
06/17 (火)更新
【初心者向け】特定活動ビザの全貌をわかりやすく解説!46種類一覧付き
外国人の在留資格のなかでも、とくに多様なケースに対応する柔軟な制度が「特定活動ビザ」です。
留学生の就職活動継続、親族の呼び寄せ、インターンシップ、ワーキングホリデーなど、特定活動ビザは一つの枠組みでありながら、その中身は実に多岐にわたります。
その反面、「就労できるのか?」「何号の活動か?」「指定書には何が書かれているのか?」など、内容の把握が難しく、誤解やトラブルにつながるケースも少なくありません。
本記事では、特定活動ビザの法定・告示・告示外という分類から始め、46種類に分類される活動例を具体的に解説します。
また、申請手続きや就労条件、企業が雇用する際の注意点も取り上げ、初心者の方でも制度の全体像を理解できる構成としています。
これから外国人材を雇用しようとしている企業担当者の方や、在留資格の変更・延長を検討している外国人本人にも役立つ情報を、豊富な事例とともにわかりやすくお届けします。
特定活動ビザとは?分類とその意味
特定活動ビザ(在留資格「特定活動」)は、他の在留資格では対応しきれないような個別・特例的な活動を可能にするために設けられた柔軟性の高い制度です。
このビザは、活動の内容に応じて「法定特定活動」「告示特定活動」「告示外特定活動」の3つに分類されており、それぞれで在留資格の認定や就労の可否が異なります。
多くの人が「特定活動」という言葉から漠然としたイメージを抱きがちですが、実際には制度的に明確な区分があり、それぞれの特徴を理解していなければ、誤った申請や就労による不法滞在・罰則のリスクも伴います。
このセクションでは、特定活動ビザの3分類それぞれの内容をわかりやすく解説します。
法定特定活動の活動範囲とは
「法定特定活動」とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)そのものに明記されている特定活動を指します。代表例として以下のようなものがあります。
- 医療滞在ビザ(治療を目的として日本に滞在)
- 外交官・国際機関職員などの家族滞在
- 国家間協定に基づく交換留学生の受入れ
このタイプは法律により活動内容が定められているため、原則として変更や拡大は認められません。また、告示や個別審査を必要とせず、制度の枠内でシンプルに運用されるのが特徴です。
法定特定活動は特に外交的・医療的な配慮が必要なケースで使われるため、一般企業での雇用や就労にはあまり関係しないことが多いです。
告示特定活動の活動範囲とは
「告示特定活動」は、法務大臣が定めた「法務省告示」によって公式に認められた活動です。
こちらは就職活動やワーキングホリデー、インターンシップなど、広く社会的ニーズに対応するためのビザとして知られています。
具体的には以下のような活動が含まれます。
- 留学生の卒業後の就職活動継続(特定活動46号)
- ワーキングホリデーによる短期滞在と就労
- インターンシップやサマージョブの実施
- 民間企業での研修
- 大学教員などの招聘による活動
告示特定活動は種類ごとに告示番号が割り振られており、その活動内容や在留期間、就労の可否が明記されています。
企業が外国人を雇用する場合も、この区分に該当するかどうかが非常に重要です。
たとえば、特定活動46号で就職活動中の外国人を雇用するには、「指定書に就労可と記載されているか」の確認が不可欠です。
告示外特定活動の活動範囲とは
「告示外特定活動」とは、法定・告示いずれにも該当しない、個別の特例対応として認められる活動を意味します。
これは一時的・緊急的な事情によるもので、主に次のようなケースで活用されます。
- 就労ビザ更新の不許可後、一時的に在留資格を得るための猶予措置
- 新型コロナウイルス流行時の「帰国困難者」に対する在留延長措置
- 難民認定申請者で審査中の仮滞在許可
- 日本での親族介護や看取り等、特別な家庭事情による滞在希望
告示外特定活動は個別判断によって許可されるため、入管との綿密なやりとりが必要です。
一般的な雇用とは異なり、就労が認められるかどうかもケースバイケースとなります。
このような申請には、医師の診断書や事情説明書、本人の陳述書など多くの補足書類が求められることがあり、専門家のサポートを受けることが望ましい場面も少なくありません。
▽3つの分類を理解して正しいビザ活用を
特定活動ビザは一括りに語られがちですが、「法定」「告示」「告示外」という3つの制度的な柱があります。
この違いを理解しないまま手続きを進めると、意図しない不許可や在留資格違反を招くリスクもあります。
企業担当者は採用対象者の活動内容がどの分類に該当するのかを明確に把握し、指定書や在留カードの内容を確認することが重要です。
また、個別の判断が必要な告示外特定活動においては、早めの相談や申請準備が成功のカギとなります。
制度の分類を正しく理解することが、特定活動ビザを有効に活用する第一歩です。
特定活動ビザの主な類型と特徴一覧
特定活動ビザは一見すると抽象的な名称ですが、その中身は非常に多岐にわたる具体的な活動内容ごとに分類されています。
とくに「告示特定活動」の中には、留学生の就職活動継続やワーキングホリデー、インターンシップ、さらには難民対応や災害による一時的な滞在延長といった特例も含まれており、社会情勢や人道的配慮に応じて柔軟に対応できる制度設計となっています。
このセクションでは、現行制度の中で特に利用頻度が高く、企業や外国人本人にとって実用的な類型を厳選して紹介します。
それぞれの目的・対象者・在留期間・就労可否の違いを理解することで、より的確な対応とビザ運用が可能になります。
特定活動46号とは(留学生の就職活動継続)
特定活動46号は、日本の大学や大学院などを卒業した外国人留学生が、これまで就労ビザでは就職できなかった職種にも就けるように設けられた新たな在留資格です。
これは従来の「技術・人文知識・国際業務」などのように職種制限のあるビザとは異なり、幅広い分野でのフルタイム就労を認める制度として注目されています。
対象者
- 日本の大学(短期大学・専門職大学含む)または大学院を卒業または修了した外国人
- 日本語能力試験(JLPT)N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上を有する者
- 卒業後、専門性にかかわらず幅広い職種での就職を希望する者
在留期間と更新
- 在留期間は3か月、6か月、1年、3年、5年のいずれか
- 在留期間は審査により決定され、更新は可能
- 長期的な在留・就労も見据えた制度設計となっている
就労条件と制限
- フルタイムでの正社員就労が可能
- 職種は接客業や販売業などの単純労働を含む幅広い分野が対象
- アルバイトや派遣社員としての雇用は不可
必要書類(企業側・本人双方)
- 雇用契約書(フルタイムであることが明記されているもの)
- 日本語能力証明書(JLPT N1、またはBJT 480点以上)
- 卒業証明書(日本の大学・大学院)
- 活動内容や業務内容に関する説明書類(企業が作成)
企業側の対応とメリット
- 従来の在留資格では雇えなかった職種にも、優秀な外国人材を正社員として採用可能
- たとえば、飲食、サービス、観光、小売業などにおける人材不足を補う制度として有効
- 企業は、雇用後の在留資格更新支援や書類の整備に対応する体制づくりが求められる
「就職活動継続のための特定活動ビザ」との違いに注意
よく混同されがちですが、「卒業後の就職活動継続」のために許可される特定活動ビザ(告示9号など)とは別物です。
項目 | 特定活動46号 | 就職活動継続の特定活動(告示9号) |
対象 | 卒業生で日本語力の高い者 | 卒業後に就職活動を継続する者 |
主目的 | 正社員等としての就労 | 日本での就職活動の継続 |
在留期間 | 3か月~5年(更新可) | 6か月(最長1年) |
就労可否 | 正社員可(アルバイト不可) | 資格外活動で週28時間以内のアルバイト可 |
つまり、特定活動46号は「就労ビザ」であり、単なる就職活動の延長とは異なる制度です。
雇用側も受け入れ条件を誤解せず、しっかりと制度理解を持ったうえで活用することが重要です。
ワーキングホリデーと特定活動
ワーキングホリデー制度は、特定の国と日本との間で締結された相互協定に基づく若者の交流プログラムで、その滞在資格は「特定活動」に分類されます。
- 対象国 – オーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス、韓国など20か国以上
- 年齢制限 – 原則18~30歳(国によって異なる)
- 期間 – 原則1年間
- 就労可否 – 自由な就労が可能(観光や文化交流を主目的としつつ)
このビザを持つ外国人は、観光をしながらアルバイトや短期雇用をすることができるため、飲食店や観光業などの季節的な雇用需要に非常にマッチします。
ただし、長期的雇用やフルタイム雇用には向かない点に注意が必要です。
インターンシップ・サマージョブに該当する活動
外国人留学生の一時的な就業体験として行われるインターンシップやサマージョブ(短期の有給活動)も、特定活動ビザで対応されることがあります。
- 対象者
主に大学や専門学校に在籍中の外国人学生が対象です。 - 受入れ形態
教育機関との連携(大学の単位取得や教育課程の一部としてのインターンシップ)や、企業による独自受入れもありますが、教育的目的が明確であることが必要です。 - 期間
数週間〜3か月程度が一般的ですが、最長1年以内とされています。 - 就労可否
報酬の有無で要件が異なり、報酬ありの場合は「特定活動(告示9号)」などの在留資格が必要です。 - 企業側の要件
教育的目的やプログラム内容、指導体制の証明が必要です。
また、在籍する学校からの推薦書等も必要となります。
企業が実施する場合には、活動内容が教育的目的を持っていることの証明(プログラム内容、指導体制など)が求められます。
また、在籍する学校からの推薦書なども申請の際に必要となります。
このような制度を活用することで、企業は将来のグローバル人材との接点を持つことが可能になります。
難民・帰国困難者など特例的な事例
特定活動ビザの中には、人道的配慮や災害・紛争による緊急的対応として発行される特例も存在します。代表例は以下のとおりです。
- 帰国困難者 – たとえば、パンデミック(新型コロナ等)や戦争等で自国に帰れない外国人
- 難民申請中の仮滞在 – 審査中に一時的な在留資格が必要となるケース
- 医療滞在後の療養延長 – 退院後の療養を目的に在留期間の延長を求める場合
これらはすべて告示外特定活動に該当し、個別審査と入管の裁量によって許可されるため、申請には明確な事情説明や裏付け資料が不可欠です。就労が認められるかどうかもケースごとに異なり、指定書の内容を必ず確認する必要がありま
す。
企業が該当者を雇用する場合は、法的リスクを避けるためにも専門家(行政書士や弁護士)と連携することが強く推奨されます。
▽多様な特定活動を理解し、的確な受入れ戦略を
特定活動ビザには、若者の文化交流を目的としたワーキングホリデーから、就職活動中の支援、難民保護といった人道的措置まで、非常に幅広い活動が含まれています。
それぞれのビザは「就労が可能か」「どの程度の期間か」「更新や変更が可能か」などが異なるため、制度理解を誤ると雇用トラブルや資格外活動違反につながる恐れもあります。
企業側は、対象者のステータスや就労条件を正しく把握し、自社のニーズとマッチするビザの活用方法を検討することが求められます。
特定活動ビザの活用は、適切な理解と対応があってこそ、企業と外国人双方にとって有益なものになるのです。
特定活動ビザの申請条件と必要書類
特定活動ビザは、日本における様々な「特例的な活動」を可能にする柔軟な在留資格です。
就職活動や医療滞在、親族の呼び寄せなど、個別の事情に応じた在留を認めるため、他の在留資格とは異なり、申請内容や必要書類がケースごとに大きく異なるのが特徴です。
ここでは、特定活動ビザの一般的な申請条件と必要書類、申請から許可までの流れ、不許可時の対応、さらには医療・親族関連の特例について詳しく解説します。
申請時に求められる主な書類一覧
特定活動ビザの申請に必要な書類は、その活動内容によって異なりますが、以下の書類は共通して求められることが多いです。
- 在留資格変更許可申請書または在留期間更新許可申請書
- 理由書(活動内容や必要性を具体的に記載)
- 活動内容に応じた証明書類(例:就職活動なら大学の卒業証明書・推薦状、医療滞在なら診断書)
- 住民票やパスポート・在留カードのコピー
- 経費支弁能力の証明書類(預金通帳の写し、納税証明書など)
加えて、活動ごとの具体的な証明資料が必須です。
たとえば就職活動継続の場合は「内定通知書」や「就職活動計画書」が必要であり、親族呼び寄せの場合は「親族関係を証明する戸籍謄本」などが求められます。
申請から許可までの基本的な流れ
申請の流れは以下のように進みます。
- 必要書類の準備・確認
活動内容に即した証明資料を収集します。誤りや不足があると審査が遅れるため、事前確認が重要です。 - 出入国在留管理局への申請提出
在留資格変更や更新の申請を行います。受付は予約制の場合があるため注意が必要です。 - 審査期間
おおよそ1か月から3か月程度が目安です。案件の内容や混雑状況により前後します。 - 結果の通知と在留カードの受け取り
許可が下りると、入管から通知書が届き、在留カードの更新・発行手続きを行います。
なお、申請中で在留期間満了が近い場合は「特例期間(最大2か月)」での在留が認められることがあります。
不許可後の特定活動への切替パターン
万が一、留学ビザや就労ビザなどの変更申請が不許可となった場合でも、在留を継続したい理由が明確であれば、特定活動への切替が認められるケースがあります。
たとえば
- 就労ビザが不許可になったが、帰国準備のための在留を希望する(特定活動「出国準備」)
- 留学ビザから技人国へ変更できなかったが、再度の就職活動を希望する(告示9号等)
このようなケースでは、「出国準備のための特定活動」や「就職活動継続」等の形での再申請が可能となる場合があります。
ただし、過去の在留状況や違反歴がある場合は認められにくくなるため注意が必要です。
医療滞在や親の呼び寄せの場合の特例条件
特定活動ビザには、高度な柔軟性があるため、医療目的や家族同伴にも対応可能です。
以下に代表的なケースを紹介します。
医療滞在ビザ(Medical Stay)
- 対象者 – 日本での治療や療養を目的とする外国人とその付き添い者
- 要件
- 診療計画を含む医療機関の受入書類
- 経費支弁能力の証明(滞在費・治療費)
- 医療コーディネーターを通じた申請が望ましいケースもあり
- 診療計画を含む医療機関の受入書類
- 在留期間:90日~1年(審査により決定)
親の呼び寄せ(外国人の子の育児支援)
- 対象者 – 日本に住む外国人が親を一時的に呼び寄せ、育児や療養のサポートを受けたい場合
- 要件
- 親族関係を示す証明書類(出生証明書、戸籍など)
- 呼び寄せ理由(出産直後のサポートや一時的な介護など)
- 滞在費用の負担者の証明(預金残高証明書など)
- 親族関係を示す証明書類(出生証明書、戸籍など)
このように、一般的な就労や留学以外でも、特定活動ビザは個別事情に応じた在留を可能にする制度であり、家族支援や療養目的にも活用されています。
▽多様なニーズに応える特定活動ビザの柔軟性
特定活動ビザは、その名称が示すように特定の事情に応じた柔軟な在留資格であり、個別のニーズやケースに応じて制度が設計されています。
特に申請条件や書類内容は一般的なビザよりも活動ごとに大きく異なるため、正確な情報と入念な準備が成功の鍵になります。
企業側や本人が制度を正しく理解し、最適な形で申請・活用していくことが、トラブルの回避と円滑な在留の維持につながります。
特定活動ビザを通じて、外国人材が安心して日本で生活・活動できる環境づくりが今後さらに求められるでしょう。
特定活動ビザと就労の可否・制限
特定活動ビザは「就労系」「非就労系」の両方を含む柔軟な在留資格であり、活動内容によって就労の可否や制限が大きく異なる点が特徴です。
たとえば、46号のようにフルタイム就労が可能な類型もあれば、就職活動や医療滞在など原則就労が認められないケースもあります。
そのため、在留カードや指定書に記載されている内容を正確に把握することが極めて重要です。
ここでは、特定活動ビザにおける就労の可否の確認方法、資格外活動許可の概要、指定書の記載例をわかりやすく解説します。
在留カード・指定書による就労可否の確認方法
特定活動ビザを保有する外国人が就労できるかどうかは、在留カードの裏面記載や、交付時に渡される「指定書」の記載事項を確認することで判断できます。
在留カード裏面の就労欄に記載される例
- 「就労不可」:原則として就労不可(例:就職活動中、医療滞在など)
- 「資格外活動許可あり」:週28時間以内のアルバイトが可能(例:告示9号など)
- 「指定された活動に限り就労可」:特定活動の範囲内でのフルタイム就労が可能(例:特定活動46号)
指定書の記載内容で判断する場合
- 「本邦の公私の機関との契約に基づく就労を目的とする活動」などと明記されていれば、フルタイムの就労が許可されています。
- 一方、「報酬を受ける活動を行ってはならない」等の文言がある場合、一切の労働が認められません。
ポイント
就労の可否は、「特定活動ビザ=就労可」とは限らず、一人ひとりの指定内容を確認しなければ誤認を招く恐れがあります。
採用時の確認は企業側にも求められます。
資格外活動許可の申請と労働時間制限
特定活動ビザで原則就労が認められていないケースにおいても、資格外活動許可(Permission to Engage in Activity Other Than That Permitted)を申請すれば、一定の条件下でアルバイト等が可能になります。
主な条件
- 週28時間以内の就労(長期休暇中は1日8時間、週40時間まで可)
- 就労先や業務内容が「風俗営業」などに該当しないこと
- 指定された活動を妨げない範囲であること
対象となる特定活動の例
- 就職活動継続(告示9号)
- 出国準備のための一時滞在
- 家族帯同(親の呼び寄せなど)
申請手続きの流れ
- 出入国在留管理局にて申請(申請書と活動概要、雇用先の業務説明など)
- 審査後、在留カード裏面に「資格外活動許可」のスタンプが押される
- 許可された業務に限って、労働が可能となる
なお、フルタイム就労を行いたい場合は、特定活動の内容そのものが「就労可」と明示されている必要があるため、資格外活動では補えません。
指定書の就労可・不可記載例
指定書は、特定活動ビザが許可された際に交付される書類で、どのような活動が認められるかが具体的に記載されています。
この文言によって、就労の可否が明確になります。
就労可能な指定書の例(46号など)
本邦の公私の機関との契約に基づき、通訳、販売、広報、海外取引業務等に従事する活動
→この記載がある場合、フルタイムでの就労が可能です。
就労不可の指定書の例(医療滞在など)
本邦の医療機関において診療・療養を受けるために必要な期間の滞在
報酬を受ける活動を行ってはならない
→この場合、一切の就労が不可となります。
資格外活動可能なケース(就職活動継続など)
本邦において就職活動を継続する活動に従事するものとし、報酬を受ける活動については、資格外活動許可を受けた範囲でこれを行うことができる。
→このような場合、資格外活動許可を取得すれば、アルバイトが可能です。
▽特定活動ビザは内容次第で就労可否が大きく異なる
特定活動ビザは、その柔軟さゆえに「就労できる」か「できないか」が個別に異なるという大きな特徴があります。
就労の可否は、在留カードの記載や指定書の文言に明示されているため、企業側・本人ともに必ず内容を確認し、誤解のないように対応することが必要です。
特定活動ビザの活用は、外国人材の多様なニーズを汲み取るチャンスでもありますが、同時に慎重な対応と理解が不可欠です。
就労に関わる制限とそのルールを正しく押さえた上で、適切な雇用や活動を進めましょう。
外国人を雇用する企業側の注意点
特定活動ビザを持つ外国人の雇用には、企業側にも一定の法的・実務的な責任が伴います。
特定活動は内容に応じて就労が認められる場合とそうでない場合があり、「雇えると思っていたが実際は不可だった」という事態を防ぐためにも、制度理解と確認作業は欠かせません。
さらに、ビザの種類や在留資格によって契約形態や就労可能時間、社会保険の扱いなどが変わるため、採用戦略そのものにも影響します。
ここでは、特定活動ビザを持つ外国人を雇用する企業が押さえておくべき注意点と、戦略的な活用方法について具体的に解説します。
特定活動外国人を雇用する際のリスクと責任
特定活動ビザの外国人を雇用する際、企業には在留資格の範囲内での適切な就労管理が求められます。
就労不可の在留資格で働かせてしまうと、企業側が不法就労助長罪に問われるリスクもあります。
主なリスク要素
- 就労不可のビザで雇用した場合の法的責任(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)
- 在留資格確認を怠った場合の労基署や出入国在留管理庁からの指導
- 社会保険未加入・雇用契約書不備などによる労務トラブル
- 採用後の更新不許可により雇用継続が困難になるリスク
採用前には必ず在留カードと指定書を確認し、就労可否を明確にすることが第一ステップです。
加えて、採用後も在留期間や更新スケジュールに注意を払いましょう。
準備期間と手続きの見通しを立てるポイント
特定活動外国人の採用には想定よりも時間と手続きが必要なケースが多く、人事・労務担当者は事前に段取りを整えることが重要です。
準備段階で押さえるべきポイント
- 雇用開始希望日の1.5〜2か月前には在留資格の確認・申請準備に着手
- 雇用条件通知書や雇用契約書の英訳が求められることもある
- 指定書に基づいた業務内容と整合性が取れているかを確認
- 審査が長引いた場合のバックアッププラン(採用延期、代替配置など)
たとえば、特定活動46号や親族帯同など、ビザの種類によって申請ルートや必要書類が大きく異なり、行政書士への相談が有効な場合もあります。
スケジュールと準備物のチェックリストを整えておくと安心です。
フルタイム雇用とアルバイト雇用の違い
特定活動ビザを持つ外国人を雇用する際、「フルタイム(常勤)」と「アルバイト(短時間勤務)」では就労要件が大きく異なります。
主な違い
- フルタイム就労可 – 特定活動46号など就労が認められた在留資格(指定書に「報酬を受ける活動可」と記載)
- アルバイトのみ可 – 就職活動中や家族帯同等の資格で、資格外活動許可を得ている場合(週28時間以内)
企業側は契約時に雇用形態に応じた法的要件を満たす必要があります。
たとえば、フルタイム雇用の場合には社会保険の加入が義務となり、勤務時間や業務内容も法令に即した管理が求められます。
注意点
- 資格外活動許可の範囲を超えての雇用は不法就労扱いとなる
- 派遣や業務委託契約は基本的に不可のケースが多い(46号など明示型以外)
- アルバイト契約でも、実質フルタイム扱いになると指摘を受ける場合あり
就労ビザへの変更を前提とした雇用戦略
特定活動ビザでの雇用は、将来的な「就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)」への変更を視野に入れた戦略としても活用可能です。
想定されるケース
- 就職活動中の留学生(特定活動・告示9号)を採用し、正式内定後に「技術・人文知識・国際業務」へ変更
- 特例的に特定活動ビザで就労開始後、事業安定やスキル向上を見て適切な就労ビザに変更
この場合、企業側には次のような準備が求められます。
- 正規雇用にふさわしい業務内容と処遇を提示できるか
- 大卒相当の学歴や実務経験など、就労ビザ要件を満たす人材であるか
- 就労ビザ申請に必要な書類の整備(会社概要、雇用理由書、業務内容説明書など)
戦略的に特定活動を「中継点」として位置づけ、将来的な人材確保へつなげる体制が鍵となります。
▽特定活動外国人を雇用する企業に求められる慎重かつ柔軟な姿勢
特定活動ビザでの雇用は、柔軟に人材を採用できる反面、法的責任や手続き面での注意点が多い在留資格です。
企業が安心して外国人を雇用するためには、
- 在留資格・指定書の確認を徹底すること
- フルタイムとアルバイトの就労可否を明確に区別すること
- 就労ビザへの移行も含めた長期視点での雇用戦略を立てること
が重要です。
法令遵守と実務のバランスをとりながら、外国人材の能力を最大限に活かす採用体制を整備することが、企業の持続的成長に直結します。
よくあるケース別・特定活動ビザの活用例
特定活動ビザは「その他の在留資格」とも呼ばれ、法令上で明確に分類されていない多様なケースに対応できる柔軟な在留資格です。
そのため、就職活動の延長や内定後の待機、親族の帯同、研究活動など、通常のビザではカバーできない「一時的かつ目的の明確な滞在」を可能にします。
ここでは、実務でよく見られる代表的な4つのケースに焦点を当て、それぞれの適用条件や活用時の注意点を解説します。
留学生の就職活動延長(特定活動46号)
特定活動46号は、日本の大学や大学院などを卒業した留学生が、正社員として幅広い業種で働ける在留資格です。
単なる就職活動の延長ではなく、既に内定を得ている者を対象に、就労目的で発行されるものです。
主な要件としては、
- 日本語能力試験N1またはN2レベルの語学力
- 日本の大学等の卒業(学士・修士・博士)
- 雇用契約書(派遣不可・原則正社員)
が求められ、取得後は製造業やサービス業など、従来の「技術・人文知識・国際業務」では認められなかった業務も就労可能になります。
内定後の待機期間中の在留継続
留学生が卒業後すぐに入社できず、内定後の数か月間を日本で待機する場合に使われるのが「特定活動(就職活動継続)」です。
このケースでは、原則6か月の在留期間が付与され、資格外活動許可を得れば週28時間以内のアルバイトも可能です。主な申請要件は、
- 卒業証明書
- 内定通知書または推薦状
- 就職活動計画書
などで、「特定活動46号」とは異なり就労ビザではありません。
この期間中に企業側が就労ビザの変更申請に必要な書類準備を進めることも重要です。
配偶者や親族の帯同ビザとしての特定活動
特定活動ビザは、主たる在留資格者(研究者、企業内転勤者など)に帯同する配偶者や子供にも発給されることがあります。
このケースの対象者は、
- 公的機関の研究員や高度専門職で在留する外国人の配偶者・子供
- 留学生の親(介護目的など)
- 海外赴任者の帯同家族で日本滞在が必要な場合
などです。
通常の「家族滞在ビザ」では対応できない場合、特例的に特定活動ビザが活用されることで、日本滞在中の家族生活が円滑に保たれます。
ただし、就労の可否や在留期間には制限があるため、個別の確認が必要です。
研究者や研修生など専門的活動のケース
国際的な研究交流や企業の技術研修など、短期間かつ目的が明確な活動を行うために来日する外国人には、特定活動ビザが活用されるケースが多くあります。
たとえば、
- 海外大学との共同研究のために来日する研究者
- 日系企業の海外現地法人からの研修生
- 官公庁や国際機関の専門家派遣
などが該当します。
このようなケースでは、在留期間は1か月〜1年程度に設定されることが多く、活動内容に応じて在留資格の要件や就労可否も異なります。
活動の性質に応じて、「技術・人文知識・国際業務」や「短期滞在」よりも柔軟に運用できる点が評価されています。
▽目的に応じた特定活動ビザの活用で選択肢を広げよう
特定活動ビザは、「標準のビザでは対応しきれない状況」に応じて柔軟に対応できる在留資格です。
- 就職活動や内定待機など、キャリア形成に必要な猶予期間の確保
- 家族帯同や研究活動など、生活・学術両面での支援
- 雇用主と連携した戦略的な人材確保
といった目的に応じて、特定活動ビザは多様なケースで機能します。
適切な在留資格の選定と、法的要件への理解を深めることで、外国人にとっても企業や教育機関にとっても、より安心かつ有意義な滞在・雇用が実現できます。
特定活動ビザのQ&Aと最新情報
特定活動ビザは、非常に多様な目的に対応できる柔軟な在留資格であり、外国人本人だけでなく雇用主や支援者にとっても重要な制度です。
ただし、その多様性ゆえに「延長できるのか?」「再入国は可能か?」「特例措置は継続されているのか?」といった疑問が生じやすいのも事実です。
ここでは、特定活動ビザに関してよく寄せられる質問とその最新情報をわかりやすく解説します。
在留期間の更新や延長はできる?
特定活動ビザの在留期間は、活動内容によって「15日」「90日」「6か月」「1年」「3年」「5年」など幅広く設定されており、更新や延長が可能なケースも多く存在します。
たとえば、就職活動継続のための特定活動(告示9号)は、最長1年まで延長可能です(初回6か月+更新6か月)。
更新には、「現在の活動内容が引き続き有効であること」が重要です。
活動が変化した場合には、他の在留資格への変更が求められる場合もあります。
更新申請は在留期限の3か月前から可能であり、申請中は特例的に2か月の在留が認められる「みなし在留期間」も適用されます。
帰国後に再入国できる?
原則として、特定活動ビザで一時出国した後に再入国するためには、「再入国許可」または「みなし再入国許可」の取得が必要です。
特にみなし再入国許可は、有効な在留カードを持つ外国人が出国前に「出国記録(再入国する予定です)」と申告すれば、1年以内であれば特段の申請なしに再入国可能となります。
ただし、在留期限を過ぎてしまった場合は再入国できないため、帰国・再入国のタイミングには注意が必要です。
また、活動内容によっては、再入国時に入国審査官が活動継続の正当性を求めることもあります。
コロナ特例の終了と今後の扱い
新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に認められていた「特定活動ビザによる一時的な滞在延長措置」は、2022年末をもって終了しました。
この特例措置では、帰国困難者に対して「90日」または「6か月」の特定活動が認められていましたが、現在は通常の制度に戻っています。
現在も一部の帰国困難な状況や人道的配慮が必要な場合に限り、個別審査により短期の在留が許可されるケースはありますが、原則として従来通りの基準に基づいて審査されます。
申請に関する相談先・支援機関一覧
特定活動ビザに関する申請や延長、変更などの手続きについては、以下のような機関や窓口を利用することができます。
- 出入国在留管理局(入管) – もっとも確実な情報が得られる一次窓口です。地域ごとに相談日が異なるため、事前確認が推奨されます。
- 行政書士事務所(ビザ専門) – 複雑な事例や企業側の申請代行などに対応。ビザ取得の確率を上げたい場合に有効です。
- 外国人支援センター/市区町村の国際交流協会 – 言語サポートや情報提供、生活支援も行っています。
また、外国人材の雇用を検討している企業側も、登録支援機関やビザコンサルティング会社と連携することで、制度に即した対応が可能になります。
▽制度の動向を把握して適切な手続きを
特定活動ビザは、その柔軟さゆえに「制度の変化」や「個別対応」が多い在留資格です。
特に在留期間の更新や再入国、制度変更に伴う影響には最新情報の把握が欠かせません。
制度は今後も改定される可能性があり、誤解や対応の遅れがトラブルにつながることもあります。
信頼できる情報源を常に確認し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、安心して特定活動ビザを活用できる環境を整えましょう。
特定活動ビザを活用した柔軟な人材戦略の構築
企業の成長ステージや事業展開のスピードに応じて、必要な人材を適切なタイミングで確保することは、競争力を左右する重要な要素です。
とくに外国人材の採用においては、在留資格の選択が戦略的な意味を持ちます。その中でも特定活動ビザは、柔軟性と多様性に富んだ制度として注目されています。
本章では、特定活動ビザを「単なる在留資格」ではなく、戦略的な人材マネジメントの一環としてどのように活用できるかを解説します。
企業の成長段階に応じたビザ活用の設計
企業は創業期、成長期、拡大期など各ステージによって必要な人材像が異なります。
たとえば、創業期には短期間で即戦力となる人材、拡大期には継続的に組織へ貢献できる人材を求める傾向があります。
このようなニーズに対して、特定活動ビザは柔軟に対応できます。
短期プロジェクトや立ち上げ支援には「短期特定活動」、正社員採用を見越した雇用には「特定活動46号(高度外国人材向け)」のように、目的別に最適な活用が可能です。
ビザ戦略=人材戦略という視点で制度設計を行うことで、採用リスクを抑えつつ、機動的な事業運営を実現できます。
短期滞在・一時雇用における特定活動ビザの利点
たとえば、国際会議の同時通訳者や短期研修生、スポーツ指導者、文化交流活動参加者など、明確な期間を定めた業務には特定活動ビザが非常に適しています。
このような一時的な人材に対して就労系ビザを取得するのは非現実的ですが、特定活動ビザであれば「15日」や「90日」といった短期間での在留が認められ、かつ内容が明確であるため、入管審査も比較的通りやすい特徴があります。
また、短期間だからこそ企業側の社会保険対応や受入体制への影響も最小限に抑えられる点もメリットです。
他の在留資格との組み合わせによる戦略的人材確保
特定活動ビザは単体での利用だけでなく、他の在留資格との組み合わせによって戦略的に活用することも可能です。
たとえば、
- 留学生の「特定活動(就職活動継続)」→「技術・人文知識・国際業務」へのスムーズな切替
- 高度外国人材の「特定活動46号」→「永住・定住者」などへの移行
- 家族の帯同による「特定活動(帯同)」と就労者本人の「就労ビザ」の併用管理
このような移行設計を視野に入れることで、人材流出のリスクを抑えながら、継続的な雇用計画を立てやすくなります。
制度変更への即応力を高める社内体制づくり
特定活動ビザは、その対象や条件が頻繁に見直される制度であるため、情報収集と社内体制の柔軟性が不可欠です。
たとえば、法改正に備えて社内でビザ別の管理システムを整備しておく、あるいはビザ更新予定者の情報を定期的に法務・人事で共有するなど、リスク管理を前提とした体制整備が求められます。
加えて、行政書士など専門家との連携や、登録支援機関とのパートナーシップも、制度変更時の迅速な対応を実現する重要な要素となります。
▽特定活動ビザを「使いこなす」視点を持つ
特定活動ビザは、単なる例外的な在留資格ではなく、企業の成長・国際化に対応する“戦略的ツール”として活用する価値があります。
短期から長期まで、限定的な業務から多様な職種まで幅広く対応できるこの制度を「正しく理解し、組織に適した形で使いこなす」ことが、これからのグローバル人材戦略において差をつける鍵になります。
制度の理解と運用の巧拙が、企業の競争力に直結する時代。
今こそ、ビザ制度を人材戦略の一部として見直してみてはいかがでしょうか。
まとめ|多様性と柔軟性を備えた「特定活動ビザ」の可能性
特定活動ビザは、一見すると複雑で難解な制度に見えるかもしれませんが、その実態は非常に柔軟で多様な在留資格の集合体です。
法定・告示・告示外という分類に始まり、46種類以上に及ぶ活動内容ごとの在留資格が存在することで、外国人本人はもちろん、企業や大学、研究機関にとっても選択肢が広がります。
就職活動の延長やインターンシップ、ワーキングホリデーといった若者向けの制度から、難民・家族帯同・医療滞在といった生活支援型までカバーしている点は、他のビザ制度にない大きな特徴です。
また、在留カードや指定書に記載される就労可否情報の正しい把握、資格外活動許可の適用範囲なども、外国人本人・雇用側双方にとって重要な知識となります。
企業においては、制度の理解不足が雇用リスクにつながる一方、特定活動ビザを的確に使いこなすことで、採用戦略の幅が広がり、短期から長期にわたる人材確保にもつながります。
今後の法改正や社会情勢の変化に対応するためにも、特定活動ビザを“理解して使いこなす”ことが不可欠です。
制度の柔軟性を最大限に活かし、外国人と企業の双方にとって有益な在留環境の構築を目指していきましょう。
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