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05/30 (金)更新

外国人を雇用するなら必読!特定活動「ワーキングホリデー」採用の実務知識

企業がグローバル人材の採用に目を向ける中、「ワーキングホリデー」制度を活用した外国人の雇用が注目を集めています。

 

日本に滞在するワーキングホリデーの外国人は「特定活動」という在留資格で認められており、一定の条件下で就労も可能です。

 

しかしその一方で、在留カードの確認や就労範囲、税務・社会保険の取り扱いなど、雇用側が把握すべきルールや注意点も多く存在します。

 

本記事では、ワーキングホリデーを目的に来日する外国人が取得する「特定活動」ビザの概要から、企業が実際に採用する際の実務ポイントまでを徹底解説

 

さらに、「特定活動46号」との違いや、文化的なメリットといった他では語られにくい視点も盛り込み、実践に役立つ知識を網羅しています。

 

「採用してよかった」と思える外国人雇用を実現するために、押さえておくべき情報がここにあります。

ワーキングホリデーの「特定活動」とは

日本でワーキングホリデーを利用して滞在する外国人は、「特定活動」という在留資格の一つに該当します。

 

一見すると「就労ビザ」や「留学ビザ」と同じように見えるかもしれませんが、ワーキングホリデー独自の性質があり、雇用主はその違いをきちんと理解しておく必要があります。

 

ここでは、在留資格としての位置づけや目的、滞在条件、他のビザからの変更可能性について解説します。

ワーキングホリデーの在留資格は「特定活動」

ワーキングホリデーで来日する外国人は、出入国在留管理庁が定める在留資格のうち「特定活動」に分類されます。

特定活動とは、入管法に基づき個別に省令や告示で定められる活動内容で、46種類以上の区分が存在します。

ワーキングホリデーはこの中でも「告示特定活動」の一つであり、特定活動の中でも特に二国間協定に基づく特例的な滞在として位置づけられています。

そのため、「特定活動=就労可能」と安易に判断するのは危険で、必ず個別の指定書や在留カードの記載内容を確認する必要があります

ワーキングホリデーの目的と概要

ワーキングホリデー制度の目的は、若年層の国際交流と文化理解の促進です。

滞在期間中には観光を主としつつ、生活費の補助として一定の就労も認められるのが特徴です。

つまり、「働くこと」が主目的ではなく、「働くこともできる」制度であることが大前提となります。

対象国とは日本政府との間でワーキングホリデー制度の協定を結んでいる国に限定されており、現在はオーストラリア、カナダ、イギリス、ドイツ、韓国など20以上の国と締結されています(2025年時点)。

この制度により来日した外国人は、短期的な雇用にも柔軟に対応できる人材として、企業にとっても貴重な存在となります。

在留期間や対象年齢の条件

ワーキングホリデー制度で来日する外国人には、在留期間と年齢に関する明確な条件があります。

  • 在留期間 – 原則として1年間(一部の国は延長可能)

     

  • 対象年齢 – 18歳以上30歳以下(国によっては25歳以下)

このように、制度上は「一時滞在」を前提としており、長期雇用には不向きです。

雇用主側は、契約の期間や更新の可否、在留期限に対する対応策などを事前にしっかり確認し、計画的に雇用する必要があります

他の在留資格からの変更は可能か?

ワーキングホリデーで来日した外国人が、滞在中に日本での就職を希望する場合、他の在留資格への変更が可能かどうかが重要な論点となります。

結論から言えば、就労ビザなどへの変更は「条件付きで可能」です

ただし、そのためには以下のような要件を満たす必要があります。

  • 変更先の就労ビザが対応する職種に該当していること

     

  • 雇用主が受け入れ体制を整えていること

     

  • 入管に提出する必要書類をすべて用意できること

また、国籍によって審査の難易度に差が出るケースもあります。

たとえば、英語圏出身者が英会話講師として就労ビザを得るのは比較的スムーズですが、他業種では慎重な審査が行われることもあります。

  • ワーキングホリデーの「特定活動」制度を正しく理解しよう

ワーキングホリデーは、「観光」と「労働」が両立する特例的な在留資格であり、就労可能な点に魅力があります。
しかし、その裏には滞在目的や制限、在留資格の仕組みに関する複雑なルールが存在します。雇用する側としては、単なる短期労働者としてではなく、制度全体を理解した上で対応することが重要です。

在留資格の確認・就労内容の整合性・期間管理の徹底などを怠らず、適切な雇用関係を築くことが、企業と外国人の双方にとって良好な関係を生み出す第一歩となるでしょう。

「特定活動」ビザの種類とワーキングホリデーの位置づけ

特定活動ビザは、他の在留資格に分類できないケースに個別対応する「柔軟な枠組み」として設けられた制度です。

 

一見すると一括りに見えるこの在留資格ですが、実際には告示に定められた活動内容の有無や、就労可否などで大きく分類されます。

 

このセクションでは、特定活動の分類、代表的な種類、そしてワーキングホリデーの位置づけについて整理します。

特定活動の分類(告示/告示外など)

特定活動には大きく分けて「告示特定活動」と「告示外特定活動」の2種類があります。

  • 告示特定活動 – 法務省があらかじめ活動内容を「告示」で明文化しているもの

     

  • 告示外特定活動 – 個別の活動ごとに、入管の裁量で許可されるもの(いわば例外的措置)

この分類は非常に重要です。

なぜなら、告示特定活動はある程度「制度としての安定性」があるのに対し、告示外は「臨時的な対応」であり許可の再現性が低いためです。

ワーキングホリデーは「告示特定活動」に該当し、制度として継続的に認められています。

ワーキングホリデー以外の特定活動一覧

ワーキングホリデーの他にも、さまざまな「特定活動」が存在します。

以下は主な例とその概要です。

  • 就職活動継続中の留学生(告示外)
    卒業後に就職活動を続けたい留学生が、一定期間日本に滞在して企業を探すための在留資格です。

     

  • インターンシップ(特定活動9号)
    日本の大学や企業での職業体験を目的に来日する外国人学生向けの活動で、一定の就労も認められます。

     

  • サマージョブ制度
    短期間のアルバイト体験を通じて、日本文化や社会に触れることを目的とした制度で、主に若年層が対象です。

     

  • 日系企業の転勤に同行する家族
    国外から転勤してきた外国籍社員に同行する家族が、一定の生活活動を日本で行うために与えられる在留資格です。

     

  • 高度専門職終了後の準備滞在
    高度専門職ビザでの活動終了後、帰国準備や転職活動のために一時的に滞在を継続できる制度です。

     

  • スポーツ指導や文化交流による短期滞在
    スポーツ大会の指導者や文化イベントの招待者などが、日本国内で一時的に活動するための在留資格です。

     

  • 民間航空会社の乗務員
    日本に定期的に乗務する外国籍のパイロットや客室乗務員が、業務の一環で日本に滞在するために認められるケースです。

これにより、特定活動の多様性とワーキングホリデーとの位置づけの違いがより明確になります。
他の項目でも内容の充実をご希望でしたら、いつでもお申し付けください。

告示特定活動と告示外特定活動の違い

両者の大きな違いは、制度としての透明性と再現性です。

項目告示特定活動告示外特定活動
活動内容の公開告示で明記非公開(審査ごとに異なる)
申請の難易度比較的明確なガイドラインあり入管の裁量が強く、不許可の可能性も高い
雇用主にとってのリスク少ない高い
代表例ワーキングホリデー、インターンシップ等就職活動中の延長、コロナによる帰国困難

ワーキングホリデーは「制度化された就労可能な特定活動」として、告示特定活動の中でも比較的扱いやすい部類に入ります。

一方で、告示外に該当する場合は、申請自体が不安定なため、企業が雇用する際には慎重な判断が求められます

  • 特定活動ビザを正しく理解し、ワーホリとの違いを明確にしよう

特定活動ビザは、その名称からは想像しにくいほど多様かつ複雑な制度です。
特に「ワーキングホリデー」もその一種であることを知らずに、「特定活動だから就労不可では?」と誤解する企業も少なくありません。

告示か告示外か、就労が認められているかどうか、在留カードや指定書の記載内容はどうか。
これらの要素を正確に理解し、ワーキングホリデーがどこに位置づけられているかを把握することで、企業としてのリスクを回避し、適切な雇用判断が可能になります

ワーキングホリデーで働く際のルールと制限

ワーキングホリデーで来日している外国人は就労可能ですが、すべてのケースで自由に働けるわけではありません。

 

在留資格の種類は「特定活動」であっても、実際に働けるかどうかは個別に発行される「指定書」や、就労に関する条件に大きく左右されます。

 

このセクションでは、就労可否を判断するうえで最も重要なポイントや、労働時間・職種の制限、企業側が採用前に確認すべき項目を整理します。

指定書の記載内容で就労可否が分かれる

ワーキングホリデーを含む特定活動ビザでは、就労の可否は「在留カード」だけでは判断できません。

重要なのは、入国管理局から交付される「指定書」に記載されている内容です。

指定書には以下のような記載がされるケースがあります。

  • 「指定された就労活動に限り就労を認める」

     

  • 「在留中に報酬を受ける活動を行っても差し支えない」

     

  • 「就労を目的とする活動を行ってはならない」

つまり、同じワーキングホリデーでも、個別の指定内容によって就労可否が異なるということです。

雇用主は必ず、在留カードとともに指定書を確認し、「報酬を受ける活動が認められているかどうか」をチェックする必要があります。

労働時間や職種に制限はあるのか

ワーキングホリデー制度では就労が認められていますが、労働時間や職種に制限が設けられる場合があります。

一般的に、以下のような制限が存在します。

  • 労働時間 – 週28時間以内の上限があるケース(指定書により異なる)

     

  • 職種 – 風俗営業やギャンブル関連業務(パチンコ店・キャバクラなど)は原則として禁止

     

  • 複数のアルバイト – 問題ない場合が多いが、内容や就労時間の総計に注意が必要

特に学生ビザの資格外活動許可と混同しないことが重要です。

ワーキングホリデーの場合は、より柔軟に働けるようになっているものの、指定書の条件次第では時間・業務範囲に厳しい制限が課されることもあります。

就労先企業が確認すべきポイント

企業がワーキングホリデーの外国人を雇用する際には、以下の3つの確認ポイントを押さえておくことが重要です。

  1. 在留カードと指定書の内容確認
     → 特に就労可否の条件や在留期限の確認は必須。

     

  2. 就労時間・職種に関する条件確認
     → 法律違反を防ぐため、労働契約書にも勤務条件を明記しましょう。

     

  3. 在留期限に合わせた契約期間の設定
     → 短期契約や更新の有無をあらかじめ話し合っておくことが、トラブル防止につながります。

また、雇用契約を結ぶ際には、日本人労働者と同等の条件で就業させることが原則となっており、不当な差別的取り扱いは入管法・労基法の観点からも問題になります。

  • 雇用前に「指定書」と「条件」を必ず確認しよう

ワーキングホリデーの在留資格を持つ外国人は、就労可能ではあるものの、自由に働けるわけではありません。
指定書の内容により条件が大きく異なり、労働時間・職種にも制限が課されるケースがあるため、企業側の確認不足はリスクに直結します。

雇用時には以下を必ず実行しましょう。

  • 指定書・在留カードの確認

     

  • 労働条件の書面化

     

  • 在留期限に合わせた契約設計

適切な確認とルールの理解があれば、ワーキングホリデー人材は短期戦力として、また国際的な社内環境づくりにも貢献できる貴重な存在になります。

ワーキングホリデーから他のビザへ変更できる?

ワーキングホリデーで日本に滞在している外国人が、「そのまま日本で働き続けたい」と希望するケースは少なくありません。

 

しかし、ワーキングホリデーは本来、一時的な滞在と文化交流を目的とした制度であり、長期の就労や永住には対応していません。

 

では、日本国内で就労ビザなどへ在留資格を変更することは可能なのでしょうか?

 

このセクションでは、変更の基本的な流れ、国籍による審査の違い、一度帰国してから再入国する方法について詳しく解説します。

就労ビザなどへの在留資格変更の流れ

結論から言えば、条件を満たせば、ワーキングホリデーから就労ビザへの変更は可能です。

ただし、入管審査では「継続的な雇用の見込み」や「在留資格に見合った職種かどうか」が重視されます。

一般的な変更の流れは以下の通りです。

  1. 雇用先企業と雇用契約を締結
    業務内容や給与条件が「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に適合している必要があります。

     

  2. 必要書類を準備し、地方出入国在留管理局に申請
    申請者と雇用先の情報、職務内容、雇用契約書、企業概要書などを提出します。

     

  3. 審査(通常1〜3ヶ月)を経て、許可が下りれば就労ビザへ変更
    不許可の場合は再申請、または帰国が必要になります。

なお、就労ビザ以外にも、「配偶者ビザ」や「特定活動(46号)」などの選択肢もあり、個々の状況に応じて最適な在留資格を選択することが重要です。

国籍によって変更の難易度が異なる理由

実際の審査では、申請者の国籍が変更の難易度に影響を与えることがあります。

その理由は主に以下の3つです。

  • 協定の有無や信頼性: ワーキングホリデー協定国は信頼度が高く、一定の審査緩和が見られるケースがあります。

     

  • 過去のビザ違反率: 国ごとの統計的傾向により、入管が慎重になる場合があります。

     

  • 職種との親和性: たとえば、英語圏出身者が英会話講師などに就く場合は、審査が比較的スムーズです。

逆に、職種が単純労働に該当しやすいケースや、滞在目的との一貫性が薄い場合は、国籍を問わず厳しく審査されます。

そのため、国籍に関係なく「在留目的に一貫性があり、職務内容がビザ要件に適合しているか」が重要な判断軸になります。

一旦帰国してからの呼寄せという選択肢

もし在留資格の変更が日本国内で認められなかった場合、一度帰国し、雇用主が正式に招聘(しょうへい)して再入国を目指す方法もあります。

これは「在留資格認定証明書交付申請」を経て、就労ビザを取得してから改めて入国するルートです。

このプロセスの基本的な流れは以下の通り

  1. 企業が「在留資格認定証明書」の申請を行う

     

  2. 証明書が発行されたら、申請者が本国の日本大使館または領事館でビザ申請

     

  3. ビザを取得後、日本に再入国して就労を開始

この方法は審査時間がかかるものの、国内申請で不許可となった場合の再チャレンジ手段として有効です。

ただし、ワーキングホリデー滞在中に次の就労先が決まっているなど、スムーズに切り替えられる条件が整っている場合に限られます。

  • 在留資格の変更は計画的に、条件をしっかり確認して進めよう

ワーキングホリデーは一時的な滞在を前提としていますが、条件が整えば他の在留資格への変更は可能です。
ただし、変更には明確な就労先と在留目的の一貫性が必要であり、入管の審査基準を満たすための十分な準備が不可欠です。

特に注意すべきポイントは次の3点です。

  • 就労ビザの取得条件に合致する職種であること

     

  • 国籍や職務内容が審査に与える影響を考慮すること

     

  • 万が一に備えた「帰国後の呼寄せルート」も視野に入れること

適切な対応を行えば、ワーキングホリデーをキャリアの転機に変えることも可能です。
企業側も本人も、将来の選択肢を広げるために、早い段階から計画的に進めることが求められます。

企業がワーキングホリデー人材を雇用する際の注意点

ワーキングホリデー制度を利用して日本に滞在している外国人は、一定の条件下で就労が可能です。

 

柔軟な働き方ができる人材として重宝される一方で、雇用時には法的な確認事項や手続きが必要不可欠です。

 

特に、中長期の就業を前提としないワーキングホリデー人材は、在留資格や就労条件、滞在期間の管理が曖昧になりやすく、雇用主の責任で確認・対応すべき事項が多く存在します。

 

ここでは、採用前に企業が見落としてはならない3つの重要ポイントを整理します。

採用前に在留カードとパスポートを確認

まず最初に行うべきことは、在留カードとパスポートの確認です。

在留カードには在留資格の名称(たとえば「特定活動」)や在留期限、住居地などの情報が記載されており、このカードが本人の正規滞在を証明する最も基本的な書類です。

しかし、ワーキングホリデーの就労可否は在留カードだけでは判断できない場合があります。

たとえば、在留資格が「特定活動」と書かれていても、活動内容は個別に異なるため、一概に「働ける」とは限りません。

そのため、在留カードとあわせてパスポートの入国スタンプや添付された指定書も確認する必要があるのです。

採用面接時には、原本の提示を受け、情報の有効期限や一致を確認しましょう。

コピーを取っておくことも、法的トラブルの回避につながります。

指定書の就労条件を事前に確認する重要性

在留カードがあるだけでは不十分です。指定書に記載された「就労の可否」が、雇用の可否を左右します。

指定書には、以下のような情報が含まれています。

  • 報酬を得る活動が許可されているかどうか

     

  • 許可された活動の範囲(業種や内容に限定があることも)

     

  • 就労時間の上限(制限がある場合)

ここで重要なのは、企業側にも確認責任があるという点です。

「知らなかった」「在留カードに特定活動とあるから大丈夫だと思った」といった主張は、入管法違反には通用しません。

意図せず不法就労を助長してしまうリスクを回避するためにも、採用前に就労条件を文書で確認し、必要であれば専門家に相談する体制を整えておくことが望ましいでしょう。

在留期限の把握と管理方法

ワーキングホリデーの在留期限は原則1年。国によっては6か月や延長申請が可能な場合もありますが、多くは「延長不可の一時滞在」です。

そのため、雇用期間が在留期限を超えてしまう契約は避ける必要があります。

仮に本人が在留期間中にビザ変更を検討していたとしても、それが確実に認められるとは限らないため、企業側のリスク管理として、契約期間は在留期限内に限定すべきです。

さらに、採用後も次のような管理を継続しましょう。

  • 在留期限が近づいたら事前に本人と確認を取り、更新または終了の意思を確認

     

  • 労務管理システムで在留期限のリマインダーを設定

     

  • 就業規則や雇用契約書に「在留資格が無効となった場合は契約終了となる」旨を明記

このように、在留期限と契約管理をリンクさせる体制づくりが、企業のリスクを最小限に抑える鍵となります。

  • 確認・管理を徹底し、安心してワーホリ人材を活用しよう

ワーキングホリデー制度は、企業にとって国際的な人材を柔軟に活用できる貴重な機会です。
しかし、在留資格が「特定活動」である以上、雇用には法律上の確認責任と管理義務が伴います。

特に重要なのは以下の3点

  • 在留カード・パスポート・指定書を正確に確認すること

     

  • 指定書に明記された就労条件を厳守すること

     

  • 在留期限に応じて雇用契約の管理を行うこと

これらを怠ると、不法就労助長罪などの重大なリスクを企業側が負うことになります。
一方で、これらを適切に運用できれば、ワーキングホリデーの人材は多様性と新しい価値観を社内にもたらす存在となるでしょう。

雇用時に知っておきたい税金と社会保険の取り扱い

外国人を雇用する際、日本人と同じように見えても、税金や社会保険の扱いが大きく異なるケースがあります。

 

特にワーキングホリデーで来日している外国人は、原則「一時的な滞在者」として分類されるため、所得税や保険加入の可否に独自の取り扱いが存在します。

 

企業が適切に処理を行わないと、税務署や労基署から指摘を受けるリスクもあるため、事前の理解と手続きの徹底が不可欠です。

 

このセクションでは、税率・社会保険・雇用保険・労災・脱退一時金など、雇用主が知っておくべき実務ポイントを解説します。

所得税率は20.42%:非居住者扱いの理由

ワーキングホリデーで来日する外国人は、原則として「非居住者」として扱われます。

そのため、日本での給与には一律20.42%の所得税が源泉徴収されることになります(所得税20%+復興特別所得税0.42%)。

なぜこのように高いのかというと、非居住者は日本国内に住所や居所がない者とされ、特例控除の対象外となるためです。

居住者であれば適用される「給与所得控除」や「基礎控除」が受けられないため、結果として実質的な負担が高くなるのです。

ただし、滞在期間が1年を超える場合や、日本に生活の本拠を移していると見なされる場合は、「居住者」として取り扱われる可能性もあります。

この判定は最終的に税務署が判断するため、不明な場合は税理士への相談をおすすめします。

社会保険の加入基準と例外

社会保険には以下の5つがあります。

  • 健康保険

     

  • 厚生年金保険

     

  • 雇用保険

     

  • 労災保険

     

  • 介護保険(40歳以上が対象)

このうち、ワーキングホリデーの人材が主に関係するのは「健康保険」「厚生年金保険」です。

原則として、雇用形態や労働時間が所定の基準(週30時間以上など)を満たせば、外国人であっても社会保険の加入義務が発生します。

ただし、ワーキングホリデーは「短期滞在」が前提であるため、以下のようなケースでは加入の例外となる場合もあります。

  • 雇用期間が2か月以内など、短期間に限られている

     

  • 契約時に「更新の予定がないこと」が明記されている

     

  • 実際の労働時間が基準未満である

例外扱いに該当するかどうかは、雇用契約書や勤務形態に左右されるため、必ず事前に確認しておきましょう。

雇用保険は短期雇用でも加入対象になるか

雇用保険は、原則として週20時間以上の労働が見込まれ、31日以上の雇用見込みがある場合に加入義務が生じます。

つまり、短期であっても「1か月を超える雇用」であれば、ワーキングホリデーの外国人でも加入が必要となる可能性があります。

ただし、契約時点で「1か月以内」「更新なし」が明示されている場合は、加入義務は発生しません。

企業側は、採用時の雇用契約書で「更新の有無」「見込み期間」を明確にすることで、加入要否を判断できる体制を整えておくことが重要です。

労災保険は外国人にも強制加入

労災保険(労働者災害補償保険)は、すべての労働者を対象とした強制保険です。

これは雇用形態や国籍にかかわらず、日本国内で働く労働者全員に適用されます。

たとえ1日だけのアルバイトや、在留期間が短い外国人であっても、就労中や通勤中に事故やケガが発生した場合は労災補償の対象となります。

保険料は事業主が全額負担する仕組みで、労働者側に費用負担はありません。

「外国人だから対象外」という認識は完全に誤りです。企業側には全労働者への労災加入義務があることを再確認しておきましょう。

厚生年金の脱退一時金制度とは?

ワーキングホリデーのように短期間だけ日本で働く外国人が厚生年金に加入した場合、帰国後に一部の年金保険料を払い戻してもらえる制度が「脱退一時金」です。

主な要件は以下のとおり

  • 日本を出国してから2年以内に請求すること

     

  • 厚生年金保険の加入期間が6か月以上あること

     

  • 日本国籍を持っていないこと

この制度により、一定の条件を満たせば、納めた保険料の一部が返還される仕組みになっています。

雇用時には、「加入義務があるから仕方ない」ではなく、制度を正しく案内し、外国人本人にも選択の余地があることを説明する配慮が求められます。

  • 税・社会保険の取り扱いは「例外ルール」を理解して対応を

ワーキングホリデーの人材を雇用する場合、日本人と同じルールがそのまま適用されるわけではありません。
税金は非居住者として扱われ、保険制度についても滞在期間や契約条件に応じて加入義務が分かれるため、企業側にとっても判断が難しい領域です。

特に注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 所得税は一律20.42%課税される場合が多い

     

  • 社会保険・雇用保険は契約条件次第で加入不要となるケースもある

     

  • 労災保険はすべての外国人労働者が対象

     

  • 厚生年金は後から払い戻しが可能な制度もある

これらを正しく理解し、契約前から制度説明や管理体制を整えておくことが、法令遵守と信頼ある雇用につながります。

ワーキングホリデー人材を採用するメリット・活用事例

企業が外国人採用を進めるなかで、ワーキングホリデー制度は手軽かつリスクの少ない入り口として注目されています。

 

制度上は短期滞在を前提としていますが、その柔軟性と実務的な適応力から、多くの企業が戦力として積極的に活用しているのが現状です。

 

このセクションでは、企業がワーキングホリデー人材を採用する際に得られる具体的なメリットや、実際の活用事例を交えた成功のヒントを紹介します。

柔軟な雇用と多国籍人材の導入が可能

ワーキングホリデー人材の最大の特長は、雇用形態に柔軟性があることです。

在留資格としての制約はあるものの、アルバイト・パート・契約社員など多様な形で雇用が可能であり、企業のニーズに応じた人材配置が実現できます。

特に以下のような場面で有効です。

  • 観光シーズンや短期プロジェクトでの即戦力の確保

     

  • 接客・案内業務における語学力を活かした対応

     

  • 多国籍チーム形成による企業の国際対応力強化

また、ワーキングホリデーの外国人は比較的若年層が多く、新しい視点や文化的刺激を企業に取り入れる機会としても貴重な存在です。

正社員登用へのステップとしての活用

ワーキングホリデーは本来、滞在期間が限定された制度です。

しかし、その期間中に適性や意欲を確認したうえで、在留資格を変更して正社員として採用するという事例も増えています。

この「見極め期間」としての活用は、以下の点で有効です。

  • ミスマッチを防ぎながら適性を判断できる

     

  • 求職者側も実際の職場を経験することで、納得感のある選択ができる

     

  • 入管への在留資格変更手続きにも、具体的な実績がある方が審査通過率が上がる

特に、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザに該当する職務であれば、制度の切り替えも現実的で、長期雇用につなげるためのスムーズな流れを作ることができます。

成功事例とトラブル回避のコツ

実際にワーキングホリデー人材を採用し、成功を収めている企業の事例としては以下のようなケースが挙げられます。

  • 観光地のホテルで英語圏出身者を短期採用 → 海外顧客対応の質が向上

     

  • 飲食チェーンが接客スタッフとして多国籍人材を導入 → 外国人観光客からの評価が上昇

     

  • スタートアップ企業が多言語SNS運用を依頼 → 本国とのリーチが拡大

一方で、注意すべきトラブルとしては、

  • 在留期限の失念による違法就労のリスク

     

  • 指定書の就労条件を見落とし、想定外の業務に従事させてしまう

     

  • 日本の労働慣習に馴染めず、短期間で退職するケース

これらを回避するためには、採用前の情報共有と制度理解、入社後のフォロー体制が不可欠です。

また、「就業条件通知書」や「業務内容の明示」などを通じて、相互の認識を一致させる工夫が、トラブル防止に大きく貢献します。

  • ワーキングホリデー人材は“柔軟で実践的”なグローバル戦力

ワーキングホリデー人材は、即戦力としての実務対応力と、将来的な可能性を兼ね備えた存在です。

制度の理解と適切な対応があれば、短期雇用にとどまらず、企業の多様性推進やグローバル展開の一端を担うパートナーとして活用できます。

成功の鍵は、以下の3点に集約されます。

  • 短期的ニーズに応じた柔軟な配置と語学対応力の活用

     

  • 正社員登用を見据えた段階的な評価と制度活用

     

  • 在留資格・就労条件の厳守と適切な労務管理

これらを踏まえて採用を進めれば、ワーキングホリデー人材は単なる“短期バイト”ではなく、企業の未来に貢献する有望な存在となるでしょう。

特定活動46号との違いと混同しないためのポイント

外国人の雇用に関する在留資格は多岐にわたりますが、そのなかでも「特定活動」という枠組みの中に複数の異なる制度が存在していることに注意が必要です。

 

特に企業の人事担当者や現場の採用責任者にとって混同しやすいのが、ワーキングホリデーと特定活動46号の違いです。

 

どちらも「特定活動」として記載されるため、在留カードを見ただけでは区別が難しいことがあります。

 

ここでは、特定活動46号の内容、ワーキングホリデーとの制度上の相違点、指定書や在留資格名での見分け方について整理します。

特定活動46号の概要と対象者

「特定活動46号」とは、日本の大学・大学院を卒業または修了した外国人に対して認められる在留資格です。

この制度は、経済産業省が推進する「高度外国人材の活用促進策」の一環として設けられました。

対象者の要件には以下のような条件があります。

  • 日本の大学または大学院を卒業していること(学士以上)

     

  • 日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上を取得していること

     

  • 日本国内でフルタイムの就労を希望していること

この資格は、接客業など従来は「単純労働」とされていた職種でも、一定の条件を満たせば就労を認めるという大きな特徴があります。

すでに多くの外国人がこの制度を活用し、ホテル、外食、小売などの現場で活躍しています。

ワーキングホリデーとの制度上の違い

ワーキングホリデーと特定活動46号は、根本的な制度目的が異なります。
以下に主な違いを整理します。

項目ワーキングホリデー特定活動46号
制度目的国際交流・文化理解日本国内での就労・人材活用
滞在期間原則1年(国により異なる)最長5年(1年更新、更新要件あり)
就労の可否一定条件下で可能(制限あり)フルタイムでの就労が可能
対象者協定国の18〜30歳(主に観光・短期滞在者)日本の大学・大学院卒業者で日本語力の高い人材
雇用形態アルバイト・パート中心正社員・フルタイム雇用

このように、ワーキングホリデーは「一時的な滞在と労働」なのに対し、特定活動46号は「長期的な就業を前提とした制度」であることが分かります。

両者の制度趣旨がまったく異なるため、雇用方針や契約条件もそれに応じて設計する必要があります。

指定書や在留資格名での見分け方

在留カードには、どちらの制度も「特定活動」としか記載されません。

そのため、見た目だけでは46号かワーキングホリデーかを判断できないという点が最大の落とし穴です。

見分けるには、以下の点を確認する必要があります。

  • 指定書の記載内容を見ること
    → 「日本の大学を卒業した者として、接客業等での活動を認める」などの文言がある場合は46号
    → 「ワーキングホリデー協定に基づき滞在」などの記載があればワーホリ

     

  • 活動内容・契約形態で判断する
    → フルタイム就労で1年を超える契約の場合、ワーキングホリデーでの就業は原則不可
    → ワーキングホリデーはアルバイト中心、短期契約が前提

     

  • 年齢と国籍から判断
    → ワーキングホリデーの対象年齢は通常18〜30歳、かつ協定国に限定
    → 特定活動46号は年齢制限なし、国籍も不問(卒業実績と日本語力が重視)

人事担当者は、必ず在留カードと指定書をセットで確認し、契約内容が制度に適合しているかどうかを見極める必要があります。

  • 制度趣旨を理解し、正確に見極めることがリスク回避につながる

「特定活動」という言葉だけでは、ワーキングホリデーか46号かを判断することはできません。
しかし、制度目的や対象者、就労条件をきちんと理解しておけば、誤った採用や法的リスクを避けることが可能です。

特に確認すべきポイントは次の3点です。

  • 指定書で活動内容を明示的に確認すること

     

  • 雇用形態や労働時間が制度に合致しているかを精査すること

     

  • 在留資格と実際の雇用内容にズレがないよう、社内で情報共有を徹底すること

制度を正しく理解し、適切に区別することが、外国人雇用の信頼性と持続性を高める第一歩です。

ワーキングホリデー人材の受け入れが企業にもたらす文化的メリット

外国人雇用というと、即戦力としての労働力確保や言語スキルへの期待が先行しがちです。

 

しかし、ワーキングホリデー人材の受け入れは、単なる“人手不足の解消”にとどまらず、社内の文化・組織に新たな視点や活力をもたらす大きな可能性を秘めています。

 

特に多様性や国際感覚が求められる今、ワーキングホリデー人材の存在が企業文化に及ぼすプラスの効果に注目すべきです。

異文化理解の促進による社内活性化

ワーキングホリデーの人材は、日本とは異なる価値観や文化背景を持った若者です。

そうした人材が職場に入ることで、社内に“ちがい”を前提としたコミュニケーションが自然と生まれます。

例えば

  • 挨拶のしかた、仕事の進め方、時間感覚などに違いがあり、日本人従業員が自分たちの常識を見直す機会になる

     

  • 英語や母国語でのやり取りを通じて、多言語コミュニケーションへの抵抗が減る

     

  • 食事や休憩時間に、自然と異文化交流が生まれ、チームの一体感が強まる

このように、日常のなかで異文化に触れる機会があること自体が社内の刺激となり、閉塞感を打破するきっかけになります。

とくに中小企業や地方企業では、こうした「外からの視点」が活性化の大きな鍵を握ります。

グローバル展開を見据えた組織づくりへの第一歩

ワーキングホリデー人材の受け入れは、グローバル人材戦略の“入口”として非常に有効です。

まずは短期間・非正規雇用という柔軟な形で外国人と関わることで、企業側も外国人雇用の体験値を蓄積することができます。

  • 外国人との契約・労務管理の基礎を学べる

     

  • 英語マニュアルや社内翻訳の必要性に気づける

     

  • 「言わなくても伝わる」文化から「明示する文化」への変化が始まる

結果として、外国人スタッフが自然と働ける体制が整い、将来的に正社員としての外国人採用や海外展開をスムーズに進める素地が生まれます。

「いきなりグローバル化はハードルが高い」と感じている企業こそ、まずはワーキングホリデー人材の受け入れからスタートすることが効果的です。

短期間でも現場に新たな視点をもたらす力

ワーキングホリデーの滞在期間は多くの場合1年以内ですが、短期間であっても企業に与える影響は決して小さくありません。

たとえば、以下のような変化が現場で起きることがあります。

  • 接客現場で「海外の顧客目線」をフィードバックしてくれる

     

  • 商品の説明や店舗レイアウトについて、「こうすると分かりやすい」と助言がある

     

  • SNSや口コミ投稿において、「母国語での発信」により集客効果が期待できる

こうした視点は、日本人社員だけでは気づきにくい点を可視化し、業務改善や顧客満足度の向上に直結する場合も多いのです。

特にインバウンド対応やEC事業、SNS発信を行っている企業では、短期の採用であってもその波及効果は大きいと言えるでしょう。

  • ワーキングホリデー人材は“文化的資産”でもある

ワーキングホリデー制度を活用することで得られるのは、単なる労働力ではありません。
彼らの存在は、企業文化に新しい風を吹き込み、組織に“多様性と学び”をもたらす貴重な資産です。

採用の際には、以下の視点を意識してみてください。

  • 異文化を受け入れる柔軟性が社内にあるか?

     

  • 国際対応への第一歩としてワーキングホリデー人材を活用できるか?

     

  • 短期であっても長期的な視野で文化的価値を見いだせるか?

人材としてだけでなく、“異文化を社内に取り入れる実践の場”として、ワーキングホリデー人材を活かすことができれば、企業の変革は一歩前進することになるでしょう。

まとめ|ワーキングホリデー人材の雇用は“制度理解”と“活用力”が鍵

ワーキングホリデー制度を利用して日本に滞在する外国人は、「特定活動」ビザの中でも比較的就労がしやすいカテゴリーに属します。

 

しかし、在留カードや指定書の記載内容によっては就労が制限される場合もあり、採用時には法的なチェックと制度への理解が不可欠です。

 

本記事では、以下の観点から実務的なポイントを整理しました。

  • 特定活動の分類やワーキングホリデーとの位置づけ

     

  • 就労に関するルール・制限・在留資格変更の可否

     

  • 税金や社会保険などの実務的な取り扱い

     

  • 企業にとっての文化的メリットや活用事例

     

  • 特定活動46号との違いとその見分け方

制度を正しく理解し、就労条件に即した受け入れ体制を整えることが、トラブルを回避し、実りある雇用関係を築く第一歩となります。

 

また、単なる短期人材としてではなく、国際的な視点や柔軟な発想を企業にもたらす存在としてワーキングホリデー人材を活用することが、組織に新たな可能性をもたらします。

 

今後の採用活動において、制度理解と企業の成長戦略を結びつける視点を持ち、ワーキングホリデー人材を積極的に活用していくことが求められるでしょう。

 

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