
05/30 (金)更新
在留資格「技能実習」とは?企業が押さえるべき制度の基本とは
外国人労働力の受け入れが進むなかで、「技能実習制度」は多くの企業にとって重要な選択肢となっています。
しかし、「技能実習」と聞いても、その仕組みや在留資格との関係、さらには1号・2号・3号の違いなど、意外とわかりにくい部分が多いのではないでしょうか。
本記事では、技能実習制度の基本から在留資格の種類、受け入れフローや特定技能との違い、今後の制度変更の見通しまでを網羅的に解説します。
初めて外国人実習生の受け入れを検討している企業はもちろん、すでに制度を活用している事業者にも役立つ情報を、実務視点で整理しました。
制度を正しく理解することが、円滑な受け入れとトラブル防止の第一歩です。
企業担当者として押さえておくべきポイントを、ぜひこの機会にチェックしておきましょう。
在留資格「技能実習」とは
外国人労働者の受け入れ制度の中でも、技能実習制度は特に企業側の理解と適正な運用が求められる制度です。
「人手不足を補う制度」と誤解されがちですが、実際には日本が持つ技術や知識を発展途上国の若者に伝え、母国の産業育成に貢献する国際協力の一環として位置づけられています。
このセクションでは、技能実習制度の基本的な枠組みと目的、そして「研修制度」や「特定技能」との違いについて詳しく解説します。
技能実習制度の概要と目的
技能実習制度は、実務を通じた技術移転を目的に、開発途上国の人材を日本企業で一定期間受け入れる制度です。
単なる労働力ではなく、育成対象としての受け入れであり、日本の技術を学んだ後に母国の経済発展に寄与することが前提となります。
企業にとっては、人材育成と国際貢献の両立を図る重要な役割を担う制度です。
「研修」や「特定技能」との違いとは?
技能実習制度は、かつての「研修制度」と異なり、労働契約の締結と労働法の適用が前提となっています。
一方、特定技能は即戦力人材の確保を目的とし、転職や家族帯同の可否、在留期間の上限などに違いがあります。
制度名 | 主な目的 | 転職 | 家族帯同 | 在留期間 | 雇用形態 |
技能実習 | 技能の移転と国際貢献 | × | ×(原則) | 最大5年 | 労働契約あり |
特定技能 | 即戦力の確保 | ○(一部制限あり) | ○(特定技能2号) | 最大5年(1号)/無期限(2号) | 労働契約あり |
制度の背景と国際的意義
技能実習制度は、日本の経済協力政策の一環として位置づけられています。
日本の産業現場で技能を学び、それを母国へ持ち帰ることにより、インフラ整備や製造業の高度化を促進する狙いがあります。
ただし、制度の運用に関しては国際社会からの指摘も多く、労働環境の改善や人権保護の強化が引き続き求められています。
企業側には、技能移転の精神を正しく理解し、適切な管理体制を整える責任が伴います。
技能実習制度は「労働力確保」ではなく「国際貢献」が本来の目的です。
「研修制度」「特定技能」と混同しないように注意し、企業側も制度の背景と責任をしっかりと理解したうえで受け入れる必要があります。
今後の制度改正も視野に入れ、実習生との信頼関係を築くことが、成功の鍵を握ります。
技能実習における在留資格の種類
技能実習制度は、在留資格によって3つの段階に分かれており、それぞれのステージで求められる条件や目的が明確に設定されています。
この段階的な制度設計によって、実習生は段階的にスキルを身につけ、適正に評価されながら次のステップへと進むことができます。
また、受け入れ方式も「団体監理型」と「企業単独型」の2種類があり、企業がどの方式を選ぶかによって準備や責任範囲が異なる点にも注意が必要です。
ここでは、技能実習1号・2号・3号の違いや移行条件、受け入れ方式の特徴について詳しく解説します。
技能実習1号ロの概要と要件
技能実習1号ロは、日本での実習をスタートするための最初のステージです。
対象は、入国後1年以内の実習生で、座学や初期実習を通して基礎的な技能を習得する期間です。
主な要件は以下の通りです。
- 技能実習計画が法務省に認定されていること
- 日本語能力試験N4程度の語学力(業種により異なる)
- 原則、同一職種・作業での実習
- 雇用契約に基づき報酬が支払われること
この段階を修了すると、2号への移行審査を受けることが可能となります。
技能実習2号ロへ移行する条件
技能実習2号ロは、基本技能を身につけた1号実習生が、より実践的な作業に従事する段階です。
最長で2年間、継続して実習を行うことができます。
移行条件は以下の通り
- 技能実習1号を優良な成績で修了していること
- 技能検定基礎級または評価試験の合格
- 監理団体または受入企業が「優良」として認定されていること
- 同一職種・作業で継続すること
2号実習は雇用安定・継続性を前提とする内容となるため、受入企業の責任も大きくなります。
技能実習3号ロのメリットと制限
技能実習3号ロは、さらに熟練度を高めるための上位ステージです。
2号修了者のうち、特に優良な成績を収めた実習生のみが対象となります。最長2年間の延長が可能です。
主なメリットと制限は以下の通り
- 合計5年間の実習が可能(1号+2号+3号)
- 企業・監理団体の双方が「優良認定」を受けている必要あり
- 技能検定3級(またはそれに相当する試験)に合格していること
- 一部職種・作業では3号の対象外となることも
長期の雇用関係を築けるため、企業側としては安定した人材育成・戦力化が期待できます。
団体監理型と企業単独型の違い
技能実習制度では、受入方法として「団体監理型」と「企業単独型」が用意されています。
方式 | 概要 | 特徴 |
団体監理型 | 商工会や業界団体などの監理団体を介して実習生を受け入れる方式 | 中小企業でも受け入れやすい/手続きや指導を団体が支援 |
企業単独型 | 自社が直接外国の送り出し機関と契約し実習生を受け入れる方式 | 大企業向け/自社のニーズに合った人材確保が可能だが、全て自社で対応が必要 |
多くの中小企業は団体監理型を採用していますが、今後の受け入れ体制や責任範囲を見据えて選択が重要です。
技能実習の在留資格は、1号→2号→3号と段階的にステップアップする仕組みになっており、企業側にも法的・実務的責任が伴います。
また、団体監理型・企業単独型の選択によって負担も変わるため、自社に合った受け入れ方式を見極めたうえで、適正に制度を活用することが求められます。
技能実習生の受け入れ方式と流れ
技能実習制度を活用して外国人を受け入れるには、計画的な準備と正確な手続きが求められます。
特に、在留資格「技能実習」での受け入れは、入国の数か月前から段階的な準備が必要であり、実習開始後も1号・2号・3号へと進んでいく明確なステップがあります。
さらに、実習期間終了後には帰国または「特定技能」への移行といった将来の選択肢も視野に入れる必要があります。
ここでは、受け入れから実習修了、さらには将来のキャリアまでを見据えた実務の流れをわかりやすく解説します。
入国5ヵ月前~入国までの準備
技能実習生の受け入れは、入国の約5か月前から準備がスタートします。
- 送出し機関との連携 – 技能実習制度に基づいた送出し国の認定機関を通じて候補者を選抜
- 面接とマッチング – オンラインまたは現地にて面接を実施
- 日本語・生活習慣研修の開始 – 入国前講習として約3~4か月の学習期間を設ける
- 在留資格認定証明書の交付申請 – 法務省へ必要書類を提出し、交付後にビザ申請
この段階では、監理団体(または企業単独型の場合は企業自身)と実習計画の作成・提出が不可欠です。
実習開始から1号→2号→3号へのステップ
入国後、技能実習生はまず「技能実習1号ロ」の在留資格で1年間実習を行い、技能検定の基礎級に合格すれば2号への移行が可能となります。
- 技能実習1号(1年目) – 基本技能の習得と初期実習。生活指導も含まれる
- 技能実習2号(2〜3年目) – 実務能力の向上が目的。継続雇用と安定した業務が前提
- 技能実習3号(4〜5年目) – 優良企業・監理団体に限り、さらに2年の延長が可能
それぞれの段階で、技能検定試験の合格が移行条件となります。
帰国または特定技能への移行パターン
技能実習制度を修了した後、多くの実習生は帰国しますが、「特定技能1号」への在留資格変更を選ぶ人も増えています。
- 帰国パターン – 技能・経験を母国で活かす
- 特定技能1号へ移行 – 即戦力として日本企業に継続勤務。試験と条件を満たせば変更可能
- 特定技能2号へ発展(限定業種) – さらなる専門性が必要な分野での就労が可能に
技能実習で身につけた知識・技術をもとに、日本国内での長期的キャリア構築も可能になりつつあります。
技能実習計画の認定と届出手続き
技能実習制度を適正に運用するには、技能実習計画の認定と届出が法律上義務です。
- 計画の作成・認定申請 – 法務省の定める様式に従い、実習内容・指導体制・労働条件などを明記
- 監理団体経由での申請(団体監理型) – 書類不備や誤りがあると却下・再提出となる
- 届出義務 – 変更事項(配属先変更、住所変更等)は速やかに届け出る必要あり
この段階での対応が不十分だと、在留資格の不許可や実習生受け入れ停止のリスクも発生します。
技能実習生の受け入れは「事前準備」「段階的な実習」「制度的な移行」の3ステップで構成されています。
受け入れ企業は制度への理解と計画性を持つことが不可欠であり、適切なサポート体制の構築が長期的な雇用の成功につながります。
今後の制度変更(育成就労制度)も見据え、柔軟かつ正確な対応が求められる時代に入っています。
技能実習で認められる職種・業務範囲
技能実習制度で受け入れ可能な職種は、すべての業種に対応しているわけではありません。
法務省と厚生労働省が定めた対象職種・作業に限られ、定期的に見直しが行われています。とくに介護職種には独自の要件が設けられており、受け入れにあたっては注意が必要です。
ここでは、現在の制度で認められている職種の一覧と、業務内容の具体例、介護における特例など、技能実習を実施する際に押さえておくべきポイントを解説します。
対応職種の一覧と具体的業務
技能実習で認められているのは、制度上定められた職種・作業に限られます。
2025年現在、対応職種は以下の通りです(※一部抜粋)
- 農業関係 – 耕種農業、畜産農業
- 建設関係 – 型枠施工、とび、左官、配管など
- 食品製造関係 – 缶詰製造、パン製造、食肉加工など
- 機械・金属関係 – 機械加工、溶接、金属プレス加工など
- 繊維・衣服関係 – 縫製、染色、機械製図など
- 介護 – 特定条件のもとで可(下記参照)
職種によっては、定められた「作業」に従事しなければならず、周辺業務や異なる作業を兼任させることは違反となる可能性があります。
たとえば、「食肉加工」の作業に従事する実習生を清掃業務に常時割り当てるといった対応は制度違反です。
介護職種における特別要件
介護職種は2017年に技能実習の対象となりましたが、他の職種とは異なる要件や準備が必要です。
【主な要件】
- 日本語能力 – 入国時点で日本語能力試験(N4以上)またはJFT-Basic合格が必要
- 職場条件 – 介護福祉施設・特別養護老人ホームなど、制度で認定された施設に限られる
- 指導体制 – 日本人職員による常時の実習指導、記録簿の整備など
また、夜勤を含む実習は、一定期間後に条件を満たした場合に限り実施可能とされています。
受け入れ側には、通常以上に詳細な実習計画と運営体制が求められます。
対応施設・業種で注意すべき点
技能実習制度を適切に運用するためには、受け入れ可能な施設・業種であるかを事前に確認することが重要です。注意点は以下の通りです。
- 業種名が類似していても対象外の場合がある(例:「物流倉庫業」は基本的に対象外)
- 職種の拡大が行われるタイミングがあるため、最新情報を確認すること
- 一部業種では「特定技能」では可能だが「技能実習」では不可というケースも
また、監理団体や行政書士の支援を受ける場合でも、最終的な適法判断は企業側の責任となるため、受け入れの際には慎重な確認が必要です。
技能実習制度では、対応職種・作業が厳格に定められており、対象外の業務を行わせると制度違反となるリスクがあります。
特に介護などの職種では独自の基準が設定されているため、事前準備と制度理解が不可欠です。
制度の対象範囲を正確に理解し、適切な実習を行うことが、企業と実習生の信頼構築の第一歩となります。
特定技能との違いを徹底比較
技能実習と特定技能は似ているようで制度の目的や運用、待遇面で大きく異なります。
実際、制度上の選択肢としてどちらが適切なのか迷う企業担当者や候補者も少なくありません。
このセクションでは、「制度の目的や対象者」、「在留期間や家族帯同の可否」、「制度選択のポイント」に分けて、技能実習と特定技能の違いを明確に解説します。
制度目的と受け入れ対象の違い
比較項目 | 技能実習 | 特定技能 |
制度の目的 | 技能移転による国際貢献 | 即戦力としての労働力確保 |
対象者 | 発展途上国の若年層が中心 | 技能試験・日本語試験に合格した外国人 |
業種の位置づけ | 技能の習得と帰国が前提 | 労働力として継続的な就労が前提 |
技能実習は「教育・訓練」的な性格を持つ制度で、最終的には母国への技能移転が前提です。
一方、特定技能は深刻な人手不足に対応するための制度であり、実務経験者や試験合格者を即戦力として迎えることが目的です。
在留期間・転職可否・家族帯同の可否
比較項目 | 技能実習 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
在留期間 | 最長5年(1号〜3号) | 最長5年 | 期間制限なし(更新可能) |
転職 | 原則不可(同一職場) | 条件付きで可能 | 可能 |
家族帯同 | 不可 | 不可 | 可能(配偶者・子) |
技能実習制度では、原則として職場を移ることはできません。対して、特定技能では条件を満たせば転職も可能です。
また、技能実習では家族帯同は一切不可ですが、特定技能2号では配偶者・子の帯同が認められています。
どちらを選ぶべきかの判断基準
制度選びの際には、企業側と候補者側の目的や体制、業種、採用戦略に応じて以下のように判断するとよいでしょう。
技能実習がおすすめのケース
- 教育的視点で若手を育てたい企業
- 将来的に海外拠点への人材還流を見据える事業展開
- 短期・限定的な人材確保
特定技能がおすすめのケース
- 即戦力人材を長期的に確保したい企業
- 事業所内に外国人材のキャリアアップ支援制度がある
- 家族帯同や定着率向上を重視している企業
技能実習と特定技能は、目的も対象も運用の柔軟性もまったく異なる制度です。
企業がどの制度を活用すべきかは、必要な人材像・就業期間・サポート体制の有無などをもとに総合的に判断する必要があります。
今後は、制度の見直しや移行も進んでいく可能性があるため、常に最新情報を確認しながら運用方針を検討していくことが重要です。
必要に応じて、行政書士や監理団体、登録支援機関と連携を取りながら進めましょう。
技能実習生の人数枠と制限
技能実習生の受け入れには、企業の規模や実績に応じた人数制限が設けられています。
これは、実習の質を保ち、過度な受け入れによる人権侵害や不適切な労働環境を防ぐための制度的措置です。
このセクションでは、企業規模ごとの上限、優良認定による枠拡大、送出機関の認定要件など、受け入れを検討する企業が事前に把握しておくべき基準を詳しく解説します。
企業規模に応じた受け入れ上限
技能実習制度では、企業が受け入れられる人数が常勤職員数に応じて定められています。
一般的には、常勤職員5人につき実習生1人の割合が目安です。
例えば、常勤職員が30人の企業であれば、1年間に最大6人まで受け入れが可能ということになります。
ただしこれはあくまで「基本枠」であり、業種や受け入れ実績によって微調整されることもあります。
人数枠を超える受け入れは違反となる可能性があるため、監理団体や行政書士と連携して慎重に計画を立てましょう。
優良認定を受けることで広がる枠
実習実施者や監理団体が「優良認定」を受けると、受け入れ人数の上限が2倍に拡大されるなどの特例が適用されます。
この優良認定は、実習計画の適正性、過去の違反歴の有無、実習環境の整備など、多角的な審査を経て判断されます。
優良認定のメリットは単なる人数拡大だけでなく、技能実習3号ロへの移行や在留期間の延長が認められる点にもあります。
中長期的に外国人材を活用したい企業にとっては、積極的に目指す価値のあるステータスです。
送出機関の認定とその条件
技能実習生を送り出す「送出機関」は、送出し国の政府から認定された組織である必要があります。
信頼できる送出機関を選ぶことで、実習生の質やトラブルのリスクを大きく減らすことが可能です。
認定基準には以下のような条件が含まれます。
- 実習生への事前教育が行われているか(日本語・生活習慣など)
- 過去の送り出し実績において重大なトラブルがないか
- 受け入れ先との連携体制が整っているか
日本側の監理団体も、受け入れの際にはこの送出機関の選定を慎重に行う義務があります。
人数枠の理解と計画的な受け入れがカギ
技能実習生の受け入れには、企業規模に応じた明確な人数制限があります。
それに加え、「優良認定」を取得することで制度をより柔軟に活用できる可能性が広がります。
また、信頼できる送出機関との連携は、実習生の安定就業と企業のリスク回避に不可欠です。
制度のルールをしっかりと理解したうえで、長期的な視点での人材育成と活用戦略を描くことが、技能実習制度を成功させる第一歩となるでしょう。
制度変更と今後の動向
2024年6月、日本政府は外国人技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を創設する法改正を行いました 。
この新制度は、従来の技能実習制度が抱えていた課題を解消し、外国人労働者の人材育成と確保を目的としています 。
育成就労制度は、特定技能制度への移行を前提とした在留資格であり、外国人労働者が日本での就労を通じて技能を習得し、長期的なキャリア形成を支援する仕組みとなっています 。
技能実習制度の見直し・廃止の方向性
技能実習制度は、1993年に創設され、開発途上国への技能移転を目的としていました 。
しかし、実際には労働力確保の手段として利用されるケースが多く、制度の目的と実態に乖離が生じていました 。
また、低賃金や長時間労働、人権侵害などの問題も指摘され、制度の見直しが求められています 。
これらの課題を踏まえ、政府は技能実習制度を廃止し、新たに育成就労制度を導入することを決定しました
新制度「育成就労」への移行予定とは?
育成就労制度は、2024年6月に法改正が成立し、2027年の施行を目指しています 。
この制度では、外国人労働者が特定の産業分野で就労しながら技能を習得し、特定技能制度への移行を前提としています 。
在留期間は原則3年とされ、期間中に必要な技能や日本語能力を身につけることが求められます 。
また、育成就労制度では、労働者の権利保護や適切な労働環境の整備が重視され、受入れ企業には適正な管理体制の構築が求められます 。
今後の受け入れ企業が備えるべき対策
育成就労制度への移行に伴い、受入れ企業は以下の対策を講じる必要があります:
- 育成就労計画の策定と認定取得 – 外国人労働者の育成計画を策定し、関係機関からの認定を受ける必要があります 。
- 日本語教育の実施 – 就労開始前にA1相当の日本語能力を習得させ、就労期間中にA2相当への向上を支援することが求められます 。
- 労働環境の整備 – 適切な労働条件の提供やハラスメント防止のための体制整備が必要です 。
- 転籍制度への対応 – 一定の条件下で労働者の転籍が認められるため、企業は適切な対応策を検討する必要があります 。
これらの対策を講じることで、企業は育成就労制度に適応し、外国人労働者との良好な関係を築くことが可能となります。
技能実習制度から育成就労制度への移行と企業の対応
技能実習制度の廃止と育成就労制度の導入は、外国人労働者の人材育成と確保を目的とした大きな制度改革です。
受入れ企業は、新制度の趣旨を理解し、適切な対応策を講じることで、外国人労働者との信頼関係を築き、持続可能な雇用環境を整備することが求められます。
今後の制度施行に向けて、企業は早期に準備を進めることが重要です。
実習生と企業の信頼関係を築くためにできること
外国人技能実習制度のもとで受け入れられる実習生にとって、職場は日本での生活の中心となる場所です。
そこで求められるのは、単なる雇用主と被雇用者という関係を超えた「信頼関係の構築」です。
適切な労務管理や生活支援の体制を整えることで、実習生の安心と成長を支え、ひいては企業の安定した労働力確保にもつながります。
このセクションでは、企業側が実習生とより良い関係を築くために実践できる取り組みについて、具体的に紹介します。
適正な労務管理と生活支援
実習生との信頼関係の基礎は、法令に則った適切な労務管理です。
最低賃金の遵守や残業時間の適正管理、休日・有給休暇の付与など、基本的なルールを確実に守ることが前提となります。
加えて、日本での生活に不慣れな実習生に対する支援も重要です。
たとえば
- 家賃・水道光熱費の仕組みをわかりやすく説明する
- ごみの分別方法や地域ルールの案内
- 生活に必要な日本語表現の指導(例:「病院」「役所」「電車の乗り方」など)
こうした生活面でのケアを行うことで、実習生が不安なく業務に集中できる環境が整い、離職リスクの軽減にもつながります。
トラブル防止に役立つ社内体制
信頼関係を継続的に維持するには、相談しやすい体制の整備が欠かせません。
一例として
- 実習生専用の相談窓口を社内に設ける
- 定期的な1on1ミーティングを通じて不満や困りごとをヒアリング
- 通訳対応や多言語マニュアルの整備
また、管理者・現場責任者に対する研修の実施も効果的です。
文化の違いやコミュニケーションのずれによるトラブルを未然に防ぐには、現場の理解と配慮が必要不可欠です。
実習終了後のキャリア支援も重要
多くの実習生にとって、技能実習制度はキャリアのステップでもあります。
特定技能制度への移行や、日本での長期就労を目指しているケースも珍しくありません。
企業としては以下のような支援が考えられます。
- 特定技能1号への移行に関する情報提供やサポート
- 実習終了後の職場継続雇用の検討
- 帰国後のキャリアに活かせる技能習得のサポート
実習生の将来を見据えた姿勢は、本人のモチベーションを高めると同時に、「この会社で働いて良かった」という思いを育てます。
信頼は制度より強い“人と人の絆”
技能実習制度は形のある枠組みですが、実習生と企業の関係性は人間同士の“絆”に支えられています。
労務管理の徹底や生活支援体制の整備、キャリアへの配慮といった「当たり前」の積み重ねが、深い信頼関係を生み出します。
これからの外国人雇用において、企業が重視すべきは「人を育てる姿勢」。
制度変更の動向を注視しつつ、心の通った受け入れ体制の構築に努めることが、企業の持続可能な成長につながっていくでしょう。
技能実習制度を正しく理解し、信頼される受け入れ企業へ
技能実習制度は単なる労働力確保の手段ではなく、国際協力と人材育成を目的とした制度です。
1号・2号・3号とステップアップする在留資格の違いや、受け入れ方式、職種の制限など、制度の全体像を理解することが企業には求められます。
また、制度の変化にも柔軟に対応し、実習生と信頼関係を築ける環境整備を行うことが、長期的な人材活用と企業の社会的評価向上につながります。
今後の法改正や「育成就労」への移行も視野に入れ、制度に依存せず人を育てる姿勢が問われる時代です。
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