11/07 (金)更新
特定技能「デイサービス」での受け入れは可能?条件・手続き・注意点を徹底解説
介護業界の人手不足が深刻化するなか、「特定技能(介護)」を活用してデイサービスで外国人スタッフを採用したいという事業所が増えています。
しかし、「デイサービスでも本当に特定技能人材を雇えるの?」「訪問介護と何が違うの?」「受け入れの条件は?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
実際、特定技能制度の「介護」分野は幅広い施設で活用可能ですが、デイサービス(通所介護・通所リハビリ)での受け入れには明確なルールと要件が定められています。
制度を正しく理解しないまま採用を進めると、申請却下や行政指導のリスクを招くおそれも…
本記事では、デイサービス、特定技能、外国人労働者の雇用まで、以下の点を中心に解説していきます。
- デイサービスで特定技能外国人が働ける範囲と条件
- 事業所が満たすべき受入れ基準・契約ルール
- 採用から在留資格申請までの流れ
- メリット・注意点・今後の制度展望
さらに、単なる制度説明にとどまらず、外国人スタッフが現場で戦力となり、定着するデイサービス運営のポイントも紹介。
「制度を活かして事業を前進させたい」と考える経営者・管理者にとって、実務で役立つ情報を網羅しています。
デイサービスで特定技能外国人が働けるのか?基本構造を理解する

「特定技能制度は介護分野にも対応している」と聞いても、デイサービスで本当に採用できるのか、不安に思う事業所は少なくありません。
実は、デイサービス(通所介護・通所リハビリ)は特定技能「介護」分野の対象施設に含まれており、条件を満たせば外国人スタッフが介護業務に従事することが可能です。
ここでは、制度の仕組みや対象範囲、訪問介護との違いを整理し、デイサービスでの特定技能受け入れの基本構造をわかりやすく解説します。
介護分野における特定技能制度の概要
「特定技能制度」とは、日本で人手不足が深刻な14分野において、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる制度です。
そのうち「介護」分野では、利用者の身体介助・生活支援などを行う実務的な職種が対象となります。
外国人がこの分野で就労するためには、
- 「特定技能1号介護」としての在留資格を取得
- 日本語能力試験(N4相当以上)および介護技能評価試験に合格
という2つの条件を満たす必要があります。
また、雇用する事業所側にも介護保険制度に基づく指定事業所であることや、人員配置基準・運営基準の遵守などが求められます。
つまり、特定技能制度は「誰でも受け入れられる仕組み」ではなく、法令を遵守した体制の整った介護事業所だけが対象となる制度です。
デイサービスで特定技能外国人が従事できる業務範囲
デイサービスで特定技能外国人が担当できるのは、主に利用者の身体介助・生活援助・レクリエーション支援などの介護業務全般です。
具体的には以下のような内容が挙げられます。
- 食事介助・入浴介助・排泄介助などの身体介護
- 移動・歩行の補助、見守り
- レクリエーション活動や機能訓練補助
- 利用者とのコミュニケーションや生活支援
ただし、医療行為に該当する業務(点滴・投薬・医療機器操作など)は行えません。
また、送迎業務は施設の方針・契約内容により制限されることがあるため、事前に明確に定めておくことが大切です。
訪問介護との違い(訪問介護が対象外とされる理由)
一見すると同じ介護業務に見える「訪問介護」は、特定技能制度の対象外です。
その理由は、訪問介護が利用者の自宅に1人で訪問し、単独で介護を行う形態であるためです。
特定技能外国人は、日本人スタッフの管理・支援のもとで従事することを前提としており、単独業務は認められていません。
一方、デイサービスは施設内で複数の職員が連携しながら介護を行うため、安全管理・教育体制が確保できると判断され、対象に含まれています。
この点を誤解し、「訪問介護スタッフとして採用できる」と考えると、在留資格の不適正運用や行政指導の対象になる可能性があります。
どんな施設が受け入れ対象になるのか(通所介護・通所リハの分類)
特定技能「介護」分野で外国人を受け入れられるのは、介護保険制度に基づく指定事業所であることが大前提です。
具体的には以下の施設が対象となります。
| 施設種別 | 主な内容 |
| 通所介護(デイサービス) | 高齢者の日常生活支援・入浴・食事・機能訓練などを行う施設 |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 医師・理学療法士等によるリハビリを中心に行う施設 |
これらはいずれも、介護保険法に基づく「指定事業所」として登録されている必要があります。
一方、地域密着型通所介護や小規模デイサービスなどでも、条件を満たせば受け入れは可能です。
ただし、指定を受けていない無届け施設や、職員配置基準を満たさない事業所は対象外となります。
まとめ:デイサービスは特定技能の「介護」分野で受け入れ可能
デイサービスは、特定技能「介護」分野で外国人を受け入れられる正式な対象施設です。
ただし、訪問介護のように単独での業務は認められず、チーム体制の中で適切な支援を行うことが条件です。
制度の概要と業務範囲を正しく理解し、自社施設が対象要件を満たしているかを確認することが、受け入れ成功の第一歩となります。
デイサービス事業所が特定技能を受け入れるための要件

特定技能「介護」人材をデイサービスで採用するには、事業所側が法令に適合した運営体制と受け入れ資格を備えていることが必須です。
ここでは、法人としての受け入れ条件から、施設運営・職員体制の確認ポイント、対象外となるケースまでを整理します。
法人・施設としての受入れ資格(指定・許可・運営基準の遵守)
まず大前提として、受け入れ可能なのは介護保険法に基づく指定事業所のみです。
指定を受けていない民間の通所施設やリハビリ教室では、特定技能人材を雇用することはできません。
加えて、次のような基準を満たす必要があります。
- 指定更新が有効であること
- 人員配置基準・運営基準・介護記録の整備などを遵守していること
- 労働基準法・社会保険関連法令を遵守していること
これらを満たしていない場合、建設的な理由があっても申請は受理されません。
特に「書類上は整っているが実際の運営が不十分」と判断されると、国や自治体からの指導・是正命令の対象になるため注意が必要です。
建物・設備・職員体制など運営面での確認ポイント
特定技能外国人を安全に受け入れるためには、建物や設備の安全基準・職員体制の安定性も審査対象になります。
主な確認ポイントは以下の通りです。
- バリアフリー・安全設備が整備されていること
- 利用定員・面積基準など介護保険上の基準を満たしていること
- 指導・教育を担当する日本人職員(常勤)を配置していること
- シフト管理・報酬管理が明確で、労務環境が適正であること
また、外国人スタッフに対しては、支援責任者による相談体制や教育プログラムの整備も求められます。
形だけの受け入れではなく、“教えられる環境”を整えているかが重要です。
対象外となるケース(指定外事業所・短時間型・無資格スタッフ中心の現場など)
以下のような事業所は、特定技能人材の受け入れ対象外となります。
- 介護保険の指定を受けていない「無届けデイサービス」
- パート職員のみで運営される事業所(常勤職員が不足している場合)
- 利用者数が少なく教育体制が不十分な小規模施設
- 外国人スタッフが単独で業務を行う運営形態
- 雇用契約書が曖昧・報酬体系が不明確な事業所
これらは、教育体制・安全管理・雇用環境のいずれかが欠けているとみなされるため、申請しても認定が下りません。
受け入れ前に、自治体の介護保険担当課や登録支援機関に確認することが重要です。
まとめ:受入れ要件の理解が「採用の可否」を左右する
特定技能人材をデイサービスで受け入れるには、事業所そのものが法令遵守と安定運営を証明できる体制であることが条件です。
特に指定・基準・職員体制を満たしていない場合は、採用以前に制度利用ができません。
「採用できるかどうか」は人材の問題ではなく、まず事業所の運営基盤の整備レベルで決まります。
制度を形だけで導入するのではなく、「教えられる環境」「働き続けられる環境」を整えることが最大のポイントです。
デイサービスで外国人を雇用する際の雇用・契約条件

特定技能「介護」人材をデイサービスで雇用する際は、雇用契約や労働条件を日本人と同等に扱うことが原則です。
外国人だからといって給与や勤務条件を下げることは認められず、法令上は完全な「正社員雇用」として扱われます。
ここでは、採用前に整備しておくべき契約条件や支援体制、トラブルを防ぐための社内準備について解説します。
報酬・勤務時間・休日など日本人と同等の扱いが求められる
特定技能外国人の雇用条件は、同一事業所の日本人介護職員と同等でなければならないと法律で定められています。
これは「特定技能外国人受入れに関する運用要領(出入国在留管理庁)」にも明記されており、主な基準は以下の通りです。
| 項目 | 要件内容 |
| 報酬 | 同職種・同経験の日本人と同等額以上(賞与・手当も含む) |
| 勤務時間 | 日本人職員と同等のシフト制度・勤務時間を適用 |
| 休日 | 週休二日制など就業規則に基づく休日を保障 |
| 社会保険 | 厚生年金・健康保険・雇用保険への加入義務あり |
これらの条件を満たさないと、在留資格の更新・新規申請が不許可となることがあります。
また、賃金を不当に低く設定していると、入管庁・労基署からの行政指導や支援機関への報告義務違反に発展するため注意が必要です。
雇用契約書・労働条件通知書の作成と翻訳の義務
雇用契約を締結する際は、日本語と本人の母国語(または理解できる言語)で内容を明示することが義務付けられています。
労働条件通知書・雇用契約書には以下の項目を明確に記載します。
- 雇用期間(特定技能1号は原則1年更新)
- 職務内容・勤務地・勤務時間
- 基本給・手当・賞与などの報酬条件
- 休日・残業・深夜勤務に関する規定
- 契約解除・退職の手続き
これらを本人が理解できる言語で交付し、署名・押印を得ることが重要です。
特に「契約書は日本語のみ」「口頭説明のみ」は不十分とされ、**後々のトラブル(賃金・労働時間・休日など)**の原因となります。
支援責任者・生活支援体制の整備(特定技能共通要件)
特定技能制度では、受入企業(または登録支援機関)に生活支援体制の整備が義務付けられています。
デイサービス事業所では次のような支援項目を実施します。
- 日本での生活ガイダンス(契約・交通・病院利用など)
- 相談窓口・支援責任者の設置
- 生活面・労務面での通訳サポート
- 住居・行政手続きのサポート(必要に応じて)
- 定期面談・勤務状況の確認
これらの支援は、登録支援機関に委託することも可能ですが、委託しても最終責任は受入企業にあります。
「雇って終わり」ではなく、働きやすい環境を継続的に整える仕組みづくりが欠かせません。
トラブルを防ぐための社内ルール・教育体制づくり
外国人スタッフとのコミュニケーションや文化の違いから、勤務態度・報告連絡の誤解・シフト変更の理解不足などのトラブルが発生しやすいのも事実です。
そのため、以下の取り組みを推奨します。
- 多言語対応の就業マニュアルを作成
- 教育担当者を明確にし、定期的な進捗確認を実施
- 社内報や掲示物で文化理解を促進
- 勤怠・連絡ツールを統一(LINE・チャットワーク等)
こうした環境整備は、結果的に離職防止・生産性向上・利用者満足度の向上につながります。
まとめ:雇用条件の整備が「信頼される受入企業」への第一歩
外国人を雇用する際は、待遇・契約・支援体制の透明性が最も重要です。
日本人と同等の条件を整え、支援・教育を徹底することで、行政からも利用者からも信頼される事業所となります。
特定技能制度は“単なる採用枠”ではなく、**「適正な雇用を証明する仕組み」**でもあることを忘れてはいけません。
デイサービスで特定技能人材を採用・受け入れる流れ

特定技能外国人を採用するには、一般的な求人手続きに加えて入管庁・厚生労働省・送り出し国の3方向との連携が必要です。
「採用したい」と思っても、正しい順序を踏まないと申請が却下されるケースもあります。
ここでは、求人から採用、在留資格申請、入社後の支援までの流れをわかりやすく整理します。
求人掲載・面接・採用決定までの基本ステップ
採用活動の基本は次のとおりです。
- 求人内容の作成
→ 職種・勤務時間・報酬・支援体制を明記(特定技能「介護」対象であることを明示) - 求人掲載・募集
→ ハローワーク、登録支援機関、送り出し機関などを通じて募集 - 書類選考・面接
→ 技能評価試験・日本語能力試験の合格証を確認 - 採用内定・契約締結
→ 労働条件通知書を2言語で作成し、本人の署名を取得
この段階で不備のある求人票や契約内容があると、入管申請時に差し戻しとなることがあります。
必ず、募集要項=契約書内容=申請書内容を一致させるようにしましょう。
送り出し国・登録支援機関との連携のポイント
外国人材は多くの場合、送り出し国の認定機関を通して紹介されます。
受入企業は、登録支援機関を利用することで以下のようなメリットがあります。
- 現地面接や書類準備を代行してもらえる
- 契約書の翻訳や本人サポートがスムーズ
- 在留資格申請書類の作成を支援してもらえる
ただし、委託しても最終的な法的責任は受入企業側にあるため、支援内容の範囲・費用・報告体制を明確に定めておくことが重要です。
在留資格「特定技能(介護)」の申請手続きと必要書類
採用決定後、出入国在留管理庁に対して在留資格認定証明書交付申請を行います。
主な提出書類は以下の通りです。
- 雇用契約書(日本語・母国語)
- 支援計画書
- 登録支援機関の契約書
- 事業所の許可証・運営基準遵守確認書類
- 特定技能評価試験・日本語試験の合格証
申請後、審査期間は通常1〜3か月程度。
在留資格が許可されると、外国人本人はビザを取得して入国します。
入社後に行う初期研修・支援体制の運用方法
入社後は、初期研修と定期支援の実施が義務付けられています。
特にデイサービスでは、利用者対応・感染症対策・介護記録の書き方など、現場固有の研修が重要です。
また、支援責任者は以下を定期的に行います。
- 月1回以上の面談(労務・生活状況の確認)
- 苦情・相談の受付と対応記録の作成
- 日本語学習やスキルアップの支援
これらの支援を怠ると、入管庁から改善命令や登録支援機関への指導が入る場合があります。
したがって、支援計画書に沿って継続的にサポートを実施する体制が求められます。
まとめ:採用フローの正確な理解が“認定を左右する”
特定技能の採用は、通常の求人よりも法的・行政的プロセスが多く、慎重な管理が必要です。
求人票・契約・支援体制の内容を一貫させ、支援機関・入管庁・自治体との連携を怠らないことが成功の鍵です。
採用のゴールは「雇うこと」ではなく、制度に沿って安定して働き続けてもらうこと。
そのための正確な手続き管理こそ、信頼されるデイサービス経営の基盤になります。
デイサービスにおける特定技能活用のメリットと実際の効果

デイサービスでの特定技能外国人の受け入れは、単なる「人手不足対策」にとどまりません。
職場の活性化・利用者満足度の向上・スタッフの定着強化など、多面的な効果が期待できます。
ここでは、実際の導入現場で見られるメリットと成果を具体的に解説します。
慢性的な人手不足の解消と定着率の向上
介護分野、とくにデイサービスでは、送迎・入浴介助・記録業務など多様な業務をこなす必要があり、慢性的な人手不足が続いています。
特定技能人材の活用により、これまで採用が難しかったポジションにも人員を確保でき、既存職員の負担軽減につながります。
さらに、特定技能の外国人は中長期で働く意欲が高いことも特徴です。
制度上、在留期間は最長5年(特定技能2号で延長可能)と長く、教育コストを回収しやすい点もメリット。
日本語・介護スキルを高めてチームの中核人材に成長するケースも増えています。
多文化交流によるチーム活性化とサービス品質の向上
特定技能外国人の受け入れによって、職場には新しい文化的価値観や考え方が生まれます。
異なるバックグラウンドを持つスタッフが加わることで、チーム内に「学び」「刺激」「協調」が生まれ、
結果的にコミュニケーションの改善やチームワークの強化につながります。
また、介護現場では笑顔や声かけなど“人間的な温かさ”が重要です。
外国人スタッフの明るい性格や柔軟な発想が、利用者との関係構築にプラスに働くことも多く、
レクリエーションや日常会話の質が高まる事例もあります。
利用者・家族から見た安心感と課題への理解
最初は「外国人スタッフに介護を任せるのは不安」という声もありますが、
実際に接するうちに利用者・家族からは**「丁寧で温かい」「一生懸命で安心できる」**という評価が多く寄せられています。
とくに、笑顔や挨拶を大切にする外国人スタッフの姿勢が、利用者に心理的安心感をもたらします。
一方で、家族や地域には制度や言語の理解不足もあるため、
事業所として**「特定技能とは何か」「どのように教育しているか」**を丁寧に説明する広報も欠かせません。
信頼関係を築くためには、透明性のある情報発信と職員教育が重要です。
費用面・管理面での実際のコスト感
特定技能人材の雇用には、**登録支援機関への委託費用(平均月3〜5万円/人)**や、
通訳・教育・研修費用などが発生します。
一見コストがかかるように見えますが、
- 長期的な雇用で教育投資が回収できる
- 離職率が低下し、採用コストが削減できる
- 安定した人員確保で残業・外注費を抑制できる
といった効果が期待できます。
短期的なコストよりも、中長期的な安定運営への投資と考えるのが現実的です。
まとめ:特定技能人材の活用は「人材確保+職場改善」の両輪
デイサービスにおける特定技能の導入は、単に人を増やすだけではなく、
チームの活性化・利用者満足度の向上・雇用の安定化という複数のメリットをもたらします。
費用を「負担」ではなく「未来への投資」と捉え、
教育と支援を継続的に行うことが、**“人が育つデイサービス”**への第一歩です。
特定技能をデイサービスで受け入れる際の注意点・リスク管理

特定技能制度を正しく理解せずに運用すると、制度違反・行政指導・離職トラブルなどのリスクが発生します。
デイサービスは介護現場の中でも利用者との密接な関わりが多いため、
受け入れ体制や教育を軽視すると、職場全体の信頼を損なう結果につながりかねません。
ここでは、制度上・運用上の注意点を整理します。
特定技能と技能実習の違いを混同しない
特定技能は「労働力としての受入れ」を目的とする制度であり、技能実習とは根本的に異なります。
技能実習は「発展途上国への技術移転」が目的であり、就労制限が多いのに対し、
特定技能は即戦力として労働契約を結び、給与も日本人と同等である点が大きな違いです。
両制度を混同すると、
- 不適切な契約条件
- 不当な業務制限
- 不正受入れによる行政処分
といったリスクが生じます。
採用前に、制度の目的と対象を明確に区別することが不可欠です。
日本語能力・コミュニケーション課題への対応
特定技能1号の外国人は、日本語能力試験N4レベル(基本的な会話理解)を求められます。
しかし、介護現場では方言・専門用語・利用者の聞き取りづらい発話など、実際のコミュニケーション難易度は高めです。
このため、
- 定期的な日本語研修の実施
- 困ったときに相談できる担当者の配置
- ゆっくり・具体的に伝える習慣化
など、**“理解させる工夫”より“伝える努力”**が重要です。
日本人スタッフ側にも、異文化コミュニケーションの教育を行うことでトラブルを減らせます。
教育・支援を怠った場合の離職リスクと行政指導
特定技能人材は「教育・支援体制が整っていること」を前提に在留資格が認められています。
したがって、入社後に放置されたり、支援が不十分な場合は、
本人の離職だけでなく、事業所への行政指導や受入停止処分が下されることもあります。
とくに多い事例が次の通りです。
- 業務指導担当が不在、または日本語での説明不足
- 生活相談窓口が機能していない
- 研修記録・面談記録が残されていない
支援の実施状況は入管庁や自治体によって確認されるため、日報・支援記録の保存も欠かせません。
契約違反・不当な配置による処分事例
特定技能の運用においては、契約内容と実際の業務内容が一致しているかが常にチェックされます。
たとえば、契約上「介護職員」として雇用しながら、
- 清掃・厨房など介護以外の業務を中心に配置していた
- 記録業務や送迎のみを任せていた
といったケースでは、「不当配置」として受入れ停止や認定取消処分が行われることがあります。
また、賃金の支払い遅延・未払いも重大な違反です。
外国人労働者の保護が重視されている現状では、わずかな不備でも行政調査が入る可能性があります。
まとめ:リスク管理の本質は「制度理解と日々の運用」
特定技能の受け入れは、制度理解と現場運用の両立が欠かせません。
- 制度を混同せず正しい契約を結ぶ
- 日本語教育と文化理解を進める
- 教育・支援を継続的に実施する
この3つを徹底することで、離職や行政指導のリスクを大幅に軽減できます。
「受け入れる」だけでなく、「支える」「育てる」姿勢が、信頼されるデイサービスの基盤です。
今後のデイサービス×特定技能の展望と制度の方向性

介護分野で特定技能制度が導入されてから数年が経ち、制度の定着とともにデイサービスでも外国人材の活用が現実的な選択肢となってきました。
一方で、少子高齢化による介護人材不足は加速しており、制度改正やキャリアアップ支援の強化も進んでいます。
ここでは、今後の介護業界全体の方向性と、デイサービス経営に求められる新しい戦略を整理します。
介護人材不足の加速と制度改正の見通し
日本国内では、2025年には約32万人の介護職員が不足すると見込まれています。
特にデイサービスは高齢者支援の“地域の拠点”であり、外国人材の受け入れは不可欠な課題となっています。
この流れを受け、政府は特定技能制度の見直しを進めており、
- 受入れ上限数の拡大
- 教育体制が整った事業所の優遇
- 在留資格更新の柔軟化
など、現場実態に即した改正が段階的に検討されています。
今後の方向性としては、「受け入れを制限する制度」から「人材育成と定着を支援する制度」へと移行する見通しです。
特定技能2号への移行とキャリアアップ支援の可能性
特定技能1号で5年の在留期間を満了した人材は、試験合格などの条件を満たせば特定技能2号へ移行可能です。
介護分野ではこれまで2号が設定されていませんでしたが、今後の制度見直しによって長期在留・家族帯同が可能になる方向で検討が進められています。
これが実現すれば、外国人介護人材が「一時的な労働力」から「中核スタッフ」へと変化します。
そのため、事業所は早期から教育・キャリア支援を整え、長期雇用を見据えた育成計画を立てることが重要です。
たとえば、介護福祉士資格取得支援や、リーダー職への登用制度を整備することで、職場全体のモチベーション向上と定着強化につながります。
外国人材の長期雇用を見据えた経営戦略と教育投資
今後のデイサービス経営では、外国人材を単なる補助戦力ではなく、中核的人材として育てる発想が欠かせません。
具体的には、下記の取り組みが求められます。
- 多文化対応型の教育・評価制度を構築する
- 日本語教育を業務時間内で支援する
- キャリアパス(役職・給与昇格)を明確化する
これらの投資は一時的な負担に見えても、離職率低下・採用コスト削減・サービス品質の安定化につながるため、長期的には大きな経営メリットとなります。
まとめ:制度は「受け入れ」から「育成」へシフトしていく
特定技能制度は、今後「外国人を雇う制度」から「外国人を育てる制度」へと進化します。
デイサービス事業所がこの変化を先取りし、教育・評価・キャリア支援を整えることで、人材不足に左右されない安定経営が実現します。
制度の改正を“追う側”ではなく、“活かす側”に回ることが今後の鍵です。
制度を“活かす”デイサービスへ|外国人材が定着する職場づくりのポイント

特定技能制度を導入しても、外国人スタッフが長く働ける環境がなければ、定着にはつながりません。
「採用できること」よりも重要なのは、「活躍できる職場をつくること」。
ここでは、デイサービスが取り組むべき定着・育成の仕組みづくりを紹介します。
日本人スタッフとの協働を促すコミュニケーション施策
外国人スタッフの定着には、日本人職員との円滑なコミュニケーションが欠かせません。
そのためには、以下のような施策が効果的です。
- 多言語掲示・視覚的マニュアルで情報共有を簡潔化
- 月1回のチームミーティングで業務改善・文化理解を共有
- 「外国人スタッフ担当」を設け、相談しやすい環境を整備
これらの取り組みにより、誤解や摩擦を防ぎ、チーム全体の一体感が高まります。
教育・評価制度を整え、外国人もキャリア形成できる仕組みづくり
外国人スタッフも、日本人と同様に努力が正当に評価される環境を求めています。
そのため、以下のような制度が効果的です。
- OJT(現場研修)とOFF-JT(座学研修)の併用
- 業務習熟度を「見える化」した評価シート
- 日本語・介護技術試験への合格を昇給・昇格と連動
これにより、目標を持って働ける環境が整い、モチベーションが向上します。
「日本語が上達した」「資格を取得した」といった成長をきちんと評価することが、長期的な定着の原動力になります。
地域・行政・支援機関との連携によるサポート体制の強化
デイサービス単体では支援体制をすべて完結できない場合もあります。
その際は、登録支援機関・地域の社会福祉協議会・行政機関との連携が重要です。
たとえば、
- 登録支援機関と協力して生活支援や通訳を実施
- 地域包括支援センターと情報共有し、トラブルを早期解決
- 行政主催の外国人支援セミナーや交流会に積極参加
こうした連携によって、事業所単独では難しい包括的な支援ネットワークを構築できます。
上乗せ支援や助成金制度の活用で負担を軽減する方法
外国人雇用に関する助成金や補助制度を活用すれば、教育・支援のコストを大幅に軽減できます。
代表的な制度には以下があります。
| 助成制度 | 内容 |
| 人材開発支援助成金 | 語学・介護技術研修に対する費用補助 |
| 外国人材定着支援助成金(自治体) | 支援体制強化や文化交流活動に対する補助 |
| キャリアアップ助成金 | 正社員化・昇格支援に伴う経費補助 |
これらを組み合わせることで、負担を減らしながら定着支援を継続できます。
まとめ:定着の鍵は「制度」ではなく「人を支える姿勢」
制度を整えるだけでは、外国人スタッフは定着しません。
現場の理解・教育・評価・支援を一体化させることで、ようやく“働きたい職場”が生まれます。
制度を「守る」だけでなく、「活かす」——それが、これからのデイサービス経営の本質です。
外国人スタッフが「戦力になる」デイサービス運営とは?現場定着のための実践戦略

特定技能制度を導入しても、現場で外国人スタッフが“戦力化”しなければ意味がありません。
ここでは、形式的な受け入れではなく、現場で成果を出すための実践的な戦略を紹介します。
形式的な受け入れで終わらせない——外国人が活躍できる職場の共通点
定着が進んでいる事業所には共通する特徴があります。
それは「外国人をチームの一員として育てている」という点です。
単なる人員補充として扱うのではなく、
- 意見交換の場を設ける
- 改善提案を歓迎する
- 業務内容に責任を持たせる
といった工夫により、主体的に動ける職場文化を醸成しています。
コミュニケーション・教育・文化理解を仕組み化する3つの実践ステップ
現場で成果を出すには、個人の努力に頼らず仕組みで支えることが重要です。
実践的な3ステップは以下の通りです。
- コミュニケーションの標準化
→ 定例ミーティングで課題共有、伝達のミスを防止。 - 教育計画の可視化
→ スキルマップを作成し、進捗を定期的に確認。 - 文化理解の場を設ける
→ イベント・交流会・地域活動などを通じて相互理解を促進。
この3つを継続的に運用することで、外国人スタッフの離職率は30〜50%改善するといわれています。
外国人と日本人スタッフが協働するチームづくりの成功事例とポイント
成功しているデイサービスでは、外国人スタッフを補助的役割にとどめず、チームの主力として活躍させているケースが多いです。
一例として、
- 外国人スタッフがレクリエーション企画を主導
- 多言語での利用者家族対応を実施
- 指導担当者が「メンター制」で伴走
といった取り組みを行っています。
このように役割を明確にし、信頼と成果の両輪を築くことで、
「外国人スタッフ=即戦力」という環境を実現できます。
まとめ:外国人を“雇う”から“共に成長する”へ
外国人スタッフを真の戦力にするには、経営者・管理者・現場全員の意識改革が必要です。
教育・評価・文化理解を仕組み化し、「共に成長できる現場」を整えることで、
外国人スタッフは単なる労働力ではなく、デイサービスを支える仲間へと変わります。
それこそが、これからの介護業界における真の競争力です。
まとめ|特定技能を正しく理解し、デイサービスの未来を支える体制へ

特定技能制度は、デイサービス事業所にとって人材不足を解決するだけでなく、介護現場を持続的に成長させるチャンスでもあります。
しかし、そのためには制度の表面的な理解だけでなく、法令遵守・教育支援・文化理解・長期的な経営視点が欠かせません。
ここでは、本記事の要点を整理し、今後の行動指針を示します。
受入要件・制度理解・支援体制が信頼を生む
デイサービスで外国人を採用する際は、
- 受入対象施設かどうか(指定・許可・運営基準)
- 労働条件が日本人と同等であるか
- 教育・支援体制を整えているか
の3点を確実に確認する必要があります。
この体制が整っていれば、特定技能人材の受け入れはスムーズに進み、行政からの信頼も得やすくなります。
逆に、これらを怠ると申請不認定や行政指導・離職リスクにつながります。
制度を“守る”だけでなく、“活かして信頼を築く”姿勢が成功の鍵です。
「雇う」から「育てる」へ——長期的視点が成功の鍵
特定技能制度は、一時的な採用対策ではなく、外国人を含めたチーム全体の成長を支える仕組みです。
外国人スタッフの教育・評価・キャリア形成を整えることで、
- 離職率の低下
- チームワークの向上
- 利用者満足度の改善
といった効果が期待できます。
そのためには、日本人スタッフとの協働・文化理解・継続的な教育投資が不可欠です。
制度の運用を「コスト」と捉えず、「未来への投資」として取り組むことが、
“人が育ち、人が残るデイサービス”への最短ルートになります。
まとめ:制度を正しく活かし、持続可能な介護現場へ
これからの介護業界では、外国人材の活用が「選択肢」ではなく「前提」になります。
デイサービスもその例外ではありません。
特定技能制度を正しく理解し、受入れ → 教育 → 定着 → 戦力化という流れを確立することで、
事業所は単なる人員確保を超えた“持続可能な経営モデル”へと成長できます。
外国人スタッフと共に働く現場を「挑戦」ではなく「共創の機会」として捉える——
その一歩が、これからのデイサービスの未来を支える原動力になるでしょう。
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