
10/03 (金)更新
溶接で特定技能外国人を雇用するには?対象分野・要件・雇用条件を総整理
国内の溶接業務を支える人材不足が深刻化する中、特定技能制度を活用して外国人材を受け入れる企業が増えています。
特に製造業や造船業、建設業といった現場では、即戦力となる技能人材の確保が急務となっており、溶接はその中心的な職種のひとつです。
しかし、制度の内容は分野ごとに異なり、適用条件・試験要件・就労制限などを正しく理解しておかなければ、雇用後のトラブルや不適合リスクにつながることもあります。
この記事では、「溶接」における特定技能の制度概要から、対象分野、受け入れ体制、注意点、そして実際の企業の声までを網羅的に解説。
採用を検討する企業が確実に制度を活用できるよう、分かりやすく整理しました。
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特定技能制度の概要と溶接業務の位置づけ
溶接分野で外国人材を採用するには、まず特定技能制度の仕組みと分野分類を正確に把握することが不可欠です。
一言で「溶接」といっても、その業務内容や所属分野は製造・造船・建設などに分かれており、制度の扱いも異なります。
ここでは、特定技能1号と2号の基本的な違いから、溶接が該当する分野、そして再編された制度における注意点までを解説します。
特定技能1号・2号の違いと在留可能期間
特定技能には「1号」と「2号」の2段階があり、溶接人材の多くは1号からのスタートになります。
- 特定技能1号
- 在留期間 – 1年ごとの更新、最長5年まで
- 家族の帯同 – 原則不可
- 該当職種 – 溶接は複数の分野で該当
- 就労条件 – フルタイム勤務、専門性が求められる
- 在留期間 – 1年ごとの更新、最長5年まで
- 特定技能2号
- 在留期間 – 制限なし(更新可)
- 家族の帯同 – 可能
- 該当分野 – 溶接が関係する一部の分野で可能(例:造船・建設)
- 移行条件 – 一定の実務経験と、より高度な試験の合格
- 在留期間 – 制限なし(更新可)
1号は人手不足対応の即戦力、2号は高度人材の長期雇用向けという位置づけです。溶接分野では、造船や建設において2号への移行実績も見られます。
「溶接」が該当する分野はどこか?(製造/造船舶用/建設)
溶接は、実際には複数の分野にまたがって位置づけられています。
業務内容に応じて、どの分野で受け入れるのが適切かを見極める必要があります。
- 工業製品製造業分野(機械金属加工)
- 主に製造業の工場内での金属部品の溶接作業
- 主な試験 – 溶接含む機械金属加工の評価試験
- 特定技能1号のみ対応(2号は現時点で未設定)
- 主に製造業の工場内での金属部品の溶接作業
- 造船・舶用工業分野
- 造船所や港湾工場での大型溶接・鉄構加工
- 技能評価試験には溶接試験を含む
- 特定技能1号・2号ともに制度あり
- 造船所や港湾工場での大型溶接・鉄構加工
- 建設分野(電気通信・躯体など)
- 建設現場での鉄骨の接合、配管の溶接など
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)登録が必要
- 再編により「溶接」は3区分の中で扱いが細分化
- 建設現場での鉄骨の接合、配管の溶接など
同じ溶接でも、現場・用途によって分野が分かれる点が重要です。申請時には実際の作業内容を明確にし、該当分野の制度に則った受け入れを行う必要があります。
制度再編による分野ごとの違いと注意点
2024年以降、特定技能制度は一部分野で大幅な再編が行われました。
これにより、受け入れ企業や支援機関は改めて分野ごとの要件を確認し直す必要があります。
- 建設分野は「3区分」に細分化
- 電気・通信
- 土工・躯体
- 仕上げ・設備
- →溶接は主に「土工・躯体」または「電気・通信」に分類されることが多い
- 電気・通信
- 制度設計・試験実施団体が分野ごとに異なる
- 製造 – JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
- 造船 – JSMEA(日本舶用工業会)
- 建設 – JAC(建設技能人材機構)
- 製造 – JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
- 試験内容・在留資格の名称・転籍可否なども異なる
これらの違いに気づかずに手続きを進めると、申請却下や在留資格の不適合といったリスクに繋がります。
分野の区分をまたいだ転籍も原則不可であるため、採用前の業務内容と制度の整合性を慎重に確認しましょう。
◆溶接の採用では「分野ごとの理解」が成否を分ける
溶接業務で特定技能外国人を採用する際は、「製造」「造船・舶用」「建設」のどの分野に該当するかを正確に判断することが最優先です。
分野によって試験内容、在留期間、キャリアパス、制度要件が大きく異なるため、採用前に制度全体を把握しておくことが、トラブル防止と定着支援の第一歩となります。
特に制度再編後の建設分野では、従来よりも細かなルールが設定されているため、最新情報を踏まえた対応が求められます。
対象となる特定技能評価試験と取得要件
外国人の溶接人材を「特定技能」として受け入れるには、まず評価試験の制度や要件を把握することが必要不可欠です。
特定技能制度では、職種ごとに技能水準を確認するための「評価試験」が設けられており、溶接業務に対応する分野も複数あります。
このセクションでは、実施業種と対応業務、試験範囲や基準、そして技能実習からの移行条件について整理します。
評価試験が実施される業種と対応する溶接業務
溶接に関わる評価試験は、以下の業種でそれぞれ定められています。
いずれも試験合格が特定技能1号の在留資格取得の前提条件となります。
■ 工業製品製造業(機械金属加工)
- 対象業務 – 一般的な工場での金属部品・機械フレームの溶接
- 試験名 – 機械金属加工評価試験(溶接)
- 特徴
- TIG溶接・アーク溶接の基礎知識や実技を評価
- 製造現場での汎用的なスキルが求められる
- TIG溶接・アーク溶接の基礎知識や実技を評価
■ 造船・舶用工業(造船/舶用機械)
- 対象業務 – 造船所などでの大型構造物の鉄骨溶接
- 試験名 – 造船・舶用工業分野特定技能評価試験(溶接)
- 特徴
- 厚板溶接や高い強度が求められる実技
- 国内外での実施が進んでおり、母数も多い
- 厚板溶接や高い強度が求められる実技
■ 鉄道分野(車両製造)
- 対象業務 – 鉄道車両フレーム・台車などの溶接
- 試験名 – 鉄道分野技能測定試験(製造系)
- 特徴
- 軽量かつ高精度な溶接技術が求められる
- 取り扱い事業者が限られるため、ニッチだが専門性が高い
- 軽量かつ高精度な溶接技術が求められる
同じ「溶接」でも、用途や素材・溶接方法によって評価基準が異なるため、現場での作業内容に合った分野の試験を受ける必要があります。
特定技能1号・2号の合格基準と試験範囲
特定技能の評価試験は、1号と2号で難易度や範囲が明確に異なります。
- 特定技能1号
- 筆記試験(日本語での簡単な技術用語、手順など)
- 実技試験(溶接作業の正確さ、接合の強度・仕上がり)
- 合格基準 – 筆記・実技ともに一定の基準点を満たすこと
- 日本語能力 – JFT-BasicまたはN4相当以上が別途必要(多言語対応試験では不要なケースあり)
- 筆記試験(日本語での簡単な技術用語、手順など)
- 特定技能2号
- 実務経験や上位技能を想定した高度な実技試験が中心
- 試験実施分野が限られている(現時点で溶接分野は「造船・建設」の一部のみ対応)
- 長期雇用・家族帯同可のため、企業側にも十分な育成体制が求められる
- 実務経験や上位技能を想定した高度な実技試験が中心
評価試験は国内外で定期的に実施されていますが、分野によっては年数回程度の実施に限られるため、計画的な受験支援が必要です。
技能実習2号からの移行条件と免除制度
溶接職種で既に技能実習を修了している外国人は、「特定技能1号」への移行が可能です。
以下の条件を満たす場合、評価試験が免除されます。
- 移行条件
- 技能実習2号を同一職種(溶接)で「良好に修了」していること
- 実習先企業からの評価書が提出されること
- 在留資格の変更申請が認められること(審査あり)
- 技能実習2号を同一職種(溶接)で「良好に修了」していること
- 免除対象
- 評価試験の筆記・実技ともに免除
- 日本語能力試験も免除対象(技能実習の過程で相当の能力が認められるため)
- 評価試験の筆記・実技ともに免除
この制度は、既に日本で3年程度の就労経験がある外国人材を継続的に雇用したい企業にとって非常に有利です。
また、受け入れ企業側にとっても、日本語コミュニケーションや現場適応力の高い人材を確保できるというメリットがあります。
◆試験要件を理解すれば採用戦略が立てやすくなる
溶接人材の採用を検討するうえで、特定技能の評価試験制度を正しく理解しておくことが第一歩です。
工業製品製造業、造船・舶用工業、鉄道といった分野ごとに試験内容・求められる技術水準・在留要件が異なるため、現場の実情に合った選択が重要です。
また、技能実習からの移行ルートや試験免除の活用によって、よりスムーズで確実な採用体制を築くことも可能になります。
制度理解が深まるほど、無理のない外国人雇用戦略を設計できるでしょう。
特定技能外国人に求められる日本語能力と試験制度
外国人材を「特定技能」として採用する際に避けて通れないのが日本語能力の要件です。
現場での作業に支障が出ないよう、政府は一定水準の日本語力を求めており、評価には主に2つの試験が用意されています。
このセクションでは、日本語能力試験(JLPT)とJFT-Basicの違い、そして実務に必要なコミュニケーション力について解説します。
日本語能力試験(JLPT N4以上)の概要
特定技能1号の取得には、JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)でN4以上の合格が必要とされています。
これは、日本語の理解力を5段階で測る試験で、N5が最も易しく、N1が最難関。N4は「基本的な日本語を理解できるレベル」とされ、以下のような能力が想定されています。
- 日常的な会話や説明をある程度理解できる
- 簡単な読み書きが可能
- 指示や注意を聞き取る力がある
JLPTは年2回(7月と12月)に国内外で実施されていますが、申し込みから結果通知までに時間がかかるため、計画的な受験支援が重要です。
JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の活用
JLPTと並ぶもう一つの選択肢が、JFT-Basic(Japan Foundation Test for Basic Japanese)です。
こちらは「より実用的な日本語力」を測定する目的で開発された試験で、以下のような特長があります。
- CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でA2レベルに相当
- 生活や職場で使われる日本語を重視した設問内容
- 多言語で実施されており、非漢字圏出身者でも受けやすい
- コンピューターによるCBT方式で、試験日程が柔軟
特にアジア圏の送り出し国では、JLPTよりもJFT-Basicを採用するケースが増加傾向にあり、採用企業もこの動きに注目しておくべきでしょう。
現場で求められる実用的な日本語力とは
試験に合格しているからといって、必ずしも現場でスムーズに働けるとは限りません。
現場で本当に求められるのは、以下のような実用的な日本語力です。
- 「危ない!」「止まって!」といった緊急時の指示を理解・対応できる
- 図面・マニュアルの内容をある程度読める
- 先輩や上司との日常会話が成立する
- 報告・相談・確認などの基本コミュニケーションができる
こうした能力は、試験対策だけでは十分に身につきにくい側面があるため、受け入れ企業側での「やさしい日本語」の活用や、現場でのOJTによる教育がカギになります。
◆“合格”より“伝わる力”が現場では重要
特定技能制度では、一定の日本語試験合格が要件とされており、JLPT N4やJFT-Basicがその指標となります。
ただし、現場での作業や安全確保においては、より実践的で双方向のコミュニケーション力が求められるのが実情です。
企業側も試験合格に加え、現場で伝わる工夫や継続的な日本語支援を行うことで、外国人材のスムーズな定着と活躍が期待できるでしょう。
制度と現場のギャップを埋めるのは、採用後の丁寧なフォローにかかっています。
受け入れ企業に求められる条件と法的要件
特定技能外国人を受け入れる企業には、単に人手不足を補うだけでなく、法令を遵守した雇用環境の整備が強く求められます。
技能・日本語試験に合格した外国人であっても、安心して働ける職場がなければ定着は難しくなります。
とくに、雇用契約や労働条件の適正化、登録支援機関との連携体制、社会保険の加入などは、受け入れ企業が果たすべき重要な義務です。
本セクションでは、受け入れに必要な条件と注意点について具体的に整理します。
適切な雇用契約と労働条件の整備
まず前提として、外国人労働者と交わす雇用契約は、日本人と同等以上の労働条件である必要があります。
これは「外国人だから安く雇える」という誤解を防ぐための制度的配慮です。
具体的には以下のようなポイントを押さえる必要があります。
- 就業場所、労働時間、休日、賃金等を日本語および母国語で記載
- 法定内賃金を下回らない給与体系
- 社会保険加入、残業代支給など労働基準法に準拠
また、契約内容は出入国在留管理庁への届け出が必要であり、更新の際にも変更がある場合は速やかな報告が義務付けられています。
口頭契約や不透明な条件はトラブルの原因となるため、明文化と透明性が求められます。
支援計画と登録支援機関との連携体制
特定技能外国人の受け入れには、企業自身が「支援責任者」になるか、登録支援機関と契約して支援を委託する必要があります。
この支援計画では、以下のような支援内容が義務付けられています。
- 日本での生活ガイダンス(銀行口座開設、交通ルールなど)
- 相談・苦情対応窓口の設置
- 日本語学習の機会提供
- 定期的な面談によるフォローアップ
登録支援機関と連携する場合でも、支援状況の把握と企業側の受け入れ体制の整備は不可欠です。
特に初めて外国人を受け入れる企業にとって、信頼できる登録支援機関の選定が成功のカギとなります。
社会保険・労働基準法など法令遵守のポイント
受け入れ企業には、日本人労働者と同様に社会保険・労働保険への加入義務があります。
特定技能の外国人も正規の在留資格であるため、以下のような項目に注意が必要です。
- 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険への加入
- 安全衛生教育や定期健康診断の実施
- 労働時間・残業・休日管理の徹底
- パワハラ・セクハラの防止と職場環境の整備
これらの法令を怠ると、監査や行政指導の対象となり、受け入れ停止処分や在留資格の取り消しといった厳しい措置がとられることもあります。
◆制度理解と法令遵守が信頼を生む
特定技能制度を活用するには、外国人を受け入れる企業側にも高度な準備と責任が求められます。
適正な雇用契約の締結、登録支援機関との協働、社会保険や労働基準法の順守は、すべて外国人材の安心・安全な就労に直結します。
制度を正しく理解し、丁寧な受け入れ体制を築くことで、外国人からも選ばれる企業となり、長期的な戦力として活躍してもらえる環境づくりが実現します。
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採用ステップと実務フロー
特定技能制度を活用して外国人を受け入れるには、明確な採用プロセスと行政手続きの順守が求められます。
人材が試験に合格したからといって即就労できるわけではなく、入国前から雇用契約の締結、在留資格の申請、入社後の教育・配属まで、多くのステップが存在します。
特に初めて特定技能人材を採用する企業にとっては、事前のフロー把握が成功のカギとなります。
ここでは採用に至るまでの一連の流れと注意点を整理します。
採用までの基本フロー(試験合格→面接→契約)
特定技能で外国人を採用するには、まず対象者が所定の技能試験と日本語試験(例:JLPT N4またはJFT-Basic)に合格していることが前提です。
その後の流れは以下の通りです。
- 現地または国内での人材募集・書類選考
- オンラインや対面による面接の実施
- 合格者との雇用契約締結(内容は日本語+母国語併記)
- 支援計画の作成・登録支援機関との契約
ここで重要なのは、面接段階で職場の仕事内容や文化、生活環境を丁寧に伝えることです。
相互理解が不足していると、入社後のミスマッチや早期離職の原因になります。
出入国在留管理庁への申請書類と注意点
雇用契約が締結された後は、在留資格「特定技能」の申請手続きに入ります。
以下が主な申請書類の一覧です。
- 特定技能所属機関に関する届出書類
- 支援計画書および実施体制の証明
- 雇用契約書(翻訳付き)
- 試験合格証明書・日本語能力証明書
- 住居や生活支援の内容を明記した文書
これらを出入国在留管理庁に提出し、審査期間を経て在留資格認定証明書(COE)が交付されます。
この段階で不備があると審査に時間がかかるため、記載内容の正確性と書類の整合性の確保が重要です。
また、海外在住の人材の場合はビザ取得と入国調整も必要となるため、登録支援機関と密に連携しながらスケジュールを立てることが求められます。
入社後の教育と現場配属までの流れ
無事に入国・在留資格の取得が完了したら、次は入社後の教育フェーズです。
ここでのポイントは、単なる現場作業の引き継ぎではなく、日本での生活基盤・職場ルールへの適応支援を丁寧に行うことです。
- 初日 – 生活オリエンテーション(交通ルール、災害時対応、社内ルールなど)
- 初週 – 作業工程の基礎トレーニング、安全教育
- 初月 – 先輩職人のOJTによる現場体験とフィードバック
また、日常会話レベルの日本語支援や、定期的な面談によるフォローアップも重要です。
言語や文化の壁を超えて定着してもらうには、こうした初期教育の手厚さがカギになります。
◆フローの明確化が成功の第一歩
特定技能外国人の採用には、試験合格から入社後まで多段階にわたるフローが存在します。
それぞれの工程において、制度理解と関係機関との連携が不可欠です。
特に初めての採用時には、登録支援機関や行政書士のサポートを活用しながら、抜け漏れのない実務運用を行うことが大切です。
明確な手順を踏み、入社後の支援まで丁寧に設計することで、外国人材との信頼関係を築き、長期的に活躍してもらえる体制を整えることができます。
溶接業務で特定技能外国人を雇用する際の注意点
特定技能制度を活用して溶接人材を採用する企業が増加していますが、適切な法令理解と実務対応を欠いたままの受け入れは、トラブルや違反行為を引き起こす可能性があります。
特に「派遣就労の禁止」「業務範囲の明確化」「労働条件の適正な管理」は、制度の根幹にかかわる重要なポイントです。
ここでは、現場で実際に起こっている問題や行政指導の事例を踏まえながら、特定技能外国人を溶接業務に受け入れる際に注意すべき点を整理します。
雇用形態と派遣禁止の原則
特定技能外国人を派遣社員として就労させることは原則禁止されています。
つまり、特定技能は「受け入れ企業と直接雇用されること」が前提です。
にもかかわらず、一部の現場では「請負契約」の名目で実質的に派遣的な働き方をさせているケースが見られます。
このような実態が発覚した場合、企業は出入国在留管理庁から指導または受け入れ停止措置を受ける可能性があります。
また、契約内容と実態が乖離していると労基署からの是正勧告もあり得ます。受け入れ企業は、必ず直接雇用契約を締結し、就業場所・業務内容を明確に特定する必要があります。
労働時間・残業・休日管理の基準
特定技能外国人にも日本の労働基準法が完全に適用されます。
特に製造業や溶接業務では、繁忙期に長時間労働や休日出勤が常態化しがちですが、これが適正な36協定の範囲を超えている場合、重大な労基法違反となるリスクがあります。
また、外国人材に対して過度な残業を求めたり、有休を与えないといった不当な扱いは、ハラスメントと見なされる恐れもあります。
出退勤管理を曖昧にせず、タイムカードや勤怠ソフトで正確に管理し、時間外労働の上限を遵守する体制を整えましょう。
受け入れ可能な業務範囲の誤解とトラブル事例
溶接業務といっても、すべての作業が特定技能の対象となるわけではありません。
たとえば、電気工事や機械組み立て、物流業務など、溶接以外の工程に関わらせると「制度の逸脱」として問題になる場合があります。
【よくある誤解と実例】
- 誤解例 – 「同じ工場内の作業だから多少別工程でもOKだろう」
- 実際には在留資格の範囲外業務にあたり、資格外活動違反に該当
また、「造船・舶用工業」で雇用された技能者が「建設工事現場」で溶接を行ったケースでは、在留資格とのミスマッチによる退去命令が出された事例も報告されています。
業務内容が分野横断的になりがちな製造現場においては、人材の資格と業務が合致しているかを常にチェックする体制が必要です。
◆制度理解と現場運用のギャップを埋めよう
特定技能による溶接人材の雇用は、企業にとって大きな戦力強化になりますが、制度上のルールを理解しないままの運用は非常にリスクが高いのが現実です。
「派遣禁止」「業務の明確化」「労働時間の適正管理」といった基本的なルールを守ることは、単なる義務ではなく、外国人材との信頼関係を築く第一歩です。
トラブルを未然に防ぐためにも、制度理解を深め、実態に即した運用体制を構築することが、企業と外国人双方にとっての持続可能な働き方へとつながります。
初めての受け入れ企業は、専門家や登録支援機関と密に連携しながら、慎重に制度を活用していくことをおすすめします。
「建設分野」における溶接の扱いと他分野との違い
特定技能制度において、溶接作業は複数の分野にまたがって存在するため、企業側にとって「自社の業務がどの分野に該当するのか」「どの在留資格で受け入れられるのか」が非常にわかりづらい領域です。
特に混同しやすいのが「建設分野」と「製造業分野」「造船・舶用工業分野」での溶接作業の区分です。
本セクションでは、建設分野での溶接の位置づけや他分野との相違点、許認可制度との関係性を明確にし、受け入れ時の判断に役立つ視点を整理します。
建設3区分の中での溶接の業務位置づけ
建設分野における特定技能は、「型枠施工」「鉄筋施工」「とび作業」の3職種のみが対象となっています。
これらは厚生労働省が明確に定めた技能測定試験の職種であり、「溶接作業」は建設特定技能の対象職種に含まれていません。
しかし、現場では鉄筋施工やとび作業の一部で、溶接技術が使われることがあるため、「溶接=建設」と誤解されがちです。
重要なのは、溶接が付随的に行われる場合でも、それが主たる業務であるなら建設分野としての受け入れは不可である点です。
建設分野での特定技能の対象となるのは、あくまで技能評価試験で定められた3職種のみであることを再確認しましょう。
建設分野と製造業・造船分野との明確な区分
製造業分野(特に「工業製品製造業」)や「造船・舶用工業分野」では、溶接は主たる作業内容として特定技能1号に明確に含まれています。
つまり、同じ「溶接」という作業であっても、用途や所属する産業によって該当分野が変わるのです。
【例】
- 製造業分野(機械金属加工) – 工場内での部品溶接や組み立て
- 造船・舶用分野 – 船体や船舶機器の製作・溶接
- 建設分野 – 原則として溶接作業は対象外(仮設材などを含めた鉄骨施工なども対象外)
このように、業務の主たる内容・勤務地・所属する法人の事業種別によって在留資格が異なるため、受け入れ前にしっかりとした判断が求められます。
建設業許可やキャリアアップシステムとの関係
建設分野で外国人労働者を受け入れるには、他分野にはない追加的な制度要件が求められます。たとえば、
- 建設業許可の保有
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
- 受け入れ企業および支援機関の建設分野認定
これらが整っていないと、建設分野での特定技能外国人の受け入れ自体が認められません。
一方で、製造業や造船分野ではこれらの要件は求められず、制度の運用にも大きな違いがある点に注意が必要です。
また、建設業界では現場単位での入場管理が厳しく、特定技能外国人の配置や移動にも都度CCUS上の処理が必要となります。
この点が、比較的柔軟に配置変更が可能な製造業分野との大きな違いです。
◆分野ごとの制度理解が雇用トラブルを防ぐ
同じ「溶接作業」であっても、その業務が行われる場所・用途・事業種によって該当する特定技能分野は異なります。
特に建設分野では、溶接作業そのものが対象外であるため、「なんとなく現場作業だから建設扱い」といった曖昧な認識は禁物です。
また、建設業特有のCCUS制度や認定制度の存在も理解しておく必要があり、製造業や造船分野とは受け入れ要件に大きな差があります。
制度を正しく理解し、自社の業務内容に合致した在留資格のもとで人材を受け入れることで、長期的で安定した外国人雇用の実現が可能となります。
初めての受け入れで迷う場合は、行政書士や登録支援機関の助言を仰ぐことが大切です。
【実例で解説】特定技能「溶接」で外国人を雇用した企業のリアルな声
人手不足が深刻化する中、特に溶接分野では若手人材の確保が年々難しくなってきています。
そのような背景から、特定技能制度を活用し、外国人溶接人材を戦力として迎え入れる企業が増加しています。
しかし、導入には不安や課題もつきものです。ここでは、実際に特定技能外国人を雇用した製造業・造船関連企業の実例をもとに、導入時の壁・活躍の様子・今後の展望を詳しくご紹介します。
外国人溶接人材の受け入れ背景と導入時の課題
ある機械部品メーカーでは、国内人材の高齢化と若手の定着率の低さから、生産体制の維持が困難になっていました。
求人広告を出しても応募が集まらず、熟練技術者の退職が重なり、工期の遅れや品質低下のリスクが顕在化していたのです。
そこで注目したのが、「特定技能1号(工業製品製造業)」での溶接人材の採用でした。
しかし導入初期は、日本語の指示が通じない、作業スピードが不十分、図面理解に時間がかかるなどの課題が浮上しました。
また、労務管理や生活支援など、受け入れ企業としての体制整備の煩雑さも課題となりました。
実際の職場での活躍例と溶接スキルの評価
導入から半年が経過すると、職場にも変化が見え始めました。
当初はサポートが必要だった外国人スタッフも、現場OJTや社内の教育担当の支援を経て、TIG溶接やアーク溶接の工程を正確にこなすまでに成長。
ミスの発生率も日本人社員と遜色ないレベルに落ち着き、品質検査の合格率も上昇しました。
特に評価されたのは、技術習得への意欲と責任感の強さです。
ある担当者は「誰よりも早く出社し、溶接の自主練習を繰り返す姿が印象的だった」と話しており、チーム内にも良い刺激を与えているといいます。
また、母国で溶接資格を取得済みの人材もおり、一定のスキルを持っている点も大きな強みです。
技術だけでなく、社内コミュニケーションや安全意識も向上し、長期的な戦力として期待される存在となっています。
成功要因と今後の雇用拡大への展望
成功の背景には、事前のマッチング精度の高さと、教育・生活支援体制の丁寧さがありました。
技能実習からの移行者を受け入れたことで、基本的な日本語スキルや業務理解があった点もスムーズな定着に寄与しています。
また、現場のベテラン社員との信頼関係構築を重視し、単なる労働力ではなく「職場の仲間」として迎え入れた姿勢も、職場内の安定につながりました。
今後は、特定技能2号への移行を見据えた中長期的なキャリアパスの構築にも取り組む予定とのこと。
受け入れの成功を経て、同社では今後さらに2名の採用を検討しており、将来的にはチーム単位での外国人ユニット編成も視野に入れているそうです。
◆溶接業における外国人雇用のリアルと可能性
今回ご紹介した企業の例からも分かる通り、特定技能制度を活用した外国人溶接人材の雇用は、単なる労働力の補充にとどまらず、現場の活性化や技術継承の新たな可能性を秘めています。
もちろん、導入には語学や生活支援、教育体制といった課題も伴いますが、本気で受け入れる覚悟と工夫があれば、戦力として確実に定着します。
慢性的な人材不足に悩む製造業・造船業の現場にとって、特定技能外国人の受け入れは「今ある課題を突破する有効な選択肢」の一つといえるでしょう。
導入を検討中の企業は、実際の成功事例を学びながら、自社に合った受け入れ体制を構築していくことが重要です。
まとめ|分野別に見る「溶接」での特定技能活用ポイント
溶接業務で特定技能外国人を雇用する際には、分野ごとの制度の違いや要件の把握が非常に重要です。
製造・造船・建設という3つの主要な分野には、それぞれ異なる枠組みと雇用上のルールがあります。
工業製品製造業で雇用する場合の特徴
工業製品製造業(機械金属加工分野)は、最も多くの外国人溶接技能者が活躍する現場です。
比較的広範な業務に対応しており、特定技能1号の試験も安定的に実施されています。評価試験の合格に加え、技能実習2号からのスムーズな移行が可能であることも魅力です。
言語レベルはN4程度が求められますが、現場では図面読解や安全ルール理解など実用的な日本語力も不可欠です。
造船・舶用工業での溶接業務と展望
造船・舶用工業分野は、高度な溶接技術が必要とされる分野です。船体構造の溶接や舶用機械の組立など、大型かつ精密な加工に対応するため、即戦力人材の確保が急務となっています。
特定技能として受け入れる場合は、造船特有の用語や作業指示への理解力が求められ、教育体制の整備がポイントになります。
今後のニーズ拡大も見込まれ、長期的な雇用につなげやすい分野と言えるでしょう。
建設業での特定技能「溶接」活用の可能性
建設分野での溶接業務は、「建設特定技能評価試験(とび・鉄筋など)」の一部業務として該当する場合があります。
ただし、建設分野は登録基幹技能者制度やキャリアアップシステムとの連携が必須となっており、制度理解が不十分なままの受け入れはトラブルの元になります。
業務範囲の明確化と、派遣禁止の遵守などの法的条件も踏まえた運用が求められます。
今後、制度改正によって溶接分野の取り扱いが変化する可能性もあるため、最新の動向の把握が重要です。
◎特定技能「溶接」人材の受け入れは分野理解と制度対応がカギ
特定技能制度を活用して外国人溶接人材を受け入れるには、業務内容の適合性、法的要件、日本語力、雇用形態のルールなど、複数の観点での準備が求められます。
製造業・造船・建設のいずれも溶接業務が存在しますが、それぞれ必要な評価試験、雇用条件、制度の運用方法が異なっており、誤解が多いポイントでもあります。
たとえば、工業製品製造業であれば比較的柔軟に受け入れ可能ですが、建設分野ではキャリアアップシステム登録や在留資格更新条件など、制度的な制約がより強く設定されているのが実情です。
また、派遣禁止の原則、労働時間管理、日本語能力の確保といった実務面でも、人事・総務担当者の制度理解と現場との連携が成功の鍵となります。
さらに、実際に雇用している企業からは、「導入当初は文化や言語の違いに戸惑ったが、継続的な支援と明確なルール設定でスムーズな戦力化が実現した」といった声も聞かれています。
特定技能人材の活躍を最大化するには、単なる労働力としての導入ではなく、パートナーとしての育成と支援が不可欠です。
今後、特定技能2号の運用拡大や制度再編も予定されている中で、溶接分野における外国人材活用はますます重要性を増していくでしょう。
業種に応じた正確な制度理解と、現場との橋渡しを行う体制構築こそが、企業成長と人材定着の両立を実現する第一歩となります。
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