10/22 (水)更新
【退職理由別に解説】特定技能の自己都合退職と企業の正しい対応とは?
特定技能外国人が「自己都合」で退職を希望するケースは、現場レベルでも年々増加しています。
しかし、このような場面に直面した企業の多くが、「何を、いつ、どこに届け出ればよいのか」「入管手続きは誰の責任で行うのか」などで混乱を招きがちです。
特定技能制度は通常の労務管理とは異なる独自のルールが多く、退職ひとつとっても対応を誤れば、在留資格の継続や企業側の信頼に影響が及ぶ恐れがあります。
この記事では、特定技能外国人の自己都合退職における正しい対応手順を、退職理由の違いから必要な届出書類、入管やハローワークへの対応、さらに再就職を見据えた支援策まで網羅的に解説します。
実務に即した情報を整理し、トラブルを未然に防ぎながら、外国人材との良好な関係性を維持するためのポイントも紹介していきます。
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特定技能外国人が自己都合で退職するケースとは

外国人雇用において、「自己都合による退職」は決して珍しいものではありません。
特定技能制度のもとで働く外国人材も、家庭の事情や母国への帰国希望、キャリアの方向転換などを理由に、自ら退職を申し出ることがあります。
しかし、企業側が日本人社員と同じ感覚で対応してしまうと、思わぬ手続き漏れやトラブルの引き金になることも。
ここではまず、「自己都合退職」がどのような場面で発生し、会社都合退職と何が違うのか」という基本的な理解から始めましょう。
自己都合退職と会社都合退職の違い
特定技能外国人の退職には、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があり、それぞれ企業の対応方法や提出書類が大きく異なります。
- 自己都合退職
本人が主体的に退職を申し出る場合です。
具体的には「帰国したい」「家族の事情で退職したい」「他業種で働きたい」などが該当します。
この場合、企業が一方的に受け入れを拒否することはできず、就労継続が困難であることを入管へ届け出る必要があります。 - 会社都合退職
企業側の事情による退職です。
例えば、業績不振による解雇や配置転換困難による契約終了などが該当します。
こちらは「解雇」に近い性質を持つため、企業はより詳細な説明責任を負います。
この区分は、単なる「表現の違い」ではなく、入管提出書類の種別・記載内容に直接影響を与える重要なポイントです。
退職の意思表示と受け入れの手続き
自己都合退職の手続きにおいて重要なのは、退職の「意思表示」が明確であることと、それを正式に受け入れるプロセスです。
まず、特定技能外国人本人から退職の意思が口頭・書面で表明されます。可能であれば、本人の署名を含む「退職届」や「意思確認書」を用意し、記録として残すことが望ましいです。
書面がない場合でも、会話記録や通訳を介したやり取りの記録があると、後のトラブル回避に有効です。
企業側は、意思表示を確認したうえで、雇用契約終了に関する内部手続きに入り、入管への届出(様式第3-1-2号など)の準備を進めることになります。
ここで重要なのは、退職日をいつに設定するか、また合意のもとで終了することを明確にすることです。
退職日や合意書面の設定ポイント
退職日については、特定技能外国人との明確な合意に基づき決定する必要があります。
基本的には、民法の原則や就業規則に沿って、退職意思表示の2週間後以降が目安となりますが、本人の帰国日や新たな就職先の入社日によっては前倒しや延長もあり得ます。
注意すべき点として、以下のようなケースでは慎重な対応が求められます。
- 一方的な退職通告後に出勤しない(無断退職)
→ 書面による通知がない場合でも、退職の意思を示す言動やメッセージの記録を保管しておくと、証拠として活用できます。 - 雇用主との認識齟齬がある場合
→「雇用契約終了に関する合意書」などの書面を交わし、合意に基づく退職であることを明文化することが重要です。
このような確認作業は、入管から求められる「退職の経緯説明」の根拠資料にもなるため、文書管理の徹底と記録保管が実務上の要となります。
◎自己都合退職は「証拠」と「合意形成」がカギ
特定技能外国人の自己都合退職は、一般的な雇用契約の終了とは異なり、入管との連携・記録管理・意思確認のプロセスが重要視されます。
会社都合との違いを明確に理解し、退職意思の確認から退職日設定までを文書化・可視化しておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
適切な対応により、企業としての信頼性も確保され、今後の外国人雇用にも良い影響をもたらします。
自己都合退職時に企業が提出すべき届出書類

特定技能外国人が自己都合で退職する場合、企業側には単なる「退職処理」以上の対応が求められます。
特定技能制度は法務省・出入国在留管理庁が管轄しており、雇用契約終了の理由やその経緯を明確に説明する書類を、所定の様式で提出する義務があります。
提出を怠ると、企業の受入れ資格や将来的な外国人雇用の信頼性に悪影響を及ぼす可能性も。
ここでは、自己都合退職が発生した際に企業が提出すべき主要な届出書類について、実務上のポイントも交えながら整理します。
受入れ困難に係る届出書(様式第3-4号)
自己都合退職の際、まず必要となるのが「受入れ困難に係る届出書(様式第3-4号)」です。
これは、企業が雇用を継続できない理由を報告するための書類であり、「就労継続が困難となった場合」に提出が義務付けられています。
記載内容には、退職を申し出た日や退職予定日、退職理由の概要などが含まれ、「本人の意思に基づく退職である」ことを明確に記載する必要があります。
本人の退職届や意思確認書を添付すると、審査がスムーズになります。
なお、提出期限は退職が決まってから14日以内が目安とされており、遅延提出は指導や再発防止報告書の提出対象になる可能性もあります。
雇用契約の終了に係る届出書(様式第3-1-2号)
次に重要なのが「雇用契約の終了に係る届出書(様式第3-1-2号)」です。
こちらは、雇用契約そのものが終了した事実を届け出るための書類です。
具体的には、以下のような情報を記載します。
- 契約終了日(実際の最終出勤日など)
- 終了の理由(自己都合である旨)
- 契約終了後の予定(帰国予定、他社就職希望など)
この書類は、技能実習や他の在留資格からの変更者にも共通して適用されており、企業は在留資格に関わる記録としての正確性が求められるため、本人と事前に認識をすり合わせておくことが重要です。
関連記事:法務省|特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
受入困難となるに至った経緯に係る説明書(様式第5-11号)
受け入れが困難となった背景を詳述するための文書が「様式第5-11号:受入困難となるに至った経緯に係る説明書」です。
これは、退職の原因が本人の意思による場合でも、企業側の状況や支援体制などに問題がなかったかを第三者に説明する目的で提出します。
記載例としては、以下のような内容が該当します。
- 本人からの退職申し出の日時と手段(書面・口頭)
- 退職理由の詳細(家庭の都合、母国帰国希望など)
- 会社として対応を検討したが継続は困難と判断した経緯
この様式は、入管庁が「自己都合退職が不適切に誘導されたものではないか」を確認する視点で重視する資料となるため、事実関係を時系列で丁寧に記載することが信頼性につながります。
関連記事:法務省|特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
支援委託契約の終了届(登録支援機関がある場合)
登録支援機関を活用している場合、自己都合退職に伴い、「支援委託契約の終了届」も提出が必要です。
これは、企業と登録支援機関との間で交わしていた「支援業務委託契約」を正式に終了することを報告する書類です。
提出先は出入国在留管理局で、支援終了日、理由(退職により雇用関係終了)などを記載します。
加えて、登録支援機関は別途「支援の実施状況報告書」の提出も必要となる場合があります。
企業が提出を怠ると、登録支援機関の信用にも関わるため、連携してタイミングよく提出することが重要です。
また、退職日までの支援実施状況を整理しておくと、後のトラブル回避にもつながります。
◎提出書類の役割と期限を正しく理解して対応を
自己都合退職が発生した際は、企業としての義務を的確に果たすために複数の届出書類を迅速かつ正確に提出することが求められます。
特に、様式第3-4号や第3-1-2号などは提出期限があるため、退職が決まった段階で速やかに準備に着手する必要があります。
また、経緯説明書や委託契約終了届なども、「なぜ退職となったか」「支援体制に問題はなかったか」を示す重要な記録です。
適切な届出を通じて、企業としての受入体制の透明性と信頼性を維持することが、今後の外国人材活用にもつながります。
社内での情報共有と専門家の活用により、書類対応のミスを防ぎ、スムーズな退職処理を実現しましょう。
入管への届出以外に必要な手続き(ハローワーク・保険等)

特定技能外国人が自己都合で退職した場合、企業には入管庁への各種届出だけでなく、国内の労働関連機関への手続きも必要となります。
とくに、ハローワーク(雇用保険)、年金事務所(健康保険・厚生年金)、市区町村(住民税関係)といった関係先での事務処理は、すべて法定期限が定められており、適切に対応しなければ後々トラブルの火種となる可能性もあります。
このセクションでは、入管手続きと並行して行うべき「退職時の国内実務」について、提出先や提出書類、注意点を整理して解説します。
雇用保険の資格喪失届
特定技能外国人も、原則として雇用保険の被保険者であるため、退職後には「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があります。
提出先は事業所を管轄するハローワークで、提出期限は退職日の翌日から10日以内です。
提出にあたっては、以下の書類が必要です。
- 資格喪失届(ハローワーク様式)
- 雇用保険被保険者証
- 賃金台帳(必要に応じて)
- 離職証明書(本人が希望する場合)
特定技能外国人が母国へ帰国する場合や、他社での継続就労を希望する場合によって、離職理由の記載に注意が必要です。
自己都合か会社都合かによって、本人が受けられる失業手当の内容に違いが生じるため、正確な離職区分の記載が求められます。
健康保険・厚生年金の喪失手続き
社会保険(健康保険・厚生年金)についても、退職に伴う資格喪失届の提出が必要です。
これは日本年金機構または委託を受けた健康保険組合に提出し、提出期限は退職日の翌日から5日以内と定められています。
提出すべき主な書類は以下の通りです。
- 健康保険・厚生年金保険資格喪失届(様式第3号)
- 資格取得時に交付された保険証(本人・被扶養者含む)
この手続きが遅れると、本人が無保険状態になったり、保険料が二重払いとなるリスクがあるため、最終出勤日=退職日を正確に把握したうえで、迅速な処理が必要です。
また、特定技能外国人が扶養家族を持つ場合、家族の保険証の返却や記録整理も忘れずに行いましょう。
住民税・年末調整関連の処理
企業側として見落としがちなのが、住民税や年末調整に関する処理です。
退職時点でその年の年末調整を済ませていない場合は、源泉徴収票を発行して本人に交付する義務があります。
また、住民税に関しては、以下2点のいずれかの処理が必要です。
- 【通常】退職後の給与支払いがない → 市区町村に通知し、「普通徴収」に切り替え
- 【支払いがある場合】未納住民税を最終給与から天引きして「特別徴収」で納付
特定技能外国人の場合、途中帰国によって年度途中での課税が複雑になるケースもあるため、あらかじめ市区町村の税務課に相談するのが確実です。
さらに、転出証明書や国外転出届の有無もチェックし、本人の退職後の居住予定を把握しておくことも、トラブル回避につながります。
◎入管以外の国内手続きも忘れず、期限内に確実対応を
自己都合退職が発生した場合、入管への届出だけで対応完了ではありません。
企業としては、雇用保険・社会保険・税務関連などの国内実務手続きも並行して進める必要があります。
とくに、退職日から数日〜10日以内の期限が多く設定されているため、準備を後回しにしないことが肝心です。
また、手続きのミスや漏れは、本人の再就職・帰国時のトラブルだけでなく、企業側の信用低下や法令違反のリスクにもつながります。
各種書類の提出状況を一覧で管理するチェックリストを整備しておくと、ミス防止にも有効です。
労務管理担当者だけでなく、支援担当者や顧問社労士とも連携し、円滑な退職処理を実現しましょう。
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自己都合退職に関する注意点とトラブル防止策

特定技能外国人が自己都合で退職する際、企業には入管への各種届出や公的手続きのほか、想定外のトラブルを未然に防ぐための配慮とリスク管理が求められます。
とくに注意すべきは、書類提出の期限超過や、突然の無断退職、退職後の違法就労行為などです。
また、退職理由が「母国への一時帰国」か「日本国内での転職希望」かによっても、必要な手続きや支援体制は大きく異なります。
ここでは、自己都合退職時に発生しやすいトラブルと、それを防ぐための具体的な対応策や注意点を解説します。
書類提出の期限管理に注意
自己都合退職が発生した場合、企業が提出すべき書類には法定の提出期限が厳格に定められており、遅延や漏れは大きなリスクにつながります。
特定技能制度に関連する主な届出は以下のとおりです。
- 受入れ困難に係る届出書(様式第3-4号)
- 雇用契約の終了に係る届出書(様式第3-1-2号)
- 経緯に関する説明書(様式第5-11号)
これらはいずれも退職日から14日以内に入管へ届出が必要です。
さらに、ハローワークへの雇用保険資格喪失届や、社会保険の喪失手続きも、それぞれ退職日から5日〜10日以内に行わなければなりません。
対応が遅れると、企業の受入れ適格性に疑義が生じ、将来的な受入れ停止処分の対象になることもあります。
退職が判明した段階で、早期に必要書類を洗い出し、社内の誰がいつ何を提出するかを明確にしておくことが重要です。
行方不明・無断退職への対応
退職の意思表示がないまま、突然出社しなくなるケース(いわゆる「無断退職」)は特定技能外国人でも発生しうる深刻な問題です。
この場合、単なる自己都合退職ではなく、「行方不明者」としての届出が必要となるため、迅速な対応が不可欠です。
企業はまず、緊急連絡先や住居を確認し、行方の把握に努める必要があります。
それでも連絡がつかない場合は、所在不明者として「受入れ困難に係る届出書(様式第3-4号)」等を提出しなければなりません。
行方不明を放置していると、監督体制の不備と見なされ、企業の制度利用に悪影響を及ぼします。
また、その後に本人が不法就労していた場合、企業への連絡が入ることもあります。
日頃から以下のような対策を講じておくことが推奨されます。
- 定期的な面談で不満や退職意志を早期に察知
- 緊急連絡体制や住居情報の最新化
- 日本語が通じない場合への通訳支援
自己都合退職中の就労制限と違法アルバイトリスク
自己都合で退職した後も、在留期限が残っている特定技能外国人は日本に滞在可能ですが、新たな職場で働き始めるには入管の手続きが必要です。
このプロセスを無視し、許可を得ずにアルバイトなどを始めると「不法就労」に該当してしまいます。
たとえば、以下のようなケースは注意が必要です。
- 転職活動中に飲食店や工場で短期就労を始める
- 特定技能以外の業務(コンビニ、清掃など)に従事する
- 転職が決まる前に働き出す
このような違法行為が発覚すると、本人が強制退去処分となるだけでなく、元の受入れ企業や登録支援機関に対しても調査・指導が及ぶことがあります。
企業としては、退職の際に以下のような対策を講じておくとよいでしょう。
- 母国語による「退職後の注意事項」文書を配布
- 登録支援機関や行政書士による転職支援・相談
- 転職先決定・在留資格変更までの行動ルールの共有
一時帰国か転職希望かで対応が変わる
自己都合退職の理由が「一時帰国したい」のか、「日本で別の企業へ転職したい」のかによって、企業が行うべき対応は大きく異なります。
一時帰国を希望している場合には、受入れ終了後に退去予定である旨を入管へ届け出たうえで、速やかな帰国手配を支援します。
このとき、航空券購入や送迎のサポートを行うこともあります。本当に帰国する意思があるのか確認を怠ると、滞在中の不法就労につながる恐れがあるため注意が必要です。
一方、日本国内での転職を希望するケースでは、入管への届出後、登録支援機関が転職支援を実施し、次の就職先が決まったうえで在留資格の変更申請が必要となります。
企業としては、以下のような確認と対応が求められます:
- 本人が転職希望か帰国希望かを明確に確認
- 転職希望の場合、支援機関へ速やかに連携
- 支援記録や指導内容を文書化し保管
また、転職支援にかかる負担を軽減するために、支援業務の一部を外部に委託することも選択肢となります。
◎自己都合退職こそ、丁寧で柔軟な管理が企業の信用を守る
自己都合退職は予測しにくく、かつ制度上の対応ミスが企業の評価や制度継続に直結する重要な局面です。
特に以下の4点はトラブル回避のために意識すべきポイントです:
- 期限厳守のスケジュール管理
- 無断退職・行方不明時の迅速な対応
- 退職中の違法就労防止に向けた教育と注意喚起
- 帰国希望か転職希望かの明確な意思確認と適切な対応分岐
これらを徹底することで、外国人本人の権利を守りながら、企業としての法令順守と社会的信用を確保することが可能です。
特定技能制度を安定的に運用するうえで、退職時の丁寧な管理は避けて通れないプロセスといえるでしょう。
届出を怠った場合の企業側のリスクと罰則

特定技能外国人が自己都合で退職した際、企業が適切に届出を行わなかった場合、様々なリスクやペナルティが発生します。
単なる手続きミスと軽視すると、行政からの指導や、将来的な人材受け入れへの悪影響を招くおそれもあります。
ここでは、企業が届出を怠った場合に直面するリスクや罰則について詳しく解説します。
行政指導・改善命令の対象となる場合
特定技能制度において、企業が所定の届出を怠った場合、まず懸念されるのが出入国在留管理庁からの行政指導です。
具体的には、以下のような措置がとられる可能性があります。
- 届出遅延や不提出に対する指導文書の送付
- 改善計画の提出要請
- 再発防止策の報告義務
さらに、指導に応じない、または改善が見られない場合は改善命令が出されることもあり、これに従わなければ公的な受け入れ資格の停止や認定取り消しといった深刻な処分に発展する可能性もあります。
在留資格更新時の審査に影響が出る可能性
届出を怠ったまま放置すると、その後の在留資格関連の手続きにも支障が出ます。
たとえば、企業が再び外国人を受け入れようとした際や、当該外国人が転職・更新を行う際に、前の雇用主としての信頼性が問われるのです。
具体的には、
- 「前職企業からの届出がない」ことで、当該外国人の在留資格更新に時間がかかる
- 「不適切な対応歴」がある企業として記録される
- 入管から「受入れ体制に問題あり」とみなされ、今後の受け入れが拒否されるリスク
このように、外国人本人だけでなく、企業側にも中長期的な影響が及びます。
再受け入れ時の信頼性・評価への悪影響
企業が将来、再び特定技能外国人を受け入れようとする場合にも、過去の届出義務違反が障壁となることがあります。特に、
- 登録支援機関を通じた受け入れ時に過去の対応実績が評価対象
- 監理団体や行政書士から「問題のある受入企業」として敬遠される
- 社内コンプライアンス体制が不十分と判断されることで信用低下
といった悪影響が生じ、結果的に人材確保の競争力を失うおそれもあります。
届出を正しく行うことは単なる義務の履行にとどまらず、企業の人材戦略においても極めて重要です。
◎企業リスクを回避するために、届出は早期かつ確実に
特定技能外国人の自己都合退職に際して、企業が届出を怠ると、行政指導や資格更新への影響、再受け入れへの支障といったリスクが発生します。
こうした問題を未然に防ぐためには、社内での退職管理体制を整え、期限内に正確な届出を行うことが何より重要です。
企業の信頼性と将来の人材確保のためにも、コンプライアンスを意識した対応を徹底しましょう。
再雇用・転職を見据えた「自己都合退職後」のキャリア支援

特定技能外国人が自己都合で退職する場合、その後の在留資格維持や就労継続には適切な支援が不可欠です。
特に企業側が「退職後のキャリア支援」に積極的であれば、円満退職だけでなく、企業の評価向上や信頼醸成にもつながります。
ここでは、自己都合退職後の支援における実務ポイントや、企業が担えるサポート体制について解説します。
退職後にビザ変更・再取得をサポートする企業体制
特定技能外国人が退職後も日本に在留し、再就職を目指す場合、最も重要となるのが在留資格の維持または変更です。
たとえ自己都合での退職であっても、誠実な対応を行えば、次の就職先が見つかるまでの在留資格変更や「特定活動」への切り替えが可能になることがあります。
企業としては、以下のような支援体制を整えることが望まれます。
- 在留資格変更のための必要書類の案内・準備サポート
- 転職先候補が見つかるまでの支援機関や相談窓口との連携
- 退職者本人の希望に応じた帰国準備または残留支援の選択肢提示
こうした対応を行うことで、退職後も在留資格を失うリスクを抑え、本人の将来設計を支える姿勢を示すことが可能です。
キャリア相談・職業紹介を通じた円滑な再就労支援
退職後、外国人本人が再び日本で働くことを希望する場合、キャリア相談や職業紹介の支援が重要なステップとなります。
企業が自社で再雇用できない場合でも、支援機関や業界ネットワークを通じて次の職場を紹介する取り組みは、非常に有意義です。
特に効果的な支援例としては、
- 外国人雇用支援に特化した転職エージェントとの連携
- 同業他社・協力企業への紹介状の発行
- 日本語教育やビジネスマナー講座の受講機会の案内
などが挙げられます。
こうした支援によって、退職後の不安を軽減し、本人が安心してキャリアを再スタートできる環境を整えることができます。
企業ブランド向上につながる「円満退職対応」のポイント
特定技能外国人との別れ方一つで、企業のイメージは大きく左右されます。
円満退職の実現は、後続の外国人労働者の採用にも好影響をもたらします。
以下のような対応が、企業のブランド価値向上につながります。
- 退職理由を丁寧にヒアリングし、尊重した対応を行う
- 送別の場を設け、感謝の意を伝える
- 退職後も相談できる窓口を継続的に設置
また、口コミやSNSでの評価にも関わってくるため、こうした細やかな対応は中長期的な採用戦略としても極めて有効です。
「辞め方」が良かった企業は、次に働きたいと思われやすい企業にもなるのです。
◎円満な別れが、未来の架け橋になる
特定技能外国人が自己都合で退職する場合でも、企業側が在留資格の維持支援・キャリア相談・円満な対応を心がけることで、双方にとって前向きな結果が生まれます。
単なる「退職者の処理」ではなく、「未来の再雇用や他者への好影響」にもつながる重要なプロセスです。
支援の質が企業の信頼性を高め、今後の外国人採用にも好影響を与えることを意識して、丁寧な退職後支援を実施していきましょう。
自己都合退職を正しく支援する姿勢が、企業の信頼と採用力を高める

特定技能外国人の自己都合退職は、単なる「退職手続き」にとどまらず、企業にとっても法的責任と信頼構築の両面が問われる重要な局面です。
退職理由の確認や届出書類の提出、保険や税の処理といった事務的な手続きだけでなく、退職後の在留資格維持やキャリア支援にも配慮することで、企業の姿勢が問われることになります。
届出漏れによる罰則や信頼低下を防ぐためには、関係機関への正確な報告と期限管理が欠かせません。
また、円満退職を実現し、退職後もビザ変更や再就労支援を行うことで、企業イメージや採用力の向上にもつながる好循環が生まれます。
これからの外国人雇用においては、「退職までを含めた支援」がスタンダードになる時代です。
特定技能制度の趣旨を正しく理解し、退職後も見据えたサポート体制の構築こそが、選ばれる企業の条件と言えるでしょう。
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