
07/04 (金)更新
特定技能1号の指定書とは?雇用前に絶対チェックすべき3つのポイント
企業が外国人材を採用する際、もっとも見落としてはならない書類の一つが「特定技能1号の指定書」です。
これは単なる添付書類ではなく、就労の可否や従事できる業務内容、所属企業の情報まで明記された法的根拠のある重要資料です。
しかし、実務の現場では「在留カードだけ確認して安心してしまう」「指定書の内容まで深くチェックしていない」といったケースが少なくありません。
その結果、「採用したはずの人が実は就労不可だった」「想定外の業務が制限されていた」などのトラブルが現実に起きています。
本記事では、特定技能1号の指定書の基礎知識から、見落としやすいポイント、実務に活かせる確認方法までを徹底解説します。
さらに、他の在留資格との違いや、転職時の対応、再発行の流れ、社内ルール化の重要性にも触れ、採用リスクを最小限に抑えるための具体的なアクションをご紹介します。
「採用する前に、何をどこまで確認すべきか?」
この問いに対して明確な答えを持つことが、法令順守と円滑な外国人雇用の第一歩です。
指定書を正しく理解し、確実なチェック体制を構築するための手引きとして、ぜひ最後までご覧ください。
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特定技能1号の指定書とは
外国人材を特定技能1号として採用する際、「在留カード」と並んで絶対に見逃してはならない書類が「指定書」です。
在留カードには一見「特定技能」と記載されていても、実際にどの業務に従事できるのか、どの企業に所属するのかなどは、この指定書に明記されており、就労の可否を判断するために不可欠な情報が詰まっています。
このセクションでは、指定書の基本的な意味や記載内容、それが発行される対象者、さらには他の在留資格との違いまでを解説し、企業が見落とすことで生じるリスクについても言及していきます。
指定書に記載される内容とその意味
特定技能1号の指定書には、在留資格に基づいてどのような活動が認められているかが明確に記載されています。主な記載項目は以下の通りです。
- 活動内容(例:飲食料品製造業のライン作業)
- 就労先の企業名や事業所名
- 勤務地の所在地
- 就労時間の制限があるかどうか
- 在留資格の有効期間
- 「報酬を受ける活動を除く」などの制限文言
これらの情報は、単なる形式的なものではなく、労働契約を結ぶ前に絶対に確認すべき実務情報です。
たとえば、指定書に「就労可」と明記されていないケースでは、在留カードに特定技能と書かれていても就労できない可能性があります。
また、別企業名が記載されている場合は、受け入れ側が在留資格違反となるリスクを抱えることにもなりかねません。
誰に対して発行されるのか
指定書は、出入国在留管理庁(入管)が在留資格の交付や変更の許可を出す際に添付する文書であり、特定技能1号の資格をもつ外国人全員に発行されます。
技能実習2号を修了して特定技能1号に移行した場合や、直接技能評価試験と日本語試験に合格して来日した場合でも、例外なくこの指定書は交付されます。
注意すべきは、この書類が「就労条件の証明書」として機能しているという点です。
企業が「本人からの口頭説明」や「在留カードの表面情報」だけをもとに雇用契約を結んでしまうと、知らずに不法就労助長罪に該当してしまうケースすらあります。
「特定技能2号」や他の在留資格との違い
特定技能1号は、14業種に限定された比較的制限の多い在留資格です。
それに対して特定技能2号は、より専門性が高く、在留期間の更新制限がなく家族帯同も可能になるなど待遇が大きく異なります。
また、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格との違いも明確です。
- 技人国(技術・人文知識・国際業務)は、事務職やエンジニア職、翻訳などの専門的業務が対象となり、業務内容の幅が広く、指定書が発行されることはありません(在留カードだけで確認可能)。
- 特定技能は、現業的業務(いわゆるブルーカラー職種)が対象であり、指定書の記載内容が就労範囲を明確に規定する重要な判断資料となります。
この違いを理解していないと、「在留カードに記載されていればどんな職種でもOK」と誤解し、後で指導や摘発を受ける原因になります。
採用前に企業が把握すべきリスクとは
指定書を確認せずに雇用を進めてしまった結果、「実は就労不可だった」「対象業務と異なる作業をさせていた」というケースは、珍しくありません。
こうしたミスが起こる原因の多くは、採用現場が以下のような誤解を抱えていることです。
- 「在留カードがある=働いていい」
- 「特定技能1号ならどんな作業も可能」
- 「本人が大丈夫と言っていたから問題ない」
しかし、現行制度では在留資格ごとに就労条件が厳密に決まっており、確認を怠ることで不法就労助長罪(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)に問われる可能性すらあります。
特に多いのが、「特定活動」との取り違えや、「報酬を受ける活動を除く」の文言を読み落とすミス。こうした見落としを防ぐためにも、社内に「指定書チェックフロー」を明文化することがリスク回避の第一歩です。
▽採用ミスを防ぐには「指定書の正確な読み取り」がカギ
特定技能1号での採用を進める際、企業が確実に行うべきは「在留カードだけでなく、指定書の内容まで目を通す」ことです。
そこに書かれている業務範囲、企業名、制限条件などは、法的に重要な情報であり、雇用契約の妥当性を支える土台になります。
もし読み方や内容に不安がある場合は、行政書士や専門コンサルに確認を取ることも一つの手段です。
採用の段階で「見ていなかった」「知らなかった」では済まされないのが、外国人雇用の現実。
ミスのない採用の第一歩は、指定書の理解から始まります。
指定書と特定活動の違いに注意
在留資格「特定活動」や「特定技能1号」の外国人を採用する際、企業側が見落としやすいポイントが「指定書の記載内容」です。
とくに「特定活動」の記載は多様で、就労が可能なケースと不可能なケースが混在しているため、誤って採用を進めると重大なコンプライアンス違反に発展する可能性があります。
このセクションでは、特定活動との混同がなぜ起こるのか、指定書の中でとくに注意すべき表現、見本から読み取れる就労可能・不可の違い、そして採用の可否をどのように見極めるかの実務的ポイントを解説します。
「特定活動」と間違いやすい理由
「特定活動」は法令上、活動内容に応じて多くのバリエーションが存在します。
たとえば、「ワーキングホリデー」や「インターンシップ」、「就職活動」、「日系人の子供の滞在」なども、すべて同じ「特定活動」という括りに含まれています。
このため在留カードに「特定活動」と表示されていても、実際に何が許可されているかはまったく異なり、就労可能かどうかは指定書を確認しない限り分かりません。
採用担当者が表面情報だけを見て「働けるだろう」と判断するのは極めて危険です。
「報酬を受ける活動を除く」の記載に要注意
指定書でとくに注意すべき表現が、「報酬を受ける活動を除く」という一文です。
この記載がある場合、原則としてその在留資格では就労(給与や報酬を得る活動)が禁止されています。
一例として、「特定活動(インターンシップ)」では、大学の一環としての企業研修は認められるが、報酬を受けることはできません。
この場合、たとえ企業に勤務していても給与支給はNGとなります。
企業がこの点を見落として給与を支払った場合、結果的に不法就労助長罪に問われるリスクがあるため、指定書にこの表現があるかどうかを必ず確認する必要があります。
見本から読み取る就労可能・不可の違い
実務では、指定書の見本(サンプル)を参考に、記載されている「活動内容」や「勤務先名称」などから就労可否を判断することが求められます。
以下の点を確認することが重要です。
- 就労可能業務の明示 – 例「介護職として報酬を得て活動することを認める」
- 報酬不可の記載 – 「報酬を受ける活動を除く」などの明示があるか
- 勤務先の記載 – 指定された勤務先と実際の雇用先が一致しているか
- 在留資格の期間 – 短期滞在や就職活動目的の場合は原則就労不可
見本と自社の採用予定者の指定書を照らし合わせて、一つでも矛盾や不明点があれば雇用を進めない判断が賢明です。
採用の可否を見極めるためのポイント
採用の最終判断を下す前に、以下のステップを設けることでリスクを大幅に回避できます。
- 在留カードと指定書の両方を必ず提出させる
- 指定書に「就労可」「報酬を得る活動を認める」などの文言があるか確認
- 企業名・業務内容・滞在期間の整合性をチェック
- 不明な場合は行政書士や専門機関に確認する
- 社内に「外国人雇用の書類確認マニュアル」を整備する
このような社内ルールの仕組み化こそが、採用担当者の見落としを防ぎ、企業全体を守る体制づくりに繋がります。
▽見えない「記載」に要注意、指定書で読み取る就労の真実
「特定活動」や「特定技能」という言葉に惑わされず、指定書に何がどう書かれているかを正確に読み取ることが、採用の成否を分ける分岐点です。
特に「報酬を受ける活動を除く」などの表現は見落とされやすく、トラブルの火種になります。在留カードの裏側にある“本当の就労条件”を見抜く目を養うことが、企業の信頼を守る一歩となるでしょう。
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特定技能1号を雇用する際に確認すべき指定書の内容
特定技能1号の外国人材を雇用する際、最も重要なのが「指定書」の確認です。
在留カードだけでは把握できない「就労範囲」や「雇用条件」が、指定書には詳細に記載されています。
しかし、多くの企業がこの確認を疎かにし、「雇ってからトラブルになる」ケースも少なくありません。
このセクションでは、指定書の中でも特にチェックすべき項目と、就労可否の判断に迷った場合の対応方法、さらには社内体制構築のポイントまで、実務に役立つ内容を解説します。
「従事可能業務」や「勤務先企業」の確認方法
指定書の最も重要なポイントは、「どの業種・どの業務に従事できるか」、そして「勤務先が誰であるか」です。
具体的には、次のような記載があるかを確認する必要があります。
- 「従事可能業務」欄に、特定技能14業種のいずれか(例:外食業、介護、建設業など)が明記されているか
- 「勤務先企業名」が、自社または自社が運営する関連法人と完全に一致しているか
- 「業務内容」が、自社の求人と一致しており、特定技能の基準を逸脱していないか
仮に「外食業」と記載されていても、厨房作業がメインで接客がほぼない場合は、外食業として適正かどうか再確認が必要です。
指定書の内容と実際の業務が一致しないと、不法就労と見なされるリスクがあります。
指定書で確認すべき注意書きや制限
指定書の末尾や備考欄に記載されている「特記事項」「備考」には、見落としてはならない重要な制限が書かれている場合があります。
よくある記載には以下のようなものがあります。
- 「○○業務に限る」という職務範囲の限定
- 「当該企業以外での就労不可」などの雇用先制限
- 「報酬を受ける活動を除く」などの就労禁止の明示
このような制限を確認せずに他業務に従事させたり、他部署に転属させたりすると、契約違反または不法就労助長罪に問われる可能性があるため、必ず隅々までチェックが必要です。
「就労可」の記載がない場合の対応法
まれに指定書に「就労可」や「報酬を得て活動することを認める」などの記載が見当たらないケースがあります。
この場合、企業は以下のように対応すべきです。
- 在留資格を再確認する – 特定技能1号であることをまず明確にします。
- 出入国在留管理庁に確認する – 不明な場合は、専門の行政書士または入管に内容を問い合わせるのが最も確実です。
- 就労開始を保留する – 記載が不明なまま雇用を開始すると、重大な法令違反に繋がる可能性があるため、確認が取れるまで採用は保留すべきです。
このような事態に備えて、社内に「外国人雇用における指定書確認マニュアル」をあらかじめ用意しておくことも推奨されます。
社内でのチェック体制構築のすすめ
特定技能1号の採用を継続的に行う企業では、指定書の確認を担当者の属人的作業にせず、組織的なルールに落とし込むことが肝要です。
以下のような体制が有効です。
- 外国人採用前の書類確認チェックリストの作成
- 指定書・在留カード・雇用契約書の3点セット確認ルール
- 社内研修での在留資格・指定書の基礎教育
- 行政書士との連携体制の構築
これらを徹底することで、採用時のミスを防ぎ、安心・安全な外国人雇用体制を実現できます。
とくに初めて外国人材を雇用する企業にとっては、外部専門家との連携がリスク回避の鍵となるでしょう。
▽採用前の「確認」が、すべてのリスクを減らす
特定技能1号の外国人材を雇ううえで、指定書の確認は「書類チェック」ではなく「法的責任を背負う判断」であることを忘れてはいけません。
従事業務・勤務先・制限事項の3点確認を怠れば、不法就労・在留資格違反という重大なトラブルに直結します。
安心・合法的な雇用のためには、社内体制の整備と専門家の協力を前提とした運用ルールの構築が不可欠です。
採用前にすべてをチェックし、未来のトラブルを未然に防ぎましょう。
指定書に記載内容の変更があった場合の手続き
特定技能1号で外国人を受け入れる企業にとって、「指定書」の内容変更への対応は非常に重要です。
勤務先の変更や業務内容の見直しなどがあった場合、指定書に記載された情報との齟齬が生じると、在留資格の条件違反や行政指導の対象となるリスクが高まります。
このセクションでは、記載事項の変更が発生した際に必要な届出や手続きの流れ、提出遅れによる罰則リスク、さらに企業の負担を減らす運用の工夫まで、現場で実践すべきポイントを詳しく解説します。
記載事項変更の届出義務
指定書には、従事可能業務、就業先企業名、勤務地、報酬条件などが明記されています。
これらのいずれかに変更があった場合、受入れ企業には原則として出入国在留管理庁への届出義務が生じます。
たとえば、以下のようなケースは届出が必要です。
- 担当業務が当初の「配膳業務」から「厨房業務」へ変更になった
- 勤務地が本社から別の支店に移動した
- 法人名が変更された(例:吸収合併等)
- 労働条件に大きな変更が生じた(報酬の著しい増減など)
この届出を怠ると、在留資格違反や指定書の内容との不整合により、本人の在留継続が認められなくなる恐れがあるため、慎重かつ迅速な対応が必要です。
変更後の指定書の再取得手順
変更の届出を提出しただけでは、指定書の内容が更新されるわけではありません。
記載内容が変更される場合は、原則として新たな指定書の再取得が必要となります。
再取得の流れは以下の通りです。
- 変更内容を正確に記載した書類の作成
- 出入国在留管理局への変更届の提出
- 新たな「活動内容に関する資料」の添付
- 審査後、変更を反映した指定書の発行
この手続きには数週間かかることもあるため、早めに行動することが肝心です。
また、変更届の控えや提出済証明書を、社内で適切に保管しておくことも義務に近い重要対応となります。
提出遅れによるリスクと罰則
変更届の提出が遅れると、さまざまなリスクを招きます。
たとえば
- 本人が不法就労状態となる可能性
- 企業側が不法就労助長罪に問われるリスク
- 入管からの行政指導や、以後の外国人受け入れ申請への悪影響
特に、本人が「特定技能」資格により日本に在留している以上、正しい指定書の保持が前提条件となっています。
変更内容を入管が把握していない状態では、更新や再入国審査にも影響が出る可能性があるため、速やかな届出と証拠保管が企業にとっては自衛策でもあります。
受入れ企業の実務負担を軽減するには
記載変更に伴う対応は、企業側にとって事務的負担となりがちです。
とくに複数名の特定技能外国人を受け入れている企業では、変更時の対応ミスが重大なトラブルを引き起こしかねません。
このような負担を軽減するには、以下のような対策が効果的です。
- 社内マニュアルに「変更届出のフロー」を明記
- 行政書士や登録支援機関と連携し、手続きを外部に委託
- 定期的な社内チェックリストを用いたモニタリング体制の導入
- 雇用契約変更や異動の際、必ず在留関係書類をチェックする社内ルール化
さらに、支援機関と契約している場合は、変更届の提出まで含めた運用が委託可能な場合もあるため、業務負担の大幅軽減が期待できます。
▽小さな変更でも「放置せず」「確実に届出」が基本
指定書に記載された内容は、在留資格と就労の適正性を裏付ける法的に重要な情報です。企業側が軽視してはいけません。
業務内容や勤務地など、一見小さな変更でも、入管への届出と指定書の再取得が必要な場合が多いため、常に「変更=届出」と意識することが求められます。
手続きを怠れば、企業・本人双方にリスクが及ぶことを忘れず、社内ルールや外部支援の活用を通じて、スムーズかつ確実な対応を心がけましょう。
指定書の取得・確認方法と再発行の流れ
特定技能1号で外国人を雇用する際、必ず確認すべき書類のひとつが「指定書」です。
これは在留資格の条件を明確にする重要書類であり、本人がどのような業務に就けるか、どの企業に所属してよいかが具体的に記載されています。
しかし、企業担当者の中には「在留カードだけで十分」と誤解しているケースも見受けられます。
指定書は就労の可否を見極めるうえで不可欠な情報源であり、採用判断や社内手続きの正確性にも大きく関わるものです。
ここでは、指定書の取得方法や保管のルール、紛失時の対応、再発行の流れ、そして社内マニュアルに落とし込むためのポイントまで、実務担当者が知っておくべき運用フローを網羅的に解説します。
指定書の保管場所と提示のタイミング
指定書は入国・在留手続きを経て交付される書類であり、原則として本人が紙媒体で保持しています。
法的には常時携帯義務はありませんが、企業側は採用時に必ず原本を確認し、コピーを保管しておくことが強く推奨されます。
以下のようなタイミングで提示を求めるのが望ましいです。
- 面接前後の事前確認(就労可能か判断)
- 雇用契約書締結時
- 社会保険等の手続き時
- 行政調査や入管の実地調査対応時
指定書は、在留カードとセットで就労資格を証明する根拠書類となるため、「原本確認→コピー取得→社内共有」のフローを徹底することが重要です。
紛失時の対応と再発行に必要な書類
万が一、指定書を紛失した場合は、出入国在留管理局への再交付申請が必要です。
企業側での対応というよりは、原則として外国人本人が手続きを行う形となりますが、雇用主としてもサポート体制を整える必要があります。
主な提出書類は以下の通りです。
- 再交付申請書
- 申請理由書(「紛失」や「破損」など)
- 在留カードの写し
- パスポートの写し
- 雇用契約書など本人の活動を証明できる資料
この手続きには通常2週間〜1ヶ月程度を要するため、早急な対応が求められます。
その間、就労可否が確認できないとトラブルにつながるため、再交付中である旨の書面を控えておくことが実務上のリスク回避策になります。
申請から受領までの期間と注意点
指定書の取得・再取得には以下のような注意点があります。
- 提出先は、現在の在留資格に対応した地方出入国在留管理局
- 本人の在留資格や活動内容に矛盾がないこと
- 申請時に雇用契約書等の添付が必須になるケースがある
- 本人の居住地と勤務先が大きく離れていると審査に時間がかかる
受領までの期間は地域や混雑状況によって異なりますが、再発行や新規取得を前提とするなら少なくとも2〜4週間を見込んでおくべきです。
企業側としては、採用日よりも前に申請手続きが完了しているかを確認する仕組みづくりが必要です。
社内マニュアルに盛り込むべき運用ルール
外国人採用において指定書の運用を属人的にせず、「社内ルール化」することがトラブル防止のカギです。
以下のような項目を社内マニュアルやチェックリストに組み込むことで、スムーズな運用が可能になります。
- 採用時に原本提示を求めるタイミングと担当者
- 指定書の確認項目(従事可能業務、企業名、期間、注意事項)
- コピー取得・保管場所の規定(個人情報の取り扱い含む)
- 紛失・破損時の本人および企業側の対応フロー
- 再発行申請の支援体制(外国人が日本語に不慣れな場合)
特に、複数名の外国人を雇用している企業では、属人化を防ぐためのナレッジ共有や外部支援の活用もあわせて検討するとよいでしょう。
▽指定書の管理が採用リスクを左右する
指定書は、外国人雇用における「就労適法性」を裏付ける核心資料です。
この一枚の書類の確認を怠ることで、不法就労や企業責任のリスクが一気に高まります。
そのため、取得・確認・再発行の流れを社内フローに落とし込み、実務担当者が迷わず対応できる体制を構築することが必要です。
企業の信頼性を守り、外国人本人にとっても安心できる職場づくりのために、「指定書の扱い=雇用管理の要」として日常業務にしっかり根づかせましょう。
特定技能1号での転職と指定書の関係
特定技能1号の外国人が転職する際には、指定書の取り扱いが非常に重要になります。
在留資格は維持できていても、指定書の記載内容と新たな就業先が一致しなければ「不法就労」と見なされるおそれがあるからです。
企業としては、受入れ先が変更された場合にどのような手続きが必要か、指定書にどんな変更が必要か、在留資格の変更が必要になる場合は何をすべきかを正確に把握しておく必要があります。
ここでは、転職に伴う指定書の変更や届出、在留資格との関係、トラブル防止のための注意点まで、実務的な視点で解説します。
転職時に必要となる手続きと注意点
特定技能1号の外国人が転職する場合には、原則として新しい勤務先に合わせて指定書を変更・再交付する必要があります。
就労継続のためには、以下の2つの申請が基本となります。
- 所属機関変更届出
- 指定書の再発行(条件変更)申請
特に注意すべきなのは、「在留資格はそのままでも指定書の内容が旧勤務先のまま」になっている状態。これは不適切な在留活動と判断されるリスクがあるため、必ず変更手続きを完了してから新勤務先での就労を開始すべきです。
また、前職を退職してから次の勤務先での指定書が交付されるまでにブランクがある場合、就労は一切できません。
新旧受入れ機関が行うべき届出とは
転職にあたっては、旧受入れ機関と新受入れ機関の双方が所定の届出を行う義務があります。
【旧受入れ機関が行うこと】
- 契約解除の届け出(契約終了後14日以内)
- 外国人本人に在留資格変更等の必要性を説明
【新受入れ機関が行うこと】
- 新たな就労契約に基づく指定書の申請
- 所属機関変更届出(受入れから14日以内)
- 就業計画書や支援計画書などの提出(業種による)
この届出を怠ると、企業側は適正な受入れ機関としての信頼を失うばかりか、行政指導や受入れ停止処分などのリスクも生じます。
在留資格変更が伴う場合の処理方法
転職先の業務内容が、現在の「特定技能1号」の対象業種に該当しない場合や、転職によって職種や活動内容が大きく変わる場合は、在留資格の変更申請が必要になります。
例として以下のようなケースが該当します。
- 建設分野から外食分野への転職
- 特定技能1号から2号への昇格を伴うケース
- 特定技能から技術・人文知識・国際業務など別資格への転換
この場合、指定書の再発行だけでなく、新しい在留資格の取得が必要となり、審査にも時間を要するため、転職を進める際はスケジュール管理と行政書士など専門家との連携が不可欠です。
転職によって指定書の内容が変わる場合の注意点
転職により指定書の内容が変わるのは当然ですが、変更後にチェックすべきポイントがあります。
- 指定された勤務先企業名と実際の勤務先が一致しているか
- 従事可能業務が新たな業務内容と合致しているか
- 有効期間が切れていないか
- 「就労可」の条件に変更がないか
たとえば、旧勤務先の指定書を使いまわしてしまうと、それだけで不法就労とみなされる可能性があるため、企業としても本人任せにせず、必ず指定書の原本確認と社内での共有を行うべきです。
また、転職後の初日から指定書に基づく在留活動ができるよう、事前の取得・チェック・保存フローを整備しておくことが実務面でのトラブル回避につながります。
▽転職時の指定書管理が適法雇用の鍵を握る
特定技能1号での転職は、単なる雇用の切り替えではなく、「在留資格」と「指定書」の両面を見た慎重な対応が必要です。
指定書の更新・再取得を怠ると、企業は不法就労助長罪に問われる可能性すらあります。
採用前の確認、届出義務の遂行、在留資格や業務範囲との整合性チェック、すべてを確実に実施することで、外国人本人の安心と企業の法令順守を両立させることができます。
転職という変化点こそ、企業の管理体制が問われる重要な局面です。
書類1枚の見落としが、大きなリスクにつながることを忘れてはなりません。
企業が指定書を確認する際のよくある誤解とQ&A
「指定書を見たつもりだったのに、実は就労不可だった」「発行日が古くて無効だった」—外国人雇用の現場では、こうした“うっかり”によるトラブルが後を絶ちません。
企業が特定技能1号などの在留資格を持つ外国人を雇用する際、指定書のチェックは極めて重要なプロセスです。
しかし、その内容や扱いについて、まだまだ誤解されているケースも少なくありません。
この章では、現場で実際に起こりやすい誤認や見落としをQ&A形式で整理しながら、指定書の正しい確認方法と、教育体制の構築について解説します。
「指定書が貼られていない」ケースの対応
Q:在留カードには記載があるのに、パスポートに指定書が見当たりません。どうすれば?
A:指定書はパスポートに貼付されて交付されるのが原則ですが、再発行や記載事項変更の過程で剥がれたり、紛失したりするケースもあります。
その場合、まず以下を確認しましょう。
- 本人に提出を依頼し、原本を確認
- パスポート内の他ページやホッチキス綴じの有無をチェック
- 紛失している場合は再発行の手続きを案内
また、採用時には「指定書の原本を必ず持参してもらう」ルールを徹底することで、そもそものトラブルを予防できます。
「報酬を受ける活動を除く」の記載はどう読む?
Q:「報酬を受ける活動を除く」と書かれている指定書は、働けないという意味ですか?
A:その通りです。この記載がある場合、その在留資格は“就労不可”であることを意味しています。
とくに注意が必要なのは、特定活動ビザなどの「研修」「インターン」などで来日しているケースです。
見た目は同じような指定書でも、記載内容が異なれば就労の可否もまったく違います。
採用時には、指定書の中の該当文言(特に報酬に関する部分)を丁寧に確認し、業務内容と合致しているかを確認しましょう。
有効期限や発行日を確認すべき理由
Q:指定書の有効期限を確認していなかったけど、問題ですか?
A:重大な問題につながる可能性があります。
特定技能1号などの指定書には、「有効期限」や「発行日」「活動機関」などの情報が記載されており、これが現在の雇用状態と一致していない場合、就労自体が無効となるリスクがあります。
以下の点は最低限、必ず確認しましょう。
- 発行日が過去すぎないか
- 在留期限との整合性があるか
- 指定された活動先と、現職が一致しているか
企業側の確認不足で違法就労を助長したとされれば、不法就労助長罪の対象となる可能性もあります。
採用時の誤解を防ぐための現場教育
Q:人事担当だけでなく現場スタッフにも指定書のことを知っておいてもらいたい。どうすれば?
A:現場教育は、法令順守だけでなく、現場の安心感と信頼構築にも直結します。
以下のような方法をおすすめします。
- 「指定書チェック項目リスト」を配布
- 採用前研修やOJTの一環として指定書の確認方法を解説
- 「就労可否」「勤務先との一致」「有効期限」など、ポイントを絞った教育
- 実際のトラブル事例を共有して、注意喚起の材料にする
また、「外国人採用チェックリスト」を社内マニュアルとして整備することで、誰が対応してもミスが起きにくい体制が整います。
▽指定書確認は“細部に宿るミス”を防ぐ最後の砦
企業が外国人を採用する際、在留カードと同様に指定書の確認は不可欠です。
しかし、形式的にチェックしているだけでは「貼付漏れ」「就労不可」「期限切れ」といった重要なサインを見落としてしまいます。
社内における教育体制・チェック体制を整え、誰が見ても同じ判断ができるルール作りが、適法かつ安心な外国人雇用を支える鍵になります。
指定書の理解が企業と外国人の信頼関係を築く
「ちゃんと確認していたつもりだった」—その油断が、信頼と雇用を一瞬で壊すこともあります。
外国人を採用する企業にとって、在留カードやパスポートだけでなく「指定書」の理解と確認は、信頼関係構築の出発点です。
就労可能かどうか、何の業務に従事できるのかを明確に示すこの1枚が、後のトラブルや違法就労のリスクを防ぐカギとなります。
ここでは、指定書の確認を怠った場合のリスクや、外国人材との信頼を築くための社内体制の重要性について詳しく解説します。
誤採用による企業側のリスクと損害
指定書を正しく確認しないまま採用してしまうと、企業側にとって大きな法的・金銭的リスクを伴います。
具体的には以下のような損害が考えられます。
- 不法就労助長罪のリスク – 在留資格と指定書の齟齬により、知らぬ間に違法就労を助長したとみなされる可能性があります。
- 採用コストの無駄 – 研修・手続き・労務管理にかけたリソースが無駄になり、解雇対応にも手間がかかります。
- 企業の信用失墜 – 入管からの調査や警告を受けた場合、企業としての社会的信頼にも大きな影響が出ます。
つまり、採用前に指定書を正確にチェックするだけで、これらのリスクは大幅に回避できるのです。
外国人材の安心と定着率向上の鍵
一方で、指定書の内容を理解し、それに基づいた適切な対応をとることで、外国人側の安心感や企業への信頼は大きく向上します。
たとえば、
- 指定書をきちんと確認することで、「不安なく働ける環境だ」と感じてもらえる
- 活動範囲や制限の説明を丁寧に行うことで、トラブル回避につながる
- 会社としての管理体制がしっかりしていることが、信頼と定着につながる
外国人材にとって、「採用後の不安を解消してくれる企業」は、長く働きたいと思える存在になります。
確認フローを社内ルールとして整備する重要性
人事担当者が変わるたびに対応がバラバラでは、確認漏れは避けられません。
そこで有効なのが、指定書確認のフローを社内ルールとして文書化・共有することです。
たとえば以下のような流れを作ると、属人化を防げます。
- 指定書の提出は必須(原本を確認)
- 「従事可能業務」「企業名」「就労可否」などチェック項目を明文化
- 指定書のコピーを労務ファイルに保管
- 就業前に確認を完了させた証跡を残す
社内の全担当者が同じ目線で確認できる体制こそが、トラブルを未然に防ぐ鍵です。
法令順守と円滑な雇用のために
入管法を正しく理解し、指定書という法的文書を軽視しない姿勢は、企業の社会的責任の表れでもあります。
外国人材の就労を支援する姿勢は、結果として企業のブランド価値を高め、採用力や定着率にも好影響を与えます。
また、法令違反のリスクを未然に防ぐことで、企業にとっても安定した労務運用が可能になります。
採用時だけでなく、在留資格更新・転職時の確認体制まで含めて社内での継続的な運用が求められるでしょう。
▽指定書は“信頼を築く入口”であり“リスクを防ぐ出口”でもある
企業と外国人の関係性は、書類1枚の確認から大きく変わります。
指定書の確認を正しく行うことは、企業が法令を守りつつ、安心して働ける環境を提供しているというメッセージにもなります。
信頼は、日々の丁寧な確認とコミュニケーションから生まれ、やがて強固な関係性へとつながるのです。
これから外国人を雇用しようと考えている企業は、まずは指定書の内容を“読む力”と“確認する文化”を社内に根付かせることから始めてみてはいかがでしょうか。
面接前に見抜け!指定書の「落とし穴」と現場で使える確認テクニック
「指定書は持っています」と言われて安心していませんか?
外国人を雇用する際、在留カードやパスポートの提示に加えて「指定書」の確認が必要なケースは少なくありません。
しかし、面接時に形式的な確認しか行わないまま採用が進み、後から「就労不可」と判明するトラブルはあとを絶ちません。
本記事では、ヒューマンエラーを未然に防ぐための実践的なテクニックと、採用担当が陥りやすい“見落としポイント”をわかりやすく紹介します。
指定書に潜む「落とし穴」を知り、リスクのない採用を実現しましょう。
ヒューマンエラーを防ぐ「指定書チェック」の事前質問例
面接の場では、書類提出だけでなく、確認のための「質問力」も重要です。
形式的に「指定書はありますか?」と尋ねるだけでは不十分で、内容確認まで踏み込んだ問いが必要です。
たとえば、以下のような事前質問が有効です。
- 「今お持ちの在留資格では、就労に制限はありますか?」
- 「指定書にはどの業務が記載されていますか?」
- 「勤務先企業名の記載は現在希望されている弊社になっていますか?」
このような質問は、本人が指定書の内容を正しく理解しているかどうかを確認するためにも有効であり、本人の認識と実際の内容にズレがあればその場で気づけることがあります。
また、面接時に指定書の原本(もしくはコピー)を提示してもらう段取りを事前に連絡しておくことで、確認漏れのリスクをさらに減らせます。
採用担当が見落としがちな記載欄とは
指定書には複数の記載項目がありますが、特に注意すべきなのは以下の点です。
- 「従事することができる業務の範囲」 – ここが曖昧だったり、想定していた業種と異なる場合は要注意です。
- 「勤務先の名称」 – 特定の企業が記載されている場合、その企業以外では原則として就労できません。
- 「報酬を受ける活動を除く」などの文言 – 一見して就労可に見えても、実は不可であることを示す場合があります。
- 発行日と有効期限 – 古い指定書では内容が変更されている可能性もあるため、最新のものかどうかを必ず確認しましょう。
「在留資格があるからOK」と早合点して、指定書のこれらの記載を確認しなかった結果、誤採用になるケースは実際に多くあります。
書類提出時の“ある一言”が採用リスクを下げる理由
面接の最後や内定前の書類提出段階で、「では、在留カード・パスポート・指定書の3点をご準備ください」という一言を加えるだけで、指定書の存在を前提としたやり取りに誘導できます。
このひとことがあることで、
- 外国人側も「指定書が必要なもの」と認識する
- 採用担当が“確認を忘れていた”という事態を防げる
- 書類提出がなければ採用手続きに進めないという社内ルールに自然とリンクできる
このように、実務レベルのミスを減らす工夫は、ちょっとした“言葉の設計”にもあります。
さらに、「指定書の内容については、社内で確認の上、雇用判断を行っています」という旨を事前に伝えることで、相手も自身の資格状況を正確に把握する意識が高まります。
▽現場で「確認の習慣」を作るだけで、採用トラブルは防げる
外国人の雇用における指定書確認は、単なる書類確認ではありません。「業務内容に合致しているか」「就労が許可されているか」「企業名の記載は適切か」など、実務に直結する重要な情報が詰まった書類です。
そして、見落としを防ぐためにできることは、面接前からの質問設計・社内マニュアルの整備・書類提出依頼のひと言と、決して難しくはありません。
「指定書まで確認するのが当たり前」という企業文化が根づけば、採用担当が変わってもミスは減り、企業と外国人材の信頼関係も強固になります。
特定技能1号の「指定書」を正しく理解し、確実な採用と企業リスク回避を
特定技能1号で外国人を雇用する際、指定書は在留カードやパスポートと同等、もしくはそれ以上に重要な確認書類です。
内容の読み違いや確認漏れがあると、「就労不可」の人材を誤って採用してしまう事態を招き、企業側に不法就労助長のリスクや信頼損失が生じかねません。
本記事では、指定書の基本的な構造や「特定活動」との混同ポイント、雇用時にチェックすべき内容、記載変更時の手続き、転職に関する注意点までを網羅しました。
また、採用面接の現場で使える確認テクニックや、企業が取り組むべき社内フローの整備についても具体的に解説しています。
特定技能制度を活用し、優秀な外国人材を安心・合法的に受け入れるためには、制度理解だけでなく“現場での運用の仕組み化”が鍵です。
「指定書の確認は採用の第一ステップ」という意識を全社で共有し、外国人雇用の成功と持続的な関係構築を目指しましょう。
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