
05/30 (金)更新
在留資格があれば開業できる?外国人が個人事業主になるための条件と注意点
日本で個人事業主(フリーランス)として働きたいと考える外国人は年々増加しています。
「自分のスキルを活かして独立したい」
「法人を設立する前にまずは個人事業で始めたい」
そんな希望を持つ一方で、最も多く寄せられるのが、「在留資格があれば本当に開業できるのか?」という疑問です。
結論から言えば、外国人でも日本で個人事業主になることは可能です。
ただし、それには適切な在留資格の取得や、法的手続き、資金要件などをクリアする必要があります。
さらに、働ける業種・働き方にも制限があるため、自身のビザの種類と活動内容が一致しているかの確認が不可欠です。
本記事では、「経営・管理」「技人国」などの主要な在留資格の違いから、実際の開業手続きの流れ、個人事業主として働ける職種、さらには成功のためのビジネスマインドまで、外国人が日本で開業するために必要な知識を網羅的に解説します。
これから日本での独立を目指すあなたが、確かな一歩を踏み出すためのガイドとして、ぜひご活用ください。
外国人が個人事業主として日本で働くには在留資格が必要
「日本でフリーランスとして働きたい」「会社を作らずに独立したい」
こうした希望を持つ外国人が、まず直面するのが在留資格(ビザ)の壁です。
日本では、在留資格ごとに活動内容が厳格に定められており、「個人事業主として働けるビザ」は限られているのが実情です。
つまり、たとえスキルや実務経験が十分であっても、「持っている在留資格でその働き方が認められているか」を確認しなければ、法的なリスクを抱えることになります。
このセクションでは、外国人が日本で個人事業主として活動する上で実際に使われている主な在留資格と、それぞれのメリット・注意点・適用範囲を紹介します。
「経営・管理」ビザでの開業が基本
外国人が日本で合法的に開業・起業をする際に、最も代表的なのが「経営・管理」ビザです。
このビザは、次のような活動を目的とする人向けに付与されます。
- 自ら会社を設立し、代表者・経営者として運営する
- 個人事業主として開業し、自ら事業を主導する
ただし、ビザの取得には次のような要件が課されます。
- 事業の実態を示す事業計画書の提出
- 事業に必要な事務所(物理的な拠点)の確保
- 500万円以上の投資(資本金や初期経費)が必要
一見すると個人事業主にはハードルが高いと感じられるかもしれませんが、法人登記なしでも、明確な事業実態と投資額があれば「個人での開業」として認められる例もあります。
ポイントは「雇用ではなく、自らが経営する」こと。労働ビザではなく、経営のためのビザである点を押さえておきましょう。
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザでの業務委託受注は可能?
「技人国」ビザを持つ外国人は、本来は企業に雇用されて働くことを前提とした在留資格です。
ただし近年は、企業と雇用関係を結ばず、業務委託契約(フリーランス形式)で働きたいという希望者も増えています。
ここで重要なのが、「技人国ビザで個人事業主として活動することは原則NG」という点です。
業務委託でも可能になるのは、以下の条件をすべて満たす場合です。
- 委託元との関係性や契約内容が「雇用に準じた継続的な業務」として明確である
- 委託される業務内容が「技術」「人文知識」「国際業務」の範囲に該当する
- 入管から許可を得たうえで、契約形態が適法である
したがって、開業届を出して個人で自由に複数社と契約するような形態は認められないケースがほとんどです。
あくまで「技人国」ビザは雇用を前提とする点に留意が必要です。
「永住者・日本人配偶者・定住者」など身分系ビザでの自由度
「永住者」「日本人の配偶者」「定住者」など、身分系ビザを保有している外国人は、日本人とほぼ同じように就労や開業が可能です。
このビザの最大の特徴は、以下の通りです。
- 就労制限がない(業種・雇用形態の制限がない)
- 開業届を出せば自由に個人事業主として活動できる
- 複数の仕事を掛け持ちすることも可能
たとえば、「日本人の配偶者等」ビザを持つ方が、通訳のフリーランスとして活動しながら、アルバイトも行う――というような働き方も合法的に認められます。
在留資格の制限に縛られず働きたい方にとって、最も自由度の高いビザ形態といえるでしょう。
留学生や就労ビザ保持者が副業的に開業することはできるか?
留学生や一般的な就労ビザ保持者のなかには、「本業の傍ら、週末にフリーランスとしても活動したい」と考える人も少なくありません。
しかし結論としては、現在の在留資格が認める範囲を超える活動(副業や開業)は原則としてNGです。
たとえば
- 留学生は「資格外活動許可」を得ればアルバイトは可能ですが、個人事業主としての開業や請負契約は基本的に認められていません。
- 「技人国」などの就労ビザを持つ人が、ビザで認められた職種以外で副業的に個人事業を始めることはできません。
副業・複業・開業を考えるのであれば、事前に在留資格の変更または資格外活動許可の取得を入管に相談することが必須です。
◆個人事業主として活動するには「在留資格の正しい理解」が出発点
外国人が日本で個人事業主になるには、「できる/できない」以前に、「自分のビザで何が許されているのか」を正確に理解することが出発点です。
- 経営・管理ビザは開業向けだが、条件は厳格
- 技人国ビザでは基本的にフリーランス活動は困難
- 身分系ビザなら自由に開業可能
- 留学生・一般就労者の副業的開業は原則NG
制度を正しく理解すれば、違法リスクを避けながら、自分らしい働き方を選ぶことが可能になります。
開業を検討する前に、まずは自身の在留資格の条件を確認し、必要に応じて行政書士や入管の専門家へ相談するのが、安全で確実な第一歩です。
開業届の書き方と提出方法
外国人が日本で個人事業主として活動を開始するには、税務署に「開業届」を提出することが必須です。
これは日本人・外国人を問わず、法律上定められている義務であり、提出しないまま事業を開始すると、青色申告や各種税制優遇の対象にならなかったり、入管から活動実態を問われる可能性も出てきます。
本章では、外国人ならではの注意点をふまえつつ、開業届の書き方・提出先・簡単に済ませる方法まで、実務に役立つ情報をわかりやすくまとめました。
外国人の場合の「職業」「屋号」の記載例
開業届には「職業」と「屋号」の記入欄がありますが、外国人の場合も基本的には日本人と同様のルールで記載します。
ただし、以下の点に注意してください。
- 職業欄には、具体的な業務内容を記載すること(例:「通訳業」「Webデザイナー」「動画編集業」など)
- 屋号は任意記載ですが、今後請求書・口座名義で使う予定がある場合は記載しておいた方が便利です
記載例
項目 | 記入例 |
職業 | 翻訳業、マーケティング業など |
屋号 | Global Media Lab、個人名など |
※日本語での記載が基本ですが、カタカナ・アルファベットを使った屋号も問題ありません。ただし、読みやすさや公的手続きでの使いやすさを考慮するのがベターです。
提出先と必要書類一覧
開業届の提出先は原則として、居住地または事業所所在地を管轄する税務署です。郵送・持参・電子申請のいずれかで提出可能です。
【提出先】
国税庁の「税務署の所在地」検索ページで確認できます。
【提出書類】
- 個人事業の開業・廃業等届出書(1部)
- 青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)
- 本人確認書類(在留カード+マイナンバー通知書など)
なお、在留カードが必ず必要です。
外国籍の方の場合、本人確認のために職員が在留資格や在留期限を確認するケースもあります。
電子申請やマイナンバーカード活用による簡素化の方法
現在では、開業届もオンラインで提出できるようになっており、マイナンバーカードを活用した電子申請が可能です。
これにより、紙での提出よりも手間や時間が大幅に削減できます。
オンライン申請には以下の方法があります。
- e-Tax(国税庁の公式電子申告システム)
→ マイナンバーカードとICカードリーダー、もしくはマイナポータル連携で利用可能 - freee開業・開業届ナビ(外部サービス)
→ スマホ・PCから質問に答える形式で書類を自動作成し、そのまま電子申請も可能
メリットとしては
- 税務署に行く必要がない
- 審査状況もオンラインで確認できる
- 将来の確定申告もe-Taxでスムーズに移行可能
特に言語に不安がある方は、英語表示に対応している支援ツールや専門家サービスの活用もおすすめです。
◆開業届の提出は、個人事業主としての第一歩
開業届は、日本で個人事業を行う上での「スタート地点を公にする」大切な手続きです。
外国人の場合も特別な例外はなく、次のような点に気をつけて準備しましょう。
- 職業や屋号は具体的・わかりやすく記入する
- 税務署と市区町村、それぞれ必要書類を揃えて提出する
- マイナンバーカードを使えば、オンラインでも手続き可能
正しく提出しておくことで、税制上のメリットを受けやすくなり、入管への活動報告やビジネスの信頼性確保にも役立ちます。
時間をかけずスムーズに進めたい方は、行政書士や開業サポートサービスの活用も視野に入れておくと安心です。
外国人と業務委託契約を結ぶ際の法的・実務的注意点
フリーランスや個人事業主として活動する外国人と業務委託契約を結ぶケースが増えてきています。
通訳、エンジニア、デザイナー、マーケターなど、専門スキルを持つ外国人にスポットで業務を依頼する企業も珍しくありません。
しかし、「業務委託だから就労ビザは関係ない」「契約だから問題ない」と安易に判断してしまうと、入管法違反や更新トラブルに発展するリスクがあります。
この章では、外国人との業務委託契約を検討する際に、発注側・受注側ともに押さえておくべき在留資格・契約内容・税務・リスク回避の実務ポイントを紹介します。
在留資格に応じた契約業務の制限を理解する
外国人と業務委託契約を結ぶ際、まず最初に確認すべきなのが、「その業務が、本人の在留資格で認められているか」です。
たとえ雇用関係がなくても、業務内容がビザで定められた範囲を逸脱すれば不法就労や資格外活動と判断されることがあります。
たとえば
- 「技術・人文知識・国際業務」ビザ → 翻訳・マーケティング・IT業務などが可能
- 「留学」ビザ → 資格外活動許可を得た範囲でアルバイトは可能だが、業務委託契約による報酬受領は原則NG
- 「永住者」「配偶者」ビザ → 業種や契約形態の制限がなく、業務委託も自由に可能
【ポイント】
- 在留カードの資格欄を確認する
- 依頼したい業務内容が、在留資格で認められた活動に該当するかを入管資料でチェックする
- 不明な場合は行政書士等に事前相談するのが確実です
契約内容がビザ更新や活動制限に与える影響
業務委託契約の内容によっては、本人の在留資格の更新や延長に影響を与えることがあります。
たとえば、「技人国」ビザを持つ外国人が企業から業務委託で仕事を請け負っている場合、次回更新時に“雇用関係がない”として不許可になる可能性もあります。
入管では以下の点を見ています。
- 業務の継続性(単発ではなく、ある程度の期間にわたるか)
- 報酬金額と労働時間が現実的か
- 契約書に基づく支払い実績と源泉徴収の有無
- 専門性のある職務か、単純労働ではないか
したがって、契約の内容や形式が形式的でも、実態として“労働”に近いと判断されれば資格外活動に該当することもあります。
【企業側の対策としては】
- 契約書に業務内容・期間・報酬支払い方法を明記する
- 就労ビザ保持者の場合は、できれば雇用契約へ切り替えることも検討
報酬支払いと源泉徴収の義務
外国人個人事業主やフリーランスに業務委託報酬を支払う際には、報酬の源泉徴収が必要となるケースがあります。
【基本ルール】
- 日本に住所がある外国人(非永住者含む)に報酬を支払う場合 → 国内源泉所得として10.21%の源泉徴収が必要
- 海外に居住する外国人に支払う場合 → 場合により20.42%など、税率や対象が異なる
たとえば、外国人翻訳者に10万円を支払う場合
- 源泉徴収額:10万 × 10.21% ≒ 10,210円
- 実際の支払額:89,790円
- 差し引いた分は企業が税務署に納付する義務あり
源泉徴収を怠ると、企業側が後からペナルティを課されるリスクがあるため、外国人との契約でも税務処理を正しく行う体制が必要です。
トラブルを避けるための明文化された契約書の重要性
言語・文化・法律の違いがある中で外国人と業務契約を結ぶ場合、口約束や曖昧な条件で契約を交わすのは非常に危険です。
トラブル防止のためにも、明文化された業務委託契約書を必ず交わすことが基本です。
契約書に盛り込むべき内容
- 契約期間と業務内容(曖昧な表現は避ける)
- 成果物や納品条件(例:納品形式・締切)
- 報酬金額と支払い時期・方法
- 秘密保持や著作権の扱い
- 双方の責任範囲と契約解除の条件
また、外国人本人の母語が英語や中国語の場合は、日本語と併記する「バイリンガル契約書」を用意すると安心です。
さらに、契約書と併せて業務委託に関する説明資料やメールの記録を残しておくことも、万が一のトラブル時に有効な証拠になります。
◆契約前に「在留資格」と「契約条件」の整合性を必ず確認
外国人との業務委託契約は、スキルの高い人材を柔軟に活用できる一方で、在留資格の制限や税務・法務リスクを正しく理解していないと重大なトラブルに発展しかねません。
特に注意すべきは以下の4点です。
- 本人の在留資格が、その業務を可能にしているかを必ず確認する
- 契約内容がビザ更新・活動制限にどう影響するかを理解する
- 報酬支払いに際して源泉徴収が必要かどうか判断し、適切に処理する
- 言語の壁や文化の違いを踏まえた明確な契約書を交わす
企業側にとっても、事前の確認と書面整備が「信頼と法的安全性」を守るカギとなります。
外国人との契約は「簡単そうで意外と奥が深い」だからこそ、制度に強い専門家と連携しながら慎重に進めることが成功の秘訣です。
外国人個人事業主として働ける主な職種例
日本で個人事業主(フリーランス)として働きたい外国人にとって、「どんな仕事ができるのか?」というのは非常に重要なポイントです。
在留資格との関係や、入管が認める活動内容との整合性を踏まえると、誰でも何でもできるわけではありません。
しかし一方で、知識・技能・専門性を活かした働き方であれば、実現可能な職種は数多くあります。
この章では、外国人が実際に日本で開業しやすい代表的な職種を、業種別に3つのカテゴリーに分けて紹介します。
翻訳・通訳、デザイン、エンジニア、ライターなどの知識職
専門知識や語学力、ITスキルを活かした「知識職」は、外国人の個人事業主にとって非常に人気のある分野です。
特に次のような業種は、「技術・人文知識・国際業務」ビザなどでも比較的認められやすく、実際の活動実績も豊富です。
【主な職種例】
- 翻訳者・通訳者 – 多言語対応が必要な企業の外注需要が高く、在宅でも活動可能
- Web・グラフィックデザイナー – 日本企業のブランディング案件や海外向けデザインなどで活躍の場あり
- システムエンジニア・プログラマー – IT系プロジェクトの業務委託で安定的に仕事を獲得しやすい
- ライター・コピーライター – 多言語コンテンツの制作や外国人目線の記事需要も増加中
これらの職種は「専門性+語学力+非対面でも完結できる柔軟性」を備えており、個人事業主としての独立に向いていると言えます。
写真家、映像制作者、講師・コーチなどスキル型フリーランス
手に職を持つスキル型フリーランスも、自分の得意分野を軸に開業しやすいカテゴリーです。
ビザの制限や活動形態を意識しながら、「制作型・指導型」として展開すれば、個人事業主として安定した収入を得ることも可能です。
【主な職種例】
- 写真家・ビデオグラファー – イベント撮影や広告用素材制作など、ニーズが高い分野
- オンライン講師・語学コーチ – 自国語を教える語学レッスン、スキルシェアサービスとの連携も有効
- ヨガ・フィットネスインストラクター – スポーツ施設や個人クライアント向けに独立するパターンも多い
- 音楽講師・ダンスコーチ – カルチャースクールや個別指導での活動が可能
これらの職種では、実技スキルや指導力が問われるため、実績・ポートフォリオ・顧客の声などを積み重ねることが重要になります。
また、「経営・管理」ビザではなく身分系ビザの保持者がより自由に活動できる傾向が強い分野です。
コンサルタント、マーケターなど高度専門人材
より高度な知識やビジネス経験を活かして、日本市場に価値を提供できる人材は、コンサルタント型の個人事業として活躍できるチャンスが広がっています。
【主な職種例】
- ビジネスコンサルタント – 母国との取引支援や市場進出アドバイスなど、グローバルな橋渡し役に
- インバウンドマーケター – 訪日外国人向けサービスのマーケティングやリサーチ業務など
- SNS・Webマーケティング支援 – 多言語対応のSNS運用や広告運用代行なども需要拡大中
- 輸出入コンサルティング – 海外製品の日本市場導入サポートや、逆に日本製品の輸出支援など
こうした職種では、過去のビジネス経験、語学スキル、文化理解などを掛け合わせた「高度な専門性」が求められます。
「経営・管理」ビザを活用して、自分のコンサル業を開業する外国人も少なくありません。
◆ビザとスキルの組み合わせで“できる職種”を見極めよう
外国人が日本で個人事業主として活動する場合、働ける職種は在留資格とスキルによって大きく左右されます。
今回紹介したように、次のような職種が代表的です。
- 知識職 – 翻訳・IT・デザイン・ライティング
- スキル型 – 写真・映像・語学指導・フィットネスなど
- 専門職型 – コンサルティング・マーケティング・国際ビジネス支援
自分の現在のビザでその職種が可能かどうかを確認し、必要であればビザの変更や専門家への相談も視野に入れておきましょう。
スキルを活かして自立した働き方を実現するには、「できること」「許されていること」「求められていること」の3点を冷静に見極めることが成功の鍵となります。
個人事業主として働く際の法的・実務的注意点
無事に開業届を出し、在留資格の条件をクリアしても、それで終わりではありません。
外国人が日本で個人事業主として活動を継続するためには、日本の税務・社会保険制度・出入国管理制度に対する正しい理解と適切な手続きが不可欠です。
この章では、開業後に見落とされがちな法的・実務的な義務や注意点を4つの観点から解説します。
これらを怠ると、ビザ更新ができない、税務調査でトラブルになるなどのリスクがあるため、確実に押さえておきましょう。
税務申告・確定申告・消費税対応の重要性
個人事業主は、年間の収入と支出を記録し、毎年2月〜3月に確定申告を行う義務があります。
外国人であっても、日本で開業している以上、税務の義務は日本人と同じ扱いになります。
【主な税務上の手続き】
- 所得税の確定申告(原則:毎年2月16日~3月15日)
- 青色申告を行う場合は「青色申告承認申請書」の提出が必要(開業から2ヶ月以内が目安)
- 年間売上が1,000万円を超えた場合、翌々年から消費税の課税事業者になる
- 消費税申告やインボイス制度への対応も必要に(特にBtoB事業者は注意)
【注意点】
- 帳簿や領収書の保存義務がある(最低7年間)
- 入管から事業の継続性を問われた際に、税務申告記録が有力な証拠になる
- 未申告や脱税があると、ビザ更新の審査に悪影響を及ぼす可能性あり
特に初めて確定申告を行う方は、税理士や記帳代行サービスの利用も検討すると安心です。
社会保険・国民年金の加入義務と手続き
外国人の個人事業主であっても、原則として次のような保険制度に加入する必要があります。
【基本的な加入制度】
- 国民健康保険(市区町村の窓口で加入)
- 国民年金(20歳以上60歳未満の全員が対象)
どちらも原則として開業後14日以内に届け出が必要です。
【ポイント】
- 毎月の保険料は所得に応じて変動する(前年の収入がベース)
- 外国人も年金を納めれば、将来の受給資格や「脱退一時金」の対象になる
- 一定の所得以下であれば、保険料の免除や軽減制度の申請も可能
保険未加入状態が長引くと、将来のビザ更新や永住申請時に不利益となることがあるため、開業直後からの手続きが非常に重要です。
入管への活動報告や届出の必要性
個人事業主としての活動は、入管(出入国在留管理庁)からも継続的にチェックされています。
特に「経営・管理」ビザや「技人国」ビザなどでは、活動内容がビザと合っているかを定期的に確認されるため、報告義務を軽視するのは危険です。
【主な届出・報告義務】
- 事業所の住所や事業内容を変更した場合 → 入管への変更届が必要
- 雇用主がいなくなった、契約が終了したなど → 「所属機関の変更」等の届出を14日以内に提出
- 更新時は、確定申告書・収支内訳書・契約書類などを提出することで、活動実績を証明
【注意点】
- 届出義務を怠ると、罰則やビザ取消の対象になることがある
- 「形式的に開業しているだけ」と見なされないよう、常に記録を整えておくことが大切
開業してからも、行政とのつながりを意識して行動することが、信頼される事業主への第一歩です。
事業規模によっては法人化や「経営・管理」ビザへの変更も検討
事業が成長し、一定の売上や人材の雇用が見込まれるようになると、法人化を視野に入れることも重要です。
【法人化するメリット】
- 節税の選択肢が広がる(法人税と所得税のバランス)
- 信用力が高まり、取引先や金融機関からの評価が上がる
- 社会保険を導入できるため、従業員の雇用がしやすくなる
- 「経営・管理」ビザとの相性が良く、事業継続性のアピール材料になる
また、もともと就労系ビザ(例:技人国、特定技能など)で活動していた外国人が、事業拡大により独立する場合は、「経営・管理」ビザへの変更申請を検討するタイミングでもあります。
ビザの見直しは、活動の自由度や長期的な定住にも影響するため、事業ステージに応じて柔軟に戦略を立てることが重要です。
◆継続的な管理と制度理解が“信頼される事業主”への鍵
外国人が日本で個人事業主として継続的に活動するためには、開業後の管理や手続きを怠らないことが何よりも重要です。
特に注意すべき点は次の4つ
- 正確な税務申告と記帳管理を行うこと
- 社会保険・年金制度にしっかりと加入すること
- 入管への必要な届出・報告を期限内に行うこと
- 事業拡大の際には、法人化やビザの変更も視野に入れること
これらをきちんと実践することで、ビザ更新の信頼性が高まり、日本でのビジネスの安定にもつながります。
「事業を始めたら終わり」ではなく、“継続するための管理”こそが、信頼される外国人事業主への道です。
外国人個人事業主が受けられる日本の支援制度
「資金が不安」「ビザ申請が難しい」「日本語の書類が読めない」
日本で個人事業主として開業を目指す外国人にとって、こうしたハードルは避けて通れません。
しかし日本には、外国人の創業や定着を支援するための制度や相談窓口が各地に用意されており、うまく活用すれば開業までの道のりが大きく短縮されます。
この章では、外国人が受けられる主要な支援制度を3つに分けてご紹介します。
「ビザの取得サポート」「資金調達の支援」「相談体制の整備」といった多面的な支援を知ることで、“一人では難しい”を“支援とともに進められる”に変えるヒントが得られます。
スタートアップビザ(創業活動促進事業)の活用方法
「経営・管理」ビザをいきなり取得するのが難しい…
そんな外国人起業家のために、政府と一部自治体が連携して提供しているのがスタートアップビザ(創業活動促進事業)です。
【制度の概要】
- 対象 – 将来的に「経営・管理」ビザを取得して起業したい外国人
- 条件 – 自治体が定めた審査基準(事業計画など)を満たすこと
- 期間 – 最長1年の「特定活動」ビザで滞在し、準備期間が確保される
【メリット】
- 500万円の資金や事務所確保が申請時点で必須ではない
- 認定自治体の担当者から起業に向けた支援・アドバイスを受けられる
- その後の「経営・管理」ビザ取得へスムーズにつなげられる
【対応している主な自治体(一例)】
- 東京都(港区・渋谷区)
- 大阪市、福岡市、広島市など
将来的な独立を考える外国人にとって、“準備しながら合法的に滞在できる制度”として非常に有効です。
自治体や商工会議所による開業支援・補助制度
スタートアップビザ以外にも、多くの自治体・商工会議所が外国人開業者に向けた支援メニューを提供しています。
【代表的な支援内容】
- 創業支援補助金(開業資金の一部を補助)
- 低利融資制度(信用保証付き融資の案内)
- 無料の創業相談窓口(ビジネスプランのブラッシュアップ)
- 日本語・英語での起業セミナーや講座の開催
- 空き店舗・インキュベーション施設の紹介
【利用の流れ】
- 自治体の経済振興課や起業支援センターに相談
- 必要書類(事業計画書・在留カードなど)を提出
- 審査通過後、補助金支給または融資実行
これらの支援は日本人向けにも提供されており、外国人であっても「在留資格があれば同等に利用できる」ことが原則です。
制度の詳細や対象条件は自治体ごとに異なるため、地域の商工会議所や市役所への事前相談が効果的です。
外国人在留支援センターなどの相談窓口
言葉の壁、制度の壁に直面したときに頼れるのが、外国人向けの総合相談窓口です。
特に、政府が設置している「外国人在留支援センター(FRESC)」は、ビザ・労働・税務など多分野に対応した総合支援機関として機能しています。
【FRESCの主なサービス】
- ビザや在留手続きの無料相談(入管担当者が常駐)
- 雇用・労働に関する行政機関との連携支援(ハローワーク等)
- 法律や生活相談に関する通訳付き相談(英語・中国語ほか)
- 各種ガイドブックの配布、制度説明会の開催
【アクセス方法】
- 東京・大阪・福岡など全国に拠点あり
- オンライン相談や電話対応も可(一部予約制)
- 外国人本人だけでなく、企業や支援者も相談対象
FRESC以外にも、各自治体の国際交流協会などがビザや生活相談に応じているケースも多いため、最寄りの相談窓口を把握しておくと安心です。
◆制度を味方にすれば、開業のハードルは大きく下がる
外国人が日本で個人事業を始めるには多くのハードルがある一方で、国・自治体・支援機関が用意する制度を活用すれば、そのハードルを着実に下げることが可能です。
特に活用したいのは以下の3つ
- スタートアップビザ:ビザ取得前の準備期間を合法的に確保できる
- 自治体・商工会議所の支援制度:資金・施設・経営支援が受けられる
- 外国人在留支援センター(FRESC)などの相談窓口:在留・経営に関する壁を無料で相談できる
「一人で抱え込まず、使える制度は積極的に使う」これが、日本での安定した起業の第一歩です。
外国人個人事業主として成功するための日本でのビジネスマインドセット
在留資格を取得し、事業をスタートさせるところまで来たとしても、それだけで成功が約束されるわけではありません。
日本で個人事業主として安定的に仕事を継続していくためには、制度の理解だけでなく「信頼される外国人ビジネスパーソン」になるための姿勢や考え方が不可欠です。
特に、日本独特の商習慣や価値観に戸惑う場面も多く、文化的なギャップが事業継続を妨げるケースもあります。
ここでは、外国人が日本で信頼を築き、継続的な成功を得るために意識しておきたい3つのマインドセットを紹介します。
文化の違いを理解し、信頼関係を築く重要性
日本では、取引先・顧客との間に長期的な信頼関係を築くことが何よりも重視されます。
実績や価格だけでなく、相手の価値観や期待に合わせた対応ができるかが、継続的な仕事につながるかどうかを大きく左右します。
たとえば
- 商談の際の「名刺交換」や「丁寧な言葉づかい」は、相手への敬意を表す基本動作とされています
- 遅刻や納期の遅延は、小さなことであっても「信頼できない」と判断される原因になります
- 日本では「Yes/No」よりも曖昧な表現や空気を読むことが重視される文化があるため、明確な主張だけでは意思疎通が難しい場面も
異なる文化背景を持つ外国人にとっては、時に戸惑うこともありますが、「相手の文化を理解しようとする姿勢」そのものが信頼の第一歩になります。
契約社会で通用する「書面重視」の感覚を身につける
日本は口約束で物事が進むように見える場面もありますが、ビジネスの場では“書面重視の文化”が根強く残っています。
たとえ個人事業主であっても、契約書や見積書・請求書などの書類をしっかり整備しているかどうかで、相手からの信用度が大きく変わります。
日本で事業を成功させるために重要なのは
- 業務委託契約書や秘密保持契約書をきちんと交わす
- 報酬や業務内容について、口頭だけでなく必ず文書で合意を取る
- 電子契約サービス(クラウドサイン、freeeサインなど)を活用し、効率的に書面対応できる体制を整える
また、日本の税制上、取引内容の証拠として「契約書・請求書・領収書」の存在が必須となるため、ビザ更新や確定申告でも非常に重要な意味を持ちます。
契約書文化に慣れることは、単なる事務対応ではなく、ビジネスの継続と信頼を守る「日本的ルールへの適応」でもあります。
継続的な学びと専門性の発信で信頼を高める
日本のビジネス環境では、「信頼に足る実績があるか」「この人に任せて大丈夫か」という感覚が仕事の発注や継続に強く影響します
そのため、たとえ実力があっても、それを適切に表現・発信しなければ、チャンスにつながらないこともあります。
成功する外国人フリーランスの共通点としては:
- ブログやSNSで専門分野について定期的に情報発信をしている
- 日本語・英語を使い分けて「この人に頼めば安心」と思わせる工夫をしている
- 資格取得や研修への参加など、自己研鑽を継続している姿勢がある
また、日本では「紹介」で仕事がつながることも多く、誠実な対応・実績の可視化・継続的な発信が、新たな顧客やチャンスを呼び込みます。
ビジネスを軌道に乗せるには、“技術+信頼+見える努力”の三本柱が欠かせません。
◆「制度理解+姿勢」で信頼される外国人事業主へ
日本で個人事業主として活動するためには、ビザや制度の知識だけでなく、日本ならではの商習慣や信頼構築のマナーを理解する姿勢が求められます。
特に意識すべきマインドセットは次の3つ
- 文化的背景を理解し、日本的な信頼関係を築く姿勢を持つこと
- 書面での契約・証拠管理を徹底し、誠実なビジネス対応を心がけること
- 専門性を高め、継続的に発信することで、実力と信頼を可視化すること
「外国人だから不利」と感じる場面もあるかもしれませんが、こうした姿勢を持つことで、むしろ「信頼できる外国人」として周囲から評価され、長期的な成功を築くことができます。
外国人が日本で個人事業主になるために必要な「条件」と「備え」
日本で個人事業主として働くことは、外国人にとって大きなチャンスでありながら、多くの制度的ハードルと文化的ギャップを乗り越える必要があります。
しかし、正しい知識と準備をもって一歩ずつ対応すれば、ビザ取得から開業、事業の安定運営まで、確実に実現可能です。
本記事で取り上げたポイントを、最後に整理します。
- 適切な在留資格(特に「経営・管理」や身分系ビザ)の有無を確認し、必要に応じて変更申請を行うこと
- 開業準備では、事業内容の明確化・資金調達・開業届の提出・事務所の確保といった一連のステップを丁寧に進めること
- 税務・社会保険・入管への報告など、開業後も継続的な義務を果たす姿勢が求められる
- 職種選びにおいては、ビザに適合した専門性やスキルを活かせる領域に絞ることが成功の近道
- 行政の支援制度や相談窓口を活用し、孤立せず支援を受けながら進めることが重要
- ビジネスマインドとして、日本独自の信頼関係・契約文化・専門性の発信を意識し、信頼される外国人事業主を目指すこと
法的な知識と日本のビジネス文化をバランスよく理解することで、外国人でも日本での安定した独立開業は十分に可能です。
不明点や不安があるときは、行政書士、税理士、自治体の起業支援センターなど専門家の力を借りながら、自信を持って事業をスタートさせてください。
関連記事一覧
SELECT人気記事一覧
まだデータがありません。