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10/03 (金)更新

技人国と特定技能の違いをわかりやすく解説|制度・要件・対象職種の比較で理解が深まる

外国人材の受け入れにおいて、企業や支援機関がよく直面するのが「技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザ特定技能ビザの違いが分かりづらい」という問題です。

 

どちらも外国人が日本で就労するための在留資格ですが、制度の目的や対象職種、在留期間、永住のしやすさなどに明確な違いがあります。

 

実際に、「将来を見据えた長期雇用を重視する企業」と「目先の人手不足を解消したい事業者」とでは、選ぶべき制度が異なります。

 

受け入れる外国人にとっても、キャリア形成や生活設計に大きな影響を与える選択となるため、企業・人材双方にとって最適な制度を理解し選ぶことが重要です。

 

本記事では、制度概要から対象職種、就労条件、在留期間、永住要件、転職のしやすさなど、両制度を徹底比較

 

さらに、採用ニーズや将来像に合わせた制度選びのヒントも紹介します。

 

制度選びに迷っている企業担当者や外国人材支援機関の方は、ぜひ参考にしてください。

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技人国と特定技能の違いとは?基本的な制度概要の比較

外国人を採用する際に、多くの企業が最初に直面するのが「技人国と特定技能、どちらの制度が自社に合っているのか」という問題です。

 

どちらも日本での就労が認められる在留資格ですが、その目的・要件・対象人材・将来の展望などは大きく異なります。

 

制度の本質を正しく理解していないと、企業にとってはミスマッチ採用のリスク、外国人材にとってはキャリアプランに不都合が生じる可能性もあります。

 

このセクションでは、技人国ビザと特定技能ビザの制度概要を比較しながら、向いている人材像まで丁寧に解説していきます。

技人国ビザの概要と目的

技人国ビザ(技術・人文知識・国際業務ビザ)は、主にホワイトカラー系の専門的・知的分野の業務に従事する外国人に与えられる在留資格です。

このビザの主な目的は、高度な専門性や知識を持った外国人材の受け入れを通じて、日本企業の国際競争力を高めること

対象となる職種は、エンジニア、IT、マーケティング、経理、通訳・翻訳、語学指導など、大学卒業レベル以上の知識やスキルが求められる分野に限られます。

技人国では「学歴」または「10年以上の実務経験」が求められ、日本語能力も日常会話レベル以上が期待されます。

企業にとっては、長期雇用・キャリア形成を前提とした人材確保ができる制度です。

特定技能ビザの概要と目的

一方、特定技能ビザは、深刻な人手不足が続く特定の産業分野において、即戦力となる外国人労働者を受け入れることを目的とした制度です。

制度創設は比較的新しく、2019年4月に施行されました。

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」があり、1号は主に現場作業に従事するブルーカラー職種(建設、介護、外食、農業など)が対象です。

ビザ取得には分野別の技能試験合格と、ある程度の日本語能力(N4レベル程度)が必要となります。

また、技能実習を修了した外国人が特定技能に移行するケースも多く、技能実習と特定技能は連続した流れとして扱われることがあります。

企業にとっては、人手不足を即時に補える実務的な制度として重宝されています。

どちらがどんな人材に向いているのか?

両制度を比較した際、求める人材像や採用の目的によって向き不向きが明確に分かれます

技人国ビザが向いているのは、以下のようなケースです。

比較項目技人国ビザが向いているケース特定技能ビザが向いているケース
採用目的専門職としての中長期的な育成即戦力の確保・現場人手不足の補填
想定職種管理・技術・国際業務などのホワイトカラー建設・介護・外食などのブルーカラー
人材の特徴

海外大卒の外国人留学生など

学歴・知識・専門性がある人材

技能実習経験者など

実務能力重視・体力重視の人材

求められる能力IT、語学、マーケティングなどの専門スキル一定の日本語能力と現場対応力
日本語レベル日常会話〜ビジネスレベル(N3〜N2程度)N4程度でも可(分野により異なる)
採用例

– 海外大卒のITエンジニア採用

– 通訳・翻訳スタッフ採用

– 技能実習修了者の再雇用

– 外食チェーンでの人手確保

このように、制度そのものが想定している人材のタイプが異なるため、企業の採用戦略や事業内容に応じて適切に使い分ける必要があります。

制度の本質を理解すれば選び方が見えてくる

技人国と特定技能の違いは、「制度の目的」や「対象職種」「求められるスキル」によって明確に分かれています。
技人国は専門性と長期雇用、特定技能は即戦力と現場支援という位置づけです。

どちらが優れているというものではなく、企業側の目的と人材の特性を照らし合わせて制度を選ぶことが重要です。
この違いをしっかりと理解すれば、外国人採用でのミスマッチを防ぎ、持続可能な受け入れ体制の構築につながるでしょう。

対象職種と仕事内容の違い|技人国はホワイトカラー寄り、特定技能はブルーカラー中心

外国人採用を検討する際、「技人国ビザ」と「特定技能ビザ」では対応できる職種や業務内容に大きな違いがあります。

 

どちらの制度も日本政府が定めた基準に基づき、従事可能な職種が厳格に指定されており、制度の性質によって求める人材像が異なるのが特徴です。

 

このセクションでは、両制度で認められる代表的な業務内容と職種を整理しながら、重複する分野や注意点についても解説します。

技人国で認められる主な業務内容と職種例

「技人国」(技術・人文知識・国際業務)ビザは、知的活動に基づくホワイトカラー系の業務を対象としています。

以下は代表的な職種と内容です。

  • 技術分野(理工系) – 機械設計、ITエンジニア、電気設計など。大学や専門学校での専攻が業務内容と一致している必要があります。

     

  • 人文知識分野(文系) – マーケティング、経理、商品企画、事務職など。経営学や社会学などのバックグラウンドを活かす職種。

     

  • 国際業務分野 – 通訳・翻訳、語学指導、貿易事務など、外国語能力を前提とした業務。

共通点としては、いずれも「日本人と同等の報酬水準であること」「専門性を活かした知的業務であること」が求められる点が特徴です。

単純作業や現場作業、肉体労働は原則として認められていません。

特定技能で認められる主な業務内容と職種例

一方、特定技能ビザは特定の産業分野における人手不足の解消を目的とした制度で、体力・技能が求められるブルーカラー職種が中心です。

対象となる職種は現在12分野に限定されています。

たとえば

  • 介護分野 – 入浴介助・食事介助・排せつケアなど、現場での直接的な身体介護。

     

  • 外食業 – 厨房業務、接客、店舗オペレーションの一部など。

     

  • 建設業 – 鉄筋施工、型枠工、土木作業、足場の組立など。

     

  • 農業・漁業 – 収穫、家畜の飼育、漁業作業全般。

     

  • 宿泊業 – ベッドメイク、清掃、フロント業務の一部。

特徴としては、一定の日本語能力(N4レベル)と技能試験の合格が必要であり、即戦力としての現場投入が想定されている点が重要です。

また、実習からの移行者(技能実習修了者)は試験が免除されるケースもあります。

業務内容が重複するケースとその注意点

実務の現場では、技人国と特定技能でカバーする業務が一部重なるケースもあります。

たとえば、外食業界では以下のような状況が考えられます。

  • メニュー開発や外国語メニュー作成などは技人国として認められる。

     

  • 調理補助や接客業務は特定技能として分類される。

このように、「同じ業界内」でも担当する業務の中身が異なるだけで制度が分かれるため、ビザの取得要件に沿った職務設計が必要です。

仮に本来の在留資格で認められていない業務に従事させてしまうと、「資格外活動」となり不法就労と見なされるリスクが生じます。

また、「技人国として採用したが、現場が忙しくなって清掃や皿洗いを頼んでしまった」など、軽微な逸脱も積み重なれば重大な問題となるため、企業側は職務内容を明確に文書化し、社内でも共有しておく必要があります。

職種選定は“制度ありき”ではなく“業務内容ありき”で

技人国と特定技能の違いは、制度名だけでなく、対象職種の性質や業務の内容に直結しています
採用したい外国人材がどのような業務を担うのかを明確にしたうえで、それに合致した制度を選ぶことが極めて重要です。
「制度に人を当てはめる」のではなく、「業務に合った制度を選ぶ」という視点で設計することで、雇用のミスマッチやトラブルを防ぐことができるでしょう。

在留期間・更新・永住への道のりは?将来設計に大きな違い

外国人材を中長期的に雇用するうえで、単なるビザ取得だけでなく「更新が可能か」「永住や家族帯同ができるか」といった将来的な展望は重要な判断材料です。

 

技人国と特定技能では在留期間の考え方や更新条件、将来の永住許可の取得ハードルに大きな違いがあります。

 

このセクションでは、制度ごとの在留期限や更新の仕組み、さらには家族帯同や永住申請へのつながり方について詳しく解説します。

技人国の在留期限と更新条件

「技術・人文知識・国際業務」(いわゆる技人国)は、1年・3年・5年などの期間で在留許可が与えられる就労ビザです。

初回は1年での許可が多く、その後は滞在状況や雇用条件などに問題がなければ、3年や5年に延長されるケースが一般的です。

更新の主な条件は以下のとおりです。

  • 雇用契約の継続(業務内容に変更がないこと)

     

  • 日本人と同等以上の報酬水準

     

  • 素行が善良であること(納税・法律遵守など)

技人国は更新回数に制限がないため、長期的な雇用やキャリア形成がしやすく、「将来、日本でずっと働きたい」という人材にも適した制度といえます。

また、在留資格の変更や永住権申請もしやすいため、企業としても長期雇用のプランを立てやすくなります。

特定技能の在留期限と再入国可否

一方、特定技能には2つの区分がありますが、一般的に言及されるのは「特定技能1号」であり、在留期間は最大5年間に限定されています。

特定技能1号の特徴

  • 在留期間は「1年」「6ヶ月」「4ヶ月」などで更新され、合計で通算5年まで

     

  • 原則として家族の帯同は不可

     

  • 5年の満了後は、一時帰国か、特定技能2号・他の在留資格への変更が必要

また、特定技能2号に移行できるのは、現在ごく限られた建設業・造船・舶用工業など一部の分野に限定されており、それ以外の職種では5年で雇用が終了する前提で採用せざるを得ません。

再入国については、在留中であれば短期の一時帰国後も再入国許可を得ることで戻ってくることが可能ですが、在留期限を過ぎるとその時点で雇用は終了となります。

したがって、中長期雇用を前提とする企業には不向きな制度となる可能性があります。

どちらが永住・家族帯同に有利か

永住権や家族帯同を視野に入れる場合、技人国が圧倒的に有利です。

技人国ビザの強み

  • 配偶者や子どもの帯同が可能(家族滞在ビザ)

     

  • 在留実績や収入、納税状況などが整えば、永住許可申請も可能

     

  • 将来的に「定住者」や「永住者」「日本人の配偶者等」などへの変更も視野に入れられる

特定技能ビザの制限

  • 1号では家族の帯同不可(2号になれば可)

     

  • 永住申請には在留資格や期間の要件でハードルが高い

     

  • 永住につながる制度設計ではないため、外国人本人の将来設計が立てにくい

特定技能2号への移行が可能な職種であれば家族帯同や永住の可能性も出てきますが、制度的にも人的リソースとしての「即戦力確保」が主目的であるため、あくまでも短期的な労働力補充が前提となっている点は企業側も理解しておくべきでしょう。

中長期雇用なら「技人国」一択、即戦力なら「特定技能」も選択肢に

在留期間や将来設計の観点で比較すると、中長期の雇用・キャリア形成を前提にするなら技人国の方がはるかに有利です。
永住や家族帯同、将来的な役職登用まで視野に入れる企業であれば、技人国での採用が安心で持続性のある選択となります。

一方、即戦力を一定期間だけ確保したい、または技能実習からのスムーズな雇用継続を図りたいという場合には、特定技能を上手く活用することで人材不足の打開につながる可能性があります。
自社の人材戦略と制度の特徴を照らし合わせ、「どの制度が未来を支えるか」を見極めることが重要です。

求められるスキルや語学レベルの違い

外国人材の採用を検討する際、単に在留資格を比較するだけではなく、「どの程度のスキルや語学力が求められるのか」を理解しておくことが重要です。

 

技人国と特定技能では求められる人材像が異なり、採用時にチェックすべき基準や条件、受け入れ後のサポート体制にも違いがあります。

 

このセクションでは、それぞれの制度における学歴・実務経験・語学力、そして雇用企業に求められるサポートの違いについて詳しく解説します。

技人国では学歴・実務経験・日本語力がどの程度必要か

技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)は、ホワイトカラー系の専門職に就く外国人向けの在留資格です。

そのため、以下のような要件が求められます。

  • 学歴 – 大学または専門学校卒業(原則として学士以上)。業務に関連した専攻分野である必要あり。

     

  • 実務経験 – 学歴に代わるものとして、関連分野で10年以上の実務経験があれば申請可能(調理師・通訳など一部例外あり)。

     

  • 語学力 – 法的に日本語試験の合格が義務付けられているわけではないが、日常業務での日本語による会話・読み書きができるレベルが事実上必要

また、企業側としても、専門職としての役割や処遇にふさわしい待遇・職務内容であることを提示する必要があります。

したがって、新卒・中途採用問わず、即戦力や高スキル人材の採用を前提にした制度といえるでしょう。

特定技能に求められる試験合格と日本語能力

一方の特定技能制度では、「即戦力の外国人材確保」が目的であるため、現場で実務を遂行できるスキルと最低限の日本語力を有することが条件です。

  • 技能水準 – 業種ごとに定められた「特定技能評価試験」に合格することが必要(例:介護、外食業、建設など)

     

  • 日本語能力 – 日本語能力試験(JLPT)N4以上または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」に合格していることが求められます。

     

  • 技能実習2号修了者は、試験免除で移行可能という特例もあります。

これにより、専門的な知識や学歴を必要としない代わりに、一定の業務遂行力と最低限の語学力が担保される構造となっています。

日本語の読み書き能力はそこまで高くなくても、現場での簡単な指示が理解できる程度の会話力があれば、業務遂行には支障がないとされています。

入国前と後で求められるサポート体制の違い

受け入れ企業や登録支援機関に求められるサポート体制の充実度にも、両制度で大きな差があります。

技人国の場合

  • 専門職としての採用であるため、原則として特別な支援義務はなし

     

  • 就労ビザの範囲内で、雇用者と被雇用者が一般の社員と同様に契約関係を結ぶ

     

  • 入社後の生活支援は任意対応(ただし、実質的にサポートする企業も多い)

特定技能の場合

  • 受け入れ機関(企業)または登録支援機関が「支援計画」の策定と実施義務あり

     

  • サポート内容には以下が含まれる。

     

    • 生活オリエンテーション

       

    • 住居確保の支援

       

    • 公的手続き(年金・保険等)の同行

       

    • 日本語学習の機会提供

       

    • 苦情や相談への対応

       

  • この支援は入国前から開始され、在留中継続して実施しなければならない

このように、特定技能では雇用前からのきめ細やかな支援体制が義務付けられており、制度的に外国人労働者を保護する設計となっています。

その分、企業側には人材確保だけでなく、生活全般に関わる負担もあるという点に注意が必要です。

高度人材か即戦力か、必要スキルと支援体制の差は明確

技人国では学歴や専門性、日本語での高度な業務遂行力が求められるのに対し、特定技能は現場業務に即対応できる実践力と最低限の語学力があれば採用可能です。

また、雇用後のサポート体制にも違いがあり、特定技能では企業に大きな支援義務が課せられるため、単なる人手不足解消目的での安易な受け入れはリスクになり得ます。

企業のニーズが「専門職としての活躍・長期雇用」であれば技人国、「即戦力としての現場補充・短期的支援」であれば特定技能が向いているといえるでしょう。
制度ごとの適切な理解と人材像の明確化が、採用成功への第一歩です。

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就職しやすさ・転職のしやすさは?実務面での違い

外国人材を採用する企業にとって、「採用後にすぐ辞めてしまうのでは?」「転職は自由にできるのか?」といった実務面の不安や疑問は大きな懸念材料となります。

 

技人国と特定技能では、在留資格としての自由度や企業間の移動制限に大きな違いがあるため、人材の定着性や離職リスク、就職・転職のしやすさを正しく理解することが重要です。

 

ここでは、両制度における転職の可否とその条件、さらに企業が人材を長く活躍させるために意識すべきポイントを解説します。

技人国は転職可能?企業側が注意すべき点とは

技術・人文知識・国際業務(技人国)においては、在留資格自体が「職種」に紐づいており、企業に完全には依存しない設計になっています。

つまり、一定のルールを守れば、転職は可能です。

  • 転職の自由度 – 同一職種内(例:通訳→通訳、SE→SE)であれば、在留資格の範囲内で転職可能
    ただし、職務内容が著しく異なると変更申請が必要になる場合も。

     

  • 手続き – 転職時には在留資格変更は不要なケースが多いが、「就労資格証明書」の取得が推奨される。

     

  • 企業側の注意点 – 雇用が終了した場合、14日以内に「契約終了届出書」を出す義務がある。
    また、外国人本人は在留カードの更新や、再就職までの在留活動に制限を受ける可能性がある。

そのため、待遇やキャリアアップの展望が不十分であれば、人材の流出は起こり得るという点を企業側も認識しておく必要があります。
日本人と同じように「転職活動の自由がある」ことは、採用時の定着戦略にも関わってきます。

特定技能は就労先の変更が可能?手続きや制限の実情

特定技能制度でも、就労先の変更(転職)は原則として認められています

ただし、技人国よりも制度的な縛りが強く、変更時の手続きも煩雑です。

  • 変更の前提 – 同一業種・職種内であれば転職は可能(例:建設業→建設業、外食→外食)。
    異業種への移動は基本的に不可

     

  • 必要手続き

     

    • 転職先の企業が受入機関として認定されていること

       

    • 新たな「雇用契約書」「支援計画」などを含む書類一式を用意

       

    • 出入国在留管理庁への「所属機関変更届出」および変更許可申請

       

  • ブランク期間 – 転職活動中でも在留資格は一時的に有効だが、就労先が決まらないまま3か月以上経過すると資格取り消しのリスクあり

特に注意すべきは、登録支援機関の有無や新しい企業側の体制によって、手続きの可否やスムーズさに大きく差が出る点です。

さらに、特定技能は在留期間が限られているため、転職回数や滞在期間の管理が慎重に行われる傾向があります。

企業間の流動性がある一方で、制度設計上の制限により思うように移動できないケースもあることを念頭に置く必要があります。

企業が人材を定着させるうえで意識すべきこと

外国人材の転職可否だけでなく、「なぜ人材が定着しないのか?どうすれば長く働いてもらえるのか?」という視点が、採用後の安定運用には不可欠です。

人材定着のために企業が意識すべきポイントは以下の通りです。

  • キャリアの見通しを提示する – 昇給制度、評価制度、スキルアップ支援など「将来像」が見える環境が重要。

     

  • 日本語学習の支援 – コミュニケーション力向上が、孤立の防止や職場での安心感につながる。

     

  • 生活面での支援 – 住居探し、生活習慣の理解、相談窓口の設置なども、離職防止に大きく影響。

     

  • 文化的な配慮 – 宗教・食文化・休日など、多様性への配慮が職場環境への満足度を左右する。

     

  • フィードバックと対話 – 定期的な1on1やサーベイを通じて不満や困りごとを早期にキャッチ。

特定技能では義務として支援計画が存在しますが、技人国でも任意のサポートを行う企業の方が人材の離職率が低い傾向にあります。

制度に頼るだけでなく、企業独自の“ウェルカムな職場づくり”が定着に直結します。

自由度と制限、制度ごとの転職実務を理解しよう

技人国は職種の範囲内での比較的自由な転職が可能であるのに対し、特定技能は制度に即した手続きと制限が存在します。
どちらの制度でも企業とのマッチ度が低ければ離職につながるリスクはあるため、採用段階でのミスマッチ防止と、就業後の定着支援が非常に重要です。

「転職されにくい制度」ではなく、「転職されにくい環境・信頼関係をつくる」という視点をもつことで、外国人材の安定雇用が実現します。
制度ごとの違いを理解したうえで、自社に合った人材受け入れ体制を整備することが成功のカギとなるでしょう。

企業が選ぶべき制度とは?採用ニーズ別のおすすめ

外国人材の採用にあたって、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」と「特定技能」のどちらを選ぶべきか悩む企業は少なくありません。

 

両制度には目的・対象人材・支援体制・就労年数などで明確な違いがあり、自社の人材ニーズとマッチする制度を選ぶことが定着率や業務効率に直結します。

 

ここでは、「長期的な育成」「即戦力採用」「制度の併用」など、目的別にどの制度が最適かを解説するとともに、活用事例や導入時の注意点も紹介します。

長期的に戦力化したいなら技人国がおすすめ

企業が「育成前提で優秀な人材を長く雇用したい」と考える場合、技人国の在留資格が最も適しています。

技人国は専門性のある職種を対象とした就労資格であり、人文知識・技術・国際業務に該当する職務であれば、在留期限の更新も可能で、最終的には永住や定住を目指すこともできます

技人国が向いている採用ニーズの例

  • 日本語能力が高く、社内コミュニケーションをスムーズに行える人材を確保したい

     

  • ITや経理、設計、営業など、専門知識やホワイトカラー職の業務に従事させたい

     

  • 社員として育て上げ、将来の幹部候補にしたい

     

  • 長期的に自社の文化に馴染み、定着してくれる人材を採用したい

特に中長期的に事業を拡大していく企業や、育成コストをかけても戦力を確保したい業界(IT、メーカー、商社など)では、技人国が最もフィットする制度です。

即戦力や人手不足対策なら特定技能が有効

一方、「すぐに働ける人がほしい」「人手不足を今すぐ解消したい」というニーズを持つ企業には、特定技能制度が非常に有効です。

特定技能は、「人手不足が深刻な14分野」に限定されるものの、現場レベルで即戦力となる人材を採用できる制度です。

対象分野では技能評価試験と日本語能力の基準をクリアした人材のみが認定されており、ある程度の業務スキルを持って現場に入ってきます。

特定技能が向いている採用ニーズの例

  • 製造業・外食・介護・建設など、現場レベルの労働力を確保したい

     

  • 短期間で一定人数を確保したい

     

  • マニュアル化された業務が多く、一定の訓練で戦力化できる環境

     

  • 地域的に日本人採用が難しく、外国人材の活用が不可欠

ただし、在留期間に上限がある(原則5年)ため、長期雇用には向かない点には注意が必要です。

そのため、繁忙期の対応や離職率の高い業務への補填策として活用されるケースが多くなっています。

複数制度を併用する企業の活用事例と注意点

実際には、技人国と特定技能を併用することで、企業の多様な人材ニーズに対応しているケースも増えています。

たとえば、同じ工場内でも「製造オペレーターとして即戦力の特定技能人材」を採用し、同時に「技術職や品質管理として技人国人材」を登用するケースがあります。

制度併用の実例

  • 製造業 – 特定技能でライン作業、技人国で設計や製品開発

     

  • 建設業 – 特定技能で現場作業員、技人国でCADオペレーター

     

  • 外食業 – 特定技能でキッチンスタッフ、技人国で店舗マネジメントや海外展開スタッフ

ただし、併用にあたっては以下の点に注意が必要です。

  • 制度ごとに必要な手続き・管理体制が異なるため、労務管理や支援体制が煩雑になりやすい

     

  • 人材配置や就労範囲の混同によって、不法就労や契約違反になるリスクがある

     

  • 在留資格ごとの違いを現場責任者が正しく理解し、業務を分けて指示できる体制が必要

制度ごとの条件を明確に理解し、適切なマネジメント体制を整えれば、併用は非常に効果的な戦略となり得ます。

制度選びは「今」ではなく「これから」に目を向けて

外国人材の採用制度を選ぶ際には、自社が「今すぐ人手がほしい」のか、「将来を見据えて育成したい」のかで選択すべき制度が変わってきます
短期的な人手不足解消には特定技能が有効ですが、中長期的に戦力化・幹部候補として活躍してもらいたいのであれば、技人国の活用がより適しています

また、制度を併用して多層的な人材配置を実現している企業も増えており、それぞれの制度の特徴を生かした戦略が今後ますます重要になるでしょう。
自社の経営戦略や職場環境に合わせて、最適な制度を柔軟に選び、人材が活躍できる仕組みを整えることが、採用成功のカギとなります。

迷ったときの選び方ガイド|技人国と特定技能、将来像で選ぶという考え方

外国人材の採用や、自らの就労ビザの選択において、「技術・人文知識・国際業務(技人国)」と「特定技能」のどちらが良いのかは、単純な比較だけでは判断できません。

 

制度ごとに条件や活用可能な職種が異なるのはもちろん、その人のキャリアビジョンや企業側の経営方針によって、向き不向きが変わってくるからです。

 

このセクションでは、「どんな働き方を望むか」「将来的に何を目指すか」「企業として何を実現したいか」などの視点から、迷ったときに制度を選ぶための考え方を解説します。

どんな働き方をしたいかでビザの向き不向きは変わる

外国人本人の「どのように働きたいか」という希望によって、向いているビザは大きく異なります。

たとえば、オフィスワークや専門職、営業・企画などホワイトカラー系の仕事を希望する場合は技人国が適しています

技人国は「学歴」や「職務内容の専門性」が求められる分、就業範囲は限られますが、安定した雇用と長期的なキャリア形成が可能です。

一方、現場作業やサービス業など、手に職をつけてすぐに働きたいという方には特定技能が向いています

業種は限定されますが、制度上「技能評価試験」や「日本語能力試験」などをクリアすれば、短期間で就労が可能であり、即戦力として求められます。

つまり、「安定したオフィス職か」「技能職として現場で活躍したいか」という働き方の志向が、制度選びの大きな分かれ道になります。

キャリア形成・永住・スキルアップ…あなたのゴールはどこ?

制度を選ぶ上で非常に重要なのが、「どのような将来像を描いているか」という本人のビジョンです。

たとえば、日本で長く働き、いずれは永住権を取得したい人には、技人国が適した選択肢となります。

技人国では在留期間の更新が可能であり、条件を満たせば「永住」「配偶者呼び寄せ」「家族帯同」「転職」なども実現できます。

また、技人国での就労経験はキャリアパスとしての幅も広がりやすく、将来の管理職や本国とのブリッジ人材としての成長も見込めます

一方で、特定技能は技能の証明や現場経験を積み重ねることで「熟練人材」としてのステップアップが可能です。

特定技能2号に移行できれば、家族帯同や長期在留も可能になるため、「手に職をつけて専門分野で活躍したい」という人には大きなチャンスです。

つまり、「どこでどんなふうにキャリアを築きたいか」という人生設計が制度選びの指針になるのです。

企業側の経営戦略によっても適した制度は変わる

制度の選び方は、外国人本人だけでなく、採用する企業の視点でも変わります

たとえば、長期的に人材を育成し、社内に定着させていきたいという企業であれば、技人国で優秀な人材を採用し、育てていくスタンスがフィットします。

将来の幹部候補や管理者としての育成を視野に入れている企業では、日本語力や専門性のある技人国人材が重要な戦力になります。

一方、「人手が足りない現場をすぐに補いたい」「離職が多く補充が必要」といった状況では、特定技能の即戦力性が役立ちます

特に飲食・宿泊・建設・介護・製造などの業種では、マッチングがしやすく、現場主導での運用が可能です。

また、企業の中には「部署によって制度を使い分ける」という戦略を採用している例もあります。

本社業務には技人国、現場業務には特定技能というように、制度の特性を活かすことで組織全体の人材戦略が最適化されているのです。

制度選びの鍵は「未来に向けた選択」にある

制度を単に「取得しやすさ」や「就ける職種」だけで判断してしまうと、ミスマッチや早期離職の原因になりかねません。
大切なのは、「どんなキャリアを築きたいのか」「企業としてどんな組織を目指すのか」という将来のゴールを見据えた制度選びです。

技人国と特定技能は、どちらも外国人材の活躍を支える優れた制度ですが、その価値を最大限に活かすには、自分自身または企業としての“未来のビジョン”が不可欠です。
迷ったときこそ、「今の状況」ではなく、「これからどんな姿を実現したいのか」を軸に考えることで、最適な制度と出会えるでしょう。

技人国と特定技能、制度の違いを理解して最適な選択を

技人国と特定技能は、いずれも外国人材の受け入れを目的とした在留資格制度ですが、その制度設計や目的、求められる人材像、将来設計のしやすさには大きな違いがあります。

 

たとえば、技人国は専門性や学歴・経験を重視した中長期的人材向けの制度であり、将来的な永住やキャリアアップを目指す層に適しています。

 

一方で、特定技能は人手不足の現場を支える即戦力人材向けであり、特定の産業分野における短〜中期的な労働力確保を目的としています。

 

制度の違いを正しく理解すれば、採用する企業側も、働く外国人側も、より納得のいく制度選択が可能です。

  • 企業にとって
    「どのようなスキルを持った人材が必要か」「長期雇用か即戦力か」「永住・家族帯同への対応が必要か」などを軸に制度を選ぶことが重要。

     

  • 外国人にとって
    「自分が将来どう働きたいか」「どの制度がキャリア形成につながるか」を考えることが大切。

「どちらが良い・悪い」ではなく、「目的に合った制度を選ぶ」ことが最大のポイントです。

 

制度の特性と将来像を照らし合わせながら、最適な選択をしていきましょう。

 

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  • 監修弁護士

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