
09/03 (水)更新
在留資格の変更はどう進める?必要書類から申請の流れまで徹底解説
外国人を雇用する企業や、日本で働きたい・住み続けたいと考える外国人本人にとって、「在留資格の変更」は避けて通れない重要な手続きです。
現在の在留資格が希望する活動内容(たとえば就労や転職、結婚など)に適していない場合は、法令に則って適切な変更を行う必要があります。
しかしながら、在留資格の種類や要件は非常に複雑で、「どの資格に変更できるのか」「どのタイミングで申請すべきか」といった判断を間違えると、最悪の場合、不許可や在留期間満了による出国といったリスクも伴います。
この記事では、在留資格変更に関する基本的な考え方から、実際の申請ステップ、ケース別の対応、よくある失敗例、審査で見落とされがちなポイントまでを徹底的に解説します。
「失敗せずに確実に手続きを進めたい」という方にとって、実務的なヒントを得られる内容になっています。
企業の人事担当者にも、外国人本人にも役立つ知識を、わかりやすく丁寧にお届けします。ぜひ最後までご覧ください。
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在留資格の変更とは何か?基本的な考え方と制度概要
外国人が日本で合法的に滞在し、就労・学習・生活を送るためには「在留資格」が必要です。
しかし、来日時と生活・活動の内容が変わることは少なくありません。
たとえば、「留学」で入国したものの、卒業後に日本で働きたい場合や、「家族滞在」から就労を希望する場合など、当初の在留資格ではカバーできない活動を希望する場面が出てきます。
そんなときに必要なのが「在留資格の変更」という手続きです。
この変更を適切に行うことで、法律に則った活動が認められ、安心して日本に滞在し続けることができます。
このセクションでは、「在留資格とはそもそも何か」「どんなケースで変更が必要になるのか」「在留期間の更新との違い」など、制度の基本をわかりやすく整理して解説します。
在留資格とは?種類と目的
在留資格とは、外国人が日本に滞在する目的や内容に応じて与えられる法的地位のことを指します。
日本では活動内容に応じて約30種類以上の在留資格が設けられており、大きく分けると次の3つのカテゴリに分類されます。
- 就労系在留資格(例:技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能など)
- 身分系在留資格(例:永住者、日本人の配偶者等、定住者など)
- 非就労系資格や特別な活動目的の資格(例:留学、家族滞在、短期滞在、特定活動など)
各資格には許される活動の範囲が厳格に定められており、その範囲を逸脱する活動は原則として違法行為となります。
たとえば、「留学」の資格で就労するには、資格外活動許可が必要です。
そのため、活動内容が大きく変わるときは、該当する在留資格へ適切に変更することが求められます。
「在留資格の変更」が必要な具体的なケース
「在留資格の変更」は、単なる住所変更や会社変更とは異なり、在留目的そのものが変わるときに必要な法的手続きです。
具体的には、以下のようなケースが代表的です。
- 「留学」→大学卒業後に企業に就職 →「技術・人文知識・国際業務」に変更
- 「技能実習」の3年間を終えて引き続き働く →「特定技能」に変更
- 「短期滞在」で来日し、日本人と結婚 →「日本人の配偶者等」に変更
これらはいずれも、活動の目的・内容が従来の資格と異なるため、変更許可を得なければ不法就労や不法滞在と見なされる恐れがあります。
また、企業が外国人を採用する場合も、現在の資格での就労が認められているかを確認し、必要に応じて在留資格の変更手続きを進めるサポートが求められます。
「在留期間の更新」との違いとは
「在留資格の変更」とよく混同されがちな手続きに「在留期間の更新」がありますが、両者はまったく異なる性質の手続きです。
- 在留資格の変更 – 活動目的そのものを変更する手続き(例:留学→就労)
- 在留期間の更新 – 同じ在留資格を継続するために、期間だけを延長する手続き(例:留学でさらに1年間滞在)
つまり、「在留期間の更新」は同じ資格での延長であるのに対し、「在留資格の変更」はまったく別の資格への切り替えを意味します。
そのため、審査の観点や提出書類、審査期間なども異なり、変更の方がより厳格な基準で審査されます。
▷在留資格変更の第一歩は制度の理解から
在留資格の変更は、外国人本人の将来に直結する重大な手続きであり、企業にとってもコンプライアンスの観点で非常に重要です。
まずは在留資格の種類や役割を正しく理解し、「変更」が必要になる状況を見極めることが第一歩です。
また、「変更」と「更新」の違いを明確に理解することで、不適切な申請や手続きミスによる不許可を防ぐことができます。
在留資格変更許可申請の基本ルール
外国人が日本において在留中に活動内容を変更したい場合、たとえば「留学」から「就労(技術・人文知識・国際業務など)」への切り替えを希望する際には、「在留資格変更許可申請」が必要です。
この手続きは、出入国在留管理局に対して正しく行わなければならず、申請の内容や時期、書類不備などによっては不許可になる可能性もあります。
企業が外国人を雇用する場合も、現行の在留資格での就労が適法かを確認し、不足している場合は本人と協力して変更申請を行う必要があります。
ここでは、申請の基本的な流れや準備事項について、企業側・個人側の双方にとって重要なポイントを丁寧に解説していきます。
誰がいつ申請できるのか?(提出者と時期)
申請者は原則として本人(外国人本人)ですが、会社が代理人として提出することも可能です。
その場合は、法定代理人または所属機関の職員が出入国在留管理局に出向くことになります。
申請のタイミングは、新しい活動(就職や結婚など)を開始する前が基本です。
たとえば内定が決まった時点で、在留資格変更を申請し、許可が下りてから勤務を始めるという流れです。
許可が下りる前に無断で新たな活動を始めると、資格外活動に該当する恐れがあり、退去強制や在留資格取消のリスクがあるため注意が必要です。
必要書類の種類と入手方法
在留資格変更申請には、目的に応じた複数の書類が必要です。
以下に主要な書類を紹介します。
- 在留資格変更許可申請書(入管HPまたは窓口で取得)
- 理由書(活動変更の背景や目的を記載)
- 写真(縦4cm×横3cm)
- パスポートと在留カード
- 新たな活動に関する証明書類
- 就職:雇用契約書、会社概要、源泉徴収書など
- 結婚:婚姻届受理証明書、日本人配偶者の戸籍謄本など
- 就職:雇用契約書、会社概要、源泉徴収書など
書類は出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードできるものも多く、企業が支援する場合は不備のないよう事前に一式を揃えておくことが重要です。
申請先となる出入国在留管理局の場所
申請は、現在居住している住所を管轄する地方出入国在留管理局(または支局、出張所)に行います。
全国に点在しており、主な都市では以下のような場所で対応しています。
- 東京出入国在留管理局(品川区)
- 名古屋出入国在留管理局
- 大阪出入国在留管理局
- 福岡出入国在留管理局 など
居住地に合った管轄を確認せずに出向くと受理されないこともあるため、事前に公式サイトで確認し、予約制の場合はオンライン予約も検討しましょう。
審査基準と評価ポイント
審査では、以下のような基準・ポイントが重視されます。
- 変更後の活動が適切な在留資格に該当しているか
- 本人の経歴や能力が変更後の活動に適しているか
- 生活基盤(収入、住居など)が整っているか
- 過去に法令違反などがないか
とくに就労系資格の場合は、「専門性」や「日本語能力」「学歴と職務内容の一致性」などが見られます。
また企業側の受け入れ体制や規模、継続的な雇用の見込みなども判断材料となります。
書類内容が不十分、記載ミス、内容の整合性に問題がある場合は、追加資料の提出や審査の長期化が発生することもあります。
手数料の金額と納付方法
在留資格変更許可申請の手数料は4,000円です。
ただし、この手数料は「許可されたとき」にのみ必要となります。つまり、不許可になった場合には納付の必要はありません。
納付は「収入印紙」で行い、以下の手順で進めます。
- 許可通知が届く
- 出入国在留管理局に出向く
- 窓口で収入印紙(4,000円)を貼付した納付書を提出
- 在留カードを新しい資格に差し替え
収入印紙は、管理局の近くの郵便局や売店で購入可能です。事前に準備しておくとスムーズです。
▷正しい申請が信頼と未来をつくる第一歩
在留資格の変更は、外国人本人だけでなく、企業や受け入れ機関にとっても重要な法的責任を伴うプロセスです。
誰が、いつ、どこで、どのように申請すべきかを正確に理解し、必要書類や審査基準に対して万全の準備をして臨むことが、スムーズな許可取得への鍵となります。
特に就労を目的とした変更の場合は、企業側のサポート体制も審査に影響するため、雇用主と本人が一体となって計画的に進めることが成功のポイントです。
在留資格変更の流れと手続き【5ステップで解説】
外国人が日本に滞在中に活動内容や目的を変える場合、在留資格の変更手続きが必要になります。
たとえば、留学生が日本企業に就職したり、技能実習生が特定技能に移行するケースなどがこれに該当します。
しかし、在留資格の変更は単なる届出ではなく、法的根拠に基づく審査制の許可手続きです。
そのため、誤った流れで申請を進めると、不許可になるリスクもあります。
このセクションでは、在留資格変更の手続きを「5つのステップ」に分けて、初めての方にもわかりやすく解説します。
必要な準備、注意点、進行のコツを押さえて、確実な許可取得につなげましょう。
STEP1 資格要件・審査基準を確認する
手続きの第一歩は、「変更したい在留資格が、自分の活動や属性に適しているか」を確認することです。
たとえば、技術・人文知識・国際業務ビザへ変更したい場合は、学歴や職歴が業務内容に合致している必要があります。
逆に、活動が適合しない場合は、在留資格の変更は許可されません。
また、出入国在留管理庁では、在留資格ごとの審査ガイドラインを提示しており、年収の目安、雇用形態、企業の規模・安定性なども審査ポイントに含まれます。
事前にガイドラインを確認し、要件を満たしているかをチェックしましょう。
STEP2 必要書類を収集・作成する
変更申請では、在留資格ごとに求められる書類が異なります。
以下は基本的な書類の一例です。
- 在留資格変更許可申請書(出入国在留管理庁のサイトでダウンロード可)
- パスポートと在留カード
- 申請人の写真(縦4cm×横3cm)
- 申請理由書(自由形式、就労理由など)
- 新たな活動に関する証明書
- 例:雇用契約書、事業内容説明書、履歴書、卒業証明書など
書類の不備や不整合は審査遅延や不許可の原因となるため、企業や支援機関と連携しながら慎重に整えることが重要です。
STEP3 申請書類を提出する(窓口またはオンライン)
必要書類がそろったら、次は申請の提出です。
従来は原則として出入国在留管理局の窓口での提出でしたが、現在は「出入国在留管理庁オンラインシステム(オンライン申請)」も活用できます。
ただし、オンライン申請には事前登録が必要で、所属機関(企業など)が手続きする場合はIDの取得などの準備も求められます。
窓口提出の場合は、事前に予約が必要な管理局もあるため、事前確認とスケジューリングが必要です。なお、申請は必ず「活動を開始する前」に行わなければなりません。
STEP4 出入国在留管理局による審査を受ける
書類提出後は、入管での審査期間に入ります。
一般的には1〜3ヶ月程度かかるケースが多いですが、時期や混雑状況によってはそれ以上かかることもあります。
審査では、以下のようなポイントが確認されます。
- 新たな活動の在留資格への適合性
- 活動内容の正当性と継続性
- 生活基盤(住居、収入など)
- 過去の在留歴・違反履歴の有無
- 企業側の受け入れ体制や雇用の継続性
審査中に追加資料の提出を求められることもありますので、対応できるよう準備しておきましょう。
STEP5 新しい在留カードを受け取る
許可が下りると、「はがきによる通知」またはオンライン通知があります。
これを受けて、出入国在留管理局で新しい在留カードを受け取ります。
受け取りの際は以下を持参します。
- 収入印紙4,000円分(郵便局で購入)
- パスポート
- 古い在留カード
在留カードはその場で更新され、新たな資格での活動が正式に許可されます。
ここで初めて、就労などの新しい活動を開始することができます。
▷流れを理解し、確実な準備でスムーズな変更を
在留資格の変更は、外国人本人のキャリアや生活、企業にとっての人材戦略にも直結する重要な手続きです。
ステップごとの流れを正しく把握し、要件確認・書類準備・提出・審査・受け取りという5つの段階を丁寧に進めることが、許可取得への近道です。
特に初めての申請の場合は、専門家のサポートを受けることや、企業側の協力体制を整えることが成功の鍵となります。
ミスのない準備と計画で、スムーズな変更を実現し、新しいステージへの一歩を確実に踏み出しましょう。
ケース別|在留資格の変更例と注意点
在留資格の変更は、活動内容やライフステージの変化に応じて柔軟に対応できる制度ですが、変更先の資格によって必要な要件や注意点が大きく異なります。
誤った申請や準備不足は、不許可や手続きのやり直しといったトラブルにつながることもあるため、事前の理解が不可欠です。
ここでは、よくある変更ケースごとに、実際の注意点やポイントを詳しく解説します。
これにより、自社で外国人を雇用している場合や、個人として資格変更を検討している方にも、より具体的な判断材料を提供します。
「留学」→「特定技能」へ変更する場合
留学ビザから特定技能ビザへ直接変更することは可能ですが、注意すべきポイントがいくつか存在します。
まず、特定技能への変更には、「技能測定試験」および「日本語能力試験(N4以上)」の合格が原則必要です。
ただし、特定技能1号の対象分野において、学業と実務の関連性が高い場合でも、在学中のアルバイト経験は実務経験としてカウントされません。
さらに、卒業後すぐに特定技能へ切り替えるには、速やかに企業との雇用契約を結び、在留資格変更の手続きを行う必要があります。
間に合わない場合、資格外活動や短期滞在を挟むことはできないため、計画的なスケジュール調整が必要です。
「技能実習」→「特定技能」に移行する場合(特定活動を挟む)
技能実習から特定技能への移行は制度上認められており、現在非常に多くの実習修了者がこのルートを活用しています。
技能実習2号を良好に修了した場合、「試験免除」で特定技能1号への変更が可能となります。
ただし、いきなり在留資格変更ができるわけではなく、多くのケースでは一時的に「特定活動(移行準備)」を経由する必要があります。
この特定活動の期間内に、受け入れ企業と雇用契約を結び、受入機関登録などを済ませたうえで、特定技能への変更申請を行います。
特定活動の有効期限内に手続きを終えられないと、在留資格が失効するリスクがあるため、スピーディーな準備が求められます。
「留学」→「技術・人文知識・国際業務」への変更
多くの外国人留学生が、日本企業への就職によってこの在留資格への変更を目指します。
ここでは、専攻内容と職務内容の関連性が最大の審査ポイントです。
たとえば、経済学を学んだ学生が経理職に就くなど、学歴と職種のマッチングが明確である必要があります。
曖昧な関連性や不一致がある場合、変更は不許可となる可能性があります。
また、雇用契約書や企業側の事業説明書も必須書類となり、企業側の経営安定性や受け入れ体制も審査対象になります。
中小企業が採用する場合は、受入理由書や会社案内などを添付することで信頼性を高めることが重要です。
「短期滞在」→就労系資格への変更は原則不可
「観光」や「親族訪問」などで発給される短期滞在ビザからの在留資格変更は、原則として認められていません。これは不正就労や制度の乱用を防ぐための措置です。
ただし、例外的にやむを得ない事情(災害、戦争、政治的な変動など)がある場合は、法務大臣の特別な判断で変更が認められる可能性もあります。
しかし、これは極めて稀なケースであり、基本的には一度帰国してから就労ビザを新規取得するのが正式なルートです。
企業側も、短期滞在中の外国人を即採用する前に、在留資格の取得状況を十分に確認することが不可欠です。
身分系資格(配偶者等・永住者など)への変更
「日本人の配偶者等」「永住者」「定住者」などのいわゆる“身分系”資格は、活動の自由度が高く、就労制限がほとんどありません。
そのため、変更を希望する方も多くいます。
配偶者等ビザに変更する場合、婚姻関係が実質的かつ安定していることが求められ、単なる形式婚や短期の同居などでは不許可となる場合もあります。
面談や写真、生活状況に関する詳細な書類の提出が求められることもあります。
永住者ビザに関しては、在留期間の長さや素行の善良性、安定した収入など複数の審査基準があるため、計画的に準備を進める必要があります。
▷ケースごとの特徴を理解し、確実な準備を
在留資格の変更は一律のルールではなく、ケースごとに制度の趣旨や審査基準が大きく異なります。
とくに留学生・技能実習生などからの変更は、企業側のサポート体制と本人の準備がそろって初めてスムーズに進行します。
逆に、制度上認められていない変更(短期滞在→就労資格など)については、例外的措置に頼らず、正規の手続きを踏むことが重要です。
各ケースの特徴を理解した上で、適切な在留資格と活動内容のマッチングを図ることが、許可取得への最短ルートです。
必要に応じて行政書士などの専門家の助言を受けながら進めることも、有効な対策となります。
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在留資格変更時の注意点と審査での落とし穴
在留資格の変更は、外国人本人にとっても受け入れ企業にとっても重要な転機となります。
しかし、「要件に合っているはずなのに不許可になった」「審査が長引いて就労開始が遅れた」など、思わぬ落とし穴に陥るケースも少なくありません。
とくに初めて手続きを行う企業や外国人にとっては、どこに注意すべきか、何が審査に響くのかが分かりづらいことが最大のリスクです。
本章では、在留資格変更をスムーズに進めるために事前に押さえておきたい4つの注意点を解説します。
書類の整備やスケジュール管理、制度上の制約を正しく理解し、トラブルを未然に防ぎましょう。
資格要件に合致しているか十分に確認する
最も重要なのは、希望する在留資格の活動内容と実際の仕事内容が合致しているかを確認することです。
とくに「技術・人文知識・国際業務」など就労系の在留資格では、以下の点が問われます。
- 学歴や職歴と業務内容との関連性
- 就業先企業の事業内容と配置部署の整合性
- 給与水準が日本人と同等であるかどうか
形式的な雇用契約があっても、実態が伴っていなければ不許可となる可能性が高いため、企業側も十分な説明資料(職務内容書・受入理由書など)を準備することが重要です。
短期滞在からの変更は認められにくい理由
短期滞在(観光や親族訪問など)からの就労ビザへの変更は、原則として制度上認められていません。
これは、在留資格の目的外活動を防止するための制度的な措置です。
ただし、特例として災害や政治的混乱などで帰国が困難な場合には、法務大臣の裁量で例外的に変更が認められるケースもあります。
しかし、これは極めて限定的な対応であり、通常は一度帰国し、現地の在外公館を通じて新規申請するのが正当な手続きです。
企業側が短期滞在中の外国人を採用する計画がある場合、ビザの種類と変更可能性を慎重に確認することが不可欠です。
審査期間を見越したスケジュール管理が重要
在留資格の変更には平均で1か月〜2か月程度の審査期間がかかるとされており、時期や案件によってはそれ以上かかることもあります。
このため、就労開始日や契約期間などのスケジュールを立てる際には、必ず「審査期間」を見越して余裕を持った準備が必要です。
特に注意すべきなのが、現在の在留期限が迫っている場合です。在留期限前に申請すれば審査中は特例的に在留が認められるとはいえ、準備不足による提出遅れは致命的になりかねません。
不備のある申請書類は即却下される恐れも
在留資格変更の申請書類は、形式的にも内容的にも非常に厳しくチェックされます。記入漏れ、記載ミス、必要書類の不足などがあると、不許可または補正対応を求められます。
さらに、虚偽申請と見なされるようなケースでは、再申請不可や出国命令などの厳しい対応が取られることもあるため、注意が必要です。
不備の原因として多いのは以下のような点です。
- 在留資格変更後の職務内容が曖昧
- 受け入れ企業の財務書類や登記簿謄本の提出漏れ
- 本人の在留履歴や活動経歴との整合性不足
少しでも不安がある場合は、専門家(行政書士やビザコンサルタント)にチェックを依頼することも有効です。
▷準備不足が招く“落とし穴”を避けるには
在留資格変更の申請は、書類の準備からスケジュール管理まで、一つのミスや見落としが大きなトラブルにつながる非常にデリケートな手続きです。
とくに、制度上の制限(短期滞在からの変更不可など)や審査基準(学歴・職歴との整合性)、審査期間の見積もりといった点を軽視すると、本人にも企業にも深刻な影響が出かねません。
今後の変更申請を成功させるには、早期準備・正確な情報収集・専門的な視点の導入が鍵となります。
企業が主体的に制度理解を深め、適切なサポート体制を整えることが、在留資格変更の成功率を大きく高めるのです。
在留資格変更許可申請書の記入方法と書類の書き方
在留資格を変更する際には、「在留資格変更許可申請書」という所定の書類の提出が必須です。形式はA4の両面印刷で構成されており、すべての項目に正確かつ丁寧に記入することが求められます。
記入ミスや不備があると、審査の遅延や不許可のリスクが高まるため、外国人本人だけでなく、受け入れ企業や支援者にとっても正しい理解が欠かせません。
この記事では、在留資格変更許可申請書の書き方の基本ルールから、顔写真の仕様、紙提出とオンライン申請の違いまでをわかりやすく解説します。
基本的な記入ルールとフォーマット
申請書は出入国在留管理庁の公式サイトからダウンロードでき、原則として手書きでもPC入力でも可です。
ただし、以下のルールを守ることが重要です。
- 黒インクまたは黒文字で記入
- 漢字・カタカナ・英字ははっきりと記載
- 修正液や修正テープの使用は不可
- 訂正箇所は二重線+訂正印
主な記載項目には以下のような情報が含まれます。
- 本人情報(氏名、生年月日、国籍、在留カード番号など)
- 現在の在留資格・希望する資格
- 勤務先または進学先の情報
- 同居家族や過去の在留履歴
- 活動内容の具体的記載(雇用契約や業務内容など)
特に活動内容の欄は審査の要点となる部分なので、企業の事業内容との整合性や本人の適性を示すよう記載しましょう。
顔写真のサイズ・背景色などの注意点
申請書には顔写真(1枚)の貼付が必要であり、以下の仕様を厳守する必要があります:
- サイズ:縦4cm×横3cm
- 背景:無地(白・薄いグレーなどが望ましい)
- 撮影日:過去3か月以内
- 表情:無帽・正面・無背景で、顔がはっきりわかること
- 印刷:光沢写真用紙にプリント
顔写真は申請内容の本人確認に使われるため、証明写真機や写真館での撮影が推奨されます。
スマートフォンで撮影した写真を加工して使用する場合は、規格外となる可能性があるため注意が必要です。
書面提出とオンライン申請の違い
申請書の提出には「窓口での書面提出」と「オンライン申請(e-申請)」の2つの方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、ケースに応じた選択が重要です。
書面提出の特徴
- 最寄りの出入国在留管理局へ直接提出
- 書類原本をその場で確認してもらえる
- 不備があればその場で指摘を受けられる
一方で、提出のために本人または代理人が出向く必要があるため、地方や混雑する局では待ち時間が長くなることもあります。
オンライン申請の特徴
- 出入国在留管理庁の「在留申請オンラインシステム」経由で提出
- 24時間いつでも申請可能
- 原則として書面の郵送不要(一部例外あり)
ただし、オンライン申請を利用するには、事前のアカウント登録や企業のID取得などが必要であり、慣れていない場合はハードルが高く感じることもあります。
また、一部の在留資格変更にはオンライン対応していない種類もあるため、注意が必要です。
▷書類の完成度が申請の成否を左右する
在留資格変更の申請では、申請書の記入内容がそのまま審査対象となるため、いい加減な記載や形式不備は致命的なミスにつながります。
- 正確なフォーマット・明瞭な記述
- 写真や添付資料の要件を満たしているか
- 書面とオンライン、適した方法の選択
これらのポイントを一つひとつ丁寧に確認し、審査官にとって分かりやすく納得のいく申請資料を整えることが、許可取得への最短ルートとなります。
企業担当者や本人が不安を感じる場合は、行政書士などの専門家に相談するのも効果的な選択肢です。
ミスなく、確実な申請を進めるためにも、事前の準備と正確な理解を心がけましょう。
在留資格の変更に関するよくある質問
在留資格の変更手続きは、就労や留学、結婚など人生の大きな転機と関わる重要な申請です。
しかし、実際に手続きを進めようとすると、「いつ申請できる?」「どれくらい時間がかかる?」「万が一ダメだったらどうする?」といった不安や疑問が浮かぶのが自然です。
ここでは、在留資格変更に関して多くの申請者や企業担当者が抱えやすい「3つの質問」について、わかりやすくお答えします。
申請前の不安を解消し、スムーズな手続きを進めるためにぜひ参考にしてください。
いつから申請できる?タイミングは?
在留資格の変更申請は、現在の在留資格の「在留期間が残っているうち」に行う必要があります。
一般的には、新しい活動(例:就職、進学、結婚など)を開始する前に申請し、許可を得るのが原則です。
たとえば、留学生が卒業後に企業へ就職する場合、「卒業予定日が近づいた段階」や「内定が決まった時点」で申請可能です。
ただし、活動を開始してからの申請は原則NGとされるため注意が必要です。
また、短期滞在の在留資格からの変更は原則不可とされており、特例的な状況でしか認められないため、出国→再入国で別のビザを取得する必要があるケースもあります。
重要なのは、在留資格が有効なうちに「将来の活動内容」を前提に、余裕をもって申請することです。
審査期間はどのくらいかかるのか?
審査期間は、ケースや申請先の出入国在留管理局の混雑具合によって異なりますが、おおむね1か月〜2か月程度とされています。
ただし、次のような要因によって長期化することもあります。
- 提出書類に不備や記載ミスがある
- 面接や追加資料提出が必要になる
- 就労先企業の規模や活動内容に不透明な点がある
- 外国人本人の経歴に複雑な履歴がある
また、繁忙期(3月〜4月など)は審査が混み合い、3か月以上かかるケースもあります。
そのため、在留期限に余裕を持って申請を行い、審査期間中の活動についても計画を立てておくことが重要です。
不許可になった場合の対処法は?
万が一、在留資格変更が不許可になった場合でも、すぐに退去しなければならないわけではありません。
まずは通知書を確認し、不許可の理由を把握することが最優先です。
不許可通知には、「理由」や「不足している書類」、「活動の不適合」などが記載されています。この内容を元に、次のような対応が可能です。
- 再申請 – 内容を修正し、不足書類を整えてもう一度申請
- 異議申立て – 法的根拠をもって再審査を求める(許可される可能性は低め)
- 帰国準備の猶予期間申請 – 今後の手続きを整えるための短期的な在留を希望する場合
また、許可が出る可能性があるにもかかわらず書類の不備や説明不足で不許可となる例もあります。
行政書士などの専門家に相談し、第三者の視点で再申請をサポートしてもらうのが効果的です。
▷事前の確認と冷静な対応がカギ
在留資格の変更手続きは、一見複雑に見えるものの、基本的なルールを押さえておけば決して難しいものではありません。
大切なのは以下の3点です。
- 申請タイミングは早めに計画し、活動開始前に申請する
- 審査には数週間〜数か月かかると見込んで余裕を持つ
- 万が一の不許可も想定して、対応策を準備しておく
こうした知識をもとに準備を進めることで、不要なトラブルや不安を避けることができます。
確実な申請を行いたい場合は、専門家の力を借りるのも一つの手段です。
冷静かつ丁寧な対応が、在留資格変更の成功につながります。
企業ブランディングと外国人雇用の相乗効果とは
外国人を積極的に採用する企業が増えるなか、その効果は単なる労働力の確保にとどまらず、
企業ブランディングの向上や採用戦略の強化、さらにはCSR・ESGの観点からの評価向上にもつながっています。
ここでは、外国人雇用が企業ブランディングにもたらす具体的なメリットを解説します。
ダイバーシティ推進がもたらす企業イメージ向上
近年、国内外問わず「多様性(ダイバーシティ)」への取り組みが、企業価値のひとつとして注目されています。
外国人を雇用することで、以下のようなポジティブな企業イメージが生まれます。
- 多文化共生を実現する先進的な企業という印象
- 国際的な視点を持つ柔軟な経営スタイルをアピールできる
- 若年層やZ世代の求職者からの共感や支持を得やすくなる
実際、多国籍の従業員を採用・活躍させている企業では、会社紹介資料やホームページにおいて「ダイバーシティへの取り組み」を明示し、ブランドの差別化につなげているケースも目立ちます。
また、外国人従業員のSNS投稿や口コミが国際的なPR効果をもたらし、社名の認知向上にも寄与することがあります。
外国人雇用が採用戦略に与えるポジティブな影響
外国人雇用を通じて得られるのは人手だけではありません。
採用の面でも以下のような好循環が生まれます。
- 企業の魅力が高まり、応募者数が増加
- 他の候補者にも「多様な人材が活躍できる職場」という安心感を提供
- 新卒・第二新卒層のリファラル採用やSNS拡散の促進
さらに、外国人の採用経験を持つ企業は、雇用に関するノウハウや制度面の整備が進んでおり、今後の採用活動全体の底上げにもつながります。
また、外国人従業員が自国の知人を紹介することで、新たな採用チャネルが生まれる点も見逃せません。これは特に特定技能制度を活用する際に顕著です。
CSR・ESGの観点から見た多国籍人材の活用意義
企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)においても、外国人雇用は大きな評価ポイントとなります。
- 地域との共生や国際貢献を意識したサステナビリティ経営
- SDGsの「質の高い教育」「働きがいのある仕事と経済成長」などに連動
- ESG投資の対象企業として注目される可能性
とくに、地方企業が外国人雇用を進めることで、地域の人口減少や人手不足への対策にもなり、自治体との連携による支援制度の活用にもつながります。
社会全体の文脈において「雇用の受け皿となる企業」であるというポジションを築けることは、中長期的な競争力の源となり得るのです。
ブランディングと外国人雇用は企業成長の両輪に
外国人雇用は単なる人材確保策ではなく、企業ブランディングを強化する有効な戦略のひとつです。
多様性を受け入れる企業姿勢は、求職者・投資家・地域社会からの信頼を高め、CSRやESGの面でも大きなメリットをもたらします。
これからの時代、外国人雇用を戦略的に取り入れることは、企業の持続的成長と社会的評価の向上を両立させる鍵となるでしょう。
人材確保の枠を超えた「経営的価値」として、積極的な取り組みが求められています。
まとめ|在留資格変更は計画的な準備が成功の鍵
在留資格の変更は、外国人本人にとっても、受け入れる企業にとっても非常に重要なプロセスです。
単なる書類手続きではなく、制度の正しい理解と綿密な準備、スケジュール管理、そして制度趣旨に沿った運用が求められます。
特に「留学」や「技能実習」などから「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」などの就労系資格に変更する場合には、目的に合致した業務内容と職場環境の整備がポイントとなります。
また、身分系の在留資格へ変更を希望する場合は、要件が異なるため注意が必要です。
審査にかかる期間や提出書類、不許可時のリスクなどをあらかじめ把握し、出入国在留管理局の審査基準を意識した申請準備を行うことが、スムーズな変更許可への第一歩です。
さらに、外国人雇用を通じた企業ブランディングの向上やCSR・ESG活動への貢献という観点からも、在留資格変更の制度は戦略的に活用すべき制度といえるでしょう。
今後の日本社会において、外国人材は欠かせない存在となっていきます。
だからこそ、在留資格変更という制度を正しく理解し、有効に活用することで、企業と外国人双方にとって価値ある未来を築いていきましょう。
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