 | ・入管登録済みの支援機関なら法令遵守が確保 | ・無登録業者や仲介ブローカーによる違法委託リスク |
特に「低価格をうたう未登録業者」への委託は危険です。
登録番号が出入国在留管理庁の公式サイトで確認できるかを必ずチェックしましょう。
登録支援機関の選び方と確認ポイント
登録支援機関を選ぶ際は、次のような項目を基準に比較することが重要です。
信頼できる支援機関を見極めるチェックポイント
- 出入国在留管理庁の正式登録番号が公開されているか
- 支援実績(取扱人数・対応業種・地域サポート)が十分か
- 担当者が多言語でコミュニケーション可能か
- 支援責任者・支援担当者の経歴・資格が明示されているか
- 支援報告や面談記録を共有・閲覧できるシステムがあるか
信頼できる機関を選定すれば、自社の人員負担を軽減しつつ高品質な支援体制を構築できます。
逆に、委託先を誤ると、制度違反や信頼失墜につながる恐れがあります。
まとめ:支援業務の外部委託は“管理と信頼”が鍵
登録支援機関への委託は、支援体制を迅速に整える有効な方法です。
しかし、委託先の管理を怠ると、支援の品質や法的信頼性が低下するリスクがあります。
「信頼できる登録支援機関を選び、定期的に支援内容を確認する」ことが、成功のポイントです。
企業・登録支援機関が支援体制を構築するための実務チェックリスト

特定技能制度を安定的に運用するためには、「形式上の選任」ではなく、実効性のある支援体制の構築が欠かせません。
ここでは、企業や登録支援機関が支援責任者・支援担当者を配置・育成する際に確認すべき実務ポイントをまとめます。
選任前に確認すべき5つの項目(体制・経験・倫理性・言語力・支援方針)
支援担当者・責任者の選任前には、以下の5つの観点をチェックすることで、支援の品質と継続性を確保できます。
- 体制:担当者の人数と支援対象者数が適正か
- 経験:外国人支援・教育・人材管理などの実務経験があるか
- 倫理性:法令遵守・中立性・守秘義務を理解しているか
- 言語力:やさしい日本語・英語・母語での対応が可能か
- 支援方針:外国人の成長支援・キャリア支援に対する理念が明確か
これらを確認し、支援計画と照らし合わせて適任者を選定することが重要です。
支援担当者の教育・研修体制を整える
支援担当者の質を維持・向上させるためには、定期的な研修と情報共有が不可欠です。
具体的な取り組みとしては以下が挙げられます。
- 入管法・労働基準法・個人情報保護法などの法令研修
- 異文化理解・コミュニケーションスキル研修
- トラブル対応や相談事例共有の定例ミーティング
- 支援実施報告・面談記録の標準化
これにより、担当者のスキルが均質化され、支援のばらつきを防ぐことができます。
支援責任者のマネジメント力を高めるポイント
支援責任者は、支援体制全体を管理・改善する立場にあるため、マネジメントスキルと判断力が求められます。
以下の3点を意識することで、組織としての支援レベルを引き上げられます。
- 支援担当者との定期面談とフィードバックを行う
- 支援記録・改善提案を基にPDCAを回す運用体制を構築
- 支援品質の指標(KPI)を設定し、達成度を可視化
このようなマネジメントが機能すれば、組織全体で支援品質を継続的に改善する仕組みが生まれます。
まとめ:支援体制の“仕組み化”が特定技能運用の成功を支える
支援体制の強化において最も重要なのは、**「人ではなく仕組み」で支えること」**です。
選任・研修・報告・改善のサイクルを整備することで、担当者が変わっても安定した支援を提供できます。
特定技能制度の信頼を維持するためには、一時的な対応ではなく、長期的に運用できる支援基盤づくりが欠かせません。
まとめ|支援体制の質が“特定技能制度の信頼”を左右する

特定技能制度において、支援責任者と支援担当者の選任・運用は制度の根幹です。
両者の違いや要件を正しく理解し、適切に配置することで、外国人材・企業・行政の三者が信頼関係を築くことができます。
本記事で解説したポイントを振り返ると——
- 支援責任者は支援計画全体の統括者であり、法令遵守と体制管理の責任を持つ
- 支援担当者は現場で外国人を直接支援し、安心した生活・就労を支える実行者
- 兼任は可能だが、中立性・透明性を保つ体制づくりが不可欠
- 適任者がいない場合は、信頼できる登録支援機関への委託が有効な選択肢
- 教育・研修・マネジメントの仕組み化により、支援品質を継続的に高められる
特定技能の支援業務は、単なる手続きではなく「人と人をつなぐ社会的責任」を伴う仕事です。
法令を順守しつつ、外国人が安心して働ける環境を整えることが、企業の信頼性を高め、
結果的に特定技能制度全体の健全な運用と国際的信用の向上につながります。
支援責任者・支援担当者の配置を“形式”で終わらせず、
仕組みと心を両立させた支援体制づくりを進めることが、今後の企業価値を左右する鍵です。
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