
07/31 (木)更新
技能実習生の職種は偏ってる?最新の割合と人気業種をわかりやすく紹介
技能実習制度は、日本国内の人手不足を補う制度として注目を集めてきましたが、その実態は意外なほど偏りがあることをご存じでしょうか。
「技能実習生の職種はどこに集中しているのか」「どの業種に偏っているのか*といった疑問を持つ企業担当者も多いはずです。
本記事では、最新の統計データをもとに、技能実習生が多く従事している職種やその割合、人気業種の背景までをわかりやすく解説します。
あわせて、国籍別・地域別の傾向、企業が実習生を受け入れる際の制度や人数枠のルール、失踪などの課題、受け入れ時の注意点も網羅。
さらに、なぜ特定の職種に集中しているのかという「偏りの背景」にも踏み込みます。
制度を正しく理解し、安定した外国人雇用を実現したい企業担当者や、監理団体、実習制度に興味がある方にとって、確かな指針となる内容をお届けします。
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技能実習生が多く従事している職種と割合
日本で働く技能実習生は、さまざまな分野で活躍していますが、その就業先には一定の偏りが見られます。
特に製造業や建設業、介護分野は技能実習制度における代表的な受入れ業種として知られ、多くの企業がこれらの職種で実習生を活用しています。
この記事では、最新の統計に基づいて実習生が従事している職種の分布や割合を明確にし、その理由や背景を探ります。
さらに、告示により定められた技能実習対象職種の一覧も紹介し、企業が実習生を導入する際の参考となる情報を網羅的に提供します。
最新統計で見る技能実習生の主な就業分野
厚生労働省や出入国在留管理庁が発表する統計によれば、技能実習生が最も多く従事しているのは製造業で、全体の約65〜70%を占める年もあります。次いで、建設業や介護分野が続きます。
その他にも農業、漁業、食品製造などが技能実習の対象となっており、それぞれに一定数の実習生が配置されています。
特に製造業の中でも「機械・金属関係」「食品加工」「電子機器組立」などの工程に多くの実習生が集中しており、これは工程の標準化やマニュアル化がしやすく、技術移転が進めやすい点が背景にあります。
こうした産業構造と実習制度のマッチングが、就業分野の偏りを生んでいる要因の一つです。
製造業・建設業・介護分野が多数を占める理由
これらの職種に技能実習生が集中している背景には、人手不足の深刻化が強く影響しています。
特に中小企業が多い製造業では、若年層の労働力確保が難しく、外国人材による戦力補強が不可欠になっています。
建設業においては、2020年の東京オリンピック需要や復興需要の影響により人材確保が急務となったこと、さらに高齢化による労働人口減少が拍車をかけました。
介護分野に関しては、他国と比べて賃金が低めであることから、日本人の就業希望者が少ない状況が続いています。
このような状況下で、一定の訓練を受けた技能実習生の存在が業界にとって大きな支えとなっています。
また、これらの分野では技能の評価基準や作業工程が比較的明確であるため、技能実習制度との親和性が高いという点も見逃せません。
業種別の技能実習生の割合をグラフで確認
以下は、技能実習生が従事する業種別の構成比の一例(2023年時点の公的統計ベース)です
分野 | 割合(目安) |
製造業 | 約67% |
建設業 | 約12% |
農業 | 約7% |
介護 | 約5% |
漁業 | 約2% |
食品製造 | 約3% |
その他 | 約4% |
このように製造業が圧倒的多数を占めている現状が浮き彫りになります。
表やグラフを活用することで、受入れ先の業種バランスや自社の位置づけを視覚的に把握しやすくなります。
技能実習生が就ける職種一覧(告示職種の紹介)
技能実習制度では、法務省と厚生労働省による「告示職種・作業」が定められており、現在は85職種・156作業(2024年時点)が指定されています。以下はその一部です。
- 製造系 – 機械加工、金属プレス、塗装、溶接、プラスチック成形など
- 建設系 – 鉄筋施工、型枠施工、とび作業、内装仕上げ施工
- 農業系 – 耕種農業、畜産農業
- 介護 – 介護職員としての基本的な支援業務(2017年から追加)
- 食品系 – パン製造、惣菜製造、漬物製造、食肉処理
告示職種は技能実習計画の認定において重要な審査項目となるため、受け入れを検討する企業は対象業種かどうかを事前に確認することが必須です。
また、対象職種は随時見直されるため、最新のリストを把握しておくことも重要です。
▼就業分野の偏りを理解し、制度活用の第一歩を踏み出そう
技能実習生の多くは製造・建設・介護といった人手不足の業界に集中していますが、その背景には業種の特性や制度の親和性、そして日本国内の労働市場の現実があります。
これらの実情を正確に把握することで、自社が制度を導入する際の適切な判断が可能になります。
まずは対象職種や就業分野の偏りを理解することが、技能実習制度を正しく活用するための第一歩。
受け入れを検討する企業にとって、現場ニーズとのマッチングを見極める重要な視点となるでしょう。
国籍・地域別で見る技能実習生の傾向
技能実習生の受け入れにおいては、送り出し国の傾向や受け入れ地域の産業特性が大きく関係しています。
どの国から実習生が多く来日しているのか、また、どの地域で多く受け入れられているのかを把握することは、企業にとっても制度運用の成功を左右する重要な視点です。
この章では、国籍別・地域別の受け入れ動向と、業種との関連性に焦点を当て、最新の統計とともにその背景を紐解きます。
ベトナム・インドネシア・フィリピンが上位の理由
2024年時点で、日本における技能実習生の半数以上を占めているのがベトナム出身者です。
その背景には、現地での日本語教育体制の整備や、送出し機関の質と数の充実が大きく関係しています。
また、ベトナム政府と日本政府の間では複数の経済・人材協定が締結されており、両国の人的交流は年々拡大しています。
さらに、ベトナム国内では技能実習への志望者が多く、日本での就労がキャリアや収入向上の手段として定着している点も特徴です。
一方、インドネシアとフィリピンもそれぞれ約17〜18%、約9%の割合を占めており、主に建設業や介護分野での活躍が目立ちます。
特にフィリピンは英語能力が高く、介護やサービス業への適応力の高さが評価されています。
これらの国々は宗教や文化的側面での柔軟性があり、日本社会への順応のしやすさや勤勉さが企業側からも支持されています。
結果として、採用後の定着率も比較的高い傾向にあることが、選ばれ続ける理由となっています。
都道府県別受入れ数ランキングと特徴
都道府県ごとの技能実習生の受け入れ数を見ていくと、上位には産業が集積しているエリアが並びます。
順位 | 都道府県 | 主な特徴・受入業種 |
1 | 愛知県 | 製造業(自動車・部品・機械)中心で全国最多 |
2 | 広島県 | 造船・自動車・金属加工など重工業が中心 |
3 | 茨城県 | 農業・食品加工・製造業のバランスが良い |
4 | 埼玉県 | 多品種製造やサービス業が盛ん |
5 | 大阪府 | 製造・建設・物流など都市型の業種が集積 |
6 | 静岡県 | 輸送機械・自動車産業の集約地 |
これらの地域は、いずれも一定以上の産業規模と受け入れインフラを有しており、受入団体や企業の管理体制が整っていることも多いです。
また、長野・栃木・千葉など農業や食品加工が強い地域も、季節労働の対応として技能実習生を多数受け入れています。
このように、受け入れ数が多い都道府県は、産業の多様性や人材ニーズの明確さという点でも共通しています。
業種と地域の組み合わせで見る傾向分析
国籍や都道府県別の傾向に加えて、業種と地域のマッチングに注目することも重要です。
製造業(自動車・機械・金属加工など)
愛知・広島・静岡・埼玉といった地域では、製造業が地域産業の中心を占めており、技能実習生もこの分野に多く配属されています。
これらのエリアでは、工場の集積による大量採用と長期雇用が可能であり、企業にとっても教育コストを抑えながら効率よく技能移転が行える環境となっています。
建設業
東京・神奈川・大阪などの大都市圏では、都市再開発やインフラ整備の需要が高く、建設分野での技能実習生受け入れが拡大しています。
特に公共インフラ・マンション建設・設備工事などの分野で、技術力と体力を兼ね備えた外国人材の重要性が増しています。
農業・食品加工業
茨城・長野・栃木などの農業地帯では、収穫期に集中する作業や単純反復作業が多いことから、実習生との相性が良いとされています。
また、食品加工業においても、北海道・九州・長野などでは人手不足の解消策として制度活用が進んでいます。
このように、同じ職種であっても、地域の特性によって求められるスキルや働き方は異なるため、企業側は業種と地域の関係性をよく理解する必要があります。
▼国籍と地域の傾向を理解して、実習制度を最大限に活用
技能実習制度の活用においては、送り出し国と地域・業種の適切なマッチングが制度成功のカギとなります。
ベトナム・インドネシア・フィリピンといった国籍別の特性や、愛知・茨城・大阪など産業が集中する地域の傾向を正しく理解することで、ミスマッチを避け、実習生がスムーズに定着・成長できる環境づくりが可能になります。
制度を活かすためには、文化的背景への配慮、業種ごとの教育体制の整備、長期視点での人材育成が不可欠です。
企業ごとの特性に応じて、最適な国籍・地域・業種の組み合わせを意識して実習制度を活用していくことが、持続可能な外国人雇用への第一歩となるでしょう。
技能実習制度の人数枠と企業の受入れ上限
外国人技能実習制度を導入する企業にとって、受け入れ可能な人数の把握は非常に重要なポイントです。
ただし、単に「何人までOKか」だけでなく、企業規模・実習段階・優良認定の有無など、複数の条件によってその上限は変動します。
このセクションでは、技能実習制度の1号・2号・3号の違いから、受け入れ枠の計算方法、人数を増やす方法、そして初めての受入れ企業が注意すべき点までを網羅的に解説していきます。
技能実習1号・2号・3号の違いと移行条件
技能実習制度は、原則として最大5年間の段階的な実習プログラムで構成されており、次の3つのステージがあります。
- 技能実習1号(入国1年目)
来日直後から約1年間、主に基本的な技能習得を目的とした初期段階。入国直後の座学・OJTが中心です。 - 技能実習2号(2~3年目)
実践的な技能を学ぶ段階。技能評価試験(実技・学科)を経て1号から移行が可能です。企業での戦力として本格的に活躍する段階でもあります。 - 技能実習3号(4~5年目)
優良な受入れ企業・監理団体に限り、さらに2年間延長が認められる制度。熟練度の高い作業に従事でき、企業にとっても継続的な人材育成が可能になります。
移行条件としては、技能評価試験の合格と、監理団体・受入れ企業の「優良認定」取得が求められます。
1号→2号は一定条件を満たせば可能ですが、3号への移行は認定を受けた体制がなければ不可能です。
常勤職員数に応じた受け入れ上限の決まり方
技能実習生の受け入れ人数は、企業の常勤職員数に基づいて算出される定数枠に準じています。
基本的な上限ルールは以下の通りです。
常勤職員数 | 受け入れ可能な技能実習生数(通常枠) |
1〜2人 | 原則不可 |
3〜5人 | 最大1人 |
6〜10人 | 最大2人 |
11〜20人 | 最大3人 |
21〜30人 | 最大4人 |
31〜40人 | 最大5人 |
41人以上 | 常勤職員数の1/20(四捨五入) |
これはあくまで通常の受け入れ枠であり、優良認定を受けていない企業はこれを超える人数の受入れはできません。
また、実習生1人に対して指導員1名の配置が義務付けられていることからも、職員体制と育成環境の整備が受け入れ人数を左右します。
優良認定団体における人数拡大の仕組み
上記の通常枠を超えて技能実習生を受け入れるためには、優良な監理団体・受入れ企業としての認定が必須です。
この優良認定制度とは、法令遵守・適切な管理・教育体制・過去の実績などを評価し、「模範的」と判断された場合にのみ認定されます。
優良認定を取得すると、受け入れ枠が2倍(常勤職員数の1/10)まで拡大され、かつ技能実習3号への移行も可能になるというメリットがあります。
優良認定取得のメリットは以下のとおりです。
- 受入れ枠の拡大(通常の2倍)
- 技能実習3号へのステップアップが可能
- 移行手続きや更新の際の評価が高くなる
- 監理団体からの信頼性が向上
ただし、申請には一定の実績・監査・提出書類が必要であるため、計画的な準備が求められます。
初めての受入れ企業が注意すべき枠の制限
初めて技能実習生を受け入れる企業は、特に慎重な体制整備と人数調整が求められます。
新規受入れ企業の場合、
- 初年度は1年以内に受入れ可能な上限人数が制限されている
- 技能実習1号の段階でしか受入れができない
- 監理団体による指導・巡回が頻繁に行われる
といった特徴があります。
また、受け入れ後に違反やトラブルが発生すると、受入れ停止処分や制度利用不可となるリスクもあります。
そのため、初めての場合は特に以下の点に留意すべきです。
- 常勤職員数に対する受け入れ枠の計算
- 指導員・生活指導担当者の確保
- 住居・労働条件の整備
- 実習内容と実務内容の整合性の明確化
制度開始前に、信頼できる監理団体と密に連携し、体制づくりから丁寧に進めることが成功の鍵となります。
▼適正な受入れ体制を築くことが成功の第一歩
技能実習制度の受け入れ人数には、段階別の制度設計・企業規模・認定状況といった複数の要素が絡んでいます。
ただ人数を増やすだけではなく、実習生が安全・安心に働ける環境を構築することが大前提です。
特に、初めて受け入れる企業は慎重な計画と準備が必要です。
優良認定の取得を視野に入れた体制づくりを行うことで、制度の持続的な活用と企業の発展にもつながります。
適切な受け入れ人数と実習内容のマッチングを重視し、企業と実習生の双方にとって価値ある関係性を築くことが、これからの外国人材受け入れのカギとなるでしょう。
技能実習生の失踪・不法残留の実態と背景
技能実習制度は、本来「技能移転」を目的とした国際貢献の制度として設計されていますが、年々深刻化しているのが実習生の“失踪”や“在留資格外の不法残留”の問題です。
特に近年では、ベトナム・ミャンマー・インドネシアなど主要送り出し国から来日した実習生の中で、失踪・不法滞在に至るケースが急増。
その背景には、賃金・労働環境・制度の構造的不備など、複雑な要因が絡み合っています。
このセクションでは、失踪の主な理由や関係機関の課題、リスクの高い職種の傾向、防止策としての取り組み事例について解説します。
失踪の主な理由は賃金・労働環境の不満
最も多く挙げられる失踪理由は、賃金の未払いや過度な労働時間、休暇の不足など劣悪な労働環境に関するものです。
特に以下のような問題が頻発しています。
- 最低賃金以下の支払い(手取りで月5〜8万円台)
- 時間外労働の割増賃金が未支給
- 長時間労働(週60時間以上)と休日出勤の強要
- パワハラや人格否定的な言動
- 本国で聞かされていた労働条件との乖離
これらの不満から、実習期間中に他の職場を探すために失踪するケースが後を絶ちません。
また、制度上の転職自由が認められていないことも、実習生を追い詰めてしまう要因となっています。
制度理解不足と仲介機関の問題
失踪の背景には、制度を正しく理解していないまま来日する実習生や、送出し機関・仲介業者の不適切な対応も関係しています。
たとえば
- 高額な送り出し費用(約30万〜70万円以上)を背負い、借金返済のために劣悪な環境でも辞められない
- ブローカー的業者に騙されて来日したが、聞いていた業務や条件と大きく異なる
- 「失踪しても働ける」「ビザが延長できる」といった誤情報を信じたまま逃亡
- 監理団体による十分なフォローや相談体制がない
こうした制度的な構造の歪みや情報不足が、技能実習生を孤立させ、最終的に非合法な手段へ追い込んでしまうのです。
失踪者の割合が高い職種に共通する課題
失踪の多い職種には、ある程度の傾向や共通点が見られます。
特に以下のような職種・業種では失踪率が高い傾向にあります。
- 建設業 – 過酷な肉体労働、夏場の危険な作業、指導不足
- 農業・食品加工業 – 季節性の仕事で仕事量に波があり、生活が不安定
- 縫製・繊維関連業 – 地方に立地する中小企業が多く、閉鎖的な環境になりやすい
これらの業種に共通する課題として、
- 地方にあるため支援団体や行政窓口との距離が遠い
- 日本語による意思疎通が難しい
- 職場に外国人実習生が自分1人しかいないケースが多い
といった点が挙げられます。
実習生が相談できる環境がない孤立状況こそ、失踪を生む温床と言えるでしょう。
受入企業・監理団体による防止策とは?
失踪や不法残留を未然に防ぐためには、受け入れる企業と監理団体の双方が制度の趣旨を正しく理解し、実習生に寄り添う姿勢を徹底することが求められます。
主な防止策には以下のような取り組みがあります。
- 受け入れ前の適正なマッチング – 仕事内容や労働環境を事前に明確化し、ミスマッチを防止
- 入国後講習の強化 – 日本での生活ルール・働き方・相談窓口の周知を徹底
- 母国語対応の相談窓口の設置 – SNSやアプリを通じた24時間対応体制の整備
- 複数名の実習生同時受入れ – 孤立防止と助け合いの効果を高める
- 社内外との定期面談・ヒアリング – 定期的な心理的フォローを行い、変化に気づく体制づくり
また、監理団体による企業指導・監査を強化し、法令違反を未然に発見・是正していくことも重要です。
▼実習制度を「双方にとって価値ある制度」へ
技能実習生の失踪や不法残留は、単に本人側の問題に留まらず、制度・企業・送り出し機関それぞれの課題の反映でもあります。
とくに失踪率が高い企業や業種には、環境整備や制度理解の不足、実習生への支援体制の弱さといった共通点が存在します。
今後、技能実習制度を見直す動きが進んでいる中で、「人材を使い捨てる」のではなく「育て、共に成長する」という姿勢が求められます。
企業・団体が実習生の声に耳を傾け、安心して働ける環境を整備することこそが、失業リスクの低減だけでなく、長期的な人材定着や企業価値の向上にもつながる重要なステップです。
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実習生を受け入れる企業に求められる条件
技能実習制度を活用して外国人材を受け入れる場合、企業側には一定の体制整備と法令遵守が必須条件となります。
単に「人手が足りないから雇う」という姿勢ではなく、制度の趣旨である技能移転・人材育成の理念を理解し、それに沿った環境づくりが求められます。
本記事では、企業に求められる具体的な受け入れ条件と体制要件、労働条件の適正確保、さらには異文化理解とハラスメント防止への配慮までを詳しく解説します。
初めて技能実習生を受け入れる企業は、ぜひ参考にしてください。
欠格事由・体制要件(責任者・指導員・住居など)
技能実習生の受け入れを行うためには、まず企業が欠格事由に該当しないことが大前提です。
過去に重大な労働基準法違反や社会保険未加入、失踪者発生などがある企業は、受け入れを認められない場合があります。
また、以下の体制要件を整備していることが求められます。
- 技能実習責任者 – 制度全体の運用管理を担う担当者。講習修了が必要。
- 技能実習指導員 – 実際に技能を指導する社員で、同職種に5年以上の実務経験が必要。
- 生活指導員 – 日本での生活支援を行う担当者。日本語・生活文化の説明、困りごとの対応など。
- 住居の確保 – 適切な広さ・安全性・生活設備が整った住宅の提供。原則個室、プライバシー配慮が必要。
これらの役割は単なる名義ではなく、実効性ある体制として運用されていることが重要です。
労働条件の適正確保(賃金・労働時間・保険)
受け入れ企業は、技能実習生にも日本人労働者と同等の労働基準を適用する義務があります。
とくに下記の点が重点的にチェックされます。
- 賃金支給の適正化 – 最低賃金以上の支給、時間外・休日労働には割増賃金を。
- 労働時間の管理 – 法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)内での運用。超過分には36協定の提出が必要。
- 休暇の付与 – 年次有給休暇の取得推奨、法定休日の確保。
- 社会保険・労働保険の加入 – 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などへの加入義務。
とくに監理団体による定期監査では、賃金台帳や出勤簿の整合性、保険料の控除方法などが厳格に審査されます。
万が一、不適切な管理や未払いが発覚すれば、改善指導や受け入れ停止措置が取られる可能性もあります。
外国人であっても、労働者としての権利保護が当然であるという意識を社内全体で共有することが大切です。
ハラスメント防止・文化的配慮の必要性
外国人技能実習生の職場定着には、日本人従業員の意識と受け入れ姿勢が大きく影響します。
以下のような配慮が欠かせません。
- ハラスメント防止の啓発 – 言葉の壁や上下関係を悪用した暴言・無視・過度な指導はすべてハラスメントに該当します。研修やポスター掲示などを通じて、全従業員に対する意識改革が必要です。
- 文化的・宗教的配慮 – 食事、休日、礼拝、服装など、それぞれの文化や信仰に配慮した運用が求められます。
- 日本語のフォロー体制 – 業務指示を理解できるよう、やさしい日本語や翻訳アプリの活用、図解資料の準備などの工夫も有効です。
- メンタルケア – 慣れない環境でのストレスや孤独感を和らげるため、定期的な面談やレクリエーションも推奨されます。
これらの配慮を怠ると、実習生の不安や不信感が高まり、早期離職や失踪につながるリスクが高まります。
技能実習生は単なる労働力ではなく、「一緒に成長するパートナー」として迎える姿勢が求められます。
▼制度の信頼を支えるのは企業の姿勢
技能実習制度を適切に活用するには、受け入れる企業が法令と制度の本質を深く理解し、誠実に運用することが不可欠です。
体制・条件・文化配慮の3本柱を整備することで、技能実習生の能力発揮や定着率の向上に直結します。
これは結果的に、企業の生産性やチーム力、さらには社会的評価にも良い影響を与えるでしょう。
「制度があるから雇う」のではなく、「人を育てるために制度を活かす」視点こそが、持続可能な外国人雇用と企業成長の鍵になります。
外国人雇用全体で見た技能実習制度の位置づけ
近年、日本の労働市場における外国人労働者の存在感は急速に高まっています。
とくに少子高齢化が進む中、製造業や建設業、介護業などを中心に外国人材への依存度は年々増加傾向です。
その中でも注目されているのが「技能実習制度」です。しかし、これは単なる労働力確保の制度ではなく、あくまで開発途上国への技術移転を目的とした国際協力制度として位置づけられています。
そのため、ほかの在留資格で働く外国人とは目的や仕組みに大きな違いがあるのです。
ここでは、外国人雇用全体における技能実習制度の割合や他制度との関係性、そして多くの外国人労働者が従事する職種との重なりを明らかにし、制度理解を深めていきます。
在留資格別の外国人労働者の構成比
厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況(2023年10月末現在)」によれば、日本で働く外国人労働者は約200万人を突破しており、その内訳は以下のようになっています。
- 資格外活動(留学生のアルバイト等) – 約40万人
- 身分に基づく在留資格(永住者・定住者・日本人配偶者等) – 約65万人
- 専門的・技術的分野の在留資格(技術・人文知識・国際業務など) – 約40万人
- 技能実習生 – 約30万人前後
- 特定技能 – 約18万人以上(増加中)
技能実習生は全体の1〜2割程度にあたる人数で、一定の割合を占めてはいるものの、雇用全体の中では一部に過ぎません。
ただし、業種によっては技能実習生の割合が非常に高く、特定の分野に偏っているのが実情です。
技能実習と特定技能の違いと制度移行の動向
技能実習制度と特定技能制度は、受け入れ対象国や分野が似ているため混同されがちですが、目的と運用ルールが大きく異なります。
比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
目的 | 技能移転(国際協力) | 労働力確保(就労目的) |
在留期間 | 最大5年(1号〜3号) | 最大5年(1号)/永続可(2号) |
対象業種 | 80職種程度(告示職種) | 12分野(2024年現在) |
移行 | 制度上は移行可能(例:実習2号→特定技能1号) | 特定技能2号へキャリアアップ可 |
試験 | 技能実習は不要(送出し機関の選抜) | 技能試験+日本語試験に合格が必要 |
現在、技能実習から特定技能への移行は政府も推奨しており、制度改正も進行中です。
特定技能2号の分野拡大が議論されており、将来的には在留期間の延長や家族帯同の可能性も広がる見込みです。
企業側としては、「技能実習で一定期間育成し、その後は特定技能で長期雇用を図る」といった2段階型の外国人活用戦略が求められます。
外国人労働者に多い職種と技能実習生の重なり
外国人労働者が多く従事する職種は、技能実習制度とも密接に重なっています。以下は、特に外国人比率が高い代表的な分野です。
- 製造業 – 部品組立・溶接・金属加工など。技能実習生の最多業種。
- 建設業 – 鉄筋・型枠・とび工など。都市部を中心に実習生が活躍。
- 介護業 – 特定技能との併用が多いが、技能実習でも需要増加中。
- 農業・食品加工 – 季節変動に対応した人手確保手段として定着。
これらの分野では、日本人の若年労働力が減少している一方で、現場作業の担い手が必要不可欠なため、実習生の役割が重要視されています。
また、近年では技能実習から特定技能に移行して、より長期的に同一職種でキャリアを積む外国人労働者も増加しています。
これは技能伝承や業務の安定性に寄与するだけでなく、企業にとっても戦力化の大きなチャンスです。
▼制度の役割を正しく理解し、戦略的な活用を
技能実習制度は、日本の外国人雇用の中で「技術移転を軸とした国際協力制度」という独自の立ち位置を持っています。
そのため、単なる人手確保手段として捉えるのではなく、技能育成と段階的キャリア形成を前提にした活用が求められます。
同時に、制度の改正や特定技能への移行など、今後の制度変化にも柔軟に対応できる運用体制の構築が必要です。
自社の業種や地域特性に応じて、どの制度がもっとも適しているかを見極めた上で、外国人材との共生を目指した長期的視点での雇用戦略を考えることが、持続可能な企業成長と人材育成に繋がっていくでしょう。
技能実習制度でよくある質問
技能実習制度を活用して外国人材を受け入れたいと考えていても、「何から始めればいいのか」「自社でも受け入れ可能なのか」など、多くの疑問を抱える企業担当者は少なくありません。
特に初めて制度を活用する企業にとっては、ルールや手続き、制限などが複雑に感じられることでしょう。
この記事では、企業から寄せられることの多い技能実習制度に関する代表的な質問について、わかりやすく回答します。
導入前に把握しておきたいポイントを整理し、スムーズな制度活用への一助となる情報を提供します。
技能実習生を受け入れるには何から始めればよい?
技能実習生を受け入れるためには、まず監理団体を通じた準備が必要です。
受け入れ企業(実習実施者)は、単独で技能実習生を呼び寄せることは原則できず、法務省・厚労省の認可を受けた監理団体を介して実施する仕組みです。
主なステップは以下のとおりです。
- 信頼できる監理団体を選定する
- 対象職種と作業が技能実習制度に適合しているか確認
- 実習計画の作成・申請(外国人技能実習機構に提出)
- 実習生の募集・選考(現地の送出し機関と連携)
- 在留資格「技能実習」の申請・許可取得
- 実習生の入国・研修・実習開始
監理団体が制度運用の多くをサポートしてくれますが、企業側も就業環境や住宅、指導体制の整備などを自ら担う必要があります。
初めてでも受け入れられる職種はある?
技能実習制度には、国が定めた「告示職種・作業」に該当していなければ、受け入れができません。
2024年時点では80職種150作業以上が指定されており、特に製造・建設・農業・介護分野が中心です。
初めて受け入れる企業の場合でも、次のような業種であれば導入ハードルは比較的低めです。
- 製造業(電子部品、食品加工など)
- 農業(耕種農業・畜産)
- 介護(基礎的な介護業務に限る)
- 建設業(型枠工・鉄筋工・塗装など)
ただし、実際に自社の作業内容が告示職種に該当するかどうかは、監理団体や外国人技能実習機構への確認が必要です。
作業の定義は細かいため、誤って対象外の業務を担当させると制度違反になるおそれがあります。
優良認定団体の条件とは?
技能実習制度における「優良認定団体」は、一定の基準を満たした監理団体・実習実施者に対して与えられる評価制度です。
優良認定を受けると、実習生の受入れ人数枠の拡大や、在留期間の延長(3号実習)など、多くのメリットがあります。
主な認定基準は以下の通りです。
- 法令遵守率(過去3年間に重大な違反がない)
- 実習実施者の適正な管理体制(指導員・生活支援員の配置等)
- 技能検定合格率(一定水準以上)
- 実習計画の達成状況
- 日本語教育や生活支援の実績
認定は外国人技能実習機構が実施し、受け入れ開始から一定年数を経た後に申請可能です。
将来的に実習枠を広げたい企業は、制度初期段階から法令順守や教育支援を徹底することが重要となります。
技能実習生の人数変更・追加は可能?
実習生の受け入れ人数は、企業の常勤職員数に応じた上限が設けられていますが、条件を満たせば追加・変更は可能です。
ただし、事前に変更手続きが必要です。
たとえば、以下のようなケースが考えられます。
- 実習計画上の人数を増やしたい場合 → 新たな計画認定申請が必要
- 実習期間中に途中退職や帰国があった場合 → 代替の受け入れには要再申請
- 急な生産量変動による受け入れ拡大 → 優良認定があれば柔軟な対応が可能
変更・追加には外国人技能実習機構への申請と審査が必要であり、監理団体を通じて正式な手続きを行う必要があります。
また、計画未達や法令違反があると追加は認められません。
▼事前の理解と計画が受け入れ成功の鍵に
技能実習制度は、制度設計やルールが複雑に見える一方、正しく理解すれば安定した外国人材の受け入れが可能な仕組みです。
とくに初めて導入する企業にとっては、信頼できる監理団体の選定と、制度の要点を押さえた準備が成否を分けるポイントとなります。
また、告示職種の確認、人数枠、優良認定、変更申請など、制度運用に必要な知識をあらかじめ整理しておくことが、スムーズな導入と継続に繋がります。
疑問点は必ず監理団体や外国人技能実習機構に確認し、法令遵守と労働環境整備を徹底することが、良好な制度活用の第一歩となるでしょう。
実は偏っている?技能実習生が多い職種ランキングの裏側
技能実習制度は「人材育成」「国際貢献」の名のもとに発展してきた制度ですが、実際の運用状況を見てみると、特定の職種に大きく偏っている実態があります。
なぜ同じ制度のもとで、ある職種には大量の実習生が集まり、別の職種ではほとんど見られないのでしょうか。
本記事では、技能実習生の職種別ランキングの裏側にある構造的要因や制度上の仕組み、そして企業のニーズとの関係性をひも解きます。
単なる統計情報では見えにくい、「偏りの本質」に迫ります。
最多は製造業!その中でも特に多い工程とは
技能実習制度の中で、最も多くの実習生を受け入れているのが「製造業」です。
全体の約6割以上が製造系の職種に従事しており、なかでも以下の工程が圧倒的なシェアを占めています。
- 機械金属関連(溶接・機械加工など)
- 食品製造(調理加工・包装など)
- 電子機器組立・プラスチック成形
特に食品関連は、単純かつ繰り返し作業が中心で教育コストが比較的低いことから、大量採用に向いているとされます。
さらに、24時間稼働の工場では深夜帯の人員確保が難しく、実習生による補填が進んでいるという現実もあります。
また、これらの作業は告示職種(制度で認められた職種)として早期に制度化された経緯もあり、受入れ体制が整っている点もシェア拡大の背景といえるでしょう。
建設・介護・農業…他業種との差が開いた背景
一方で、技能実習制度で認められている職種の中には、制度上は受け入れ可能にもかかわらず、あまり普及していない分野も存在します。
たとえば以下のような業種です。
- 介護分野 – 実習要件が厳しく、日本語レベルも高く求められる
- 建設業 – 現場の安全・技能要件が高く、指導体制の負担が大きい
- 農業 – 季節変動が激しく、通年雇用が難しい
これらの職種では、企業側の受入れコストや制度運用のハードルが高いため、導入が進みにくいのが現状です。
特に介護分野では、日本語の読解力が必要な介護記録の記入、利用者との意思疎通の難しさ、精神的ケアの要素などが障壁となっています。
建設業についても、指導員の確保や事故リスクの管理が課題です。
制度的に認められていても、「現場での実際の導入可能性」という別の壁があるため、制度上の職種数と実際の受入数が乖離している状態が生まれているのです。
なぜ“職種の偏り”が生まれるのか?制度と企業ニーズの関係性
技能実習制度における職種偏重は、制度設計そのものと企業側の実務ニーズの一致が引き起こしている側面が強いといえます。
まず、制度として認められる職種は、「技能の移転」「計画的な実習」を前提としているため、標準化され、指導がしやすい作業が中心になります。
結果として、ライン作業や工場業務など、“再現性が高く、短期で習熟できる工程”が優遇される構造になっているのです。
また企業側としても、慢性的な人手不足に対応するためには、大量採用・即戦力化が可能な職種を選びたくなるのは当然の判断です。
その結果、「採用のしやすさ」と「制度の使いやすさ」が一致する一部業種に集中する傾向が強まっているのです。
加えて、送り出し国側も、人気職種=成功実績のある職種に注力する傾向があります。
つまり、「偏っているからさらに偏る」という構造的なスパイラルが生まれているのです。
▼偏りの背景を理解したうえで、戦略的に制度を活用しよう
技能実習制度は、制度設計や運用の特性から、特定の職種・工程に偏りが生じやすい仕組みとなっています。
しかしその背景には、企業のニーズ・教育体制の整備・送り出し国の方針など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているのです。
偏り自体が悪いわけではありませんが、それが制度の持続可能性や人材のミスマッチを生む原因となることもあります。
自社に合った職種選定や受け入れ体制の見直しを行いながら、単なる人数補填ではなく、将来的な人材育成の視点を持って制度を活用することが求められます。
将来的には、新制度「育成就労制度」への移行や、より多様な職種での人材活用も視野に入る中で、今一度「なぜこの職種なのか」「制度とどう向き合うか」を問い直すことが、企業と実習生の双方にとっての成功につながるでしょう。
技能実習制度の実態を正しく理解し、最適な受け入れを
技能実習制度は、国際貢献と人材育成の名のもとで制度化されてきましたが、実際には特定の職種や出身国、地域、企業形態に偏る傾向が明らかになっています。
とりわけ製造業を中心とした一部業種への集中や、ベトナム出身者の圧倒的な割合、都市部への受け入れ集中など、制度の運用実態は「理想」とはやや異なる方向に進んでいるのが現状です。
制度の人数枠や企業側の条件、受け入れ上限に関するルールも非常に細かく、不適切な理解のまま受け入れを始めてしまうとトラブルの原因にもなりかねません。
また、近年では失踪や不法残留といった課題も社会問題化しており、企業や監理団体の責任が問われる場面も増えています。
その一方で、適切な条件・体制のもとで制度を活用できれば、外国人材の戦力化や地域産業の維持に貢献することも十分可能です。
技能実習制度を取り巻く環境は、今後「育成就労制度」への移行も含めて大きな変化が予想されるため、常に最新の情報をキャッチし、制度趣旨を踏まえた運用が求められます。
自社の事業内容や地域特性に合った形で、技能実習制度をどのように活用すべきか。
この問いに真剣に向き合うことが、制度を成功させる第一歩となるでしょう。
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