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12/11 (木)更新

不法就労助長罪とは?定義・ケース・罰則・事業者の注意点を整理

外国人労働者の受け入れが進むなかで、企業にとって避けて通れないのが「不法就労助長罪」への理解です。

この罪は、不法就労している外国人を雇用したり、その活動を助けたりする行為に対して適用されるもので、知らないうちに違反してしまうケースも少なくありません。

「在留カードを確認したつもりだった」 「派遣会社に任せていた」 「本人が”働ける”と言っていたから大丈夫だと思った」

こうした”うっかり”が、実は刑事罰の対象になる可能性があります。

とくに近年は、外国人雇用に関する法規制が強化されており、企業側の確認義務や管理体制がより厳しく問われるようになっています。

本記事では、

  • 不法就労助長罪の定義と成り立ち
  • どのような行為が「助長」に当たるのか
  • 罰則内容や法改正の動き
  • 企業が取るべき具体的な対策

を中心に、わかりやすく整理していきます。

最後には、実際に摘発された事例と企業が陥りやすい落とし穴も紹介。

「うちは大丈夫」と思っている企業こそ、ぜひチェックしておきたい内容です。

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不法就労助長罪とは

「不法就労助長罪」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどんな行為が違法になるのか、明確に理解している人は多くありません。

この罪は、不法に就労する外国人を「働かせた」「働く場を提供した」「仲介した」といった行為に適用されるもので、知らずに関与した場合でも処罰される可能性があります。

企業や個人事業主が外国人を雇う際には、「就労資格の確認」「雇用の適法性」を徹底することが求められます。

ここではまず、この罪の定義や成り立ちを整理していきましょう。

法律上の定義と成り立ち

不法就労助長罪は、入管法第73条の2(出入国管理及び難民認定法)に規定されています。

条文では、次のような行為が処罰の対象です。

  • 不法就労をさせた者
  • 不法就労のために外国人をあっせんした者
  • 不法就労を容易にした者(場所や手段を提供した者など)

つまり、直接雇用した場合だけでなく、間接的に関わったケースでも「助長」とみなされるのが特徴です。

たとえば、下請け業者が不法就労者を使っていたのを知りながら契約を続けた場合なども、助長行為と判断されることがあります。

この規定は、1990年の法改正で新設されました。

背景には、当時急増していた「不法滞在外国人の就労問題」への対応があります。

労働市場の健全化と外国人保護の両立を目的に、雇用側の責任を明確にするために導入された制度です。

不法就労・就労資格違反との関係

「不法就労助長罪」と「不法就労」は混同されがちですが、立場が異なります。

用語対象となる行為主体主な内容
不法就労外国人が在留資格に反して働くこと外国人本人例:観光ビザで就労する、在留期限切れ後も勤務を続ける
不法就労助長罪不法就労を手助け・容認すること雇用主・仲介者など例:就労不可の外国人を雇う、資格外活動を承知で働かせる

つまり、不法就労助長罪は「雇う側」が処罰される罪です。

本人が不法就労をしていると知らなかった場合でも、確認義務を怠っていれば「故意に準ずる過失」として責任を問われる可能性があります。

まとめ|雇用主側の「確認不足」も罪に問われる時代

不法就労助長罪は、単に「悪質な雇用主を取り締まるための法律」ではありません。

「確認を怠った」「曖昧な契約を放置した」だけでも処罰対象になり得る点が重要です。

企業や店舗の人事担当者は、在留カードや就労資格の確認を形式的に行うだけでなく、

  • 雇用形態(直接・派遣・業務委託)
  • 業務内容(資格範囲内か)
  • 在留期間の有効性

といった実態まで把握することが求められています。

次に、不法就労助長罪がどんなケースで実際に成立するのかを見ていきましょう。

不法就労助長罪が成立する具体的なケース

「うちは意図的に雇っていないから大丈夫」と思っていても、実はその油断が命取りになることもあります。

不法就労助長罪は、「知らなかった」「気づかなかった」では済まされないケースが多く、実際の摘発事例を見ても、ほとんどが確認不足や管理体制の甘さが原因です。

ここでは、代表的な2つの成立パターンを紹介します。

不法滞在者や資格なし外国人を雇用した場合

最も多いのが、在留期限が切れている外国人や、そもそも就労資格を持たない人を雇用してしまうケースです。

一例として、

  • 観光ビザや留学ビザのままフルタイムで働かせていた
  • 在留カードの期限を確認せずに契約更新した
  • 派遣元の書類だけを信じ、本人確認を怠った

といったケースが実際に摘発されています。

入管法では、在留資格の確認は雇用主の義務とされています。

したがって、書類確認をしていない・コピーを保存していない場合、「助長した」とみなされるリスクが高くなります。

許可されていない業務・資格外活動をさせた場合

もう一つ多いのが、「就労自体は許可されているが、資格範囲を超えた仕事をさせた」ケースです。

たとえば、

  • 調理ビザを持つ外国人に接客業務をさせていた
  • 技術・人文知識・国際業務ビザ保持者を、工場ライン作業に従事させた
  • 留学生アルバイトに、週28時間を超える勤務をさせた

などが該当します。

これらはいずれも「資格外活動」とされ、雇用主側が知りながら黙認していた場合、不法就労助長罪が成立します。

ポイントは、本人に「できる」と言われても、最終判断は企業側に責任があるということ。

在留資格の範囲を正確に理解し、職務内容と照合して適法性をチェックすることが求められます。

まとめ|”意図しない違反”を防ぐには「仕組み化」が必要

不法就労助長罪の多くは、悪意ではなく確認不足から起こる違反です。

とくに人手不足の現場では、採用スピードを優先するあまり、在留資格の確認が後回しになりがちです。

企業としては、

  • 採用時の在留カード確認・コピー保管の義務化
  • 契約更新時の資格・期間チェックリストの運用
  • 外国人雇用に詳しい担当者・行政書士との連携

といった「確認の仕組み」を導入することが重要です。

制度を理解して適切に運用すれば、外国人雇用は企業の大きな戦力になります。

そのためにもまずは、リスクを知り、正しく防ぐ意識を持つことが第一歩です。

罰則・刑罰の内容と最近の法改正

外国人を雇用する企業にとって、不法就労助長罪の罰則内容を正しく理解しておくことは非常に重要です。

この法律は、外国人本人ではなく「雇う側」や「関与した側」に適用されるもので、知らずに関与してしまった場合でも処罰される可能性があります。

特に近年は厳罰化の流れが強まっており、企業や経営者の責任がより重く問われるようになりました。

ここでは、現行の刑罰と今後の法改正の動向を整理し、企業がどのようなリスクを認識すべきかを見ていきましょう。

懲役・罰金の現行法定刑

不法就労助長罪とは、不法に就労する外国人を雇用・あっせん・助長した者を処罰する法律です。

現行の入管法(出入国管理及び難民認定法)では、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその両方」が科せられると定められています。

注意すべきは、直接雇用していなくても処罰対象になるケースがあるということ。

たとえば、業務委託や派遣などの形で実質的に労働を提供させていた場合、または違法就労を知りながら黙認していた場合なども該当します。

つまり、不法就労助長罪は「意図して雇ったかどうか」よりも、確認を怠ったかどうかが重視される犯罪です。

結果として、確認不足や手続きの甘さが企業に重大なリスクをもたらすことになります。

厳罰化の動きと今後のリスク

今後の法改正により、不法就労助長罪はさらに厳しい処分が科される見込みです。

懲役は「5年以下」、罰金は「500万円以下」へと上限が引き上げられ、懲役と罰金の併科(両方科される)も可能になる方向で検討されています。

この背景には、外国人労働者の増加に伴い、企業のコンプライアンス意識が問われる場面が増えていることがあります。

つまり、単なる行政上のミスではなく、「刑事責任を伴う経営リスク」として扱われるようになっているのです。

懲役・罰金だけでなく、企業名の公表・入札停止・取引先からの信用失墜といった社会的ダメージも無視できません。

不法就労助長罪はもはや”刑事罰だけの話”ではなく、企業の存続にも影響を与えかねないリスクとして認識しておく必要があります。

まとめ|罰則強化で「確認不足」が最大のリスクに

不法就労助長罪の罰則は、今後ますます厳しくなる方向にあります。

「うっかり確認を怠った」「書類をコピーし忘れた」——それだけでも、企業側の過失として判断される可能性があります。

外国人を雇用する企業は、在留資格・在留期限・就労可能範囲の確認を徹底し、すべてを記録に残す仕組みを整えることが不可欠です。

これらを徹底することで、厳罰化の流れの中でも安心して外国人雇用を継続できるでしょう。

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企業が不法就労助長罪を回避するためのチェックポイント

不法就労助長罪を防ぐ最も効果的な方法は、採用・雇用・更新の各段階で適切な確認体制を構築することです。

「入管法のルールを守る」だけでなく、社内の管理体制として”ミスが起きにくい仕組み”を作ることが求められます。

ここでは、企業が押さえておくべき実務的なポイントを2つ紹介します。

在留資格・在留カードの確認と記録保持

外国人を雇用する際は、まず在留カードの原本確認とコピー保管が必須です。

次のポイントをチェックし、社内で統一した確認手順を設けておくと安心です。

  • 在留資格の種類(就労可能・不可の区分)
  • 在留期間と更新期限
  • 就労制限の有無
  • 氏名・生年月日・カード番号の一致

また、採用時だけでなく在留期間の更新時にも再確認を行うことが重要です。

本人が資格変更中や更新手続き中である場合は、入管提出書類や受理証明を確認し、「合法的な雇用である証拠」を残しましょう。

これにより、後の調査や指摘があった際にも、企業としての適法性を説明できます。

就労可能範囲・在留資格内容の遵守とモニタリング

不法就労助長罪の多くは、在留資格の範囲外で働かせたケースから発生します。

たとえば、技術ビザの人を単純作業に従事させたり、留学生を週28時間以上働かせたりするケースが典型例です。

これを防ぐには、次のような取り組みが効果的です。

  • 業務内容と在留資格を突き合わせたチェックリストを作成
  • 配属・異動時に職務内容が資格範囲内かを確認
  • 労働時間や勤務形態を定期的にモニタリング
  • 外部専門家(行政書士など)との連携による資格管理サポート

これらを「社内ルール」として明文化し、全社員が理解できる状態にしておくことが大切です。

人事担当者だけが把握していても、現場で逸脱があれば意味がありません。

まとめ|法令遵守は担当者任せではなく”仕組み”で守る

不法就労助長罪のリスクを防ぐカギは、「注意」よりも「仕組み」にあります。

属人的な確認では限界があり、定期点検・記録保存・社内教育を通じて”組織として遵守できる体制”を築くことが重要です。

外国人雇用は、正しく行えば企業の競争力を高める大きなチャンスです。

罰則を恐れるのではなく、透明で公正な雇用体制を整えることで、信頼される企業へと成長していくことができます。

不法就労助長罪の摘発事例と企業が陥りやすい落とし穴

不法就労助長罪は、決して「悪意ある雇用主」だけが対象となるものではありません。

実際の摘発例を見てみると、「確認を怠った」「ルールを知らなかった」「人材会社に任せきりだった」といった”過失”によって処罰されているケースが少なくありません。

ここでは、過去に起きた事例をもとに、企業がどんな場面で落とし穴にはまるのか、そしてどう防ぐべきかを整理します。

過失・確認不足で罪に問われた実例

不法就労助長罪の典型的な摘発パターンは、「本人の在留資格や就労範囲を正確に確認しなかった」というケースです。

たとえば以下のような実例が挙げられます。

  • 飲食チェーン店での事例 留学生アルバイトを週28時間の上限を超えて勤務させていたことが発覚。 店長が「本人が希望したので入れていた」と証言したものの、企業としての管理責任が問われ、罰金刑を受けた。

  • 製造業の下請け企業の事例 外国人派遣労働者の在留カードを確認せず、資格外の単純作業に従事させていたケース。 「派遣元が確認していると思った」と主張したが、実質的な雇用管理を行っていたとして、助長行為に該当と判断された。

  • 建設業での事例 現場作業員の中に、在留期限切れの外国人が含まれていたことが後日判明。 管理責任者が在留カードのコピーを取得していなかったことが決定的なミスとされ、法人と責任者が同時に書類送検された。

これらのケースに共通するのは、「意図的な違反ではなく、管理不備による結果」という点です。

つまり、悪質な雇用ではなくても、「制度を理解していなかった」「社内で確認体制を整えていなかった」というだけで、処罰対象になり得るのです。

経営者・人事担当者が注意すべき典型ミス

不法就労助長罪を防ぐためには、「知らなかった」では済まされない”よくある見落とし”を把握しておく必要があります。

特に以下の3点は、企業が陥りやすい典型的なミスです。

  1. 在留資格の更新・期限チェックを担当任せにしている 在留期間の管理を現場や本人任せにしてしまい、更新忘れで不法就労状態になるケースが多数。 経営者・人事部門が中心となり、更新スケジュールの自動管理や共有台帳の運用を行うべきです。

  2. 業務内容と在留資格の不一致を見落としている たとえば「技術・人文知識・国際業務」のビザで単純作業をさせると、資格外活動になります。 採用時だけでなく、部署異動や業務変更時にも入管法上の範囲を再確認するルールを設けましょう。

  3. 外部委託・人材会社に任せきりにしている 派遣や請負を利用している場合でも、最終的な雇用責任は受け入れ企業側にあります。 「紹介会社が確認しているはず」という考えは非常に危険です。 契約段階で、在留資格確認の責任範囲を明確化し、証拠書類を必ず受領・保管しましょう。

こうしたミスは、日常の業務の中で見落としやすいものばかりです。

しかし、たった一度の確認漏れが企業全体に大きな損失を与える可能性があることを、常に意識しておく必要があります。

まとめ|「知らなかった」では済まされない時代の企業責任

不法就労助長罪は、外国人を不法に働かせた場合だけでなく、「確認を怠った」「誤った認識のまま雇用した」といったケースでも成立する可能性があります。

つまり、悪意の有無に関係なく、確認不足そのものがリスクになる時代です。

本記事で解説した内容を整理すると、企業が押さえるべきポイントは次の通りです。

  • 法的定義と成立要件を理解し、どんな行為が助長に該当するのかを明確にする。
  • 具体的な違反事例を知り、どのような経緯で摘発に至るのかを把握する。
  • 罰則内容や法改正の動きを常にチェックし、経営リスクとして捉える。
  • 在留カードの確認・記録保持・業務範囲の管理を徹底する。
  • 社内の仕組みとして法令遵守を運用し、属人的な確認に頼らない体制を築く。

不法就労助長罪の摘発は年々増加傾向にあり、「知らなかった」「派遣元に任せていた」では済まされません。

企業が守るべきは、法律そのものだけでなく、雇用する外国人の安心と信頼でもあります。

正しい知識と運用体制を整えることで、リスクを避けるだけでなく、外国人材が安心して力を発揮できる職場づくりにもつながります。

これからの時代、外国人雇用の適正管理は”選ばれる企業”の条件です。

法令遵守を「義務」ではなく「企業文化」として根づかせること。

それが、不法就労助長罪を防ぎ、持続的な信頼を築くための第一歩となります。

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