10/22 (水)更新
技能実習3号と特定技能は何が違う?制度の本質と雇用の注意点を徹底解説!
少子高齢化により深刻化する人手不足。その解決策として注目されているのが、外国人材の受け入れ制度です。
中でも「技能実習3号」と「特定技能」は、企業が即戦力となる外国人を雇用するうえで欠かせない在留資格制度ですが、両者の違いが分かりづらいという声も多く聞かれます。
技能実習制度は「人材育成」を目的としており、一定の技能習得を前提とした制度。
一方で特定技能は、特定業種における即戦力の確保を目的とした制度です。
とくに「技能実習3号」は、2号の修了者のみが申請できる限られた制度であり、特定技能1号や2号とは異なるルールが存在します。
本記事では、技能実習3号の制度概要をおさらいしたうえで、特定技能制度との違いを比較し、実際に「3号から特定技能1号・2号へ移行」する際の注意点まで詳しく解説します。
また、単なる制度比較にとどまらず、自社にとって最適な外国人雇用戦略のヒントも提示します。
「自社にとってどの制度が適切なのか?」「長期雇用を見据えるなら何を準備すべきか?」
そんな疑問をお持ちの経営者・人事担当者の方に向けて、実務に役立つ知識と判断基準をわかりやすくまとめました。
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技能実習3号とは何か?制度の概要と特徴

外国人の技能実習制度は、長年にわたり日本の産業現場を支えてきました。
その中でも「技能実習3号」は、技能実習2号を良好に修了した外国人が、さらに2年間の延長実習を行うことができる在留資格です。
つまり、技能実習制度の中で最長5年間の就労を可能とする特別な枠であり、企業にとっては経験を積んだ外国人材を引き続き雇用できるチャンスでもあります。
しかし、制度の背景や目的を理解しないまま3号を選択すると、想定外の制限や運用上の課題が生じる可能性もあるため、正しい知識を持つことが重要です。
このセクションでは、技能実習3号の目的や制度の基本概要、企業と実習生それぞれのメリット・デメリットを整理していきます。
技能実習3号の目的と背景
技能実習3号は、技能実習2号を優良な形で修了した外国人に対し、追加の就労機会を与える制度です。その背景には、以下のような目的があります。
- 実習生のさらなる技能向上
- 企業側の人材育成の継続性の確保
- 特定業種における慢性的な人手不足の緩和
技能実習制度自体は、開発途上国への技能移転を通じて国際貢献を目的としていますが、3号ではより実務的な視点が強くなり、「即戦力として引き続き活躍してもらいたい」という企業側のニーズを制度化した側面もあります。
3号へ進むには、受け入れ企業や監理団体が「優良」と認定されている必要があり、実習生本人の希望だけでは進めません。この点も、他の在留資格とは異なる制度的な特徴です。
在留期間や条件の基本事項
技能実習3号の在留期間は最長2年間で、1号(1年)+2号(2年)と合わせると通算最長5年間の実習が可能になります。
ただし、すべての実習生が自動的に3号へ進めるわけではありません。
主な条件は以下のとおりです。
- 技能実習2号を優良に修了していること
- 帰国後、原則1か月以内に3号申請を行うこと(例外あり)
- 受け入れ企業・監理団体が「優良認定」されていること
- 対象職種が3号移行を許可されていること(現在は限られた職種のみ)
また、3号に進む場合は一度帰国が必要という運用ルールがあり、企業側にとっては一時的な人材ブランクが発生する点も考慮すべきです。
企業・実習生双方のメリットとデメリット
技能実習3号には多くのメリットがある一方で、制度上の制限も多く存在します。
ここでは企業・実習生それぞれの視点で整理します。
【企業側のメリット】
- 経験豊富な外国人材を再び雇用できる
- 新たな受け入れコスト(募集・教育)が不要
- 既存の社内ルール・現場環境に慣れているため即戦力となる
【企業側のデメリット】
- 優良認定の取得や維持が求められる
- 一度帰国の手続きが必要で手間がかかる
- 特定職種にしか対応しておらず柔軟性が低い
【実習生側のメリット】
- 引き続き同じ企業で就労できる安心感
- さらなる技能習得と収入の安定
【実習生側のデメリット】
- 帰国と再来日の手間・費用負担
- 転職先・職種変更不可など制限が多い
このように、3号には制度的な厳しさと引き換えに、継続雇用のメリットがある制度であると言えます。
◆技能実習3号の活用は「継続雇用戦略」の一手になる
技能実習3号は、技能実習制度のなかでも企業と実習生双方にとって「継続」の価値がある制度です。
2号で培ったスキルや人間関係を活かし、即戦力として再び迎え入れることが可能になる一方で、優良認定の取得や職種制限など、制度特有の要件や制限には十分注意が必要です。
自社が制度要件を満たしており、3号での継続雇用が適していると判断できる場合には、特定技能への移行と比較しながら、戦略的に3号の活用を検討していくと良いでしょう。
次のセクションでは、3号と特定技能の具体的な違いをより詳しく掘り下げていきます。
技能実習3号と特定技能の違いを徹底比較|制度・働き方・業種別の違い

日本における外国人材の受け入れ制度には、技能実習制度と特定技能制度の2つが存在します。
特に「技能実習3号」と「特定技能1号」は、現場で即戦力として働く人材を対象とした制度でありながら、制度目的や働き方、転職の可否などに大きな違いがあります。
このセクションでは、企業が人材を受け入れる際に押さえておきたい比較ポイントを整理し、どの制度が自社に適しているかを判断するための材料を提供します。
制度目的・受け入れ体制の相違点
技能実習制度は本来「国際貢献」が目的で、開発途上国の人材育成を支援する位置づけです。
一方、特定技能制度は人手不足の解消を目的とした即戦力の確保を主眼に置いています。
| 比較項目 | 技能実習3号 | 特定技能1号 |
| 制度目的 | 開発途上国の人材育成・技能移転(国際貢献) | 日本国内の人手不足解消 |
| 対象者 | 技能実習2号を修了した実習生 | 技能試験および日本語試験に合格した人材(または技能実習修了者) |
| 管理体制 | 監理団体(協同組合など)が間に入る | 登録支援機関または企業が直接支援 |
技能実習3号は制度上の制約が強く、受け入れには厳格な条件があります。
その一方で、特定技能はより柔軟な制度であり、企業が直接外国人材と契約を結ぶケースが増えています。
在留資格の自由度と転職可否の比較
在留資格の観点でも、技能実習3号と特定技能1号では就労の自由度が大きく異なります。
| 比較項目 | 技能実習3号 | 特定技能1号 |
| 在留期間 | 最大2年間(実習全体で最長5年) | 最長5年(更新制) |
| 転職の可否 | 原則不可(変更には厳格な要件) | 同業種内なら転職可 |
| 一時帰国 | 原則なし | 一時帰国可(再入国許可あり) |
| 家族帯同 | 不可 | 原則不可(2号で帯同可能) |
特定技能制度は労働者としての側面が強く、労働基準法などの適用対象として保護される点も企業側にとって重要な違いです。
一時帰国や就労範囲、転職の可否に関する違い
実習3号では企業間の移動ができず、体調不良やトラブルがあっても帰国か除籍が基本です。
対して特定技能は、同一業種内なら転職や移動が可能なため、労働者の権利がより守られている制度といえます。
たとえば、建設分野で技能実習3号として働いていた人が体調不良で離職した場合、基本的には制度の継続ができず帰国となります。
特定技能であれば、条件さえ整えば他の建設会社に移る選択肢があり、就労継続が可能です。
一般職種における比較ポイントまとめ表
以下に、製造業や清掃、農業など「一般職種」に該当する業務において、技能実習3号と特定技能1号の比較ポイントをまとめました。
| 項目 | 技能実習3号 | 特定技能1号 |
| 対象業務 | 技能実習対象の認定職種(84職種) | 特定技能の許可職種(12分野) |
| 実務の内容 | 教育的な実習が中心 | 即戦力としての実務 |
| 雇用形態 | 実習生(教育的雇用) | 労働者としての契約 |
| 日本語力 | 実習中に一定の日本語力が必要 | 日本語試験(N4相当)合格が要件 |
| 人材確保の柔軟性 | 限定された職場、転職不可 | 同業種内での転職が可能 |
| 長期的な雇用活用 | 最大5年で帰国 | 特定技能2号で永続雇用も可能性あり |
このように、実習3号は制度的な制限が多い一方で、特定技能は企業の人材戦略に柔軟に対応しやすい制度であることが分かります。
介護・建設など業種別に見た主な違いの事例
特定技能制度は12分野に限定されていますが、業種ごとの運用状況にも明確な違いがあります。以下に主な職種ごとの比較例を示します。
介護分野
- 技能実習3号 – 受け入れ可能だが、主に身体介護ではなく「周辺業務」に限定。
- 特定技能1号 – 身体介護も含めたフルスコープでの従事が可能。日本語力や介護試験の合格が必須。
建設分野
- 技能実習3号 – 建設作業のうち、特定の作業に限定される(例:鉄筋施工)。
- 特定技能1号 – 複数の業種(型枠施工・配管・防水など)に対応し、かつ更新による継続雇用も可能。
宿泊・外食分野
- 技能実習3号 – 対象外。
- 特定技能1号 – 受け入れ可能。日本語試験と業務試験の合格が必要。
このように、業種によってはそもそも技能実習3号の対象外であることも多く、特定技能制度の方が選択肢の幅が広いと言えるでしょう。
◆人材活用の視点で最適な制度を選ぶには
技能実習3号と特定技能制度は、制度の成り立ちや運用ルールに大きな違いがあります。
特定技能の方が、即戦力確保・人材確保の柔軟性・転職可能性の点で優れており、企業の中長期的な戦略に合致しやすい制度といえます。
一方で、技能実習3号も「優秀な人材を引き続き受け入れる枠」として活用できるため、実習2号修了者を安定的に受け入れたい企業にとっては有効な手段です。
なお、特定技能制度の詳細(移行要件・試験・在留資格更新など)については、別記事にて詳しく解説しています。
人材受け入れ制度の選択に迷った際は、自社の業種や人材戦略に応じて、両制度の特性を整理しながら検討してみてください。
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技能実習3号から特定技能1号へ移行する方法

技能実習3号で一定の実務経験を積んだ外国人が、より自由度の高い就労を可能とする「特定技能1号」へ移行するケースが増えています。
この制度変更は単なるビザの切り替えではなく、キャリアの広がりや人手不足解消の一手としても注目されています。
このセクションでは、技能実習3号から特定技能1号へ移行する際の要件や流れ、必要書類などを詳しく解説します。
必要な条件・移行のタイミング
技能実習3号から特定技能1号へ移行するには、いくつかの明確な条件を満たす必要があります。
特に重要なのは「技能評価試験」や「日本語能力」の確認、そして在留期間との関係です。
主な移行条件は以下の通りです。
- 技能評価試験に合格していること(または技能実習2号を良好に修了している)
- 日本語能力があること(業種により異なるが、N4程度が目安)
- 在留期限が切れる前に手続きを行うこと
- 同一職種・業務分野において実習を行っていたこと
移行のタイミングは、技能実習3号の在留期間内に申請を完了させるのが原則です。
特定技能1号の審査には一定の時間がかかるため、できれば在留期間の3〜4か月前には準備を開始しておくのが望ましいとされています。
制度上の注意点
- 一部の分野では技能実習3号修了後に技能試験や日本語試験の免除措置があります。
- 同一職種への移行が基本ですが、分野によっては再試験が必要になる場合もあるため、業種ごとの詳細確認が必須です。
技能実習3号から特定技能1号への移行には、試験合格・日本語能力・職種の一致など複数の要件を満たす必要があります。
特に在留期限に間に合うよう早めの準備が重要です。
移行にかかる期間と流れ
移行のプロセスは複数のステップに分かれており、それぞれに必要な準備と手続きがあります。
全体の流れを事前に把握しておくことで、スムーズな移行が実現できます。
主なステップは以下の通りです。
- 受入企業・登録支援機関との相談・契約
- 技能評価試験・日本語試験の受験と合格
- 必要書類の準備・翻訳
- 特定技能1号の在留資格変更許可申請(入管への提出)
- 審査結果の通知・新在留カードの取得
標準的なスケジュール感
- 書類準備 – 1〜2か月
- 審査期間 – 1〜2か月(混雑状況により変動)
- 合計 – 3か月〜最大5か月程度
一時帰国が必要な場合もあるため、その場合は再入国の準備も並行して行う必要があります。
ただし、原則として在留資格変更の範囲内で国内移行も可能です。
補足
- 特定技能1号へ移行することでより柔軟な労働条件(転職可・更新制)が得られるため、計画的な準備が重要です。
移行には平均3〜5か月程度の時間がかかります。
試験合格・書類準備・入管手続きと段階的に進める必要があり、スケジュールを逆算して行動することが成功の鍵です。
書類準備や入管への提出方法
書類準備は、移行の成功可否を左右する非常に重要なステップです。
必要書類の不備や記載ミスがあると、審査の遅延や不許可のリスクもあるため注意が必要です。
主な提出書類
- 在留資格変更許可申請書
- 受入機関の支援計画書(登録支援機関が作成)
- 雇用契約書の写し
- 技能評価試験・日本語試験の合格証明書(該当者)
- 技能実習修了証明書
- 住民票(写し)やパスポート、在留カードのコピー
- 支援体制に関する書類一式
ポイント
- 書類は日本語で統一し、外国語の文書は翻訳が必要です。
- 支援計画書は登録支援機関に依頼することで質を担保できます。
- 在留資格変更手数料は4,000円(2025年4月改定済)
提出方法と注意点
- 入管窓口への直接提出、または郵送での申請も可能
- 一部の管轄ではオンライン申請(出入国在留管理庁のサイト経由)にも対応
- 不備があると補正書類の提出を求められ、審査が長引くリスクあり
移行申請では細かな書類の正確性と支援体制の明記がカギとなります。
専門機関の協力を得ながら、記載ミス・翻訳漏れ・提出期限遅れを防ぐことが成功のポイントです。
◆成功のカギは「早めの準備」と「正確な申請」
技能実習3号から特定技能1号への移行は、制度の要件を理解し、確実な準備を行えば十分可能なステップです。
自由度の高い働き方や在留の継続を目指す実習生にとって、大きな転機となります。
移行に際しては、
- 移行条件と職種の一致を確認
- 試験のスケジュールと結果を早めに把握
- 書類の不備や提出遅れを防ぐ対策
を講じることが必要です。
企業・支援機関・実習生が三位一体で動くことが成功への近道となるでしょう。
関連記事:これを読めば大丈夫!特定技能1号の制度全体と取得条件を完全解説
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技能実習3号から特定技能2号へ進むことはできるのか?

日本での技能実習を終えた後も、引き続き専門的な分野での就労を希望する外国人にとって、「特定技能2号」は魅力的な選択肢となります。
しかし、技能実習3号からいきなり2号へ移行することはできず、特定技能1号を経由してステップアップする必要があります。
このセクションでは、技能実習から特定技能2号へ進むルートを明確にし、必要な条件や試験内容、2号のメリットまで詳しく解説します。
1号取得後に2号へ進む条件とは
技能実習3号修了後、特定技能2号へ直接移行することは認められていません。
まず特定技能1号を取得し、一定期間就労・実務経験を積むことが前提です。
特定技能1号から2号へ移行するには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 特定技能1号の在留資格を取得済みであること
- 所定の業種において熟練した技能を有していると認められること
- 分野ごとの「技能評価試験」と「日本語試験」等の要件をクリアしていること
- 1号での就労実績をもとに、2号での就労継続が妥当と判断されること
2号へ移行する際には新たな在留資格変更申請が必要となり、移行のタイミングは、1号の在留期間満了前に行うことが推奨されます。
該当する職種と必要な試験・実務経験
2025年時点で、特定技能2号への移行が認められているのは以下の2分野のみです(今後追加の可能性あり)
| 分野 | 概要 | 主な職種例 |
| 建設分野 | インフラ・住宅等の施工に関わる業種 | 型枠施工・左官・とび・配管など |
| 造船・舶用工業分野 | 造船・艤装・鉄工などの専門作業 | 溶接・鉄工・機械加工など |
これらの分野で特定技能2号に移行するには、特定技能1号での実務経験(通常1年以上)に加え、熟練技能を証明する技能評価試験に合格する必要があります。
試験の実施頻度や内容は分野ごとに異なり、建設分野では熟練度を証明するための高度な実技試験が設けられています。
また、2号では日本語能力の試験は不要ですが、実務遂行に十分なコミュニケーション能力が求められます。
長期就労・家族帯同が可能になるメリット
特定技能2号に移行する最大のメリットは、日本での長期的な生活設計が可能になる点です。以下のような特典があります。
- 在留期間の更新が無制限(実質的な永住に近い)
- 配偶者・子どもの帯同が可能(家族滞在)
- 同じ企業で継続就労しやすく、安定した職場環境を維持できる
- 地域社会に溶け込むための支援制度も増えている
技能実習や特定技能1号と異なり、キャリア構築や日本での定住を視野に入れた働き方が可能になることから、優秀な人材の定着にもつながっています。
特に建設や造船分野では、将来的に現場監督や熟練作業者としてのステップアップが見込まれており、本人の努力次第でキャリアの幅を広げられる制度です。
◆技能実習→特定技能1号→2号は可能なステップアップの道
技能実習3号から直接特定技能2号へ進むことはできませんが、特定技能1号を経由することで、長期就労と家族帯同が可能な2号への移行が現実的な選択肢となります。
特定技能2号はまだ限定された職種のみが対象ですが、その分高度な専門性を活かせる環境が整っており、就労者にとっても企業にとってもメリットが大きい制度です。
今後、他分野にも拡大が検討されており、最新情報のチェックは欠かせません。
なお、特定技能2号の詳細は、別記事にてより詳しくご紹介していますので、移行を検討中の方はそちらもぜひご覧ください。
関連記事:特定技能2号になるには?取得条件・必要な試験・対象分野を徹底解説!
技能実習から特定技能へ移行する際の注意点

技能実習を終えた外国人労働者が、引き続き日本で働き続ける手段として注目されているのが「特定技能制度」です。
しかし、単純に制度を切り替えればよいというものではなく、移行の過程には見落とされがちなリスクや注意点が潜んでいます。
とくに技能実習3号から特定技能1号への移行を検討している場合、タイミングや在留資格の空白、社会保険の納付状況、転職可能な業種かどうかの確認など、事前に対策を講じておかないと不利な状況に陥る可能性もあります。
このセクションでは、技能実習から特定技能へのスムーズな移行を実現するために、押さえておくべき3つの重要ポイントについて詳しく解説していきます。
在留期限と実習修了日のギャップに注意
まず最初に気をつけたいのが、技能実習修了日と在留期限のズレによる「空白期間」の問題です。
技能実習3号の修了後に特定技能1号へ移行する際、制度上はスムーズな資格変更が可能とされていますが、実際には技能実習の最終日と在留期限との間に数日のギャップが生じるケースも少なくありません。
この間に適切な手続きをしていないと、「資格外活動」扱いになる恐れがあります。
たとえば、技能実習を修了したその日に退職となり、次の在留資格申請を数日遅らせた場合、不法滞在リスクが発生することもあるため、注意が必要です。
対策としては、修了前から在留資格変更許可申請の準備を始めておくことが重要です。また、必要に応じて「在留期間更新」と「在留資格変更」を同時に申請する方法も有効です。
健康保険料・年金などの未納はNG
技能実習期間中は、原則として健康保険や厚生年金などの社会保険への加入が義務付けられています。
ところが、実習期間中に保険料や年金を未納・滞納していた場合、特定技能への移行審査で不利に働く可能性があることはあまり知られていません。
入管庁は、特定技能1号への変更審査において「日本での生活実績」や「社会的な義務の履行状況」も確認しており、未納が発覚した場合は審査が遅延したり、場合によっては不許可になるケースも報告されています。
また、健康保険証の返却忘れや、年金手帳の情報に不備があると、企業側の受け入れ手続きにも支障が出ることがあります。
移行を検討している段階で、市区町村役場や勤務先経由で納付状況の確認を行い、未納があれば清算・相談することが肝要です。
転職可能な職種かどうかの確認も必要
特定技能1号では、転職は原則として認められていますが、転職先が特定技能の対象業種に該当していなければ、資格を維持することはできません。
つまり、実習を終えた後に他の業種へ移りたいと考えていても、その職種が「特定技能対象の12分野」に含まれていなければ、就労資格の取得そのものができないのです。
また、同じ分野であっても、職種の細かな分類(例:介護分野でも訪問介護は対象外など)によって、移行が不可能となる場合もあるため要注意です。
移行を考える際は、事前に自分の実習職種と、移行後に就きたい職種が一致しているか、特定技能の対象であるかを入念に調査することが欠かせません。
迷った場合は、受け入れ予定の企業や登録支援機関、行政書士に相談するのが安全です。
◆スムーズな移行には「計画性」と「情報確認」が鍵
技能実習から特定技能への移行は、制度上は認められているものの、実務上は細かな落とし穴がいくつも存在しています。
- 在留期限と実習修了日の間に空白期間ができないよう手続きを早めに
- 健康保険や年金などの社会保険は未納がないか必ず確認
- 希望する職種が特定技能の対象かどうかを事前にチェック
これらのポイントを見落とすと、せっかくの就労継続のチャンスが不許可やブランク期間によって断たれてしまう可能性もあります。
今後も日本で働き続けたいと考えるなら、制度理解と移行準備は早め早めに行動することが成功の鍵となります。
技能実習3号で終わらせない!外国人材の長期活用に向けた戦略的ステップ

技能実習制度を通じて育成した外国人材が、実習終了後に帰国してしまう、このような“人材流出”に悩む企業は少なくありません。
実習生は多くの場合、数年かけて企業文化や業務知識を習得し、戦力として大きな役割を担うようになります。
しかし、制度上の制限により在留期限が来れば帰国せざるを得ないケースが多く、企業にとっては人材育成コストの回収が難しくなる課題も生じます。
そのような中、「特定技能制度」を活用することで、実習を終えた外国人材を引き続き雇用し、中長期的な戦力として活用する動きが広がりつつあります。
このセクションでは、技能実習3号で終わらせず、企業が外国人材を長期にわたって活かすための制度設計やキャリアパス形成、法令順守と成長支援のバランスの取り方について戦略的に解説していきます。
実習終了後の人材流出を防ぐための制度設計とは
技能実習制度は本来、「技能の習得・母国への移転」を目的とした国際協力制度ですが、実際には人手不足の業種を支える実務的な人材制度としても機能しています。
しかし、実習3号で終了となると、多くの外国人材が帰国してしまい、企業側としては「せっかく育てた人材を手放す」結果に。
これを防ぐためには、実習終了後も日本で働き続けられる道筋を企業が用意しておく必要があります。
近年では以下のような制度的な選択肢が整備されています。
- 特定技能1号への移行(試験・実務要件を満たせば最長5年間就労可能)
- 技術・人文知識・国際業務などの在留資格へ移行(より専門性が必要)
- 育成就労制度(旧・実習制度の再構築案)への対応準備
これらの制度を念頭に置き、企業内であらかじめ「移行可能な制度設計」を行っておくことで、終了後の雇用継続が可能になります。
たとえば、特定技能試験の受験支援や、受け入れ分野の把握、登録支援機関との連携などを事前に準備しておくことで、制度を超えた“実質的な雇用の継続”が可能になります。
自社内キャリアパスと特定技能への円滑な橋渡し
制度だけでなく、人材本人の「働き続けたい」というモチベーションをどう維持するかも重要な視点です。
外国人材が帰国せず日本で働き続けたいと思う理由には、以下のような要因が関係しています。
- より高い報酬を得たい
- スキルアップ・キャリア形成をしたい
- 安定した就労環境を求めている
こうしたニーズに応えるためには、企業側が「キャリアパスの提示」や「昇格・昇給の仕組み」を用意しておくことが不可欠です。たとえば、
- 実習生 → 特定技能1号 → 現場リーダー → 通訳担当や品質管理職 などの道筋を示す
- スキル評価や語学力向上に応じた手当制度を導入する
- 長期的なビジョンを共有し、将来的には母国との連携事業にも関わる可能性を提示する
これらの施策は、外国人材のモチベーション向上だけでなく、企業全体の離職率低下や人材の定着率向上にも直結します。
特定技能制度への移行が単なる“延命措置”ではなく、組織の成長戦略と連動した「人材投資」として機能するよう設計することが求められます。
法令遵守と成長支援のバランスをどう保つか
外国人材を長期的に活用するうえで、労働関連法や入管法、社会保険制度などの法令遵守は絶対条件です。
具体的には、
- 特定技能での就労は分野・職種が厳密に定められているため、従事可能な業務を逸脱すると違法
- 技能実習期間中の賃金未払い・残業代不払いは、特定技能への移行時に審査上のマイナス要素
- 過去に実習生に対する不当行為があれば、受入企業として登録拒否されることもある
つまり、企業の「人材定着戦略」は制度だけでなく、日々の労務管理や教育体制とも密接に関係しているのです。
一方で、過度に制度に縛られすぎると、育成や支援の余力が削がれてしまうリスクもあります。
たとえば、
- 教育コストを抑えるためにOJTに頼りすぎてしまう
- 日本語教育や生活支援を後回しにする
こうした事態を避けるためには、外部支援機関との連携や、助成金制度の活用も選択肢となります。
登録支援機関や行政書士、各種外国人材専門コンサルタントと協力し、「法令遵守+成長支援」の両立を実現する体制構築が今後の鍵を握ります。
◆制度に振り回されず、未来を見据えた“人材戦略”を
外国人材を一時的な労働力として捉えるのではなく、中長期的な人材戦略の一環として位置づける企業こそが、今後の競争力を高めることができます。
そのためには、
- 制度移行の導線を設計し、技能実習で終わらせない道筋を作る
- 特定技能などへのキャリアパスを示し、モチベーションを維持する
- 法令を順守しながら、育成・生活支援にも継続的に取り組む
といった、多角的な取り組みが求められます。
一人ひとりの外国人材の“希望”と、企業の“戦略”が合致したとき、技能実習3号で終わらない、真の「共存型雇用」の形が見えてくるはずです。
技能実習3号・特定技能制度の違いと活用戦略まとめ

技能実習3号制度と特定技能制度は、いずれも外国人材の受け入れを目的としていますが、その制度目的・就労範囲・在留資格の自由度には明確な違いがあります。
技能実習3号は「国際貢献」を基盤にした制度である一方、特定技能は国内の人手不足を補うための制度であり、制度設計や在留資格の取り扱いも異なります。
特定技能への移行は、制度を跨いだ外国人材の長期雇用を実現する重要なステップです。
特に特定技能2号に進むことで、更新可能な長期就労や家族帯同が可能となり、より安定した労働力確保につながります。
ただし、在留期限のギャップや社会保険の未納など、移行に際しての注意点を事前に把握し、円滑な手続きとコンプライアンスを徹底することが求められます。
さらに、外国人材の流出を防ぎ、企業内に定着させるためには、制度的な活用だけでなく、キャリアパスの整備や育成支援、働く環境の向上も欠かせません。
単に制度を使うだけでなく、自社の中長期的な人材戦略として、特定技能制度との連動を考えることで、真に持続可能な外国人雇用が実現されます。
技能実習3号から特定技能への流れは、単なる制度変更ではなく、人材の未来を見据えた“橋渡し”のプロセスです。
今後は、より柔軟かつ戦略的な外国人材活用が企業の成長に直結していくでしょう。
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