
07/16 (水)更新
特定技能「外食業」とは?試験内容から採用フローまで徹底解説!
深刻な人手不足が続く飲食業界において、今注目されているのが「特定技能 外食業」という在留資格制度です。
政府が創設したこの制度は、外国人材を即戦力として迎え入れ、調理・接客・店舗運営など幅広い業務に従事してもらえる仕組みとして、多くの飲食店が活用を始めています。
しかし、導入を検討している企業の中には、「試験の内容や取得条件がわからない」「2号への移行って何?」「法的にどこまで働かせていいの?」といった疑問を抱えている担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、特定技能「外食業」1号・2号の取得要件、試験内容、受け入れ企業のルールや採用フロー、さらには違法リスクや今後の展望までを体系的にわかりやすく解説します。
制度理解から実務対応まで、飲食業界で外国人材を安心して受け入れるための“完全ガイド”としてお役立てください。
特定技能「外食業」とは何か?制度の概要と導入の背景
人材確保に苦しむ飲食業界を支える制度として、2019年に導入されたのが「特定技能 外食業」です。
日本国内で深刻化する人手不足に対応するため、政府が創設した在留資格「特定技能」のうち、飲食店などで働くことができる分野として整備されたのが“外食業”カテゴリーです。
この制度を活用すれば、技能試験と日本語要件を満たした外国人が、調理や接客などの現場に即戦力として従事できるようになります。
ここではまず、特定技能「外食業」が生まれた背景と制度の全体像、そして対象となる外国人材の国籍や属性について詳しく見ていきましょう。
外食業界での人手不足と制度創設の背景
日本の飲食業界は、慢性的な人手不足に直面しています。とくに中小規模の飲食店では、深夜勤務や週末の勤務を担える若年層が不足し、経営に大きな支障をきたしているケースも珍しくありません。
厚生労働省や出入国在留管理庁のデータによれば、2018年時点で外食産業における有効求人倍率は2倍を超えており、日本人だけでの雇用維持が限界に近づいていることがうかがえます。
こうした状況を背景に、2019年4月、政府は「特定技能制度」を創設。
その中の一分野として「外食業」が追加され、在留資格を得た外国人が一定の条件のもとで日本国内の飲食店等で働けるようになったのです。
特定技能「外食業」の制度概要と対象者
特定技能「外食業」は、「特定技能1号」の14分野のひとつです。
この在留資格を取得することで、一定の技能と日本語能力を有する外国人が、飲食業の現場で直接雇用されることが可能になります。
制度のポイントは以下の通りです。
- 対象職種 – 飲食店、ファストフード店、レストラン、カフェなどの飲食サービス業全般
- 在留期間 – 最長5年(1年更新、または6ヶ月・4ヶ月更新)
- 雇用形態 – フルタイムの直接雇用が原則(派遣や業務委託は不可)
- 必要な資格 – 外食業特定技能1号技能測定試験、日本語能力試験N4以上
この制度は、「人手不足分野に限って」認められているため、業種や職務内容が明確に定義されています。
外食業で働ける外国人材の範囲と主な国籍
「特定技能 外食業」で働く外国人の主な国籍には、ベトナム・インドネシア・フィリピン・ネパール・中国などが挙げられます。
これらの国では、外食業向けの特定技能試験が現地開催されており、試験に合格した人材が日本企業への就職を目指して準備しています。
また、すでに日本に在留している技能実習生や留学生が、特定技能へ移行するケースも増えているため、採用ルートは「海外からの直接呼び寄せ」だけでなく「国内人材の転用」も選択肢となります。
実際に雇用されている外国人の多くは20代〜30代の若年層で、調理補助や接客を中心に就労しており、日本語力もN4以上であれば基本的な意思疎通が可能とされています。
▽飲食業の即戦力人材を受け入れる新たな選択肢
「特定技能 外食業」は、飲食業界の構造的な人手不足に対応するために作られた制度です。
外国人材が制度に基づいて正規に就労できる仕組みとして、今後さらに普及が進むと見られています。
本セクションの要点は以下の通りです。
- 2019年に創設された制度で、飲食業界の人手不足対策として導入
- 調理や接客などの業務に特定技能1号外国人が従事可能
- 対象はアジア圏を中心とした若年層が中心、国内外のルートで採用可能
今後の人材戦略として、制度理解を深めた上での活用が、飲食企業の安定運営に直結する時代が訪れています。
特定技能「外食業」で従事できる業務内容とは?
特定技能「外食業」の在留資格で外国人を雇用する際、どこまでの業務が許可されているのかを明確に理解しておくことは非常に重要です。
「調理も接客もOK」といったざっくりした理解では、法令違反となるケースや入管指導の対象になる可能性があります。
このセクションでは、特定技能 外食で認められる業務範囲と、誤解されやすいグレーゾーンの代表例を整理し、合法的な雇用運用のヒントを解説します。
調理・接客・店舗管理補助などの認可業務
特定技能「外食業」では、以下のような飲食店における実務的な作業が認められています。
許可されている主な業務
- 調理作業全般 – 仕込み、調理補助、盛り付け、食材管理など
- 接客業務 – 注文受け、配膳、会計、片付け
- 店舗オペレーション補助 – 清掃、備品補充、レジ操作
- 調理器具・厨房設備の管理やメンテナンス補助
これらの業務は、「顧客に直接サービスを提供する外食産業の基幹業務」に該当しており、特定技能制度の本来の目的に沿った業務とされています。
ただし、本社の経理業務や倉庫作業、ビル清掃、配送ドライバーなどの“外食業以外の周辺業務”には従事できません。
ホテル内レストランやフードデリバリーは就労可能?
ホテル内のレストラン・カフェ・宴会場などでの勤務は、条件を満たせば就労可能です。
ただし、レストランの運営が外食業として登録されており、業務内容が調理・接客等に限られる必要があります。
注意が必要なのは次のようなケース
- ホテルの宿泊受付・清掃・ベッドメイキング – ×(外食業の範囲外)
- 宴会場の照明・音響設備担当 – ×(飲食業ではない)
- デリバリースタッフ(例:バイク配達員) – × 原則不可
→ただし、店内での調理や受渡し補助であれば業務に該当する場合もあり(要審査)
また、「フードデリバリー専門店(ゴーストレストラン)」についても、飲食サービス提供業として認められていれば、就労が認可される可能性はありますが、要件を満たさないと違法雇用になるリスクがあるため、入管への確認が推奨されます。
外食業以外の業務をさせると違法になるケース
以下のような業務を外国人に従事させた場合、在留資格違反(入管法違反)として企業側に重大なペナルティが科される可能性があります。
NG例
- 別の業態の店舗(例:コンビニや倉庫)へ異動させた
- 外食業だが、清掃・警備のみを担当させていた
- 食材の配送業務に従事させた(配送運転は外食業に該当しない)
- 調理場で働かせていたが、契約は派遣会社経由だった(外食業では原則直接雇用が義務)
また、「就労可能な業務」として書類上で申請していた業務と実際の業務内容が食い違っている場合も、虚偽申請に該当し雇用企業・外国人本人双方に不利益が生じるため、日常業務の範囲管理も重要です。
▽業務範囲の正確な理解が外国人雇用の信頼性を高める
特定技能「外食業」は、飲食現場の実務を支える貴重な戦力です。
しかしその一方で、業務内容の誤解や違法な職務範囲の拡張によって、制度を悪用していると見なされるリスクもあります。
このセクションの要点
- 調理・接客・店舗オペレーション補助が基本業務
- ホテル内レストランやデリバリー関連は慎重な判断が必要
- 外食業以外の業務や契約違反は、企業に罰則が科される可能性も
外国人材を安心して迎えるためには、制度に定められたルールを正しく理解し、現場での運用にもそれを反映させることが不可欠です。
受け入れ企業の要件と義務について理解しよう
特定技能「外食業」の在留資格で外国人を雇用するには、企業側にも明確な要件と義務が課されています。
「人手が足りないから採用したい」と思っても、制度のルールを理解しないままでは、雇用契約の不備や支援体制の不備により不許可・指導の対象となることも。
このセクションでは、外食分野で外国人材を受け入れる企業が満たすべき条件や、協議会への加入、支援義務、労働条件に関する法的ルールまでを詳しく解説します。
受け入れ企業が満たすべき主な条件と登録制度
特定技能の外国人を受け入れるには、企業側が「特定技能所属機関」として所定の条件を満たしている必要があります。
主な条件は以下の通りです。
- 外国人と直接雇用契約を結んでいる(派遣・請負は禁止)
- 労働・社会保険に適切に加入している
- 法令違反歴がなく、過去に行方不明者等を出していない
- 外国人の生活・就業支援を適切に実施する体制がある
また、企業は入管庁へ「受入れ機関届出書」を提出し、特定技能所属機関として登録されなければなりません。
支援計画を自社で実施できない場合は、登録支援機関に委託することも可能です。
「食品産業特定技能協議会」への加入と活動報告
外食業は、農林水産省が所管する食品産業特定技能協議会の管轄下にあるため、受け入れ企業はこの協議会への加入が義務付けられています。
協議会加入の目的と役割:
- 各企業が制度を適切に運用しているかを監督・指導する
- 雇用状況やトラブルの報告を通じて、制度全体の健全性を確保
- 必要に応じて企業へヒアリング・改善指導を行う
活動報告の提出や、求められた際の書類開示などにも対応できるよう、日々の雇用・支援記録を適切に保管しておくことが重要です。
支援計画の作成と定期的な支援実施義務
特定技能1号で雇用する外国人には、「1号特定技能外国人支援計画」の策定・実施が義務です。
この支援計画は、外国人の生活や就業にスムーズに適応できるようサポートする内容で構成されており、以下の項目が含まれます。
主な支援項目
- 事前ガイダンス(雇用前の業務説明)
- 住宅確保の支援、銀行口座・携帯電話契約の補助
- 公的サービス(役所手続き・病院)の案内
- 日本語学習の機会提供
- 生活・就労上の相談対応(母国語または簡単な日本語)
- 定期的な面談と職場定着に向けたフォロー
これらの支援は「形だけ」であってはならず、入管庁が実施状況をチェックする対象になります。
また、委託先である登録支援機関の監督責任も企業側にあることを理解しておく必要があります。
賃金・労働条件は日本人と同等でなければならない理由
特定技能制度では、外国人だからといって安価な労働力として扱うことは厳しく禁止されています。
受け入れ企業は、同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬を支払う義務があります。
具体的な比較対象
- 同職種・同等業務・同一地域で雇用される日本人社員の給与
- 昇給制度、残業手当、交通費などの待遇面
さらに、勤務時間、休日、福利厚生などについても労働基準法を順守することが前提であり、違反が判明すれば、在留資格の更新拒否や企業への指導が行われます。
▽受け入れ企業には制度運用の「責任」が求められる
特定技能「外食業」の受け入れは、単なる採用活動ではなく、制度に沿った責任ある雇用運用が求められる“共同事業”です。
本セクションの要点は以下の通り
- 登録制度と支援体制の整備が、受け入れ企業の必須要件
- 協議会への加入と報告義務も制度運用に欠かせない義務
- 労働条件・待遇は日本人と同等が原則であり、常に明示が必要
制度のルールを正確に理解し、形だけでない支援と管理体制を築くことが、外国人材との信頼関係と制度の継続活用に直結します。
特定技能1号「外食業」の取得要件と試験内容
特定技能「外食業」分野で外国人を雇用するには、まず労働者本人が所定の試験に合格して「特定技能1号」の在留資格を取得することが前提となります。
しかし、実際にどのような試験が必要なのか、日本語のレベルはどの程度求められるのか、詳細が分かりにくいという声も少なくありません。
このセクションでは、特定技能 外食 試験の種類や内容、日本語要件、試験会場と申込方法まで、企業と応募者が押さえるべきポイントを体系的にご紹介します。
必要な在留資格と「特定技能 外食 試験」の種類
特定技能1号を取得するためには、原則として以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 外食業特定技能1号技能測定試験に合格すること
- 日本語能力試験(JLPT N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格すること
この2つの試験に合格すれば、「特定技能 外食業」としての技術・語学基準をクリアしたとみなされ、在留資格申請に進むことができます。
技能測定試験の内容(調理・接客・衛生管理)
「外食業特定技能測定試験」は、飲食店で実務を行ううえでの基礎的な能力を判定する試験です。内容は以下の3領域で構成されています。
- 調理業務編 – 包丁の使い方、加熱処理、盛り付け、材料管理など
- 接客業務編 – 注文対応、レジ操作、接遇マナー、クレーム対応など
- 衛生管理編 – 食品衛生の基本、手洗い、交差汚染防止、店舗の清掃ルールなど
試験は基本的にCBT(Computer Based Testing)方式で実施され、選択式問題が中心です。
日本語能力要件と試験の合格率・実施頻度
日本語能力は最低でもN4(基本的な会話ができる)レベルが必要とされます。
以下のいずれかをクリアすれば基準を満たしたことになります。
- JLPT(日本語能力試験)N4以上
- JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)合格
合格率は試験によって異なりますが、技能測定試験はおおむね50〜70%台、日本語試験は70〜80%台と比較的高めです。
試験は年に複数回実施されており、日本国内に加えて、海外(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)でも開催されています。
試験の申し込み方法と海外会場の拡大状況
試験の申し込みは、外食業技能試験の公式サイト(Prometricまたは専用CBTサイト)からオンラインで登録を行います。
受験希望者は、パスポート情報などを入力したうえで、会場と日時を選択する形です。
現在はアジアを中心に試験会場の海外展開が進んでおり、特にベトナム・ミャンマー・フィリピンなどからの受験者数が急増しています。
企業が海外からの採用を検討する際には、試験日程と合格者リストを定期的に確認することが重要です。
▽明確な基準をクリアした即戦力人材を迎える準備を
特定技能「外食業」で外国人を雇用するには、本人が制度で定められた試験に合格していることが必須条件です。
試験内容は実務に即した内容で構成されており、採用後すぐに現場に立てる水準の人材を見極める指標にもなります。
本セクションの要点
- 技能測定試験と日本語試験の両方に合格することが特定技能1号の取得条件
- 試験内容は調理・接客・衛生の実務に即した3分野構成
- 試験申込はオンラインで、海外での試験実施も拡大中
制度理解と試験内容の把握が、より適切で戦力となる人材を見極める第一歩となります。
▶ これを読めば大丈夫!特定技能1号の制度全体と取得条件を完全解説
特定技能制度の概要や14分野の違い、共通要件まで知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
特定技能1号 外食での採用から雇用開始までの流れ
特定技能「外食業」分野で外国人材を採用するには、制度に基づいた一連の手続きが必要です。
「試験に合格した外国人がいればすぐに雇える」と考えるのは早計で、契約、支援計画、在留資格認定、査証申請といったプロセスを順を追って正確に実施することが求められます。
このセクションでは、採用から来日・就労開始までの全体の流れと、各ステップで注意すべきポイントを詳しく解説します。
「特定技能雇用契約」締結の注意点
まずは、外国人と「特定技能雇用契約」を正式に締結する必要があります。
この契約には、一般的な雇用契約に加えて、特定技能制度特有の内容が含まれなければなりません。
契約書に含めるべき主な要素
- 労働時間・休日・給与などの基本労働条件
- 日本人と同等以上の報酬であることの明示
- 支援計画の実施内容と責任者の明記
- 契約期間、更新方針、解約条件などの詳細
- 寮や住居の提供内容(該当する場合)
注意点:派遣契約は禁止されています。
必ず直接雇用契約である必要があり、契約書の形式・言語にも配慮(母国語翻訳版など)を行いましょう。
「1号特定技能外国人支援計画」の作成・実施
契約後は、企業側が「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、入管庁へ提出する必要があります。
これは、特定技能外国人が日本で安心して働けるよう、生活・業務・文化面などの支援を体系的に実施するための計画書です。
主な支援項目
- 事前ガイダンス(業務内容・生活案内など)
- 住居・インフラの確保支援(携帯契約・銀行口座等)
- 日本語学習の機会提供
- 行政・医療などの案内
- 定期的な面談と就労フォローアップ
- 相談窓口の設置(母国語対応が望ましい)
企業が自力で実施できない場合は、登録支援機関に委託することで対応可能です。
ただし、委託する場合でも最終的な責任は雇用主にあることを忘れてはいけません。
在留資格認定証明書(COE)の申請と発行
次に必要なのが、在留資格認定証明書(COE)の申請です。
これは外国人が日本に入国する前に必要な重要書類で、取得後にビザ申請へ進むことが可能となります。
COE申請の必要書類(代表例)
- 特定技能雇用契約書の写し
- 支援計画書
- 会社概要資料
- 外国人のパスポート、写真、履歴書など
- 技能測定試験および日本語試験の合格証明書
審査期間はおおよそ1〜3ヶ月。
書類に不備があると差し戻しや審査長期化の原因となるため、早めの準備と確認が重要です。
査証申請から来日・就労スタートまでのスケジュール
COEが交付されたら、外国人本人が母国の日本大使館または領事館で査証(ビザ)を申請します。
来日までのステップは以下の通りです。
- COEを企業が本人へ送付
- 外国人が現地の日本大使館でビザ申請
- ビザ発給後、日本へ渡航
- 入国時に在留カードを受け取る
- 日本での就労開始、支援計画の実施スタート
なお、初日から支援計画に沿った対応(通訳同行・役所案内など)を実施できるよう、社内体制を事前に整えておくことが求められます。
▽制度に沿った採用フローが外国人雇用の信頼性を高める
特定技能1号 外食業での採用には、単なる採用活動とは異なる、在留制度に基づいた一連の流れがあります。
適切な手続きと準備を行うことで、外国人にとっても企業にとっても安心できる雇用環境が築けるのです。
本セクションの要点
- 採用は「特定技能雇用契約」の締結と「支援計画の作成」から
- 在留資格認定証明書(COE)の申請と査証手続きが必要
- 入国後は初日から支援計画に基づいたフォローが求められる
制度を正しく理解し、信頼ある受け入れ体制の整備を進めることが、長期的な人材活用の第一歩になります。
特定技能2号「外食業」への移行条件とその意義
2023年から外食業も対象となった「特定技能2号」。
これにより、特定技能1号で経験を積んだ外国人が、在留期間の制限なく働き続けられる道が開かれました。
多くの飲食店や外食チェーンが、中核人材として2号人材をどう育て・活用するかに注目しています。
本セクションでは、移行に必要な条件・提出書類・メリット・制度の狙いと実務的な意味を整理し、企業が準備すべきポイントをわかりやすく解説します。
特定技能2号 外食の取得に必要な実務経験と試験
特定技能2号に移行するには、一定の実務経験とスキル証明が必要です。
外食業では、以下が移行条件とされています。
- 特定技能1号としての在留期間が通算3年以上あること(※)
- 技能水準を確認するための所定の「外食業特定技能2号技能測定試験」に合格すること
- 引き続き外食業に従事する明確な就労計画があること
※一部例外措置もあり、詳細は制度変更に応じて確認が必要です。
2号試験は、1号試験よりも高度な知識や実務能力(調理指導・管理補助など)を問う構成であり、試験対策や現場経験の積み重ねが不可欠です。
提出書類と移行時の注意点
特定技能2号への移行では、在留資格変更許可申請が必要です。
主な提出書類は以下の通りです。
- 在留資格変更許可申請書
- 外食業特定技能2号技能測定試験の合格証
- 雇用契約書(報酬・就業内容を明記)
- 業務計画書(今後の職務内容、指導内容など)
- 住民税納税証明書、年金・保険料の納付状況など
注意点として、申請のタイミングや在留期限とのバッファを十分に確保しておくことが重要です。
また、支援計画の提出義務が2号ではなくなる一方で、労務管理や待遇面の不備には厳しいチェックが入るため、企業側の責任はむしろ大きくなります。
特定技能2号 外食への移行メリット(在留期間無期限・家族帯同可)
特定技能2号の最大のメリットは、以下の2点です。
- 在留期間が「更新制の無期限」となる(永住権ではないが、ほぼ同様の安定性)
- 配偶者・子どもの帯同が可能になる(家族滞在ビザ取得可)
これにより、外国人にとっては「短期雇用」ではなく「長期的な日本での生活」が見込める働き方となり、企業側も長期的に育成し、店舗運営の核として登用しやすくなるという双方にとって大きな利点があります。
また、1号では対象外だった役職登用(店舗リーダー・エリアマネージャー補佐など)も、2号なら実務と報酬次第で対応可能になる場合があります。
外食業界における2号人材の活躍可能性と政府方針
外食分野において、政府は特定技能2号を通じて「現場定着型の外国人材の育成と活用」を推進しています。
これにより、技能実習から1号、そして2号へという“段階的成長モデル”の制度設計が明確に描かれています。
外食業界では、次のような活用が期待されています。
- 長年勤務した1号外国人を、店長候補や後進育成役として登用
- 本国との人材ルート構築や店舗出店戦略にグローバルな視点で関与してもらう
- 多言語・多文化対応力を活かし、訪日観光客向けのサービス強化に貢献
こうした背景を受け、今後2号人材を活用する企業への支援施策の拡充や入管の柔軟な運用も予想されるため、今から制度に目を向けておくことが得策です。
▽2号への移行は人材確保と戦力定着の両立を実現するカギ
特定技能2号 外食業への移行は、単なる“延長雇用”ではありません。
企業と外国人の信頼関係をベースに、中核人材として共に成長していくキャリアパスを築くための制度です。
本セクションの要点
- 移行には3年以上の実務と2号技能試験の合格が必要
- 在留期間が無期限、配偶者・子どもの帯同が可能
- 外食業界の人材戦略と現場活性化に直結する制度として注目度が高まっている
制度を最大限に活用するためには、企業の準備と人材育成の両立がカギとなります。
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違法雇用を防ぐための注意点とよくあるトラブル
特定技能「外食業」の在留資格で外国人を雇用する場合、制度上のルールを逸脱した雇用形態や業務内容はすべて「違法雇用」とみなされるリスクがあります。
企業側に悪意がなかったとしても、知識不足や運用ミスによる違反で在留資格の取り消しや企業への処分が行われるケースも発生しています。
このセクションでは、現場で起こりがちな違法行為や、見落としやすい注意点、実際にあった不許可事例を具体的に解説し、リスク回避のためのポイントを明確にします。
接待飲食業や風営法対象業務との線引きに注意
特定技能「外食業」で働く外国人が従事できない業種の代表例が「接待飲食業」や「風俗営業法の対象業務」です。
禁止されている業態の例
- キャバクラ、ガールズバー、スナック、ホストクラブ
- カラオケバーやラウンジ等で接客・お酌・同席を伴うサービス
- 客に対する過度な接待行為を含む飲食業全般
これらは外食業に該当しないだけでなく、「風営法」に抵触する可能性もあるため、特定技能の就労対象から除外されています。
実際に「外食業」として申請されたのに、実態が接待業だったことが判明し、在留資格が取り消された事例も存在します。
防止策: 業場所が複数ある場合や業態が曖昧な場合は、必ず入管庁へ確認を取り、書面にて雇用業務の範囲を明確化しておくことが重要です。
労働時間・業務内容逸脱による入管法違反リスク
制度上、契約内容と実際の労働実態が大きく異なる場合、入管法違反と見なされます。特に問題となるのが以下のケースです。
よくある違反例
- 契約には週40時間と記載しつつ、実際は月残業100時間超
- 調理や接客業務以外に倉庫作業やビラ配りをさせていた
- 異業種の姉妹店で働かせていた(例:外食契約→物販店舗へ異動)
- 勤務地を複数にし、勤務記録を正確に残していない
これらはすべて「契約外業務従事」や「労働条件の不履行」として入管庁から指導対象となり、悪質な場合は在留資格取り消しや企業名公表のリスクがあります。
対応策:就業管理は日報や勤怠記録、業務マニュアルなどを整備し、内容と実態に乖離がないかを定期的にチェックする体制が重要です。
虚偽申請・書類不備が招く不許可事例
申請書類の記載内容が実態と異なる、もしくは不十分な場合でも、結果的に「虚偽申請」とみなされる可能性があります。
代表的な不許可要因
- 勤務予定店舗が未開店、または資金計画が不透明
- 実態のない支援計画(実施者・内容が曖昧)
- 登録支援機関との契約書がない、もしくは有効期限切れ
- 住居や生活支援体制が整っていないのに「確保済」と申告した
虚偽申請が判明すると、1号だけでなく将来的な2号や永住申請にも悪影響を及ぼす可能性があるため、申請前のチェックは必須です。
対策:専門家の確認を得る、もしくは社内で申請書・計画書の複数人チェック体制を確立することを推奨します。
▽知らなかったでは済まされない「制度逸脱リスク」
外国人の受け入れは、制度理解と適切な運用がセットでなければ、むしろ企業にとってリスクの大きい行為になります。
特定技能「外食業」は制度として門戸が開かれている一方で、制度違反には厳しい罰則や信用低下が伴う現実があります。
本セクションの要点
- 接待・風営法対象業種は就労不可。業態分類に要注意
- 契約と実態が一致しているかを定期確認し、記録を残す
- 虚偽申請や軽微な書類不備でも、不許可・取消リスクが高い
ルールを守ることで、企業も外国人材も安心して長期的な関係を築くことができます。
制度の適正運用こそが、信頼される外国人雇用の第一歩です。
特定技能「外食業」が飲食業界にもたらす展望と課題
特定技能「外食業」は、深刻な人手不足に悩む飲食業界にとって、単なる労働力補填を超えた変革の鍵となりつつあります。
多国籍人材の活用により、接客や調理の現場に新しい風が吹き込む一方で、離職や教育支援の課題も浮き彫りになっています。
本セクションでは、制度導入によって生まれているポジティブな効果と、現場が直面している実務的な壁を整理し、飲食業界における持続的活用の方向性を探ります。
多国籍スタッフの戦力化と店舗活性化の可能性
外国人材の導入によって、飲食店には明確なプラスの変化が起きています。
特にベトナム・インドネシア・ミャンマー出身のスタッフが、英語や中国語を含む多言語対応や異文化接客に貢献し、観光地を中心に顧客満足度の向上が報告されています。
注目すべき変化の事例
- 外国人スタッフの導入によって、観光地店舗の顧客満足度が平均30%向上
- シフト柔軟化が進み、シフト調整時間が最大40%削減された店舗も存在
- タイ人スタッフの提案によりエスニックメニューを導入した店舗でリピート率25%上昇
さらに、多様なバックグラウンドを持つスタッフの存在は、メニュー開発やサービス改善においても創造的な視点を提供しており、組織活性化の起点となっています。
外国人定着に必要な社内制度と教育支援
一方で、制度が機能していても、人材の「定着」がなければ成果は一時的にとどまります。
飲食業界における離職率は50%超とも言われ、地方では3ヶ月以内に辞める割合が都市部の2倍以上にのぼるケースも。
課題の背景
教育ニーズ | 現場での不足点 |
実務日本語の習得 | 接客フレーズや厨房用語に特化した教材が少ない |
衛生管理の理解 | 図解・多言語対応マニュアルが未整備 |
キャリア形成の支援 | 昇給・昇進制度があいまいで将来像が描けない |
また、中小企業では書類業務や手続きの負担がネックとなり、制度申請そのものを放棄する割合が30%に達しているとの報告もあります。
成功事例として注目されている取り組み
- 週休2日制・残業制限を徹底し、労働環境を改善
- メンター制度(同国人の先輩社員による生活相談)を導入
- 特定技能2号への移行支援とキャリアパスの提示
さらに、動画教材を用いたeラーニング型衛生管理研修や、日本語OJTによって、即戦力化を加速している企業も見られます。
「厨房のグローバル化」が地域飲食店にも波及する理由
当初は都市部の大手チェーンが中心だった外国人材の活用ですが、最近では地方都市や個人店舗でも導入が拡大しています。
変化を後押しする要因
- 観光地における多言語ニーズの高まり
- 飲食業務のマニュアル化・効率化の進展
- 地方自治体の支援強化(例:補助金・教材助成)
事例として
- 北海道のジンギスカン店で、ベトナム人スタッフが提案したフォー風アレンジメニューが話題となり、ローカルメディアにも取り上げられました。
さらに、2025年度には政府による「外食業定着支援補助金制度」が始まり、日本語教材開発費の50%補助や支援体制整備への助成が強化される予定です。
このように、「厨房のグローバル化」=外国人材の戦力化が地方の飲食文化にも新たな可能性を提供しつつあります。
▽変革のカギは「戦略的受け入れ」
特定技能「外食業」制度は、人材不足の解消にとどまらず、飲食業界の構造そのものを変革する可能性を秘めています。
しかし、その成果を最大化するには「ただ受け入れる」のではなく、戦略的に育て、定着させ、活かす視点が求められます。
本セクションの要点
- 多国籍スタッフは、売上・業務効率・ブランド価値を同時に高める資産
- 離職対策・研修整備・キャリアパスの提示が定着のカギ
- 地方への導入も加速し、補助金制度で導入ハードルが低下
制度を活かす企業こそが、今後の飲食業界において持続可能かつ柔軟な経営を実現する“勝ち組”となるでしょう。
まとめ|特定技能「外食業」は飲食業界の未来を支える選択肢
特定技能「外食業」制度は、単なる人手不足解消の施策にとどまらず、飲食業界の構造改革や多国籍化を進める鍵として大きな注目を集めています。
実際に、試験制度や雇用の流れは整備されつつあり、受け入れ企業側にとっても導入しやすい環境が整いつつある一方で、定着支援・業務管理・法的遵守といった継続的な運用力が問われる時代に入っています。
成功のカギは「戦略的な受け入れと長期的視点」。
即戦力としての採用だけでなく、2号資格取得・管理職登用・厨房のグローバル化といった中長期の展望を持つことで、企業にとっても外国人材にとっても持続可能な関係を築くことが可能です。
この記事の要点
- 制度理解と正確な運用が、採用の成功率を左右する
- 採用後の教育と支援体制が、離職率を大きく左右する
- 外国人材は、多言語・多文化対応の力で売上向上にも貢献できる
これからの飲食業は、「多様性」と「制度活用力」が競争優位を決定づける時代です。
特定技能「外食業」制度を正しく理解し、自社に最適な活用戦略を描くことこそが、未来への確かな一歩となるでしょう。
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